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シナリオ詳細

ニセモノアクターズ
ニセモノアクターズ

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いと誉れ高き贋作劇団
「やあ、この前のサーカスはすごかったよなあ。俺なんか感動しちゃったよ」
「世の中物騒だけど、ああいう楽しみもなくっちゃいけねえやな」
 街のどこかで農夫たちが煙草をふかしている。
 麦わら帽子をすこしあげて、首に書けたタオルで額をぬぐう。
「楽しみといやぁ、贋作劇団はどうしてるんだい。次の公演が楽しみでさぁ」
「わかるぜ。実在の人物そっくりに仮装して演じるんだ。完成度はそれほどでもねえけど、なんか感じるものがあるんだよなあ」
 ぼんやりと顔を上げれば、白い雲と青い空。
 広い麦畑と遠い貴族のお屋敷という風景だ。
「そうだ、団員の一人に知り合いがいるんだ。今度呑みに誘われててさ、公演のスケジュールを聞いて置いてやるよ」
「ほんとかい? 頼むよ、絶対だからな!」

 ――三日後。

「…………」
「なあ、聞いてくれたか?」
「……え」
「スケジュールだよ。公演のさ」
「……ああ」
「それで、いつなんだ? チケットもとれるなら頼むよ。前払いにするからさ。いくらいる?」
「……ああ、ああ」
 麦わら帽子にタオルの農夫は、どこまでも無表情だった。
 首を90度近く回して振り向くと、まったく光の無い目でこう言った。
「公演は、今からだ。チケット代は――お前の命でいい」
 農夫が、相手の顔面を鷲づかみにした。
 手から魔力があふれ出し、顔を焼いていく。
 もがく相手を組み伏せ、地面に押しつけるようにして、農夫は……否、マスクのはがれたのっぺりとした顔の何者かは、軋むように笑った。
「キ、キキキ……俺たちはちがう。俺たちはちがう。ニセモノなんかじゃない。
 奪ってやる。奪ってやる。ホンモノを、奪ってやる!
 キキキキキ、キキキキキキキキキ……!」

●いと醜き贋作劇団
 『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ (p3n000002)はきわめて難しい顔をしていた。
 ここはギルド・ローレットの近くにある酒場。その個室である。
 テーブルには11のカップ。
 レオンと、そしてイレギュラーズたちの分だ。
「わかった。はやり、『こいつら』はお前たちじゃあないんだな?」
 レオンの手元にあるのは数枚の資料と10枚の人相書きである。
 ある王都貴族から『イレギュラーズらしき人物が悪事を働いているように思う』という非常に曖昧な話が寄せられたのだ。貴族本人も半信半疑であるようで、イレギュラーズ当人にどこか似ているが決定的に似ていない、そんなニセモノが子供を浚って殺したり麦畑を燃やしたりと陰湿かつ凶悪な犯罪をおこしているのだ。
「情報屋を通じてハッキリしたんだが、こいつらは『贋作劇団』という集団らしい。
 元々幻想やラサを行き来して演劇を見せるキャラバンだったらしいんだが、
 どういうわけか誰かのニセモノになって悪質な犯罪を起こすようになったようだ」
 部屋に入ってきた『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)が資料をつまみ上げた。
「今回の標的はローレットのイレギュラーズ。
 ぱっと見てニセモノと分かるような仮装をして暴れているそうよ。
 被害を受けた貴族はこれの総員抹殺を依頼してきたの。
 ちょっとドキッとしたけど、本当にあなたたちじゃなくてよかったわ」
 まあ貴族とてギルド条約に抵触するようなことはしないので、偽物とわかった上での抹殺依頼なのだが。
「アジトも突き止めてある。やり方も任せるわ。
 オーダーは『総員抹殺』。いいわね?」
 追加の資料をテーブルに滑らせて、プルーは目を細めた。
「どうしたって報われない。悲しい存在だわ」

GMコメント

 いらっしゃいませ、イレギュラーズの皆様。
 こちらはイレギュラーズの偽物たちを抹殺するシナリオ。
 純粋な戦闘能力。場合によっては立地を活かすテクニックがあれば有利に立ち回ることができるでしょう。

【オーダー】
『贋作劇団10名の総員抹殺』
最終的に死んでいればいいので、その手順や方法は任されています。

【贋作劇団】
10名で構成された劇団員です。
(ややメタな話になりますが)本依頼に参加したメンバーたちに仮装しています。
能力や特殊体系までまねできるものではありませんし、少し見たら偽物だと分かるくらいに差があります。
戦闘スキルも『近術、遠術、魔弾、格闘、射撃』の中から2~3を取得している程度です。
クラスは全員『役者』。非戦スキルは演技とポーカーフェイス固定。

【アジト】
古い劇場です。持ち主は殺害され、贋作劇団が居着いています。
観客席とステージを含めればそれなりの広さがありますが、位置によってはR4の攻撃がちょっと使いづらくなるでしょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • ニセモノアクターズ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月13日 21時05分
  • 参加人数 10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

那木口・葵(p3p000514)
布合わせ
主人=公(p3p000578)
ハム子
暁蕾(p3p000647)
超弩級お節介
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ジェイク・太刀川(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
シャルロッタ・ブレンドレル(p3p002596)
ジェリクル
レスト・リゾート(p3p003959)
遠足ガイドさん
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
ゲーム上手
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
煌きのハイドランジア

リプレイ

●ニセモノとホンモノ
 『布合わせ』那木口・葵(p3p000514)はぬいぐるみをぎゅっとした。
「よく見れば偽物と分かるとはいえ、噂には尾ひれが付くもの。噂が広まったらお店の客足が、売上が、明日のご飯が! ……これは何としても止めなくてはいけませんね」
 同意を求めるように振り返ると、『ジェリクル』シャルロッタ・ブレンドレル(p3p002596)が然様にと頷いた。
「事情や目的はさっぱりだけど、うちになりすまして悪事を働くとは許しがたし! 成敗なのだ!」
 木の柱に背をあずけ、腕を組む『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)。
 不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「ああ、俺達の紛い物が好き勝手にやっているのが気に食わねえ。本物のショーを見せてやろうぜ」
 ニセモノ討つべし。
 三人の気持ちがまとまった所で、義手の簡易点検をしていた『カオスシーカー』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)が顔を上げた。
「俺は特に拘りもないが……主義でもない悪事をした事にされるのは気持ちよくはないな。しかし……」
 考えることはもうひとつ。
 顎に手を当て、ラルフは唸った。
「何故に、彼らは狂気に飲まれたのか」

 同じ話題はあちこちで交わされるもの。『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)は『ギルドへ行ったらレオンちゃんが怖い顔してるんだもの、びっくりしちゃったわ』と頬に手を当てていた。
 日傘を差してふわふわと浮かぶ彼女の影が、街路の木漏れ日にかかる。
「姿を偽って悪い事をするなんて、困った子達よね~。でも、おかしくなる前は人気のある集団だったらしいじゃない? 仮装が似ていなくても、それがいいって言ってくれたお客さんがたくさん居たみたいよね~」
 息をつく『演劇ユニット』Tricky・Stars(p3p004734)。
「まるで傀儡のようだ。裏で糸を引く者の正体を探ってみようか? まあ理由は何であれ罰を与えなくてはなるまい。俺という唯一にして無二の作品を穢した罪は重いぞ」
「うん、わかってる」
 結局はそこに戻るのだ。『特異運命座標』アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)はそんな風に顎を引いて、目を伏せた。
(誰かが止めないと、彼らは止まれないんだってわかる。それでもやっぱり苦しいよ、命の奪い合いなんて。でも、私もこのままじゃいられない。戦うんだ……)
「これ以上誰かが傷つかない為に。悲劇を、悲しみを倒すんだ」

 劇場の端、壁の穴から出てきたネズミに礼を言って、『彷徨のナクシャトラ』暁蕾(p3p000647)は下ろしていた腰を上げた。
「情報屋から聞いたとおりね。人数と格好を確認できたわ」
 ファミリアーの能力を使って偵察した暁蕾が話すには、劇場の中は酷く汚れ10人の劇団員たちが自分たちをまねた仮装でじっとしているらしい。
 あまり高価では無いウィッグや衣装、似た色の小道具を用いてはいるが、味方と見間違えて殴ってしまうようなことはないレベルだった。
「念のためだ。あのマントを羽織っていくぞ」
 『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は葵の作ってくれたおそろいのマントを羽織った。間に合わせなので本来のマントとしての効果は今すぐ期待できないが、10人が10人同じローレットエンブレムのマントを装着する後ろ姿はなかなかに壮観だったことだろう。
「さて……行こうか」
 同じくマントを羽織った『異世界なう』主人=公(p3p000578)は、エクスマリアと共に裏口を目指して歩き出す。
 最初で最後のショーが、始まるのだ。

●幕は突然に上がる
 蹴りによって開く扉。さす逆光。
 突然の侵入者に立ち上がる贋作劇団の団員たちは目を細めたが、ある一人だけは目を見開いた。
「見つけた、ホンモノだ」
 Tricky Stars虚サイドが笑うように座席群を飛び越えると、飛びかかる偽物を素早く蹴り倒した。
 座席脇のひとつに転がるニセモノ。踏みつけたTricky Starsは稔にチェンジすると、より派手に笑った、
「よく見ておけ、出演者に混じってステージに立つなど許さんぞ」
 顔半分を布で覆った女性が立ち上がり、術を放つ。
 割り込んだ暁蕾が術を振り払い、反撃の魔力放出を繰り出した。
「貴方達の芸は何のために? 人々を笑わせ、喜ばせる為でしょう? 狂気に踊らされ、恐怖と悲しみをばら撒くためではないでしょう?」
 そんなことを、あえて始めに言ってから、暁蕾は魔弾を連射してくるニセモノの攻撃を舞うように飛びかわした。
 はずれた衝撃が背後の椅子を打ち抜き、反撃にと繰り出した暁蕾の魔力放出が身を屈めてかわすニセモノの頭上を抜け壁際のライトを粉砕した。
 眼鏡をかけたサルベットジーンズの女がステージ側まで下がっていく。
「二人だけですか?」
「私たちもいますよ!」
 一拍遅れる形で飛び込む葵たち。
 葵の放ったマジックロープがニセモノの腕に巻き付くが、それを引きちぎって術を飛ばしてくる。
 対する葵は観客席の間を走り抜けて術をよけると、走りながら衝撃の青を打ち込んだ。直撃を受けたニセモノが吹き飛び、ステージの背景スクリーンとその裏側にある鉄骨へと激突した。
 その隙に跳躍し、飛行状態へとシフトするアリス。
 魔法のきらめきで尾を引きながら、客席の背もたれを器用に飛び渡って突っ込んでくるニセモノを視界にとらえた。
 とらえたと同時にマギシュート。
 相手は跳躍から魔術の射撃を放ち、互いの術がうねるように交差。空中の二人に命中。衝撃で二人とも客席の間へと転落した。
 背もたれを遮蔽物にして平行移動し、通路側へと飛び出すアリス。
 相手も同じ狙いだったようで、飛び出した瞬間に再び魔術が交差した。
 そのまま通路を抜けた先の座席の隙間へ飛び込み、一旦回避。
 頭を腕手だけを出して出して流し打ちを始める。
「さてと、始まったな」
 ラルフは座席の背もたれに身を隠しながら義手を操作すると、大砲に変形させて。座席の上へと身体を出した。
 同じく腕に仕込んだ銃を突き出すニセモノ。ラルフは口の端だけで笑った。
「私が本物である証明はこれさ」
 メギドイレイザーが座席の上の空間を抜けていく。
 ニセモノはギリギリのところで身をかわし、大きくぶれた腕で銃撃を放ってきた。
 弾がラルフの頬ギリギリのところを抜けて壁にめり込む。
「研鑽し演じる、それはただの我々の模倣ではなく君達だけの『本物』だ。話を聞いた時は正直不快だったが、見事なパフォーマンスだ」
「それでは駄目だ。俺たちは本物にならなければならない。君からホンモノを奪い、手に入れる」
 ラルフの仮装をするために腕まで犠牲にしたというのだろうか。ニセモノは肘の仕掛けを折って空薬莢を排出すると次弾を装填した。
「それが、こんな事をしでかした理由かね?」
「それ以外になにが要る」
 そこからは銃撃戦だ。
 アリスや葵の魔術が、そのニセモノたちの魔術がそれぞれ飛び交い、座席やステージの道具類を破壊していく。
 追い詰めるべく。もしくは追い出すべく。ニセモノたちは客席側へと下り、座席を遮蔽物にして戦い始める。
 Tricky Starsが頷いた所で、暁蕾は『裏側』へと呼びかけた。
「今よ!」
 ステージへと飛び降りる影、影、影。
 公は装備したレイピアを振り、独り言のように述べた。
「自分が本物かどうかなんて他人には証明できないんだよね。なにせ異世界の自分がどうだったのかなんて本人にしか判別できない。だからここは戦いをもって証明しようか……『ニセモノ』を倒して『ホンモノ』の証を立てられるのは果たしてどちらなのか、運命を改革する力を比べようじゃないか!」
「……!」
 剣を繰り出すニセモノ。瞬時に鍔迫り合いにまで持って行った公に、ニセモノは歯ぎしりするほどの顔を寄せた。
「舞台の才能があるじゃないか」
 横から切りかかるシャルロッタ。
「一人たりとも逃がさんぞ覚悟するのだ!」
「覚悟するのはうぬのほうなのだ!」
 左右逆に眼帯をつけたニセモノが割り込み、剣を繰り出してくる。
 黄金の剣がぶつかり合い、派手に火花を散らした。
 止まらず連続の突きを繰り出すシャルロッタ。
 息も止まるような剣先の攻防が二人の間で爆発していく。
 一瞬一瞬の読み合いだ。
 必死なのも当然だろう。裏側をとられたニセモノたちは地形的に不利な状態にあったのだ。
 入り口側から入ってきた敵に対応すべく、客席を盾にして銃撃戦に持ち込んだニセモノたちだが、その状態でステージをとられれば状況は一方的。客席の間で屈んでいては身動きが取りづらく、ステージからは丸見えだ。
 このままステージを占拠されると、効果的な挟み撃ちが成立してしまうのだ。
 傘を畳み、ステージ脇からちらりと顔を覗かせるレスト。
 その瞬間にステージに出すまいとニセモノからの魔弾が放たれる。
 思わず引っ込めた鼻先を抜けていく魔弾。
「あらあら~」
 レストはリキャストタイムをつくようにして日傘を振り、ニセモノたちへと魔弾を打ち込んでいく。
 思わず飛び退こうとしたニセモノが座席にぶつかって転倒。そのまま座席のもう一列後ろへと転がっていった。
「いたた……転んじゃったわ。とっても悪いけど、おばさんにホンモノをちょうだいね~。ニセモノじゃなくなれば、きっとだれもばかにしないと思うの。ね?」
「悪いが、そういうわけにはいかねえな」
 銃を持ってステージそでから飛び出してくるジェイク。
 同じく銃を持って飛び出すニセモノに、ジェイクは多段牽制を打ち込んだ。
 横向きに転がってかわすニセモノ。追うように横走りしながらジェイクは銃撃を続けていく。
 対するニセモノも走りながら銃撃をしかけ、二人は咄嗟のタイミングで飛び込みロールをかけた。
 ジェイクの頭上を銃弾が抜けていく。
 ステージ上のゴンドラを無視し、髪の毛の伸縮をつかって飛び降りてくるエクスマリア。
 しっかりと着地をすると髪を砲塔のように整形してエーテルガトリングを乱射した。
 同じようなウィッグをつけたニセモノが魔術を放つが、意にも介さず更に乱射。反撃するニセモノに直撃し、座席の下に転がった。
「偽物が起こした騒ぎに興味は無いが……これでも女の端くれだ。醜い出来損ないの姿でマリアを騙る無礼は捨て置けん」
 まるで無数の砲身がついた銃座のように髪を動かすと、エクスマリアは砲身を冷却させはじめた。

●幕は気づかぬうちに下りる
 戦いが始まってからどれだけ経ったろうか。
「それをよこせ。私が……マリアがホンモノになる」
 ステージ上へと飛び出してきたニセモノに、エクスマリアは飛び退くように距離をとった。
 髪の毛に偽装した棍棒が空をきり、ステージの床板にめりこんだ。
「……」
 目が動く。それだけだ。
 飛び退く姿勢のまま、エクスマリアの髪の毛が渦巻くように編み上がり、巨大な鋼の拳へと整形された。
 魔力をともなった強烈なパンチが、ニセモノへと叩き込まれる。そして床板ごとを盛大に破壊した。
 終盤は激しい撃ち合いとなった。
 Tricky Starsの連続して放つマジックフラワーと、偽物の放つ魔術。
 その二つが交差し、より激しい火花となって散っていく。
「虚構の世界で架空の物語を繰り広げる。確かに、演劇の全ては偽物だ。しかし、ステージに立ち、役を演じる君達は違う。こんな真似しなくたって本物になれたんだ」
 火花の中で、眼鏡ごしに目を細めるニセモノ。
 Tricky Starsは強くナイフを振り込んだ。
「思い出せ。言葉も、感情も、あの瞬間は全て己のものだっただろう?」
「だとしても――」
 ナイフが術の防御を破り、ニセモノの胸へと滑り込む。
 ニセモノの顔が激しく歪むのを、至近距離で見た。
「この渇望を、とめられない」
 術の爆発がおきる。

 傷ついた仲間を担ぎ、ステージの端へと引っ張り込む公とレスト。
「痛いのないないしましょうね~」
 レストは痛みのきえるおまじないを唱えながら、相手の傷口に手を翳していく。
 同じく回復魔法を唱えながら手を翳す公だが、敵の気配にはっと振り返る。
 傷だらけのニセモノが、公の前に立っていた。
「キミじゃなきゃダメなんだ。キミからホンモノを奪わなきゃ、ボクはいつまでもニセモノのままだ!」
「そんなこと……!」
 咄嗟に翳した剣で受ける。
 急いで怪我した仲間を引っ張って離れるレストを目の端で確認すると、公はマントを巻き付けるようにして相手の腕をとった。
「なら、ホンモノはあげられないな」
 ニセモノの腹を、剣が貫いていく。

 挟み撃ちを完成させるかさせないか。そのギリギリの所で競り合った10人対10人。
 その勝負は激しくもつれ、倒しては倒され、阻まれては阻みという攻防を繰り返していた。
 しかしそれとて、いつまでも続くものではない。
「そのホンモノを頂戴。私がホンモノになる。そのために、必要なんだ……!」
 魔術の衝撃が走り、アリスは激しく吹きとばされた。
 魔法の杖を振りかざし、飛びかかってくるニセモノ。
「貴方は、私じゃない」
 呟き、翳した手からは、魔術が放たれた。
 接触の直前。空中で直撃をくらったニセモノは、激しく回転しながら観客席の階段通路を転げ落ちていく。
「本当に本物になりたいのなら、貴方は貴方自身になるべきだったんだ」
 一方で葵がニセモノと撃ち合いになっていた。
「ここで逃げ出すようではニセモノと呼ばれても仕方ないでしょう!」
「逃げませんよ! ホンモノなら! ……あっ、けどホンモノでも逃げることもあるかもですね!」
「そうですね!?」
 思わず同意しつつ、けれど手をゆるめはしない。
 葵は座席を盾にしながら術を打ち込もうと腕を出し、その腕に魔術の直撃を食らって押し倒された。
 その隙に距離を詰めようと駆け寄ってくるニセモノ。
 が、座席の間に身を隠していた暁蕾の不意打ちぎみの魔力放出によって派手に吹き飛び、座席にぶつかって転がった。
 急いで起き上がり、レッドニードルを叩き込む葵。
 ニセモノが起き上がらなくなったのを確認して、暁蕾は小さく息をついた。
 ふと見れば、そばに自分のニセモノが息絶えた状態で倒れている。見れば見るほど似ていないが……。
(彼らも他の事件と同じ様に狂気に支配された犠牲者。正気に戻せれば原因解明や罪の申し開きも出来たかも……)
 これが終わったら原因の究明と解決に乗りだそう。暁蕾はそう胸に誓った。

 銃を乱射しながら突っ込んでくるニセモノ。
 シャルロッタとジェイクは銃撃を真っ向から受けるようにして突っ込んでいく。
「本物のガンファイトってやつを見せてやる」
 ジェイクは相手の足下に銃を撃ち込むと、わずかにひるんだ相手の先手をとって横を駆け抜けていった。振り向きざまに背中へ銃撃をしかける。
「俺達のショーの代金は手前らの命だ。悪いが全員死んでもらうぜ」
「我が黄金剣の錆にしてやるのだよ!」
 同じく横を抜けたシャルロッタの狙いは自分のニセモノだ。
 咄嗟に黄金剣を翳すが、シャルロッタの斬撃を受けて表面塗装がはげていった。
 鋭く打ち込み続け、剣をへし折る。
 とどめにと繰り出した上段斬りを飛びかわし、ニセモノが手を翳す。
 だがコンマ五秒遅い。
 シャルロッタは先に手を翳し、魔弾を発射していた。
 頭を打ち抜く魔弾。

 あちこちにニセモノが倒れる中、ラルフは倒れたニセモノの襟首を掴み上げた。
「もう一度聞く。こんな事をしでかした理由は何だね」
 周囲にはけが人だらけだ。倒れた仲間も結構な割合だ。
 けれど決定的な違いとして、ニセモノたちは死に、ホンモノたちは生きていた。
 銀色のリボルバー拳銃を持ち上げるニセモノ。
 ラルフは咄嗟に相手の額に自分の銃を突きつけたが、引き金はひかなかった。
 なぜなら、相手の銃口はあいてのこめかみに突きつけられていたからだ。
「さあ、引くがいい。引いた方がホンモノだ」
 ラルフは首を振り、引き金を引いた。
 銃声。
 落ちた拳銃。
 拾い上げてみれば、弾は残っていなかった。
「……そういう運命だとでも。いや」
 きっと彼は、弾が入っていてもいなくても、引き金を引けなかっただろう。ラルフは確信をもってそう言えた。
「引いた方が、ホンモノか」
 振り向けば、葵や暁蕾たちがいた。
 ニセモノはもういない。
 劇団の幕は、閉じたのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――congratulation!

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