PandoraPartyProject

シナリオ詳細

指切り腕切り足切り腹切り首切り根切り試し切り
指切り腕切り足切り腹切り首切り根切り試し切り

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●試し切り過ぎ
 巻き藁を両断するのは人の胴体を断つのとほぼ同じ難易度だという。
 ――どこがだ。
「違う、違う違う違う違う違う違う違う違う。硬さが違うじゃないか。感触が違うじゃないか。カタチが違うじゃないか。何が同じなんだ。難易度だと何だそれは。難易度というのは斬ることができるのか。見ることも触ることも聞くことも嗅ぐこともできないなんて、そんなものは斬れないじゃないか! ふざけるな! 巻き藁なんかじゃダメだ! 全然ダメだ! こんなものをいくら斬ったって私は全然納得できないだろうが、ふざけるな! ふざけるなよ! ああ、全然遠い、何でこんなに遠いんだ。私はただ、スパっとイキたいだけなんだよ、なぁ? 分かるだろう。気持ちがイイじゃないか。何の抵抗もなく、スパっとイケたらそれだけで最高の気分になるじゃないか。そうだよ、私は私が打った剣でその感覚を得たいだけなんだ。私の打った剣は最高なんだ、最高にスパっとイケる剣なんだ。ただそれを、私が私に証明したいだけなんだよ。そんな小さな願いなんだ。たったそれだけの、つまらない願いなんだ。いいだろう? この程度のささやかな夢。誰だって見るものじゃないか。だから私の剣で斬られてくれ。スパっとイカせてくれ。肉を、骨を、筋を、血管、臓腑、神経、皮膚! 柔らかな脂肪もこびりつかずに血液はただ噴き出すのみが理想なんだ! ああそうさ、私は理想の斬り心地が欲しいだけなんだ! 小さい夢だ、それだけなんだ、だから協力してくれ、さぁ、斬らせてくれ、さぁ、さぁ、さぁ! ああああああああああああああああ、逃げるな、逃げないでくれ、逃がすか、逃がしてたまるか、君の身体は私の夢なんだ、私の、私の、私の、私の夢を、逃がしてなるものかよおおおおおおおおおおおお!」

 これまで四つの町や村で、多数の人間がバラバラの、バラバラの、バラバラになるまで斬られて死んだ。

「違う! やはり違う! いや、私は諦めない。次だ、次こそ最高にスパっとイケるはずなんだァァァァァァァ!」


●ユーリカはお肉が食べられない
「えー、あー、事件なのです……」
 皿に盛られたサイコロステーキを前にして、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が顔を青くしていた。
「なんかサーカスが終わってから、この手の事件が増えてる気がしてならないのです……」
 サイコロステーキを視界の外に追いやって、ユーリカは集まったイレギュラーズに説明を始めた。
「幻想の地方領地で『辻斬り』が多発しているのです」
 これまで、『辻斬り』は四つの町村で連続して発生しており、被害者はいずれも人の形を失うまで切り刻まれていたという。
 いずれも鮮やか極まる切り口であり、それを行なった者が測り知れない剣腕を持っているのは間違いない。
 被害者の数は分かっているだけでも十七人。
 官憲が追うも未だに犯人は捕まらず、ローレットに依頼が回っていたのだ。
「犯人と思しき人物がいるのです」
 その男は、現場となった町村では名の知れた鍛冶師であり、自身も元々は名の知れた剣士であったという。
 名は、ガルヴェル。
 世俗には関わらずに己が理想とする剣をひたすら追い求める求道者であったという。
 しかし、それだけに彼が打つ剣は大変質が良く、かなりの高値で市場に出回っているらしい。
 ただ、関係者が知るガルヴェルは寡黙ながらも実直で自らの理想に邁進する人柄であったという話、なのだが、
「現場近くで、血にまみれた剣を持ったガルヴェルを見たという証言もあるのです」
 事情はどうあれ、状況的に見て犯人はこの男でほぼ間違いない。
 そして、
「数時間前、五つ目の村で十八人目の犠牲者が出てしまったのです」
 最新の情報であった。
「これまでの傾向として、ひとつの町で複数人の被害者が出ているのです。つまり――」
 五つ目の村でこれからまた、誰かがバラバラになるまで刻まれて死ぬ。
「逆に言えば、次の被害者が出るまで犯人はその町にいるはずなのです! だからどうか!」
 そこまで言って、ユーリカは青い顔のままベジタブルスティックをかじった。

GMコメント

どーも、天道です。
それでは猟奇的に頑張っていきましょー。

●成功条件
・ガルヴェル討伐
 彼は言葉では止まりません。

●敵
・ガルヴェル
 自らが鍛え上げた剣を使ってきます。
 その斬撃は防御無視効果を持ち、一定確率で乱れと流血の効果を付与します。
 しかもその斬撃を遠距離まで飛ばすことができます。
 動きが非常に早く、それは反応速度と回避の高さとして表現されます。

●戦場
 戦う場所は夜の町中となります。
 ガルヴェルは肉が切りたくて仕方がないので、囮を出せばすぐに姿を現すでしょう。

  • 指切り腕切り足切り腹切り首切り根切り試し切り完了
  • GM名天道(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月14日 22時30分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノイン ウォーカー(p3p000011)
時計塔の住人
アルプス・ローダー(p3p000034)
二輪
ミーティア・リーグリース(p3p000495)
竜騎夢見る兎娘
オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)
果ての絶壁
ノア・マクレシア(p3p000713)
墓場の黒兎
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
九鬼 我那覇(p3p001256)
三面六臂
エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)
ShadowRecon

リプレイ

●夜、闇に吼えて
 人口もさして多くない、とある村の夜の裏道でのことだ。
 その夜は雲が多く、月も星もほとんど見えず辺りはかなり暗かった。
 もう少し歩けば田畑という場所では、民家の明かりも望めず、全てが闇に没しているといってもよいだろう。
 そんな中に揺らめく、ランタンの漏らす光。
 一組の男女が、田畑から村へと向かって歩いている。
 その背後に、ジリリと近づく影がある。
「――――?」
 男の方が気配に近づいて振り向こうとする。
 が、同時、ランタンに刃の銀が閃いた。
 幾たび肉を斬ろうとも、今だ切れ味の落ちない刃が、此度も鋭く肉を断つ。
「ヒャヒャ! ヒャハハハハハハハハハ!」
 スパリと肉を断つこの手ごたえ。そう。これだ。これが欲しいのだ。
 狂えるガルヴェルは肉を断ち、そして噴き出す生暖かい血を浴びようと前に踏み出す。
 だが血は来ない。一秒待っても血が来ない。
 夜に慣れた彼の目が、斬った男がドロリと溶けて形を失うのを認めた。
「ぬぅ……!?」
「せぇい!」
 直後に声。そして衝撃。女の方が、近くにあった壁を使って三角蹴りで強襲してくる。
「チィッッ!」
 舌打ち一つ、左腕で受け止めて、ガルヴェルは一歩後退した。
「みんな、かかったわ!」
 蹴りをお見舞いしてやった囮役の『魔剣使い』琴葉・結(p3p001166)が、どこからともなく得物の剣を取り出して叫ぶ。
 すると周囲に幾つもの明かりが現れて、たちまちガルヴェルを囲んだ。
「娯楽は十分堪能したか?」
 現れ出たのは形容しがたい姿の存在。黒い影が形を持ったが如き姿こそ、たった今ガルヴェルが切り伏せた男を生み出したもの。
「それでは物語の時間だぞ、糞餓鬼」
 そう言って、『Nyarlathotep』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)の黒い顔に刻まれた口が弓なりの笑みを刻んだ。
「何でこんなことをするのか、理解に苦しみます。……でも見過ごせない。貴方を狩ります!」
 長弓に矢をつがえ、『竜騎夢見る兎娘』ミーティア・リーグリース(p3p000495)もガルヴェルを睨み据える。
「…………」
 言葉を向けられた狂乱の辻斬りは、だが押し黙って自分を囲む他の連中をゆっくりと見回した。
「バラバラは好きじゃないな……、オトモダチはきれいな方がいいと思うから、バラバラを増やすなら、止めるよ……」
 杖を手に、距離を保ちながら『墓場の黒兎』ノア・マクレシア(p3p000713)が言ってランタンを地面に置いた。
「汝は辻斬りであるな? くだらぬ輩、くだらぬ剣である。ならば一切遠慮せず、我輩も無慈悲に殺すである」
 異形の徒、『三面六臂』九鬼 我那覇(p3p001256)は敵意を隠さずガルヴェルに己の殺意を宣言する。
「今さっきの一閃を見る限り、確かに良い腕と業物のようですがこうなっては形無し。せめて介錯仕ります」
 両手に構えたトンファーで空を鳴らし、『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)もガルヴェルをきつく睨んだ。
 そして――、
「クハッ!」
 人斬りはいきなり身を翻すと、刃を振るって二度ほど火花を散らした。
 地面に、切り裂かれた弾丸が落ちる。
「失礼、別に礼儀は無用かと思いまして不意を打たせていただきましたが、これはなかなか……」
 ランタンの向こうに立つ『時計塔の住人』ノイン ウォーカー(p3p000011)は、悪びれるどころか笑みを深めお辞儀をした。
「クク……」
 ガルヴェルが小さく肩を揺らす。
「ハハハハハハハハハハハハハハ! ひい、ふう、み、よ、……八つ! いいぞ、これはいい! 肉藁が八つも追加か!」
 だが囲まれながらも、彼にとって現状は試し切りする相手が増えたに過ぎないのだ。
「……最悪極まる」
 溢れる殺気と狂った言動に、『ShadowRecon』エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)も顔をしかめた。
「もはや鉛玉で終わらせる以外にないのは明白。ならば、終わらせる」
「上等上等! いざ、いざいざいざ! いざ尋常に、惨殺仕る!」
 剣を構えたガルヴェルが、目を血走らせて朗々と吼えた。
 戦いが始まる。

●修羅の流儀
 闇に瞬く光は銃火。
 夜に躍る閃きは剣閃。
 刃はギリギリ噛み合って、互いを殺さんと鎬を削る。
「ウザ=イェイ! ウザ=イェイ! 愚物は狂気に誘われ、新たなる恐怖を孕み続ける!」
 歌い上げるようなオラボナの声がそれを聞く仲間たちに力を注ぐ。
 心を奮い立たせ、勇ましさを与える異形の歌に、応じたのは結だった。
「ハァ――!」
 自らも肉体を加速させ、普通ではない速度で少女は辻斬りへと切り込んだ。
「クッハハハハ! 身のこなしはよし! だがまだまだ、技がつたないなぁ小娘!」
 ガルヴェル、間合いを見極めて悠々と結の横薙ぎをかわし、彼女の攻撃直後の隙を狙おうとする。
「終幕を齎すべく、肉の塊を切断せよ」
 だがオラボナが割り込んできた。
「クク、庇うか。それもまたよし――……カハッ!?」
 影色の肉を切り裂く。その感触に痴れようとしたときに、ガルヴェルが己が貫かれる実感を得た。
 見れば、オラボナの胴から伸びる棘がこの至近距離でこちらを刺している。
「小細工、小細工よなぁ! 異形ォォォォォォォォォォ!」
 しかしほんの激痛、何するものぞ。
 ガルヴェルにどてっ腹を蹴られて黒の姿は吹き飛んだ。
「ああああああ、いい、イイ! だが違うんだ、もう少し重みが欲しい! もう少し、もう少しだけ!」
 獣よりも浅ましく、ガルヴェルが吼え猛る。
 雲の隙間から漏れる月光に、血まみれの刃がぬらりとしたてかりを見せていた。
「黙れ……!」
 怒りに歯を食いしばり、エイヴがトリガーを引いた。
 大口径の対物ライフルが轟音と共に弾丸を吐き出して、それは見事にガルヴェルのわき腹を射抜く。
 込められた魔力が、辻斬りの動きを縛った。
「お、おぉ?」
「……千切れ飛ばないのか」
 着弾を確認し、結果にエイヴが息を漏らす。どんな強靭な肉体だ。
「だが無効ではない。ならば数を重ねていく」
 そして再度、ガルヴェルを狙うも、
「見切ったァ!」
 動きを制限されながらも辻斬りはこれに反応し、ヂュインと甲高い金属音。断たれた弾丸が近くに落ちる。
 とはいえ、さすがにガルヴェルも動きを大きくせざるを得なかった。
 刃を引き戻す前に、我那覇が懐に飛び込んできたのだ。
「汝の指を殴るり、腕を殴り、足を殴り、腹を殴り、首を殴り、息の根を止める! 我が小さな夢である!」
 三面が叫び、六臂が振るわれる。
 だがそれをガルヴェルは喜悦に顔を歪ませながら迎え撃った。
「これまた異形、クハハ、世は広く面白いな。……だが、言うのみならば易いだけ、貴様に行えるか!」
 我那覇の拳が敵の顔面に突き刺さる。血が噴いて、欠けた歯がこぼれ落ちた。
 鈍く重い音は幾度響くか。
 だがガルヴェルは、揺らがない。
「ハァハハハハハハハハハ! 疲れたか、呼吸が乱れているぞ、異形!」
 両手に握った刃を引いた辻斬りが、我那覇の臓腑を抉ろうと、
「多勢に無勢、活かさせてもらいますよ?」
 背後、右肩。弾丸が穴を穿った。ノインだ。
「む……、猪口才な!」
 それまでただただ悦に浸っていただけだった辻斬りの顔が、初めてそれ以外の感情に歪む。
 向いた先にノインはいなかった。彼の曲芸射撃が、ガルヴェルを翻弄したのだ。
 この一瞬に生じる、確かな隙間。
 一秒弱にも満たないそれは、しかし戦場においては無防備を晒すに等しい。
「絶好のチャンス、かな……」
 狙ったのはノアだ。彼女の杖先から迸る魔弾が、ガルヴェルの胸部を直撃する。
 傍目に見てもかなりの痛撃。血が辺りに散った。だが彼は、笑うのだ。
「イキがいいな、いい、いいぞ! それでこそ斬り甲斐があるというもの!」
 地面を踏みしめてあっという間に距離を詰める。
 ノアの眼前、刃は大きく弧を描くが、しかし手に返ってきたのは固い感触だった。
「骨人形か!」
 それは、ノアが呼び出した肉壁用の動く白骨であった。
 叩き斬られ、宅目を終えたそれは音もなく崩れ去る。そこへ、
「こンのォォォォォォォォォォォォォォ!」
 アルプスが全力で突っ込んでくる。
「――ヒヒッ!」
 嘲り笑い、ガルヴェルは避けようとした。が、太ももにいきなりの痛みを感じ、足が崩れる。
「ガッ……!?」
「多勢に無勢、って言ってるでしょ!」
 ミーティアであった。彼女の矢に、太ももを撃ち抜かれていたのだ。
「おのれ、ガキ――!」
 そしてアルプスの全開突撃が、ガルヴェルを見事にはね飛ばした。
「手ごたえあり……、です!」
 地面を数度バウンドする敵を確認して、アルプスは拳を握りしめた。だが、数秒もせず、
「ハハハハハハハハハハハッ!」
 ガルヴェルは起き上がる。
「久しく感じていなかった、痛み! 痛みだ! 今のはイイ、すごくよかったぞ! アバラがひとつはイカされたか!」
 そこにいるのは、もはや人を斬りたいがために斬るだけの辻斬りではなかった。
 熟練の鍛冶屋にして歴戦の戦士。
 屍山血河を渡り歩いた修羅道の住人が、イレギュラーズへとその獣の眼光を向けている。
「ええ、この程度じゃ止まらないこと、知っていたわよ!」
 奥歯を強く噛み締めながら、結が剣を構え直した。

●最期に断つもの
 多勢に無勢と誰かは言った。
 だが、無勢が多勢を覆すことはあり得ないのか。
 否。
 否である。
 無論、厳しい。難しい。クリアするべき条件が幾つも必要となる。しかし、可能性はゼロではないのだ。
 今のこの男のように。
「オオオオオオオオオオオオオオオ、あァッ!」
 振るった刃は空を切り裂き、斬撃はその先にいるノアにまで達した。
「信じられない……、まだ、これだけの力が……」
 反撃とばかりに彼女は死者の怨念を束ねて放つも、ガルヴェルは察して同時、身を横に滑らせてかわす。
 通常、人は傷を負えば、血を失えば、それだけ動きが鈍くなっていく。
 だというのにガルヴェルは逆。
 戦えば戦うほどにその動きはキレを増し、身のこなしは素早くなって隙が消えていく。
「不可解……! 君は本当に人間なのか!」
「クカカカカカカッ! 嘆くな、貴様らとて戦士だろうが! ならば斃せ、斃してみせろよ、なぁ!」
 常識に当てはまらない敵に、思わずエイヴが叫ぶも返されるのは煽る言葉。
 だがその間にも、ガルヴェルは刃を振り続ける。
「ラーン=テゴス、ラーン=テゴス、人の紡ぐ『物語』の愉しきこと!」
 オラボナの歌が再び仲間に力を与える。
 しかしその黒き異形の身から、活力は徐々に失われつつあった。
 ガルヴェルに斬られた傷から命が絶えず零れていく。いかなオラボナであろうとも、生きている命には間違いなかった。
「されど我らは孤高に非ず」
 我那覇の手から溢れ出た光が、オラボナの身を蝕む異常を正した。
 三面六臂が真っすぐ駆ける。一度空いた間合いを再び詰めて、我那覇は六つの拳を同時に握り込んだ。
 ――だが当たらない。
「カ、カッカッカッカッ! 遅い、遅い遅い遅い! 動きが真っすぐに過ぎるぞ、異形!」
 そして刃が、我那覇の胸を深々と切り裂いた。
「……さえずるな。汝の声は虫唾が走る」
 迸る己の血を見ながらも、我那覇は折れず悪態をついた。
 そして離れたところを、その後方からエイヴがライフルで狙い撃つ。
「喝ッッ!」
 攻撃直後を狙ったはず。しかし弾丸は斬られ、火花が散ったのみだった。
「本当に、イヤになる……!」
「クカハハハハハハハハハ! 女ァ、貴様もそろそろ刻まれてみるかァァァァァァァ!」
「行かせ、ません……!」
 走りだそうとするガルヴェルの前へ、アルプスが立ちはだかる。
「退けィ、餓鬼風情がァ!」
 踏み込んでの、大上段よりの振り下ろし。
 かわすいとまもなく、刃は肩からわき腹までバッサリと振り抜かれ、アルプスの身に大きな傷を刻んだ。
「あ……」
 短く一声のみ発して、桃色の髪まで自身の血の赤に染めたアルプスが場に倒れ伏す。
「アルプスさんを、よくも……!」
 フォローに入ろうとしていた結だったが、一瞬とはいえ倒れるアルプスの方へ視線を流してしまった。
 それはまさに、致命的な隙だった。
「戦いのさなかだぞ? 剣士がくだらんことに心を乱されるなよ」
 振り返るより先に、ガルヴェルの声が聞こえていた。
 一突き。
 突き出された剣が結の腹を刺し貫いていた。
 切っ先が、背中から見えている。
「……ッ」
 声を漏らすこともできない。
 ガルヴェルが刃を引き抜けば、支えを失った彼女の身体はそのまま地面に転がった。
「これでふた~つ。……クク、カハハハハハ、ヒハハハハハハハ! ああ、そう、これ、これだ! 最高だ! 最高の感触、感触、まさにこれが俺の腕、俺の剣、俺の業の斬り心地! ハハハ、ハハハハハハ! ハハハハハハハハハハハハハ!」
 男は笑いを響かせた。
 相手は間違いなく、場数を踏んできたであろう戦士だ。
 その身を切り裂く。それは今まで試してきた十七度より遥かに充実した感触だった。
 自分が求めていたものはこれだと、心の底から実感する。
 そう、自分は人が斬りたかったのではない。戦士を屠りたかったのだ。
 今さら自覚した己の本性に、あふれる笑いはさらに強まった。
「笑うなぁ!」
 だが叫びが、彼の歓喜に水を差す。
 叫んだのはミーティアだった。
「――何だ、小娘」
「何なんだ、どうしてそんな風に笑えるんですか? 何人も斬り殺して、そんなに刃を血まみれにして、どうして!」
「戯けたことを。戦士が戦いに悦を見出して何が悪い。剣が人を斬り屠って何が悪い。いいや、何も悪くない! 悪くはない! 悪いのは弱さだ、俺一人にも抗えぬ、剣一本にも殺される、そんな連中の弱さこそが悪いのだ!」
「だったら、貴方を止めてみせるよ。貴方も弱い人間の一人だってことを、教えてあげますよ!」
「言うのみならば易いだけ、見事行なえるか、小娘ェ!」
 今度はミーティアを標的と定め、ガルヴェルが斬りかかろうとする。
 だがそんな彼の足に縋りつく手があった。
「……何?」
「フ、フフ……、その理屈でいうなら……、僕を仕留められなかったガルヴェルさんは、腕も、剣も、てんで弱いってことですね……」
 アルプスだった。
 体中を血に濡らしながら、息も絶え絶えにガルヴェルにしがみついて、
「さぁ、やっと……、捕らえましたよ……!」
「き、さ――!」」
 ガルヴェルの目が、赤く赤く燃え上がる。
 歯を剥き出して憤怒に顔を染めながら、人斬りはその刃でアルプスの背中に突き立てようとした。
 だが、今度は別の声が聞こえた。
「戦いのさなかよ? 剣士がくだらないことに心を乱されてどうするのよ」
 背後からだった。
 意趣返しの言葉と共に、命を燃やして立ち上がった結の刃が、勢いよくガルヴェルを刺し貫く。
「グ、ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」
 それまで絶え間なく動き続け、イレギュラーズ達に実体を掴ませなかった人斬りが、今ようやく足を止めた。
「今、攻撃を集中させて!」
 エイヴの号令より、残る全員がここでガルヴェルを仕留めるべく、一斉に攻め始める。
「もう、存分に愉しんだことでしょう。よかったですね」
 言葉は優しく、声は冷ややかに、ノインが残る弾丸を全て叩きこんでいく。
「ウワァァァァァ、止まれ、止まれ、止まれェェェェェェェェェ!」
 ミーティアも絶叫と共に幾度も矢を放つ。それは男の肩に、腹に、太ももに刺さって、穴を穿っていった。
「今ぞ、我輩の小さな夢を成就せしめん。殴る。殴る。殴る殴る殴る殴る。殴る!」
 言葉通りに、我那覇の言葉が幾度もガルヴェルを打ち据えた。幾度も、幾度も、幾度も!
「ガ、アア、アアアア! アアア……、ハハ、ハハハ! ハハハハハハハハハハ!」
「まだ笑える、この状況で? ……もう、笑うな!」
 身を撃たれ、打たれ、貫かれながら、なお笑うガルヴェルの左腕をエイヴのライフル弾が今度こそ千切り飛ばした。
 どれだけの傷が、男の身に刻まれたのか。
 天を衝くほどだった哄笑もやがて弱まっていき、地面に大きな血だまりを作ったガルヴェルはただただ立ち尽くす。
「――満たされましたか?」
 わざわざ眼前まで歩いての、ノインの問いかけ。
 虚ろだったガルヴェルの瞳に直後、また力強い光が宿って、
「クク、ハハハ……、いいや、まだ、まだ……」
 そしてその眉間と心臓が、それぞれエイヴの弾丸とミーティアの矢によって射抜かれる。
 男はそして一度だけ、血を吐いた。
「カハ、ハ……」
 右手から剣がポロリと落ちて、体が崩れ落ちようとする。
 ガルヴェルは地面に落ちて跳ね返り、天を向いていた己の剣の上にそのまま倒れて、
 刃は、ガルヴェルの身体の中心を深くまで貫いていた。
 男は最期に、己自身の命脈を断ったのだ。
「ああ、いい感触だ……」
 それが狂える辻斬りガルヴェルの最期の言葉だった。
「終わっ、た……」
 何とか立ち上がり、エイヴが息を吐きだす。
 余裕があれば、なぜ彼がこうなったのかを調べようかとも思っていた。しかしそんな余裕はどこにあるのか。
 皆そろって満身創痍。帰って休まねば危うい者もいる有様だった。
「十八度、殺してやりたい輩であったな」
 亡骸を見下ろして、吐き捨てるように我那覇が言う。
 彼の言葉も当然であろうが、ノアだけはその場に膝をついて祈りを捧げた。
「――あなたがゆっくり眠れますように」
 修羅に落ちた男にとって、それはささやかなれど確かな救いだったのかもしれない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした!
辻斬りとのガチバトル、いかがだったでしょうか!
結果としては無事解決ということで、おめでとうございました!

それではまた次回のシナリオでお会いしましょう!

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