シナリオ詳細
青いバラの花嫁
オープニング
●Something Four
白い教会。海と空の見える、素敵なところ。
二人で話して選んだ、とくべつなところ。
相談して、どうせなら二人きりでとくべつな時間を、って。
だから、今日は、司祭さんと私と、それから旦那さんになる、こいびとだけで。
エステに行って、ネイルサロンに行って、美容室に行って。
普段は滅多にしないパックも、寝る前にはばっちりつけて。
少しだけサボり気味な、前日準備だってバッチリ終えた。
『あしたはいい日になるといいね』
『なるよ。だって、俺達の結婚式だから』
隣で私を抱きしめる最愛の人と笑みを浮かべて、眠りについて。
だから。
油断していたのかもしれない。
私はやっぱり、最後までドジをやらかしてしまうんだ――、
「な、ない」
白いドレス。日の光を受けて煌めくティアラ。
形の良い唇には薄くルージュが塗られ、その頬は薔薇が咲いたように美しく染まっている。
そんな花嫁から発された『ない』のことば。
「青薔薇が、ない――!!」
少女の名前はラウ。
愛しいひととの結婚を数時間後に控えた乙女。
サムシングフォーのひとつ、『何か青いもの』として用意しておいた青薔薇を、あろうことか家に忘れてきたのである。
少女の青い瞳が涙で潤み、化粧がみるみる崩れそうになっていた。
「……う、やっぱり、無理なのかなあ」
鏡に写る姿をみたラウは、ぶんぶんと頭を横に振った。
「……最後まで諦めない。それが、私」
ぎゅ、とドレスの裾を握ると、ラウは手紙を書き始めた――。
●花嫁からのヘルプ
「六月といえばジューンブライド!」
「花嫁の姿には心奪われるものがあるよね」
双子星のカストルとポルックス。白い薔薇のついた便箋をひらひらと振りながら、くすくすふふふと笑っていた。
「花嫁からのヘルプだ。助けてあげてくれるかい?」
カストルは届いた手紙を読み上げる。
『こんにちは。誰でもいいから助けて欲しい。
私に青薔薇を届けて欲しい。幸せになるために必要なんだ。
大好きな人との結婚式、さいごのさいごまでドジな私じゃきっと、彼もまた子供扱いをするだろうから。
お願い。
助けてください』
焦っているのか少し雑な字で書かれたそれは、いかにも必死そうな想いが伝わってくる。
「というわけなの、頼める?」
ポルックスは小さく首を傾げた。
六月の花嫁。幸せになれるとの言い伝え。
花嫁が貴方を、待っている――。
- 青いバラの花嫁完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年06月20日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●借り物の手紙
『初心者なので優しくしてほしい』三國・誠司(p3p008563)は、思う。
(結婚……かぁ。
人を好きになるっていうの、どんな気持ちなんだろうな)
恋をして。
結ばれて。
愛し合って。
求めあって。
そうしてふたり、共に在ること。
そうしてふたり、愛を誓うこと。
(今の僕にはよくわからないけど…人手が足りないっていうならやれるだけやりましょ。
新人はこういうところで働かないとね)
ぐ、っと握った拳は固く。
受け取ったスケジュール表にざっと目を通しては思案する。ああ、恐らくは、きっと。
やるべきことはほかにだってあるのだろう、と。
そう。青薔薇を確保しに走る仲間もいるけれど、式も今日中に執り行わなければならないのだから。
(よし、そうと決まれば僕がやるべきは――、)
――時間稼ぎだ、と。
◇
「旦那さんに会いに行くから、その旨を書いた手紙を書いてほしいんだ」
「……? わかった」
達筆とは言い難いけれど、大人びた細長い文字を書く女性だった。
少し赤くなった目の周りと、揺れる青が印象に残っている。
『もう』少女ではない。
そう、感じた。
◇
「ええと……」
「あ、自分は嫁さんから委託されてきました」
先程書いてもらったばかりの手紙を渡す。『ふむ』と頷き納得した様子でルイスは顔を上げた。
怪しむようにうかがっていた青は、安心の色を滲ませている。
「ラウは、何をしてるんだ? 遅いから心配なんだが……」
「実はここだけの話……」
誠司は誰も周りに居ないことを確認すると、ひそひそと耳打ちを。
「嫁さんには内緒にしてほしいんですけど……。
ということで、今嫁さん頑張っていらっしゃるのでもうちょっと、もうちょっと待っていただけないですかね」
「! ……嗚呼。それくらい、構わないよ」
へにゃ、と眦を下げて。大人びた印象を与える青年も、愛しい人の想いには解かされてしまうのだろう。
ほう、と安心して息を吐いた誠司。あ、と声を上げてもう一枚手紙を取り出すと、ごほん、と小さく咳払い。
「……それと、これも」
見せたのは依頼書。涙で濡れた跡が微かに滲んでいた。
「……嫁さん、気にしてるみたいなんで。一応」
然し、己の役割はここまでだ、と。誠司は扉を開けると、式場の準備の手伝いへ。
(大事なだれか……か。そんな人が……まぁ、凡人の僕にゃ縁のない話か。
それでもああいう幸せを持てる人が増えるといいよなぁ)
●新しい貴女へ
(花嫁さま……ラウさまは、控え室に、いるのでしょう、か?
諦めるのは、まだ早いですよ、と。お伝えしなくては)
『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)はリズムよくノックを。花嫁はきっとひとり。ならば何か手伝いを、と思ったのだ。
「花嫁さま、いらっしゃいますか……?」
そうっと、扉を開けた先。花嫁の化粧は崩れていた。
「う、うう……」
「た、たいへん……!」
てきぱきと準備して、ネーヴェは花嫁の支度を整えるお手伝いを。
(多少はお化粧で、ごまかせるかも……しれないけれど。でも、やっぱり、綺麗なお顔がいちばんですから)
ソファに寝転がって貰い、赤く腫れた目に冷やしたタオルを乗せる。
ひんやりと染みる冷たさが心地よいのだろう、幾分かは落ち着いた様子のラウは、『ありがとう』と笑みを浮かべた。
「旦那さまは、どんな方、なのでしょう?」
「ん? 嗚呼……私には勿体ないくらいいい人なんだ」
「ふむふむ。……どうして。結婚しようと、思ったのです、か?」
『わたくしはまだ、そういう気持ちを、知らないから、』と続けたネーヴェに、ラウはくすくすと笑って告げた。
「私のことを大切に想って、好きだって言ってくれる人だから。
きっと彼以上に、私を大切にしてくれる人はいないと思ったんだ」
化粧の落ちた表情で、屈託なく、ありのまま笑う女の子。
その姿を『きれいだなあ』と思うネーヴェだった。
時間は誠司がたっぷり引き延ばしているから、ゆっくり丁寧に。
可能な限り落として、美しい花嫁の姿で送り出してあげよう。
ネーヴェの想いはブラシを通してラウの肌へ。
「……ラウさまの瞳は、青薔薇のようですね」
鏡台ごしに見えた青。
ふと、ネーヴェの頬が綻んだ。
嗚呼。青い薔薇の似合う花嫁だと。
「ふふ、そうかな。青薔薇の花言葉は、確か――、」
「――不可能も覆す『奇跡』。
ええ、きっと、貴女なら。夫婦2人でなら、乗り越えていけるのでしょう」
だから、きっと大丈夫。
ネーヴェは頬を薔薇色で染める。
「……できました、ラウさま」
「わぁ……! すごい、本当にありがとう……!」
「とても、とても、素敵な花嫁さまです。あとは幸せが待っているだけ、ですよ」
ネーヴェにくるり、と向き直ると、ラウはにっと笑みを浮かべた。
「ありがとう。きっと、幸せになってみせる」
小さく頷いて。ネーヴェは、時計を見て、青薔薇が届くのを待った――。
●古びた想い出もいつかは
『移動図書館司書』アデライード(p3p006153)は花屋へ向かう。
青薔薇。こだわっているのだろう。早く届けてあげよう。そう思いながら。
青薔薇ができるだけたくさん売っている店を探して。
そして、見つけた。
「すみません」
『はい』と店員が出てくる。アデライードはにっこりと笑うと、高らかに宣言した。
「――この店にある青薔薇、全て。頂きます」
「……お、お客様、ええと。ほんとうに、ですか?」
「ええ。頂きます」
『少々お待ちください!』と慌てて店奥へと駆けていく店員。
(……一度、こういう事言ってみたかったんですよね)
満足げに笑みを浮かべると、アデライードは馬に青薔薇を乗せるように頼んだ。
ふむ、と控室へ戻り。
青薔薇を買い占め、ブーケを拵え、教会に飾り。それでもまだ青が足りぬ、と、アデライードは造花の青薔薇も作ることに決めた。
花嫁が青薔薇に拘る理由は、きっと好きだからなのだろう。ならばたくさんあると喜ぶだろう、と考えたのだ。
「直接の接触と香りの有無以外では見分けがつかない完成度のものを作りましょう。腕が鳴りますね」
ぐるぐると肩を回して。アデライードは、さっそく準備に取り掛かった。
(……あとは、もう一度チェック、でしょうか)
アデライードが花嫁の控室へ向かうと、そこには準備万端、と座る花嫁とネーヴェの姿が。
「忘れ物はありませんか?」
「た、たぶん……」
「なら、チェックをしましょうか。サムシングフォー……まず、何か古い物」
「ええと、これ。母さんの使ったレースのヴェール」
「OKです。なら次は、何か新しい物ですね」
「ええと……靴がそうだな」
ぴら、と捲ったスカート。華奢な足が見えた。
なら大丈夫そうだな、と安心したアデライード。
「なら、最後ですね。
なにか借りたもの……」
「……あ」
みるみる目の端に涙をためて。そんなラウの肩をぽん、と叩いた。
「……本来6ペンス銀貨が相応しいらしいのですが私は残念ながら所持しておりません故、代理品でございます」
「あはは……ありがとう。最後まで申し訳ない」
「いえいえ」
照れて、困ったように頬を掻いたラウ。
そんなラウの様子を見守って、アデライードは式の準備を進めるために式場へと戻っていった。
●青いバラの花嫁
『木偶の奴隷』アビゲイル・ティティアナ(p3p007988)は一番近い花屋に向かい、薔薇を購入していたのだが。
ぎゅうっと、その想いの強さを表すかのように、きつく握りすぎたせいでしなびてしまった。
仕方ないのだけれど、それでも悔しい。
受け取った家のスペアキーを使うことになっている自分を怨めしく思いながら、アビゲイルは青い薔薇を回収し、そして式場へと駆けていた。
そして控室。そわそわと待つ花嫁の表情は、少し緊張している様子。
(オレが話しかけたら、怖がっちゃうかなあ……)
怯える花嫁。どう考えても普通ではない状況。
いけない、とぶんぶん首を横に振って。
嗚呼、どうしよう。そう頭を抱えようとしたとき、目に入った愛らしい熊を掴むと、アビゲイルは扉を開いた――。
「……くま、さん?」
明らかに隠れているのは顔だけで、胴体は丸見えで。
それでもラウは、首を傾けた。少しだけ、おかしそうに。
「ぼっ……僕はアビィ」
「アビィ。こんにちは、アビィ」
「こっ、こんにちは!」
声が上ずって、緊張する。アビゲイルがくまの手に青い薔薇を握らせて、ぶんぶんと上下に動かした。
それを見てくすくすと笑うラウ。手を小さく振り返すと、続きを楽し気に待って。
そんな様子をみると照れくさくなってしまうから、アビゲイルは続きの言葉を紡いだ。
「君のために、バラを届けに来たんだ。う、後ろの男のことは気にしないで!」
「……ふふ、ありがと」
一歩、近付いて。膝をついて。
「……うけとって、くれる?」
震える声。花嫁は、いたいことをしないだろうか。
そんな心配は杞憂に終わる。
「もちろん! ありがとう、アビィ」
嬉しそうに頬を緩ませて。ふわふわのぬいぐるみの手から、青い薔薇を受け取ると、アビィの手を握った。
「きっとこれで、しあわせになれる。
アビィと、みんなのおかげだよ」
『本当にありがとう!』と満面の笑みを浮かべると、ラウはその青薔薇を髪に飾って。
ああ、と嬉しそうに声を漏らした。
「……。これで、漸く。結婚式ができるよ……!」
青い薔薇のような瞳から、涙が零れる。
アビィにハンカチを握らせたアビゲイルは、アビィをそのまま手渡した。
「おっ、お、おしあわせに!」
「……っ、もう、涙とまらないかもしれない……!」
ラウは、ぎゅうっとアビィを抱きしめると、そのままチャペルへと向かっていった。
●
こうして、青いバラの花嫁は、しあわせに式を終えたのでした。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
心踊る物語を貴方に。どうも、染(そめ)です。
ジューンブライドで何か書いてみたくて、テレビを見ていたら降ってきました。
お楽しみ頂けますと幸いです。
それでは、今回の依頼の説明に入ります。
●依頼内容
青薔薇を確保し、届ける。
花嫁のサムシングフォーのひとつになるはずだった青薔薇がないようです。
どんな手を使っても構いません。青薔薇を届けましょう。
協力するもよし、ひとりで依頼をこなすもよし。
花嫁に青薔薇を届けましょう。
●ロケーション
『これまでと、これから』という物語の中。
白い教会と一面の青。空と海が広がっています。
●NPC
・ラウ
今回の依頼人。
思春期真っ只中。そんな感じの女の子。
大好きな人との結婚式を目前にやらかしたうっかりに頭を抱えて涙を流しています。
化粧がぐしゃぐしゃになりそうなので誰か助けてあげてください。
・ルイス
ラウの旦那さんになる人。長身のイケメンです。
なにか声をかけたら手伝ってくれるでしょう。
●サンプルプレイング
花は花屋。買ってきた青薔薇だよ……って、ええ!?
化粧がぐちゃぐちゃじゃん、もう!
泣き腫らしたお目目じゃ写真がブサイクになっちゃうよ、ほら早く冷やした!
以上となります。
ご参加お待ちしております。
Tweet