PandoraPartyProject

シナリオ詳細

鬼が不在の隠れんぼ。

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 やっぱり、昨日ゴミ出しサボったのが悪かったかな。それとも、先週の晩ごはん好き嫌いしたからかな。
ぼんやりとそんな事を考えながら、少女は町並みを小走りに進む。顔は真っ青を通り越して真っ白で、そわそわと手をせわしなく動かしている。
何処にも、何処でも。声を上げても、少女を認識するものは居ない。いつもの町並みであるはずなのに何処か異国のように見えて、焦燥感は募っていく。それは今朝からのこと。朝の挨拶をしたのに母は知らんぷりで。どこか機嫌を悪くしたのだろうか、とそのまま出かけてきてしまったのがいけなかった。
私は此処に居るのに、なんで? なんで? 誰か気づいてよ、誰か答えてよ。
踏切を超えて、横断歩道で轢かれそうになって、思わず涙が溢れた。頭に一つ、答えが過る。
──神隠し。
人が忽然と消えてなくなってしまう。そんな話だ。こそこそと囁かれているただの噂に過ぎないが、それでも今の少女には皆が自分を誂おうとしているだけなんてそんな妄想よりは真実に見えた。

しかし、原因が何者でもなく、ただの超常現象だということは……。少女の心を砕くには十分だろう。
人も通らない路地裏で、くったりとしゃがみ込む。ゆっくり、ゆっくりとこの世界から自分という存在が消えてしまうのを感じながら。


「……緊急事態だよ、みんな、力を貸してほしいの!」
深刻そうな表情のポルックス・ジェミニは開口一番そう言って、矢継ぎ早に話を続ける。

「あのね。前、皆を神社に案内した世界なんだけど……。神隠しが起こりそうらしいの」

 神隠し。一般的にこの世界でそう言われる事象はいわゆる理由も痕跡もなく人がフッと消える謎の現象で、実際は神が誰かを気に入り、自らの神域に誘い込んだだとか、天狗が自分の弟子にするために持っていったとか。そういう類で起きる現象である。

「不思議なこともあるんだなぁ、って思うけれど、この世界では普通みたい。今回は街のふもとにある神社の神様がね、女の子を気に入っちゃって。一人きりにさせたところを口説こうとしているみたいなの」

神様としてはただのアプローチのつもりでも、人間の少女としてはたまったものではない。

「見つからないことでどんどん存在感がなくなって、忘れられていってしまうみたいだから、取り敢えずは見つけてあげればいいみたい。でも、彼女はとっても『見えづらく』なってるみたい」

存在感や気配、嗅覚に敏い者ならば捜索も簡単になるかもしれないし、使い魔などあれば、純粋に捜索範囲が広がるだろうか。

「もう戻れなくなっちゃう前に女の子を探してあげて! 今は忘れちゃっているけれど、きっとあの子のこと、心配する人はいっぱい居るはずだから」

NMコメント

 はじめましての方ははじめまして、またお会いした方はお久しぶりです。
金華鉄仙と申します。
人探しの依頼です。

●世界観
 基本的には日本と同一ですが、一般の人々から隠れるように、怪異や妖怪といったものが住んでいる世界になります。語られることにより噂が真実になったり、忘れられることによって人が消えたり。そんなことが起こる世界です。
前作のライトノベル、『ゆめみるままに待ちいたり。』と同一世界ですが、関連性はほとんどありません。
今回の舞台は小さな町、『賀虹町』(がぐちょう)になります。
商店街が一つと大きな住宅街があり、治安は良好ですが家よりも後に道路ができた結果、行き止まりや分かれ道が多く、迷路のように入り組んでいます。基本的に家主しか通らない道や人通りのない裏道もあり、纏めて裏路地と呼ばれています。

●少女について
名前は桜。高校2年生。
初詣に街の神社に行った際に神に見初められ、気づかないうちにターゲッティングされていました。今回はその神気にあてられた影響で人界から存在が消えかけてしまっています。一般人には気配一つ感じることが出来ませんが、イレギュラーズは異世界人なのでその影響は薄く、なにもしてなくても目を凝らせば姿が見え、耳をすませば声が聞こえます。その出自が神だったりとか、巫女だったり妖怪だったりするようなら尚更見えやすいでしょう。
彼女は裏路地の何処かで蹲って泣いているようです。

●目的
少女を発見すること。
まだ引き寄せられかけているぐらいの状態なので、見つけることさえできれば無事、人の世界へ引き戻すことが出来ます。

●書いていただきたいこと
どのような手段で捜索を試みるか。または心情、有利になりそうなことはたくさん書いて頂けると拾いやすいです。
非戦やパッシブスキルなどを存分に使うもよし、野生の嗅覚などで突撃するも良し。足で手当たり次第に探したり、逆に神気がある場所を探してみたり。空から見てみるのもいいかもしれません。
いろんな発想が見れれば嬉しいです。

  • 鬼が不在の隠れんぼ。完了
  • NM名金華鉄仙
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月25日 22時11分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

メアトロ・ナルクラデ(p3p004858)
ふんわりおねーちゃん
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
アヤメ・フリージア(p3p008574)
死神小鬼

リプレイ


 「よぉし。これで全員かな……。いい。これを持って歩いてほしいの。別に歩く所はどこでもいいから、とにかくたくさんのところを回って欲しいわ」

 わんわんにゃーにゃーきゃんきゃんひひぃん。

「やってくれれば後でおやつ買ってあげるから! だからってあんまはしゃがないでよ、いいね!」

わん!

「よし。えらいぞーえらいぞ。私のために働いてね」

 『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベルは書き上げたフリップと、それらを持たせるために集めた動物たちとを眺め、そして宥めすかし、話をつけた。満足気に馬の背を撫で、軽く叩いて走らせる。
フリップには『人から認識されなくなった方は神社で待機してください』の文字。これらは彼女の策によるものだ。こちらから探しても見つけにくいのであれば、何処かに向かうよう誘導してしまえばいい。直接彼女が見つけてくれてもいいし、そうではなくてもこんなよくわからないものが街を徘徊していれば話題にもなる。耳には入るかもしれない。犬猫はともかく、馬やら猿は普通街へは出てこないものだし。
オカルトが存在しない世界に生きていた彼女だからこそ思いつく手段であったし、動物会話を身に着けている彼女だからこそ、実行できる手段であった。
それに付け加えメリーは魔法使いだ。魔法使いは賢く事を運ぶものである。神社側に対しても抜かりはなく、使い魔を派遣して監視に当たらせている。
普段の情報共有は出来ないけれど、たまに視界を見せてもらえばいいだろう。

「あと……は。私もそろそろ動こうかしら。」

仕上げ、とばかりに箒に跨る。ふわり、と身体が浮かび上がった。
前屈みになる姿勢を上向きに。軽い動きで宙へと舞い上がる。
しばらくすれば、其処まで大きくもない街だから全景が見えてくることだろう。
風で髪が靡き、巻き上げられる。
この瞬間だけは少しだけ気持ちいい、かもしれない。

「……あ、そうだ?」

そういえば、同僚が地図を使おうと言っていたような気もする。街を見下ろしていて思い当たることがあった。
特に考えては居なかったけれど……。これ、使えそうだわ。手元から取り出したのはスケッチブックとペン。

「んー。恩を売るのも悪くないわね。ちょっと時間はかかるけど、効率自体は上がるかも?」

この情報、共有するのも悪くない。

「……神隠し、ですか」

 『星の巫女』小金井・正純はその顔を少し、曇らせる。
正純はいわゆる巫女であり、神に仕える者。
確かに神は気まぐれで、そして奔放なものだ。恩恵を与える代わりに奪ったり、時に荒れ狂う暴風のごとく振り回されるのが只人の宿命と言えよう。
それはそれとして人の子の泣く声が聞こえてしまったのだ。であるならば、異教の徒ではありますが神に仕える者として、神に拐かされた少女を救ってみせようと、そういう意気込みであった。

手元には地図。これはメリーが上空から風景を模写し、正純の手に渡ってきたものだ。
そして彼女が今居るのは神社。眩しく、煌く神気が淀んでいる。

「ふむん、さすが怪異やらが今なお存在している世界。濃い神気ですねぇ」

正純は怖気づかず賽銭箱まで歩みを進める。硬貨を投下して、二礼二拍手一礼。

「……よし。大体覚えましたよ」

神様と言っても姿が千差万別なのと同じ様に、その気配もそれぞれに個性がある。此処の神はなんとなくまとわりつくような感じだ。不快ではないのだが、特徴的で覚えやすい。

「らしい、といいますか。……人をいきなり連れ去るのはよくないですよ?」

少し苦笑する。とはいえ一応此処に用は今はない。去り際にそれだけ伝えた。……相手は神様だから、どこまで伝わるかはわからないけれども。
それでも一言物申しておくべきだろう。
随分と協力者の死神の子も、憤って居たみたいだから。

そうしてから正純は高台へ。時計台の一番上へとやってきた。手製の地図をもう一度広げ、街中を一望する。
地図を見たときから分かってはいたが、随分と入り組んでいる。これは闇雲に探しても単純に迷ってしまって終わりだっただろう。
しかし、今の正純には神気の流れを見て取る事ができた。糸のように張り巡らされたそれを一つ一つ紐解いて、地図へと書き示していく。

「よしよし。大体絞れましたかねー」

あとはこの情報を人と共有するだけ。そのあとは地道に足で稼ぐことになるだろうと、正純はもう一度決意を新たにするのであった。


「ありがとう。おねーさん助かっちゃうわ。私も、自分の足で頑張って探すしか無いけれど……」

「あ……それなら、魂さんが、助けてくれると思いますっ」

『死神小鬼』アヤメ・フリージアと『ふんわりおねーちゃん』メアトロ・ナルクラデはメリーが作り、そして正純が書き込みを入れた地図を覗き込みつつ、これからの算段を立てる。
どちらも子供がさらわれたとあって、意気込みは強い。

「誰も見つけてくれないのって。しかも誰も自分の事を忘れてるだなんて……。それは凄く悲しい事だと私は思います。だから私が桜さんを見つける『鬼』になりたいんです。そう言って、魂の皆さんにお願いしたいな、って」

残念ながら、魂さんは見かけてなかったみたいですが、とアヤメはしょんぼり。慰めるようにメアトロが頭を撫でる。

「協力してくれる子が増えるようお願いしてくれるだけですごいのよ? おねーさんも頑張って手伝うから、一緒に頑張りましょうね?」

メアトロは勘が鋭い方だ。それに、皆の『おねーさん』として、小さい子が困っているとなんとなくぴんと来てしまうような、そんな能力を持っていた。いわゆる素性は只人ではあるものの、それを補って余りあるだろう。

「はいっ……!」

アヤメも励まされ、少し勇気付けられたように頷く。そして改めて死神としての力を少しだけ開放し、彷徨える魂達へお願いを込めて声をかけた。

「お願いします、魂さん……。一緒に桜さんを探して下さい……っ! 誰も、悲しい気持ちにならないように!」

ふわりと周囲のもやが浮いていく感覚。受諾された、とはっきり感じる。
少しホッとしたようにアヤメは胸をなでおろした。

「……よかった。もしも魂さんが桜さんを見つけたら、私に教えてくれるはずです。行きましょう、メアトロさんっ」

「うん、うん! 行こっか。きっと桜ちゃん待ってるよ!」

二人は改めて、青空に照らされた街を走り出した。

「……どっちですか?」

「ううん、あっち! あっちになにかある気がする!」

基本的にはアヤメやメリーの使い魔や魂の情報、そして正純の地図。
それに加えて、メアトロの直感を頼りに進んでいく。見つからなかった、という情報でさえも捜索範囲を縮めることにつながる。例え街一つが捜索対象であっても、ひとりひとりの力が一つづつ合わさった結果、探さなければいけない範囲は多くない。

そこからお姉ちゃんセンサーと、人助けセンサーを頼りに対象を絞っていく。

「ところで……その。桜さんはメアトロさんの、妹ではないのでは……?」

「困って居る子は私の仲間で、私の妹な気がするんだ。きっと助けてって言ってるよ、はやく助けてあげないと!」

「あ、はい、そう、ですね……?」

そういうことらしい。深く考えてもそれこそ今回の事例のように、しょうがないのだろう。実際に助かっているのは事実であるし。
そのまま走っていれば、路地裏。とぼとぼと歩く少女の姿が一人。最初に話を聞いていた黒いショートカット、名前と同じ、桜を象ったヘアピン。
おもわず、アヤメは大きく息を吸い込んで、叫んだ。

「――見いつけた!」


「ちぇ、一番乗りじゃなかったかあ」

「いいじゃないですか。貴方が桜さん……ですね? よかった、無事で……」

メリー、アヤメ、メアトロ、正純がたどり着いたのは同じ地点、ほぼ同時のことだった。
誰か探しているのかもしれない、と桜が張り紙を見て腰を上げ、神社へ向かっているところであったのだろう。
腰を抜かしたのかやや中腰のまま、ぽかんとした顔でイレギュラーズたちを眺めている。

「私達、貴方を見つけに来たんです。……もう大丈夫。かくれんぼは終わりなんです」

「……へ、あ……。ほんとだ、消えてない……。見えてる。私が、見えてる……!」

アヤメがそう告げれば、我に返ったように桜は自分の姿を眺める。通行人は居ないが、周りにいる皆が神隠しから逃れられた証人だった。
ぺたん、と糸が切れたように座り込む。思わず溢れた涙を、メアトロが拭った。

「よしよし、怖かったね……、辛かったね。もう大丈夫だよ」

そのまま桜を抱きとめてよしよしと撫でる。その包容力に桜も思わず身を委ね、ぐすぐすと泣き始めた。メアトロも黙ってお茶を差し出し、落ち着くのを待つ。

「落ち着いたら……公園でご飯を食べて、お家に帰りましょう? お父さんもお母さんも、心配してるはずだから」

「はい……。そう、ですね。……もう、大丈夫です。立てます」

一頻り泣いた頃合いで、ハンカチで涙を拭きつつ桜が立ち上がる。そして深々とお辞儀を一つ。

「皆さん、私を見つけてくれてありがとうございました。皆さんが居なければ私……今頃、どうなっていたか。この事は一生忘れません」

震える声と、手。今日あったことを思い出しているのかもしれない。それでも、涙を見せることはなく。

「……暫くは大人しくしていることにします。その後、文句を言いに行ってやりますよ」

強がりかもしれないけれども、それでもそっと微笑んだ。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM