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シナリオ詳細

All Rounder『TAI / NIN / NIN』

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●はろーはろーえぶりばでぃー
 忍集集団『暦』御中。

 栄えある忍者集団『暦』への突然なるお手紙、失礼いたします。

 この度私、伏見 行人 (p3p000858)よりご依頼したい事がありまして手紙をしたためた次第です。

 私は普段幻想のギルド『ローレット』に所属しています特異運命座標の一人なのですが、昨日ある依頼より帰還している折……突如として魔物に襲われてしまったのでございます。

 疲弊していた身では抵抗も難しく……それでもなんとか命からがら逃げ帰ったのは良かったのです――が。逃げ切れる寸前、形見の品を魔物に食されてしまった始末。取り返したいのですが、かの魔物は厄介であり私一人では如何ともし難く。
 それ故に是非『暦』のお歴々のお力を拝借したく存じます。

 つきましてはご了承いただけるのであれば下記日時の場所に――

●掛かったなアホめが!!
「いやぁね? 行人殿とはね、随分ね、お世話になっておりましてね?
 だからその行人殿からの頼みとなればそりゃあもう二つ返事のつもりで来たんですけどね?」
 後日。黒影 鬼灯 (p3p007949)はやけに丁寧に書かれた手紙を読んで『此処』に来た。
 それはとある山中。木々が生い茂り、険しい高低差が並ぶ地である。しかし忍者として修練を積む鬼灯やその配下ならばなんのその。さしたる苦労もなく踏破して件の『魔物』を目に捉えた――はいいのだが――

「敵が!! 敵が『スライム』だなんて聞いてないんですけどぉぉおお!!?」
「そうだね、言ってないからね」

 えぇぇえええ!!? という鬼灯の嫁殿からの抗議を伏見 行人 (p3p000858)は無視無視。元より意図して手紙からは省いたのだ。だって詳細に説明したら来てくれなかったかもしれないし……
 ともあれそう――敵はこの山中に陣取る特殊なスライム。その名も『対忍々』!!
 奴は硬い・強い・早いの三拍子が揃ったスーパーオールラウンダースライムであり、時折この近くを通る人間を苦しめては生かして帰す紳士のスライムなのである……紳士?
「あのスライムはね、人間の――というか衣類の繊維が好物らしいんだ」
「なにその新しい草食系スライム」
 男とか女とかそんなの関係ない。上質な繊維食わせろぉ。食わせてもらったら満足です、けぷっ。
 目がギラついている気がする……ともあれ行人が襲われたのはコイツで間違いない。食べられて消化されるのは服の繊維類だけなので例えば奪われた形見とやらがアクセサリーなどであれば、まだあのスライムの中に残っているだろうが――いずれにせよ奴を倒さない事には、その。色々困る。
「ちょっと――!! なにあのスライム、姿形を変形させてこっちの攻撃躱しくるんですけど――!?」
 そして逃げながら銃撃。放つは『暦』が一人、霜月である。
 鬼灯と共に訪れた彼であり、背後より猛スピードで追いかけてくるスライムに攻撃を一つ。近付くな――!! とばかりに威嚇するのだが、当のスライムは直撃地点に文字通り『穴』をあけて攻撃そのものを回避。
 姿が安定しない不定形スライムならではの戦法をフル活用して遠距離攻撃をほぼ無効化しつつあった。嘘でしょ怖いですけどあのスライム。うわまた走ってきた!!
「ダメダメダメダメ!! 射撃じゃ完封されるよアレどうにかなんないの!!?」
「行人殿ぉぉぉお策は、策はぁああ!?」
「ああ安心してほしい。こんな事もあろうかとイレギュラーズの皆にも協力を頼んでこの先で合流する予定なんだ……リウィルディア、ルフナ、逢華、ラズワルド、アリス、ゼファー……皆と共になんとかどうにかこうにかしよう……!」
 つまり、ノープランである! いやだがいくら何でも数で押せばどうにかなるだろう。
 問題はあのスライムは超意気揚々とこっちを追いかけてきているわ、邪魔な木々は薙ぎ倒してこっちに直進してくるわ、さっきなんてクマがいたが一撃で張り倒してるわ恐ろしい要素しかない事だらけなのだが――
『あ、ちなみにそのメンバーにはスライムだって伝えてるの?』
 鬼灯の嫁殿が行人に尋ねるが、余裕がないのか意図的なのか返答がない。え、どっちだろう……
 と、とにかく。

 それでも私は信じている。凄腕集団『暦』の強者に加え、一騎当千のイレギュラーズ達ならばスライム如きに遅れはとるまい……!!

 まずは合流し作戦を練るとしよ――うわスライムが加速してきた逃げろ逃げろ!!

GMコメント

 だって……敵はスライムだっていう内容だったから……
 だったから……しかたない……!
 これがギャグに振り切るのかえっち風味になるのか、全てはプレイング次第になるでしょう!! うん!!

 と言う訳でリクエストありがとうございました! よろしくお願いします!

■依頼達成条件
 特殊スライム『対忍々』を撃破せよ!!

■依頼現場
 とある山奥。木々が生い茂り、険しい高低差が並ぶ。
 時刻は昼なので視界的には問題ないでしょう。
 シナリオ開始時は周囲に木々が立ち並ぶ中での戦闘となります。問題はこっちに迫って来るスライムをどうするか……ここで迎え撃つか、もう少し開けた場所が無いか移動してみるか……

■特殊スライム『対忍々』(TAI・NIN・NIN)
 硬い・強い・早いの三拍子が揃ったスーパーオールラウンダースライム。伏見 行人 (p3p000858)の形見の品を食べた……という個体。
 特にやたら早い。なんなら二足歩行全力疾走で追いかけてくる。普段は不定形で足も無いのにどういう構造をしているんだコイツ……

 非常に特異な性質を持っている様で、物理・神秘に関わらず『中距離(R2)以上からの』攻撃を高確率で回避する。特に距離が離れている程確率が上昇。これは特殊な回避方法になるので、必中だろうとR2以上からの場合高確率で回避する。

 重要なのは『以上からの』であり、R2以上の射程を保有するスキルだろうとR1以下の射程で発動する事が出来れば特殊回避は発動しない。またこの能力はスライムが攻撃される度能動的に発動させている様で、どうにかこうにか不意を突く事が出来ればR2以上からの攻撃でも有効な攻撃を繰り出せるかもしれない。

 また重度の服繊維フェチ。
 服 繊 維 フ ェ チ 。
 お洋服食べたい。もぐもぐもぐもぐもぐ。男とか女とか関係ねぇ!! 全部食わせろ!! 人類の英知ウマ――!! 植物・動物・再生・半合成・合成繊維サイコ――!! ポリエステル万歳――!!
 え、お肉……? 人間自体はどうなのかって……? ええ、いやだわ野蛮な……なんでお肉なんて狙わないといけないんですか……私別にそういうスプラッターなの趣味じゃないので……

 なお攻撃方法としてはぺちぺち叩いてくる。
 遠距離に届く攻撃方法は無い様だ。ぺちぺち。
 なおこのぺちぺち、高いステータスから放たれる為クッッッッッソ痛いのでご注意を!

■味方NPC
・霜月
 忍集団『暦』の一人。非常に面倒見のいい人物で身内からは【母上】と呼ばれる【男性】
 肩に担いだ大型の銃で戦う遠距離を得手とする人物……だが、スライムのあまりに遠距離に強い特異な戦闘スタイルに苦戦。ちょっとおかしくないあのスライム? 霜月さんピンチなんですけど?
 特殊な弾を用いて味方の回復や支援も行えるようなので、特に指示などが無い場合は支援を中心に行ったりする事でしょう。霜月さんがんばるよ!

  • All Rounder『TAI / NIN / NIN』完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月30日 22時16分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラズワルド(p3p000622)
あたたかな音
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
アリス(p3p002021)
オーラムレジーナ
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
逢華(p3p008367)
Felicia

リプレイ


「ちょっと待って、ねぇアレなに。
 スライムっぽいけど速すぎるし絶対ちが……えー、分類上は合ってるって?」
 うっそだぁ……呟きながらスライムの飛び蹴り奇襲を躱すのは『流転の綿雲』ラズワルド(p3p000622)だ。天へと向かって跳ねた彼は木の枝を掴み、上へと至る。どう考えてもスライムじゃ……
「一寸もそんな話聞いてなかったんだけど!? 情報精度F (ushimi)じゃんかこれ!!
 ちょっと――! 本当にコイツが対象で間違いはないんだよね!?」
「ああそれは間違いないよ――こいつだ。見間違う筈はないね」
 本当に!? と『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は声を荒げるが、見据える『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)にとっては過ちなくこのスライムが対象であった。
 必ず倒す。そして必ず形見の品を取り戻すのだ――どうせこのまま逃げ続けてもジリ貧である。パッと倒してパッと取り返さねば! スライムの突撃を跳んでギリギリ躱しつつ。
「しかしスライムなんて聞いてませんわ! しかもあんなにお強いだなんておハーブですわよ!」
『まぁまぁどうしましょう鬼灯くん! 驚きすぎて口調が変わっちゃってるわよ!』
 おっといけないと我に帰るのは『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)である。やたらめっさ強いスライムに対し紡ぐは式符。毒蛇の顕現をもってあの軟体生物を撃滅せん――とするが蚊を払うかの様に蛇達が叩き落とされた。嘘でしょ?
「統領さま――! 今お助けを――!!」
 直後。近い範囲より放った鬼灯をスライムが襲わんとして――『Felicia』逢華(p3p008367)が割り込む。彼女は『暦』に属する一員であれば上司たる鬼灯の危険は見過ごせぬ。あんまり気持ち悪いので丁度木の上に逃げ――退避――げふんごふんしていた所であれば!
 懐より取り出すは暗器の刃。手に馴染むその一閃は神速にして数多の命を奪う。
 ので、スライムは真剣白刃取りした。強靭無比な圧力が刃を深くめり込ませず、押し留めて。
「うそぉ……ってわわっなにこれ僕、もぐもぐされて食べられちゃうの!? わー!!」
 同時。その逢華を取り込むかのようにスライムが大きく広がった。
 衣類を好む変態――違うよ紳士だよ――やかましいわ――とにかく狙いを定めたのだろう。包み込みもぐもぐせんとして……逢華が危ない――ッ!!
「――そうはさせないわよ」
 だが決して一人ではないのだ。
 例えどれだけ強かろうとそんな事は退く理由に足らず。
 大切なモノを取り返しに来た。お前は奪ってはならぬモノを奪った。
 故に戦う――其れだけで、軀を張る理由に余りあるッ!
「と云う訳でゼファー、アリス砲発射準備! 照準合わせ――行ってきまぁぁぁす!!」
「あああもう! ちょっと待ちっ、せめてお高い一張羅だけは安全な所においてから――蜂蜜ちゃぁん、もしかしてもう私よりも先に決まっていらっしゃる?」
 直後『オーラムレジーナ』アリス(p3p002021)はゼファー(p3p007625)の助けを得ながらスライムへと吶喊する。先程までのシリアスな口上はどこへやら――一気呵成に飛び込んでいく。それはさながらナントアリス砲弾! 故にゼファーも往く。
 スライム特攻に伴う乙女達の護るべき……あれそれ危険なモノがあるのだから!
「よっしゃ待ってろコラァ! 何がスライムよ、全年齢舐めんなコラァ!」
 一張羅たるレザージャケットを安全な所に放り投げ向かう。
 蠢くスライム、おおもう見えるだけで大人向け!
「くっ! まさかスライムの相手をする事になるなんて思ってなかったよ!!
 しかもなんだいあの性能は! 本当にスライムなのかい!?」
 困惑する『蒼銀討』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)。不定形生物である特性を完全に利用して遠距離を封じるとかなんなのさもう。
 でも逡巡している暇はない――いやあのスライムへと向かうのはやっぱり思い悩むけど! 服着た枚数幾末も。地を駆け往くのだ彼女もまた。
「さぁ壮大たる奪還劇舞台の幕を上げますわよ! じゃなかった、上げようか!」
『鬼灯くん鬼灯くん! まだ動揺が激しいわね!?』
 故に鬼灯の号令と共に始まる。
 伝説のクソ迷惑スライム――『対忍々』攻略作戦がッ!


 厄介な『対忍々』であるが、とにもかくにも物品の奪還をせねばならない。
 行人が奪われたモノはイクスパイという先端が尖っている枝を削って作られた装飾品。大体30センチぐらいの大きさだろうか……遠目からは木片にも見え、目立つ事だろう。
「やっ、ぁ……、んっ! ひゃっこいわね……! ちょっと、あっ……どこ、触ってんのよ……!」
 それを手に取るべくアリスはスライムの中で手を伸ばす。服など元より薄着よ!
 しかし薄着であるからだろうか対忍々の優先度はアリスよりも。
「わあああ服が、服が急速に溶かされてるっ! やばい、やばいよ早く見つけないと!」
 着込みまくっているリウィルディアの方が滅茶苦茶早かった。重ねて着た服が『囮』の役目を担っているのだろう――スライムからすればステーキの塊が飛び込んできたに等しく溶かされるのが早い。
 しかも飛びこむまでは簡単だったが身動きがとり辛く脱出は困難そうで……ああまずい! もうあと数枚になり始めた!
「オラァ! この変態スライム、こっちよ! こっち見なさ――い!!」
 であればゼファーが声を張り飛ばしてスライムの注意を引かんとする。
 リウィルディアはピンチだし薄着なアリスも危うい。こんな時に壁役として動かずどうするというのだ! いや正直こんなに敵を引き寄せたくないと思う戦いは初めてなのだが――ぎゃああああ来たあああ!!
「くっそぉ! そうはさせるかぁ、弱りなよスライム君!!」
 そこへルフナの攻撃が放たれる。必ず当たる力を秘めた術式は展開後、即座に魔の光を奴へと。超高速の一撃はあの軟体生物を過たず穿――
「えっ」
 たない。直撃地点の身体に『穴』を開け、強引回避。
 目の錯覚だったかな――もう一度撃ってみよう。
 回避。いえーいとスライム君ガッツポーズ。喜びの舞でアッピール。
「ちょ、揺れて廻る切ない気持ちは今はノーセンキューなんだけどぉ!!」
 連射しても当たらぬぇ! く、くそこうなったらとルフナは飛び退きおやどこへ……
「母上。ルフナ殿に続いて連射を――当たらずとも回避に専念させれば動きが鈍る故に」
「オッケー! 任せなよ!」
「あと隙を見て前へ。母上ならスライムに飲み込まれてもきっと需要に応えられるからいけるいける。これも『暦』の重大なる役目だと思って――ぬわぁ」
 蹴飛ばされる鬼灯。俺、統領なんですけど? 処す? 処す? え、むしろ処される? 母上の腰のスリットに手を入れたい層は結構いると思うんだけど、あッまた蹴られた。
 相も変わらず霜月の射撃も余裕で躱すスライムだが――先程鬼灯が述べたように回避しながら万全とはいかない様だ。蹴飛ばされた勢いのまま、跳躍。右手には握るは虚無の剣。
 刻む。至近からでは変質は間に合わず一方的にその身へ傷を。
 されば激おこスライム、鬼灯の腕の中の嫁殿に狙いを定め手を出さんと……
「何を狙うか嫁殿には指一本触れさせぬぞ! 例え母上の尊厳を生贄に捧げてでもッ!」
『鬼灯くん! 嬉しいけれど母上が物凄い眼で見てるわよ!?』
 しかしそれだけは許せない。例えこの身(あと母上)に代えても嫁殿だけには!
 至急離れるべく猛ダッシュ。追って来るが、そうはいくか。
「返せ……!
 ここまで皆を巻き込んだんだ、何の成果も得られないんじゃあ立つ瀬が無い!!」
 鬼灯と交差する形で防御の構えで庇う様に立ち塞がるは行人。
 旅をしているのが常であれば荷物は少なき方がよく。
 しかしその『少なき』中の一つであるのだ。
 置いて行けぬ。身軽に成れぬ。落としたままでは己に穴が開くのであれば。
「近づくのは良いけど、痛いぜ――気をつけてくれよ?」
 剣を振るって相対す。
 相手の影を踏むかのような動きは常に『読み』の連続だ。
 後の先を求める。スライムの拳を躱し、切っ先を捻じ込ませ――一閃。
「うひゃー……ネコとしてのカンなんだけどさぁ。アレには捕まっちゃいけない気がする、絶対に」
 同時。枝から枝へと跳躍し動向を伺っていたラズワルドはやはりスライムに不吉なる予感しかしていなかった。
「まぁ空は飛べないっぽいしこのまま」
 隙を伺えばいいかと下を覗いた、瞬間。
 ラズワルドの乗っていた木の幹に凄まじい衝撃が。スライムが転んで直撃したのだ。
 震える足場、思わず落ちてしまうラズワルド――の、至近には奴が!
「ヒッ……無理無理無理、やだもうホントに来ないでってばぁ! 僕の尻尾は食べてもおいしくないしぃ! 第一スライムのくせに服フェチとかさぁ……もう病気でしょ病気! 生まれ変わって出直してよねぇ!?」
 叩き込む牽制の一撃。病気じゃないよ紳士の趣味だよ!
 とばかりに手を伸ばしてくるが、捕まるかぁあああ!!
「うぅ、なんか変な感じがするよぉ……でもでも、ぱんつは穿いてるから大丈夫だよね……!」
 そして最初に取り込まれた逢華はメンバーの中でも特にやばかった。とにかく顔だけは呼吸可能なように外へと出しているが――首から下では衣類が溶けている感覚がずっとしているのだ。
 まぁこんな事もあろうかと秋奈のぱんつを着用してきているのできっと服は溶けてもぱんつは無事だろう――いややっぱダメでしょ! ぱんつだけ無事でもPPP倫に抵触しそう!
 ほんのり涙目。声も微かに震えているかの様な印象が儚き花を連想させ……おっと?
「……って、ん? 今何か当たったような……?」
 右の指先に感じたのは異物。
 軟体生物の中にあった、確かな物質的感覚。
 彼らが取り戻すべきモノが――確かにそこにあったのだ。


「っ、ぉぉおお! 私が無策で突撃したなんて思わない事ね!」
 であればとゼファーが腕に力を。防御を転じて攻勢と成すのだ。
 常は防ぐための技術。しかし使いようによっては膂力の一端となり、スライムの身へ衝撃を。さすれば流石に痛みを感じたのか、全身を震わせるように踊っていて様子がおかしい。
 直後、行うは『食事』の高速化。退治の危険よりも食欲を求める強欲っぷり!
「ふふ。其のぱんつに本当に手を掛けて、良いのかしら?」
 しかしアリスは不敵に笑った。その理由は――ぱんつにある。
 アリスは戦いが始まる前『穿き替えて』いたのだ。何に? それは見れば分かるだろう。
 そう――光り輝くそのぱんつを!
「刮目しなさい! これが伝説のシャイニングぱんつ! ゲ ー ミ ン グ 股 間 よ !! さぁ恐れおののきなさい! この輝き直視できるかしら――!!」
 光り輝く最後の防壁。いやただ光るだけではない! その輝きはまるで虹の如く――
 こ、これは1680万色! あのゲーミングの輝き! うわ眩しッ!!
 はっは、愉快愉快とばかりに高笑う。こんな恐ろし、もとい崇高な輝きを食べる事など出来ようか否! PPP倫理的にもこれ以上はアウトである――でも他の所は知らんけど。
「あああもうええい!! 本当に気持ち悪いなコイツは!!」
 とうとう最後の一枚までやられようとしていたリウィルディア。その前にとギリギリに脱出――予め腰に縄を括っていた甲斐があったか。霜月に引っ張ってもらい、強引に抜け出す。その縄もちょっと溶かされてたけど。
「うぇぇべたべたするね……もう許さないよ!」
 距離を離しては余裕面で回避される。故に、嫌だが接近。
 ネバつく液体を払いながら紡ぐのは黒き立方体。あらゆる苦痛をあの軟体へと。砕けて滅びろぉおお!
 如何に回避能力が高かろうが皆で攻撃を重ね、避ける方向を制限すれば躱しきれなくなるはずだ。実際、対忍々は追い詰められつつあった――抵抗のぺしぺしを繰り出してくるのだが、それでも。
「臆する訳にはいかないよ……! とうの昔に、覚悟は決めてから来たんだ!」
 行人の刃がスライムの猛攻を阻むのだ。
 服は溶けるに不快感はあり、されど羞恥心はなく振舞う。
 女性陣の肌の情報など自らの剣の切っ先に集中する事でカットするのだ――
「くっ、しかしこのスライム……強い! ええい決定的な一撃を撃ち込めぬとは!」
 布繊維万歳。そんな邪な気迫を鬼灯は感じ、再度毒蛇の顕現を。今度は叩き落とされない――確かに噛みつき、その毒を奴へと。
 されど致命には決して至らせない。なにかあと一つ、押しきれれば――ッ!

「統領さま、奥さま! ルフナさん達から合図が……!」

 と、その時。発された声は逢華からか。
 それは合図――いやちょっと待って。え、マジで? マジであれをやったの?
 しかしもはや迷っている暇もなし。荒ぶるスライムは激しく轟きぺしぺしぺしぺし。
 このままではリウィルディアの支援も間に合わなくなる可能性が無きにしも非ず――止むを得まい。
 駆ける。これが最後の逃走とばかりに。
 追うスライム。溶かす衣類。逃がすか繊維の塊、キェエエエ!!
 跳躍。されば、そこには。
「掛かったね……!! さぁ落ちてこい――盛大に掘った温泉が待ち構えてるよ!!」
 ラズワルドが丹精込めて掘り進めた温泉が湧いて出ていた――

 なんて?

「温 泉 を 掘 っ た よ ッ ! いややれば出来るものだよね!!
 大自然の恵みと奇跡に感謝だよ!!」
 過去形であった。言うはルフナ。掘り進めたのはルフナとラズワルド。
 幻想種の心得を胸に自然達との会話を経て大まかな地下水脈の位置を特定。周りが自然溢れる山中であったのと、彼自身の幸運が働き見事直撃。ラズワルドのドリルが如き暴風撃も加わればなぁに温泉の一つや二つ!
 勢い付けたスライムは今更止まれない。落下、着水、大衝撃。
 ――事ここに至って軟体……素早く体を変形させられる特性が裏目に。
 それは体の大部分が水分である事の証左。水に落とせば『混ざる』のである。
 体型を保てない――体の特性は失われ、維持に精一杯で――
『――!!』
 否! このまま朽ちてなるものか!
 例え滅びが目前に在ろうと矜持は失わぬ――お洋服食べさせてえええええ!
 襲い掛かる最後の手。温泉に布陣したメンバーを次々と襲い……しかし。
「あ、あら……? ハッ! そ、そうかこいつッ! 革製品は元々は動物の身体の一部! だから革製品は食わないんだわ! つまりどれだけ食べられようと――最悪でも私のブーツは無事に残る! 間一髪!!」
 ゼファーだ。常に最前線にあった彼女の衣類は、おおもう……
 しかし何を恥じる事があろうか。大事なブーツは残っている。
 つまりセ――いやどう見てもアウトですね本当にありがとうございます!
 色々と晒しているゼファーだが幸か不幸か恥ずかしがり屋さんではない。いややっぱ羞恥心は少しはもった方がいいんじゃないかと思うんですが。
「っしゃオラ! ついに取り戻したわよ――さぁこれでしょ目的の品は!」
 アリスの軀もちょっと公序良俗に従って表現できません。いやん。
 しかし放られたソレは確かに行人の手元へ。大人の男として決して目は向こうに向けぬまま。
「ああ、確かにこれだ……まぁ、昔。俺に届けられたモノでね」
 イクスパイ。近くで見れば蔦草と狼のような装飾、裏の先端には矢のように見える文様があり、中程には雷の様な模様まで彫られているか――まじまじと眺めてみれば美しい一品である。
 どうしても渡せなかったモノ。それがもう一度この手に……
 確認したルフナは今度こそ術式を練り上げ。
「今度は当たるよね。それじゃ――バイバイ!」
 対忍々へと直撃させた。
 直後、破裂する。回避能力を失われた対忍々は成す術なく四散。
 雄叫びの様な吠え声をあげた後――紡がれるは静寂と平穏。
「ああ……やっと……やっと倒せた……」
「うむ、行人殿も形見を無事に取り返せたようで何よりだ……あと母上もよく頑張ったな、次の給料は特別手当を……あ、痛いですやめて銃床で殴らないで痛い。何の恨みが、うわっ」
 さればリウィルディアは深い、深ーい吐息を一つ。
 鬼灯は行人の表情に安堵し、背後から霜月にやたらと殴られていた。どうして。
「終わった――なら、温泉入りたいね!
 服も溶けちゃったし替えは……霜月ママお兄ちゃん持ってない? 久々に一緒に入ろ?」
「だから母上でもママでもありません」
 鬼灯と異なり軽く、霜月は上目遣いを行う逢華を叩いて。
 自然と甘えるような仕草を彼女は醸し出すが――男湯と女湯で別れるべきだろうと。
「お風呂は嫌いなんだけどさぁ……背に腹は変えられないっていうか早くさっぱりして忘れちゃいたいっていうか、もうめんどーだから誰か背中流してー……」
 湯に沈んでいくラズワルド。後で報酬上乗せ請求をせねばと呟いて。
 ――しかし大自然の中に出来た即席の温泉にしては悪くない。
 絶景も見える実に心地よき空間だ――
「とりあえずさ、温泉気持ちいからいいとして」
「うん――そうね」
 天を眺めるゼファーにアリス。
 いやはや思いがけぬ気持ちの良い露天風呂に入れ愉快愉快――はっはっは。
 天を眺め笑顔一つ。
 うん。

「誰か……着る物貸してくんない?」

 だいさんじ。
 それでもおそらはとってもきれいでした。まる。

成否

成功

MVP

錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ!!

 まさかの温泉。
 でもこんなスライムが出てくる事に比べれば温泉ぐらいまぁ湧きますよね!
 帰りの洋服は行人さんが持ってきてくれてたようです。大丈夫、尊厳は護られる……!

 ちなみに対忍々と言うのは個体名ではなく種族名だったりします。

 では、ありがとうございました!!

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