PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<若葉>家族を失いたくない

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 剣と魔法。それから怪物。文字を知る者は少なく、学校もない。農民は農民らしく、貴族は貴族らしく、それぞれがそれぞれの役割に縛られながら、けれど時々革命が起きる。そんなありきたりな世界。ありきたりな物語。

「オネット、あきらめなさい」
「嫌だ! お母さんが死ぬなんて、そんなの認めない!」
「怪物に呪いをかけられたんだ。ここいらじゃ回復魔法を使える人間もいなければ、うちには術師を雇うお金もない。……あきらめるしかないんだよ」
「嫌だ! 嫌だ! 嫌だ!」

 父親は悲痛そうな顔を浮かべて、オネットと呼ばれた少年を見つめた。家の手伝いを覚えてずいぶん経ったが、この子はまだ幼い。まだ冬を8度しか越していないのだ。『死』というものを受け入れるだけの心が育っていない。

 だから、油断していた。
 子供だからと侮っていた。

 翌朝、父親が朝告げ鳥の声で目覚めた時には、すでにからっぽになったベットと、去年誕生日に買ってやったそこそこの大きさのリュックサックが持ち出されていていたのだった。

「ああ……オネット。そんな」

 文字を読めず、書けない農民である彼らが起き手紙なんてものを知るわけもなく。けれど父親は呪いによって病気にかかった母親の面倒を見るために家から離れるわけにもいかず。

 いなくなったしまった息子がどうか帰ってくるようにと、神に祈るしかなかった。



 どすん、という音と共に木立に留まっていた小鳥がバサバサと音を立てて羽ばたいた。音の正体はオネットで、つい先ほど、足元にあった小石に気が付かず、不注意で転んだのだ。じんわりと広がる膝の痛みに、泣き出しそうになった。彼は怪我をしてしまったのである。

「父さんのばか。……ばか」

 鼻をすすりながら、少年は村の近くの森の中を進んでいた。昔、村長から聞いたことがあるのだ。ここには希少ではあるが、怪物を追い払うことのできる奇跡の花が咲くのだと。怪物を追い払えるのなら、怪物がかけた呪いにも何か効果があるかもしれない。

 母親が死ぬのを黙ってみているよりかはずっといい、少年は革靴のひもを結び直して、大きな木の根っこを登り始めた。



(生まれたばかりの幻想の世界〈グリーニー〉へようこそ)

 クルル、とのどを鳴らして笑うのは『夜明けの境界案内竜』アイリス・エバー・アフターである。少し見ない間に、すっかり人間の言葉を覚えたのか、思念を使うことよって、イレギュラーズの脳内に直接呼びかけた。

(ごめんね、竜の声帯ではまだ、上手に喋れないから。変な感じがするかもしれないけど、最後まで聞いてくれたらうれしいな)

 かの〈境界案内竜〉曰く。この世界で怪物が現れ始めたのはごくごく最近の事らしい。故に、それの対策が全くできていない段階のファンタジー世界なのである。ギルドどころか、冒険者なんてもってのほか。襲われた時に初めて、誰かが対処する程度の法整備。すべてが後手後手に回り、なんの機能も果たさない。

 それがこの世界〈グリーニー〉なのだ。そしてこの世界の何よりもの特徴。それは『この世界にイレギュラーズが関わった・訪れた回数だけ、あらゆる登場人物はレベルアップをする』のだ。これはイレギュラーズも例外ではなかった。

(つまりね、君たちの世界ですっごく強くても、この世界だとすべて1から始まるんだ。……あ、〈旅人〉の君は良く知ってるって顔だね。そうそう。そんな感じだよ。ただ違うのは、この世界は物語ごとにレベルがリセットされる)

 まずは少年を探すのが先決だろう。気を付けてね、と〈境界案内竜〉は目を細めた。

NMコメント

「ローグライクゲームにありがちな『冒険に挑戦する旅にレベルリセット』をシナリオで行ったらどうなるのか」という世界がこの〈グリーニー〉になります。イレギュラーズとしてのレベルが30でも『家族を失いたくない』のシナリオ中はレベル1の扱いになります。とはいえ、習得しているスキルは威力が下がる者のきちんと機能いたしますのであしからず。

  • <若葉>家族を失いたくない完了
  • NM名蛇穴 典雅
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月25日 17時50分
  • 章数2章
  • 総採用数8人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

 魔物の足跡は簡単に見つかった。見たところ、大きな肉食獣のようだ。居場所を突き止めるのは簡単だろう。だが、どのような生態系なのかまではわからない。
 イレギュラーズはいきなり戦いを挑むか、それとも調査してから赴くかを真剣に話し合うことにした。


第2章 第2節

 オネットは思考する。このまま村に帰っても、できることは何一つない。それならば、とオネットは顔を上げた。女に、手伝いを志願した。

「父さんの手伝いをしてたから、ちょっとしたことならできるよ。薬は使ったことないから、調合自体は無理かもしれないけど、すりつぶしたりとかなら、できる。できるかぎり、なんでもするから……おねがい」

 オネットの言葉に、やれやれと女は肩を竦めた後、その言葉に頷いた。

 イレギュラーズが魔物討伐へ向けて出発をしたのはその後の話になる。

PAGETOPPAGEBOTTOM