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シナリオ詳細

猟奇な三姉妹
猟奇な三姉妹

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●三姉妹はドコが好き?

 ――あはは、あはは。
 ――うふふ、うふふ。

 月明かり眩しい深夜。街の裏通りにそぐわない可憐な声が響き渡る。

「嗚呼、エル姉様、ご覧になって! 嗚呼、もうたまりませんわ!」
「ええ、ええ、よくご覧になっていますよ。あはは、とても素敵ね、興奮するわ」
「二人とも、私のもご覧になって。とても力強くて逞しい。どうにかなってしまいそう」
 三者一様にして興奮冷めやらず。深夜だと言う事も忘れ、その美しく長い髪を振り乱して騒ぎ、はしゃぎ廻る様は、新しいプレゼントを貰った幼き少女の様。

 ――それが何の変哲もないプレゼントであれば、どれほど良かっただろうか。

 人目もはばからず興奮に濡れる少女達の中心にあるのは、つい先ほどまで動いていた人の成れの果て。血濡れの池に佇む、動かぬ肉の塊に他ならない。
 少女達は、達する興奮に導かれるまま、その手を汚し、今なお笑顔の華を咲かせている。

「あはは、わくわくしますわね。上手く出来るかしら?」
「ええ、ええ、大丈夫。きっと上手にできますよ」
「それでは、いっせーのっせで参りましょう。うふふ、楽しみですね」

 手にするは凶器の刃物。大鎌、大鋏、無骨な大剣。少女の体躯にそぐわぬ凶刃を振りかぶる。

「いっせーの……せっ!」

 振り下ろされた刃物が死体を弄ぶ。切り裂き、潰し、バラバラに。
 そうして少女達は、ようやく大切な物を手に入れたと言わんばかりに顔を綻ばせる。

「見て下さいませ! この長くしなやかな足! 嗚呼、たまりませんわ!」
「あはは、私のこの腕を見てご覧なさい。とても逞しくて太いわ。それにほら、指も長いのよ。素敵だわ!」
「ええ、ええ、どちらも素敵だわ。けれどやはり大事なのは顔。ほらご覧なさい、今にも愛を語り始めそう。うふふ、真っ赤にして照れているのかしら」

 バラバラにした死体の部位を持ち、理想の部位であると話す姿は狂気だ。狂いし少女達は満足げに頷くと、まるで追いかけっこでもするように駆けだした。
 月明かり眩しい深夜。頭と、腕と、足のない死体が静かに街に転がった。
 猟奇な三姉妹は駆けだした。次なる理想を求めて駆けだした――。

 ――あはは、あはは。
 ――うふふ、うふふ。



「ふふふ、『シルク・ド・マントゥール』の公演はすごかったわね。大成功という話よ」
 ギルド・ローレットに出入りする情報屋、『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)がイレギュラーズ達に話しかける。
 リリィはいかに公演が素晴らしかったのか、観覧者達がどれだけ満足したのかを大げさに語る。
 その評判はイレギュラーズ達も耳にしていた。王都外からも観覧客は押し寄せていて、彼等が地元に帰る事で口コミも爆発的に広がっているという話だ。
「と、サーカスは大成功だったけれど、そう良いニュースばかりでもないわ。知ってるかしら? 最近、幻想内で物騒な事件が頻発するようになったことを」
 リリィが言うには、これまで平和だった街に血生臭い事件が増えているということだった。それも特に猟奇的なものが多いようだ。
「そこで、この依頼。猟奇的な事件が増えてるところに猟奇な三姉妹の依頼よ」
 リリィは実に楽しそうに依頼書を見せてくる。
 概要はこうだ。
 ある街に住まう仲が良く街でも人気の三姉妹が、突如として豹変し殺人を行っているらしい。
 さらに殺害だけでは留まらず、殺した人間をバラバラにして好みの部位を持ち帰るというおまけ付きだ。殺害し持ち帰るところまでを目撃した酒場の主人の通報で発覚したようだ。
「気立ての良い三姉妹が、一転して殺人鬼ね。何が起こるかわからないものね」
 三姉妹はすでに逃亡中だが、次のターゲットと思われる『女性』の情報が三姉妹の家に残されていた。
 ターゲットとなる女性はすでにローレットで保護済みだ。彼女の容姿を真似るなり、行動を真似ればおびき出すのは容易いだろう。
「可哀想な話だけれど、生死は不問よ。とにかく三姉妹による殺人を止めてもらうというのが今回のオーダーになるわ。どうかしら……やってもらえる?」
 リリィはそう言うと、どこか挑戦的な目つきでイレギュラーズ達を見るのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 素敵で可憐な三姉妹のお話です。

●依頼達成条件
 ・三姉妹の討伐(生死は問いません)

●情報確度
 Aです。想定外の事態は起きません。

●三姉妹について
 長女・エルリィ
 大鎌を振るう黒髪ロングのお姉さん。
 欲しい部位は頭部。首を狙ってきます。
 『大鎌』(物近範・出血・麻痺)

 次女・エミリィ
 大鋏でチョキチョキする赤髪ロングの女の子。
 欲しい部位は腕。肩口を狙ってきます。
 『大鋏』(物至単・出血・乱れ)

 三女・エマリィ
 大剣でバッタバッタとなぎ倒す茶髪ロングの妹ちゃん。
 欲しい部位は脚。絶対領域を狙ってきます。
 『大剣』(物近単・出血・致命)

 少女ですが油断すると痛い目に遭うので気をつけましょう。
 武器はおじいちゃんの家の倉庫から拾ってきました。年代物ですが切れ味は鋭いです。

●標的となった女性について
 黒髪セミロングの女性。二十歳。
 酒場で働くお姉さんです。
 瞳は大きく、唇は薄い。腕は長く指も長い。細身で足は細く長い。
 スカートは履かずズボンが多いようです。

●想定戦闘地域
 標的となっていた女性は深夜に街の裏通りを歩いて自宅に向かう予定でした。
 裏通りは人も少なく、街路も広いので戦闘は問題なく行えます。その他目に付く障害物はなく戦闘に支障はでないでしょう。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 猟奇な三姉妹完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月08日 21時10分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
九重 竜胆(p3p002735)
一刀繚乱
レウルィア・メディクス(p3p002910)
ルゥネマリィ
Λουκᾶς(p3p004591)
おうさま
リーゼル・H・コンスタンツェ(p3p004991)
闇に溶ける追憶

リプレイ

●囮作戦
 依頼を受けたイレギュラーズ達が深夜、街の裏通りに身を隠す。
 明かりは少ない。用意したカンテラで明かりを採る。
「さぁ、持ってお行き」
  『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)はギフト『大罪女王の遣い』を用いて鳥の使い魔を召喚すると、カンテラを持たせて夜空から裏路地を照らす。
 他の面々もまた、邪魔にならないように腰に括り付けたりして準備した。
「そろそろだな」
 『闇に溶ける追憶』リーゼル・H・コンスタンツェ(p3p004991)が時間を確認し仲間に告げる。
「ジークさん、お願いします」
 『おうさま』Λουκᾶς(p3p004591)が『屍の死霊魔術師』ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)に声を掛ける。ジークは一つ頷くと神秘を高めていく。すぐに用意した安物の指輪が姿形を変え、人の形を成していった。
「ふむ、こんなものだろう」
 瞳は大きく、唇は薄く。長い腕に、長い指。足も細く長い。黒髪セミロングのそれは、まさに標的に打って付けの女性だ。
「――ではいけ」
 練達上位式に命令を下し、裏通りを歩かせる。イレギュラーズ達は身を隠したまま明かりを隠し、目標が現れるのを待った。
 深夜の裏通りに足音が響く。
 程なくして、ジークが現れる三つの魂を確認した。声を出さずに仲間達へ合図する。
 式が歩みを止める。その視線の先に場違いな武器を引き釣り、歩み寄る三人の少女。目標の三姉妹だ。
「見て下さいエル姉様、今日の獲物が来ましたわ」
 三女・エマリィが嬉しそうに声を上げる。その手には無骨な大剣。刀身は血に染まっている。
「ええ、ええ、本当によかったわ。時間通りでとても嬉しい」
 長女・エルリィが頬に手をあて喜色に顔を歪める。その肩には大振りの鎌を背負う。やはりその刃は血に染まる。
「嗚呼、二人とも見て、近くで見るとよく分かる。とても素敵な身体をしているわ」
 次女・エミリィが手を叩いて感激する。その腰には大鋏が立てかけられている。二対の刃は赤黒く濡れていた。
 背丈に不釣り合いな武器を持つ三姉妹。狂気に濡れる瞳が式を捕らえて離さない。
「嗚呼、もうたまりません。エル姉様、エミ姉様。はやく殺ってしまいましょう」
「いけませんよ、エマリィ。そんなはしたない言葉遣い。……でもそうね、我慢は良くないわね」
「姉様、エマリィ。今日は誰が一番にお気に入りの部分を手に入れるか、競争しましょう! うふふ、きっと私が一番になるわ」
 大鋏を縦に構え、今にも式の肩口を切り取ろうと鋏を鳴らす次女。「そういうことなら、負けませんよ」と鎌を構える長女。三女も大剣を握りしめ、腰を落とした。
「さぁ、それでは参りましょう。よーい……ドン!」
 長女のかけ声と共に一斉に走り出す三姉妹。地面に引き擦る凶器が耳障りな音を立てる。
「キャァァ――」
 襲い来る三姉妹に対し、命令通り悲鳴を上げる式。三姉妹は狂気孕んだ喜色の笑みを浮かべたまま手にした武器を振るう。
 乾いた小さな炸裂音。武器が式の肉体を切り裂こうとした直前、式は消え指輪に戻る。
「あら? あらら?」
 呆気にとられる三姉妹。その周囲を取り囲むように、イレギュラーズ達が飛び出し、武器を向ける。
「残念だったね、それは囮だよ」
「引っ掛かった気分はどうだ?」
 『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)とジークが三姉妹に告げる。
 事態が理解できているのかいないのか、三姉妹は暢気に笑った。
「あらあら、どうしましょう囲まれてしまったわ」
「でも見てエル姉様、とても素敵な娘がいるわ」
「嗚呼、マントで隠していてもよく分かります。とっても魅力的なパーツだわ、あの娘にしましょう」
 三姉妹の視線の先には『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)。細身で在りながら健康的なその姿は三姉妹のお眼鏡にかなったようだ。
「人気者は辛いであるな」
  『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)の言葉に竜胆は肩を竦め呆れかえると、
「冗談はやめて頂戴。バラバラにされるなんて真っ平ごめんだわ」
 マントを脱ぎ捨て武器を構えた。
「――来ます……です」
 『ルゥネマリィ』レウルィア・メディクス(p3p002910)が言うと同時、見た目とはかけ離れた機敏な動きで、三姉妹が竜胆に向け走り出した。
「さぁさぁ、その腕、その足、その首! 私達にくださいな!!」

●三姉妹は踊る
「やらせないのだわ――」
 三姉妹の動きにすぐさま反応したのはレジーナだ。即座に背水の覚悟を背負うと、構えたリボルバーの引き金を引く。連続する乾いた炸裂音とともに炸薬の臭いが立ち上る。幾重にも放たれた弾丸は一直線に次女の肩口に向け飛んでいく。
「きゃあ――! 嗚呼、痛い、あはは、痛いわ姉様! エマリィ! 血がでてるわ!」
 肩口えぐり取るように掠った弾丸の痛みに声を上げる次女。しかしその顔はまるで痛みを感じていないように狂乱の笑みが溢れている。
 一歩足を止めた次女の横を走り抜けるようにして、竜胆が疾走する。
 長女へと狙いを付けて肉薄すると二刀を振るい応戦する。
「ほら、望んでいた獲物なら目の前に居るわよ」
 首を狙う大鎌の一振りを刀で弾き、相手の進行を防ぐようにブロックする。
 狙われるのは不本意だが、いまは丁度良い。その首を見せ付け、欲しいのでしょう? と挑発する。
「ええ、ええ、その整った顔立ちも素敵だけれど、他に見ることのできないその角! ぜひ私の物にしたいわ!」
「だったらこの首、私から力尽くで奪ってみせなさい。貴女に出来るのなら、ね」
 安い挑発。しかし三姉妹は感激を体現するように踊るようにステップを踏む。
 他のイレギュラーズが動き出すよりも早く三姉妹が武器を振るう。狙うは竜胆唯一人。
 狂気に塗れる三種の武器を力任せに振るう三姉妹。決して戦闘に慣れた動きではないが、常軌を逸したその動きは経験豊富な竜胆を持ってしても捌ききれる物ではない。白い肌が血に染まっていく。
「人間相手にこんなの撃つのはどうかと思うであるが、人体バラバラに出来る人だから仕方ないのであるー! ゆるして!」
 声を上げながらボルカノが超遠距離に陣取ると、弩弓を放つ。空気を切り裂く極太の矢が鋏を振るう次女へと襲いかかる。
「きゃぁ――!」
 腹部をを鏃が刮ぎ落とし、その勢いに次女が踏鞴踏む。鮮血が地面を濡らした。その隙をついて、レウルィアとΛουκᾶςが一気に駆け寄ると竜胆から次女と三女を引き離し、進路を塞いだ。
「まずは一人目だ、上手く倒れろよ――!」
 魔術で一時的に身体能力を強化したリーゼルが疾駆し、次女をその間合いに捕らえると、刹那の呼吸のままに武器を振るう。瞬刻の連撃はしかし致命傷を避けるように放たれた。勢いそのままにリーゼルが次女の頭部をハイキックで蹴り飛ばす。次女はぐらりと目を回すと、泡を吹くように倒れた。
「あらあら、エマリィがやられてしまったわ」
「あはは、エマ姉様ったら、油断しすぎよ」
 姉妹がやられたというのに、どこまでも他人事のようで。残る長女と三女は気にもとめずに凶刃を振るう。
「生かすつもりではあるけれど――」
 赤き血潮の鼓動を感じながら、ランドウェラは動かない右腕をだらりと揺らし魔術を行使する。緑の柔らかな風が傷ついた仲間の傷を癒やす。
 出来ることなら生かしたい。だがもしも仲間に危険が及ぶのであれば、その時は容赦するつもりはなかった。回復の手を止め、再度魔術を行使する。
 放たれた魔力が長女を襲う。衝撃に吐血しながら長女はニコリと笑った。
 次女を制圧したイレギュラーズの次の狙いは長女だ。攻撃を集中させる。
「アナタ達は何故殺してきた?」
 ジークが長女に問う。その問いに長女は答えない。ただ目を細め、笑みを浮かべ、目的の――竜胆の――頭部を欲する。
「狂気に飲まれすぎているか……ならばまずは動きを止めさせて貰う」
 ジークは力ある言葉とともに、死霊を召喚し使役する。命令を受けた死霊が長女の腕を、足を、そしてドレスを血に染めていく。
 続けてジークは怨念を一条に束ね矢として放つ。
「嗚呼、きゃああ――!」
 まるで喜ぶように悲鳴をあげながら長女が蹌踉いた。その隙をついてレウルィアが飛び込む。
 小柄な身体に似合わぬ立派な大剣をレウルィアが振るう。その一刀をバランスを崩しながら長女は躱す。だが勢いを殺さず身体の体捌きのみで次なる攻撃にレウルィアが繋ぐ。一歩踏み込み横薙ぎに振るわれたその必中の輝きもつ一撃は、長女の両足に耐えがたい傷跡を残した。
 けれど長女は止まらない、持てる力の全てを奮い立たせ、大鎌を振るう。連続で振るわれたその斬撃を竜胆は捌ききることができない。首元を狙った致命的な一撃が大きく肉を抉る。
「くっ……」
 一瞬にして失いそうになる意識に、竜胆はパンドラへの奇蹟を乞う。まだ倒れるわけには行かなかった。奇蹟は確かにもたらされ、竜胆の意識をつなぎ止める。
「麗しきお嬢さん、僕と踊って頂けますか?」
 その横で、竜胆へと目を向ける三女を誘うΛουκᾶς。続けて発せられる慇懃無礼の一声に三女ははしたなく大きく笑った。
「いいわ、好みではないけれど貴方にしてあげる!」
 地面を抉るように引き摺った大剣を振るう三女。Λουκᾶςの着る王衣の上からであっても、その狙いは寸分違わず太ももを狙う。
 鋭さのない、しかし鈍く痛みを伴う斬撃にΛουκᾶςは顔を顰める。出血と共に致命をもたらす一撃が苦痛となって襲いかかる。
 己のペースを取り戻すひらめきに期待するも、妙案は浮かんではこなかった。それでも三女を竜胆の元にいかせるわけには行かない。Λουκᾶςは耐え凌ぎながら三女と死の舞踊をとる。
 ――次女を倒された姉妹は止まること無くステップを踏む。
 彼女たちは一般人であり、イレギュラーズにとって見れば制圧の容易い相手なのは次女を見れば明らかであったが、熱に浮かされたような、極度の興奮状態と狂気に塗れた姉妹達は、身体中に傷を負い血を流しながら、それでも変わらぬ笑みを湛えイレギュラーズを襲う。
 だがそれも限界にある。人は人である。流れ出る血が意識を疲労させ身体の自由を奪っていく。
「――そろそろ限界みたいなのだわ」
 レジーナの放つ弾丸が、長女の足を捕らえる。すでに朱に染まったその足に踏み込むだけの力は残されていない。
「あは、あはは、頭、あたま」
 気が狂ったように笑う長女。
 死力を尽くして戦った長女をこれ以上戦わせないようにと、ランドウェラが威嚇術を放ち、遂に意識を昏倒させるに至った。
「まったく……しつこかったわね」
 首を押さえながら竜胆が大きく息を漏らした。
「嗚呼、エル姉様まで、私一人では姉様達の分まで持って帰れませんわ」
 いまだ自分は負けないと思い込んでいる三女をイレギュラーズ達が取り囲む。
 三女を相手取っていたΛουκᾶςはかなりのダメージを負っている。度重なる出血が意識を奪おうとしていた。
「やっぱり私お姉さんがいいわ。絶対素敵な足のはずですもの!」
 竜胆を睨めつけ笑う三女。その狂気の瞳に背筋が震える。
「というわけで、あなたは邪魔ですわ」
 どこに隠し持っていた力なのか、恐るべき膂力を持って大剣が振るわれる。Λουκᾶςはそれを防ぎきるものの、続く一撃が回避しようのない一撃となって襲いかかる。大剣の横腹が頭部を打ち付け、Λουκᾶςの意識を奪った。
 同時に、イレギュラーズ達が動く。それ以上の攻撃はΛουκᾶςの生命を奪いかねないものだ。仲間の命を天秤に乗せるなどあってはならない。
 レジーナが引き金を引くと同時に竜胆が走り、二刀を振るう。大剣がそれを防ぐも、側面に回り込んだボルカノの弩弓が肩をえぐり取る。ぐらりと三女が揺れた。
「もらった――!」
 チャンスとみたリーゼルが飛び込み腹部を蹴り上げる。続けて、軸足を回して頭部を狙ったハイキックを繰り出す。だがこれを三女は首を反らして避けると、反撃に大剣を振るってリーゼルと斬り飛ばした。
「そのくらいにするんだな!」
「眠りにつけ――!」
 ランドウェラとジークが魔力を行使する。ジークの放つ怨念束ねた一撃が三女の腹部を捕らえ大きく後退させると、ランドウェラの威力を抑えた一撃が顔面を捕らえた。
「嗚呼――姉様――」
 呟くように吐息を漏らし、三女はようやく動きを止め、地面に転がった。
 持ち手を失った無骨な大剣が、ゆっくりと倒れ、深夜の街に一際高い金属音を響かせた。
「――はぁ」
 動きを止めた三姉妹を見て、ようやく大きな息を吐き出すイレギュラーズ達。
「とりあえず、治療して……ロープで縛ろうか」
 ランドウェラがそう言うと、イレギュラーズ達は同意するように頷き、倒れた三姉妹を治療し、身動きが取れぬように縛り上げた。
 こうして、猟奇的な殺人を行う三姉妹を、無事に捕縛、無力化することができたのだった――。 

●狂乱冷めず
「おい、テメエら、何でこんな事始めたんだ」
 戦い終わってしばらく後。ようやく意識を取り戻した三姉妹にリーゼルが訊ねる。
 近頃幻想では猟奇的な事件が相次いでいる。その原因がどこにあるのか、調査の必要があった。
 しかし――。
「ねぇ、このロープをお解きになって。私はもっと素敵な足を集めたいの! 衝動が私にそうしろと言うんですの!」
 三女エマリィが戦闘前とまるで変わらぬ態度で口を走らせる。
 同意するように長女エルリィも頷いた。
「ええ、ええ、私も頭、頭頭頭、がいいんですの。胸の奥の衝動が止められませんわ。さぁさぁ、早く解いてくださいな」
 次女エミリィが首を振るいながら、
「姉様、姉様、私も胸が張り裂けそう。やっぱりこれは神様の啓示ですわ! きっと私達を導いてくれてるんですわ!」
 支離滅裂なことを叫び続ける三姉妹。その後も、いくつか質問を変えながら問い詰めるものの、返ってくる答えは会話にならないものばかりだった。
「――だめだな。狂気に落ちすぎている」
 ジークが諦めたように首を振るう。
「魔種の影響だとか噂もあるけれど――どうにかこれ以上の波及は止めたいところね」
 レジーナの言葉に「確かに」と頷くイレギュラーズ達。三姉妹から情報を引き出せれば、手がかりが掴めたかもしれないが……。
 三姉妹の持ち物を調べていたランドウェラも、立ち上がり首を振るう。
「こっちもだめだね。怪しい物は特にもっていないようだ」
 三姉妹の前に立ったレウルィアが再度問いかける。
「わかる範囲で大丈夫……です。良ければ、今回の事件を起こす切っ掛け等を教えてください……」
「嗚呼、今とっても気分がいいわ。こうして手足が縛られてしまったけれど、なぜだか最高の気分よ」
「ええ、ええ、私もよエマリィ。あぁ、でも集めた頭達のことが心配だわ」
「きっと誰かに荒らされてしまいますわ。あぁ、困ったわ――」
 狂気は冷めることを知らず。三姉妹は会話にならない言葉を垂れ流し続ける。
 その様は、本当に異様で、どうして気立ての良いこの三姉妹がこのような狂気に染まってしまったのか、そのような人を変える何かが存在しているのか、という不安に背筋が震え上がった。
 立ち上がる竜胆が顔を顰める。人の矜持、想いを踏み躙り狂気に染めるその行為に。
「――本当に胸糞悪くなるわ」
 特段に嫌悪するその事に、忌々しげに言葉を吐き出した。
 一刻も早く、こんな事態が終わることを、イレギュラーズ達は祈るのだった。

 ――あはは、あはは。
 ――うふふ、うふふ。
 憲兵に連れて行かれてその姿が消えるまで、三姉妹達の狂気に満ちた笑いが、暗い空に響き続けていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

澤見夜行です。
依頼お疲れ様でした。詳細はリプレイをご確認ください。

皆さんのおかげで三姉妹は全員無事でした。ダイスにも恵まれておりました。
三姉妹のその後を考えると暗いものがありますが、それでも命を救えたのだと誇って下さい。

次の依頼が待っています。英気を養い備えて下さい。
ご参加ありがとうございました。

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