PandoraPartyProject

シナリオ詳細

温泉旅館の幽霊

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■六月、それは幸と不幸表裏一体
 少し前。突然の魔物の妨害にあった温泉旅館はイレギュラーズの介入によりピンチがチャンスに。大繁盛となり、名が売れて今でも大盛況。
 だが時は六月、梅雨の時期。流石に客足も少しは遠のく……少しどころではないのだが。
「支配人……最近暇ですね」
「ああ、君は今年入ったばかりだったから知らないのだね」
 帳簿整理をしていた事務員と支配人が休憩がてらにそんな話をする。
 知らない? と首を傾げた事務員に、支配人はしみじみ語る。この温泉街には、六月になると幽霊が出るのだよ、と。
「え、えぇ? 幽霊ですか?」
「魔物もいるんだ、幽霊もいてもおかしくないだろう?」
 そう諭され、事務員は確かに、と納得する。しかし腑に落ちないのは、妙に落ち着いている支配人の口ぶりだ。
「でも、もっと大騒ぎになるものでは?」
「……ちょっと事情があるんだよ」
 
 支配人は語る。
 その昔、この温泉街では六月になると結婚式を執り行うカップルも訪れていた。
 だがある年。結婚式の為にと出向いていたカップルが、道中で魔物に襲われ命を落としてしまったのだと。普段はこのような事がないように、自警団が見回りをしているのだが夜中にこっそりと抜け出して散歩をしていたところを襲われた、との事。
 それがよっぽど苦だったのだろう。二人は成仏できず、六月の雨の日になると温泉街に現れるようになってしまった。

「……何人か、有名な霊能者に来てもらったけど、成仏させることはできずにね」
「……それ、危険じゃないんですか?」
「こちらから何かしなきゃ、至って大人しい霊なんだよ。でも、霊がいるってだけで客は遠のくからね。六月限定だけど。」

■二人の幽霊に光を
「皆は覚えてるかな? 魔物に道を塞がれて大変な目に遭ってた温泉旅館のお話」
 境界案内人のポルックスが集まったイレギュラーズの顔を見渡す。皆一様に首を傾げているだけだ。
「まあ、知らなくてもいいわ。今回のお仕事は、温泉街に現れる幽霊退治よ。……とっても悲しいお二人だけどもね」
 結婚できずにさまよい続ける二人の幽霊。これを退治するか……はたまた。
 どのようにするかは皆次第よ。そう締めくくるポルックスであった。

NMコメント

 思いついた六月シナリオを、四月にやった温泉旅館に絡める暴挙。以下略です。
 今回のオーダーは温泉街に現れる男女二人の幽霊を「なんとか」してください。その方法は問いません。また、現地のとある温泉旅館の従業員達はイレギュラーズに好意的なので戦闘以外の事ならバックアップをしてくれます。
 以下敵詳細とフィールド情報
■男の霊×1
 HPと物攻とEXFが高め。とはいえイレギュラーズからすれば下の能力です。
P君を愛してる:女の霊が戦場にいる間、全能力値が上昇。【精神無効】【怒り無効】
P永久に一つ:ある条件を満たすと戦闘をすることなく成仏します。
Aぶん殴る:全力で殴りかかってきます。至近物理単体攻撃。それなりに高威力。
Aかばう:距離に関係なく女の霊をかばいます。主行動。

■女の霊×1
 APと神攻とEXFが高め。とはいえイレギュラーズよりは下の能力です。
P貴方を愛してる:男の霊が戦場にいる間、男の霊及び女の霊に再生充填付与。【精神無効】【怒り無効】
P永久に一つ:ある条件を満たすと戦闘をすることなく成仏します
A悲劇の声:神秘遠距離範囲攻撃。【呪殺】【魅了】【麻痺】
A貴方に尽くします:神秘超遠距離の単体回復スキル。HPAPBS回復

■フィールド:雨が降る温泉街
 『抵抗力に関係なく』イレギュラーズ全員に【ずぶ濡れ】の状態異常が付与されます
【ずぶ濡れ】:自分は【火炎】系統のバッドステータスを敵に与えられない。
 また、【氷結】【ショック】系統のバッドステータスを持つスキルを使用すると、射程に関係なく自らも攻撃対象に含まれる。
 水中親和、水中行動、呼吸不要のスキルを持っていないと命中、回避、反応、EXA低下。上記スキルを持つ場合は軽減もしくは無効。

 以上となります。
 戦闘で無理やり倒すか、それとも……?
 どのような結末を迎えるかは皆様次第です。よろしくお願い致します。

  • 温泉旅館の幽霊完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月15日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
シオン・リッチモンド(p3p008301)
嘲笑うリッチ

リプレイ

■式場計画
「お久しぶりです、支配人さん」
 以前の依頼にて旅館の支配人と顔なじみになっている『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)が、旅館の事務所に顔を出す。ちょうど支配人は自分のデスクで書類整理を行っていた。彼女を見るなり立ち上がり歓迎の意を示す。
「これはこれは、以前はどうも。やっぱり就職しに来て下さいましたか?」
「それは違うんだけど……」
 珠緒の後ろから『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)がツッコミを入れる。肩を落とす支配人が中年男性の癖に妙に愛らしいのは気の所為だろうか。
「グルル……」
「ひぃっ!?」
 彼女らの更に後ろ。開けっ放しのドアから顔を見せたのは『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)だ。ドラゴン、言うなれば魔物の最上位である存在に支配人は思わず叫び声をあげる。
 更に……。
「ここが話の旅館ね」
 『嘲笑うリッチ』シオン・リッチモンド(p3p008301)が顔を見せると支配人は腰を抜かした。見た目は普通の少女なシオンだが、見る人が見ればリッチ、つまりは魔物に分類されるものだとわかるのだろうか。
「あ、こちらの方々は珠緒達の仲間ですのでご安心を」
「え、あ、そうなのかい? ……びっくりしたなぁ……」
 珠緒の言葉に安心する支配人と、少し憮然とした態度をとるアルペストゥスとシオンであった。
 さておき。
「幽霊が出るって噂を聞いたんですけど……」
 本題を切り出す蛍に、支配人がああ、と手を打つ。
「よく知っているね。今日はこれから雨が降るみたいだし、現れるんじゃないかな」
「その場所はわかる? 私が話つけてくるわ」
 シオンの言葉に支配人が「え、本当に?」と言った表情を見せるが、すぐに周囲の地図を出してくる。
 シオンとアルペストゥスがその地図を覗き込み、場所を覚える。
「それじゃ私達二人で行ってくるわ」
「グルゥ!」
「あ、ボクも行くよ」
 事務所を飛び出す二人に続くように蛍が名乗り出るが、シオンに止められる。
「私の力があれば二人で十分よ。それより、貴方にはやって貰いたい事があるの」

「式場、ですかな?」
 事務所に残った蛍と珠緒は支配人と話を続ける。
 結婚式を挙げられなくて命を落とし、結果成仏できず彷徨う者であれば。その望みを叶えてやれば良いのではないか、と説明する。
「ふーむ……確かにそれは考えた事もなかったですな」
「何もしないよりはいいでしょう。それで、どこか良い場所はないでしょうか」
 珠緒の言葉に、支配人は少し首を捻るがすぐに手を叩く。
「良いでしょう、我が旅館が全面的に協力させて頂きます」
「え、本当?」
 支配人のその発言に、蛍が驚く。
 最悪の場合、この旅館でなんとかしてもらおうとは考えていたのだが、まさか最初から申し出てもらえるとは思ってなかったのだ。
「ええ、構いません。どちらにせよ彼らをなんとかしない事にはこの地も困りますし」
「ありがとうございます。それでは計画を……」
 三人での話し合いは続いていく。

■涙雨の幽霊
「いたわ、あれがそうでしょ」
「ガルッ」
 雨空の中を飛ぶアルペストゥスと、彼の背に乗るシオン。
 雨の為に視界は悪いが、傘もささずに揺らいでいる影は目立つ。アルペストゥスの背から降り、シオンは恐れる事もなく話しかける。
「あなた達ね、6月にだけ現れる幽霊というのは」
「……どちら様ですか」
 存外にはっきりとした受け答えをする幽霊。もっともこれは、シオンが相手だからかもしれないが。
 もしこれが、蛍や珠緒であったならば聞く耳を持たなかったのかもしれない。人語を話せないアルペストゥスでは意思疎通も難しかっただろう。
「私はシオン。ちょっと離れた場所にある温泉旅館のおじさんに頼まれてね。あなた達を救いにきたの」
「……あなたも、私達を『また』殺そうと言うのですか」
 『また』。そう女の幽霊は言った。恐らくは魔物に殺されてしまった時の事を言っているのだろう。そして、話し合いをせずに強制的に成仏させようと襲ってきた数多くの霊能力者の事も。
「グルゥ……」
 彼女らの心を察したのか、アルペストゥスが悲しげに鳴く。彼の頭を一撫でし、「私に任せて」とばかりにシオンは一歩歩みよる。
「違うわ。私達と……そして、温泉旅館の人は、あなた達に贈り物をしたいの」
「贈り物……?」
 その単語に、幽霊達の殺気が少し弱まる。チャンスだとばかりにシオンが畳み掛ける。
「ええそうよ。結婚式、できなかったのが無念なのでしょう?」
「……はい」
「だから、私達で用意してあげる」
 雨の中ずぶ濡れになったシオンが、手を差し出す。幽霊達は顔を見合わせ、そして、彼女の手に二人の手を重ねる。
「……信じます、その言葉」
「任せて頂戴。ほら、こっちよ」
「グルゥゥ!」
 アルペストゥスを先頭に、連れ立って歩いていく。
 少しずつ話をしていくうちに、幽霊達の顔にかかったもやみたいなのが晴れていく。少しずつだが、人間らしさを取り戻していくような……。

■涙の結婚式
「あ、あ、もう来ちゃいました?」
 ばたばたと式場の用意に取り掛かっている珠緒が、やってきたシオン達を見て取り乱す。もっと時間がかかると思っていたのに、幽霊を連れてやってきてしまったのだ。
「あら、まだ時間かかりそう?」
「申し訳ありません……」
 旅館のスタッフ達も、幽霊の存在に少しは怯えたものの。先に珠緒達から話を通されていた為に騒ぎになる事はなく。ただ、彼らの為にと設営を続ける。
「……これは、私達の為に?」
「ええ、そうです。……あ、そうだ。先に着付けをされてきてはどうでしょうか」
 珠緒の言葉に幽霊達は驚きを隠せないようだ。呆気にとられている彼らの背を、シオンとアルペストゥスが押して行く。
「あ、そういえば。あなたの相方はどうしたの?」
「蛍さんなら近所の方を集めに行ってますよ」

「……ということなので、出来れば協力して貰えたらと」
 その蛍は温泉街を駆け回り、人々に事情を説明していた。
 元々の結婚式に来るはずだった招待客をもう一度呼び寄せるのは、流石に無理がある。なので、地元の人々にせめて見届けてもらおうと考えたのだ。
 ある程度式場の話がまとまった時点で珠緒に任せて、走り回っていたのだ。その甲斐あってか20人程が参加を承諾してくれている。
「ありがとうございます!」
 これなら十分だろう。そう考えて蛍は旅館へと戻っていく。

「あら、綺麗じゃない」
 女幽霊の着付けを手伝っていたシオンは、彼女の姿を見て素直に褒める。
 女幽霊の顔には完全に生気が戻っていて、幽霊だと言われても知らない人は信じられない程になっていた。
「ありがとうございます……私達の為にこんな……」
「泣くのは後になさいな」
 泣きそうになっている女幽霊を宥めなていると、コンコンとドアをノックする音が響く。
「はーい」
「ボク、蛍だよ。珠緒さんから式場の用意が出来たから新郎新婦の入場用意をお願いって」
「わかったわ、すぐに行く」
 行きましょ、と手を差し出すシオンの手を取り。女幽霊は今、幸せへの一歩を歩みだす。

「……綺麗だよ」
 式場の扉前で。アルペストゥスに脇を固められた男幽霊は、きちんとタキシード姿で花嫁を待っていた。
 ありがちだが、大切な一言と共に。
「ガルゥー」
 足を止めて、顔を赤くする幽霊二人を急かすように、アルペストゥスがタキシードの袖を軽く噛んで引っ張る。
「あ、ごめん。……うん、行こうか」
「はい……」
 シオンの手から離れ、花婿の手を取る花嫁。そして……。
 パチパチパチパチッ!
 盛大な拍手に迎えられ、一度は不幸な結末を辿った二人は、幸せを手に入れる。
「貴方達、例え死が二人を別れてもお互いを想いあい、愛し続ける事を誓いますか?」
 いつの間にか神父役に居座ったシオンが、例の口上を述べて。
「誓います」
「誓います」
 二人の幽霊が、当然だとばかりに言を返す。死が二人の生を奪っても、別れる事はなかった二人なのだから、それは今更か、とシオンは一つ息を吐き。
「ここに二人の結婚は祝福されました…おめでとう、これで晴れて貴方達は夫婦ですよ」
「グルルル……!」
 シオンの言葉に合わせ、雨の為にできないと思っていたライスシャワーをアルペストゥスが天井すれすれから振りまいていく。
「おめでとうございます、素敵ですよ」
「おめでとう、ほら、街の人たちがこんなに手伝ってくれたんだよ」
 珠緒と蛍が、式場に集った人々を紹介する。
 温泉旅館の支配人とスタッフ。お土産物屋の店員から、近くに住んでいただけの老夫婦まで。皆が皆、彼らの事を祝福する為に集ったのだ。
 皆、心苦しかったのだ。彼らを想いながらも何も出来ない自分たちの無力さを呪っていたのだ。
 それが晴れて今回、報われた。
「……ありがとうございます、皆様……」
 涙声の男幽霊が、頭を下げ礼を述べる。女幽霊などは感動の余り言葉が出ないようだ。
「やっぱり、ハッピーエンドじゃなきゃね」
「ええ、そうですね」

 余談として。
 これで心残りの無くなった二人。成仏させようとシオンが力を振るおうとしたのだが、二人は辞退したのだ。
 これだけ素敵な結婚式をしてもらって、何も返せないのは申し訳ないから、と。
 一度死んだ身で、皮肉にも得てしまった戦う力。そして死なない身体。
 それらを活かして、自警団の人々と共に魔物から旅行客を守る仕事に就いた。
 もう二度と、悲しみに涙雨を流さない為に。

成否

成功

状態異常

なし

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