PandoraPartyProject

シナリオ詳細

One night ~臨時の従業員派遣~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夜の喫茶店 ショパン
 夜陰、ひっそりとした店内に秘密の声が聞こえる。テーブルにはルビー色のクリームソーダが輝く。三代目マスターの菊池だいちは常連客と話している。
「津々谷さんの話って本当に飽きないよ、もっと聞きたくなるんだ」
「もう~! 嬉しすぎ! ねーねー、菊池さん! 明日のイベントって何するの~?」
 女の甘い声を聞きながら、菊池は自らのピアスに触れ、「うーん。津々谷さんにも言えないなぁ」と笑う。遠くの席で微かな笑い声が聞こえた。
「……あたしと菊池君の仲なのに?」
「うん、シークレットだから。それは明日のお楽しみ。ただ、そうだね。明日だけの為に雇った子達がいるから来てみる価値はあるかも」
 心地よい声で菊池は言った。
「え~~~~……嘘、もしかして可愛い子はいるの?」
 女は目を輝かせる。菊池は女を見た。津々谷さおりは美少年に目がない。菊池は『小さな眷属』ルカ・マルコーニを思い浮かべながら、微笑んだ。
「……うん、勿論だよ。最高のキャストが揃っているんだ」

●『ファンドマネージャ』新田 寛治 (p3p005073)とのミーティング
 これは一週間前のこと。
「わざわざ、貸し会議室まで用意してくださったのですね。ありがとうございます」
 寛治がマスターである菊池に声を掛けた。
「新田さん! いえ、こちらこそ、わざわざありがとうございます」
 菊池は頭を下げ、「とても、期待しているんです、わたし」と微笑む。
「お任せください、まずはコンセプトからお聞きしても宜しいでしょうか?」
「ええ、今回のイベントのコンセプトは、私、一皮むけちゃいました★! トロピカーナ編になります」
 にこにこ顔の菊池。
「前回はわんわんパラダイスBダッシュ お散歩編でしたよね。今回もコスプレイベントということでしょうか?」
「そうです。調べてくださり、ありがとうございます。前回は犬のコスプレをしたんです。首輪とリードを必ず持参してもらったせいかかなり、盛り上がりました! 今回は、その日限りのキャストかつ初めてのコスプレで一皮むけちゃった★をコンセプトにお客様にドキドキワクワクしてもらいたいんです。ほら、新人さんのたどたどしさが新鮮だったりするでしょう?」
「ええ、それはありますね」
「ふふ、ありがとうございます。それでですね、『雨宿りの』雨宮 利香 (p3p001254)さんはご存じですか?」
 菊池は無意識に上目づかいをした。
「おや? 勿論、知っていますよ」
「良かったです、彼女とルカくんを今回のイベントのキャストとして雇いたいんです。この前、来たお客様が彼女たちの宿屋に泊まってとても魅力的だったと話していたのでわたしとしてもかなり、気になっていたんです」
「菊池様、私にお任せください」
「ありがとうございます!! あとですね、他にもお願いがありまして……彼ら以外の従業員を集めていただきまして、当日のコスプレ、スペシャルメニューの給仕をお願いしたいのです」
 菊池の言葉に寛治はしっかりと頷く。

●イベント当日 キャスト集結

 夜の喫茶店 ショパンで、コスプレ衣裳に身を包むイレギュラーズ。
「新田さん、今日はよろしくお願いしますね」
「ええ、成功させましょう」
 菊池とマネージャーの寛治は頷き合う。その様子を見つめていたルカがリカ=サキュバスに声をかけた。
「お姉ちゃん、外に沢山、人がいたんだ。きっとお姉ちゃんのこと、見に来たんだね」
 ルカは甘ったるい声を出し、リカをぎゅっと抱きしめる。所謂、甘えん坊モード炸裂である。一方で、リカはルカの頭を撫でながら、菊池を睨みつける。
「指名もそうだけど、どうしてルカも一緒じゃないといけないのよ」
(常連には美少年好きもいるみたいだし……)
 リカはルカに手出しされないかピリピリしている。

「あっ、はーい、はーい! 仕事の前にまずはお金を貰ってもいいよねっ?」
 『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈 (p3p006862)が飛び跳ねながら、菊池に手を突き出した。そう、貧乏JKとは彼女のことを指す。
「秋奈殿、此処では客からチップとやらを貰えるようじゃの」
 『迷い狐』リアナル・マギサ・メーヴィン (p3p002906)が声をかける。
「チップ?」
 首を傾げる秋奈。
「流石、メーヴィンさんね。賭けに負けた負債を此処で取り戻すつもりなのね」
 ずっと黙っていた『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス (p3p001981)が凛とした声を出す。ハッとするメーヴィン。ちょっとだけ存在を忘れていた。
「巻き込まれた姫騎士殿が何故、儂の秘密を……まさか、アルテミア殿も何か借金を抱えて……?」
「ないわよ!! 本当に巻き込まれたのよ……それなのにこんな格好で接客するなんて聞いてないわ。ね、アリシアさんもよね?」
 アルテミアはぎゃんぎゃん叫んでいる。
「私もそうですね、本当に通りがかっただけですから。あと、チップについてですが、お客様が此処でチップ……紙幣のようなものを購入して、キャストに渡すようですね」
 『黒焔纏いし朱煌剣』アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム (p3p000669)が言う。偶然、居合わせた一般特異点にしては詳しい。ちなみにこれは菊池マスターからの情報らしい。そして、このチップを渡す際に客は口に咥えたり、キャストの服の中に押し込んだり自らの服の中に入れ取ってもらったりするようだ。

「さぁ、お仕事頑張るんだ! 眠くならないように栄養ドリンクも飲んできたんだよ」
 『煌めく太陽の小さな天使』暁 ひかる (p3p001945)が幼馴染の『輝く月の小さな天使』月読 ひかり (p3p001877)を元気いっぱいに見た。びっくりするくらい無邪気な瞳だ。なんてったって、ひかるは従業員派遣の部分だけで依頼を引き受けた上に、強引にひかりを誘ったのだ。もしかしたら、何をするかよく分かっていないのかもしれない。
「そうですね、一緒に頑張ります」
 ひかりはすぐに微笑んだ。今宵は無邪気な相棒のブレーキ役にならねばならない。

GMコメント

 リクエストをありがとうございます。ハプニングも含めて夜の喫茶店での一夜をお楽しみください。皆様には好きにコスプレしていただき、皆様が考えたスペシャルメニューとマスターが作ったクリームソーダを提供してもらいます。接客態度は自由です。

■依頼達成条件
 夜の喫茶店 ショパンでお客様を満足させること。コスプレ必須で、何品でもいいのでスペシャルメニューを考えてください。

●依頼人
 菊池だいち 夜の喫茶店 ショパンのマスター。いつも微笑みながら仕事をこなす。彼がクリームソーダを作っている。

●夜の喫茶店 ショパン
 喫茶店は幻想にあり、PM20:00からAM5:00まで開いている。AM5:30から掃除。メニューはルビー色のクリームソーダのみ。喫茶店では、エキゾチックな香りを放つアロマオイルの揺らめきが見れる。従業員は皆、スーツを着ているが月に一度のイベント時にはスーツを着ない。先月は「わんわんパラダイスBダッシュ お散歩編」ということで、従業員も客も皆、犬の格好をした。従業員の性別は問わないが、女性率は高い。性別不明も勿論おります!!(大切)ちなみに喫茶店であるが、同伴もアフターもそれこそ、軽いおさわりも容認されている。ただ、マナーが悪い客は出禁になるうえ、マスターに嫌われたくないためにマナーはそれなりに良い。ただし、イベント時には新規客がくるのでマナーは普段より悪い。

●今回のイベントについて
 今回は「私、一皮むけちゃいました★! トロピカーナ編」
 キャストがコスプレし、スペシャルメニューの提供をする。客はコスプレ不可のイベントです。

【チップ】
 推しに貢ぐために使われる。このチップを渡す際に客は口に咥えたり、キャストの服の中に押し込んだり自らの服の中に入れ取ってもらったりするようだ。床にばらまくものさえいるらしい。

 ●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。と、言いますか……お客様相手なので予想外の事態は起きますよね。

●常連客
 津々谷さおり……美少年狂いの金持ち 
 ショタコンおじさん……名前不明のおじさん 粘着質でチップは弾まない
 ロリコンの人々……多数います 
 ショタコンの人々……多数います
 枯れ専……多数います 女性には厳しい人もいる
 ドM、ドS、天然女子、吸血鬼が好きな人もいますし、単におしゃべりがしたい人もいます。様々な人がいて、お触りを我慢している人が多い感じです。

【新規の客】
 二軒目として興味本位で来客するパターンが多い。基本的に酒に酔っており、マナーが悪くしつこく絡んでくる。ただ、間違って入ってくるパターンもあるし、一般人が入ってきて楽しく会話ができることもあります。新規客を常連にすることも可能ですね。

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 フリーダムなので大暴れしてください!! 


  • One night ~臨時の従業員派遣~完了
  • GM名青砥文佳
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月05日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談11日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)
紅蓮纏う黒薔薇
雨宮 利香(p3p001254)
永遠のキス
月読 ひかり(p3p001877)
輝く月の小さな天使
暁 ひかる(p3p001945)
煌めく太陽の小さな天使
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
プロメテウスの恋焔
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
策士
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
奏でる記憶

リプレイ


 まもなく、ショパンが開く。今宵も様々な人々がショパンの一夜を愛するのだ。
「従業員として働くからにはちゃんとやるつもりだけど……この衣裳は何なのよ……」
 『銀青の戦乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)が純白のウエディングドレス風の水着を纏い、溜め息を吐く。布面積は少ないが、水着は綺麗でとても可愛い。正直、夜のお店で着るより海辺で着たい。

「ねぇ、寛治様、これ本当に大丈夫かしら……?」
 『黒焔纏いし朱煌剣』アリシア・アンジェ・ネイリヴォーム(p3p000669)が恥じらう。
「問題ありません。むしろ、完璧な仕上がりで性癖が刺激されるかと」
 OKサインの『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)。アリシアは、髪色と同色の猫耳と尻尾、爪イメージのアームカバーやニーソックと靴、ファー付きの下着の様な衣装(デンジャラスな子猫【ルビはビースト】)を着ている。

(色々と不安なのですが……お仕事には変わりないので頑張るのです)
 『輝く月の小さな天使』月読 ひかり(p3p001877)はショパンの実態を何となく察している。
(でも、ひかるはちょっと変わったお店って思っているのです……)
 こっそり溜息をつく。とりあえず、スペシャルメニューは得意料理のサンドイッチ。勿論、ひかるの手伝いの申し出をやんわり断ったからきっと大丈夫。
「秋奈さん、凄い恰好だね!」
 テンションMAXの『煌めく太陽の小さな天使』暁 ひかる(p3p001945)。ひかるの衣装は学生服(セーラー服とスカート)。ひかりとお揃いだ。
「ふっふっふー! これは裸ブラウスなのです!」
 胸を張る『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。勿論、下着は着けている。
「帰宅して制服を脱いだところ、って設定なんだって!」
「暑くて?」とひかる。
「うーん、よくわかんないや!」
 秋奈はふふんと笑う。

「お姉ちゃんのコスプレ、とっても可愛い……」
 ルカが上目遣いで『永遠のキス』雨宮 利香(p3p001254)を見た。ルカはインキュバス、利香は牛のコスプレ姿だ。
「いひひひ、いい企画名だし今日は沢山、お仕事しましょ♪」
「うん。お姉ちゃんの為だったら僕っ!」
 ルカは瞳を潤ませる。

「全く、異様な雰囲気じゃな」
 『迷い狐』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は呟く。
「着替えないのですか?」
 執事姿の寛治が首を傾げた。一応、菊池が用意していたチャイナ服、顎髭、光る眼鏡を手に持っていたが。
「……貴女はもう、全裸に一升瓶でいいんじゃないですかね。全部、隠れますし」
「ほぉっ、斬新なアイディアで清々しいな。これで安心して接客……出来るかぁっ!!」
「え?」
 びっくりする寛治。
「いやいや! え、じゃないんじゃぁ! 生まれたままの姿と酒とはっ!? え? え? 明らかにおかしいだろ!? まだ捕まりto night」
 ぶるぶるするメーヴィン。やばい、そろそろ時間だ。
「はっ、完全獣化すれば全裸でも……」
 呟き、想像する。イケる、か?
『いらっしゃいませ~』
 ふさふさもふもふのメーヴィン(何食わぬ顔)
『あ、一人なんだけど大丈夫?』
 男(何食わぬ顔)
『勿論じゃぁ。こちらへどうぞ』
 すたすた、テーブルに案内する(何食わぬ顔)
 え、いや、これは──
「ニッチすぎるんじゃぁ! そもそも全裸に変わりはないんじゃぁっ! どう接客しろとっ!? まぁ、想像では普通に接客していたけれどもっ!!」
「もう、全裸でも何でもいいからもう時間よ」
 アルテミアが声をかける。
「え、いや、良くないだろ?」
 メーヴィンは困惑しながらバニーガールの衣装に。


 ざわめき。床を覆うチップ。皆、利香にくぎ付けだ。甘い香りの瘴気と漂うアロマ。たっぷりと揺れる胸(自称、混沌一)
「ハロー、今日は素敵な夢を見せてあげるわ♪」
 利香はトレイにクリームソーダを載せ、客と目が合った瞬間、ウインク。客は真っ赤になった。
(ああ、可愛いわ)
 くすくすと笑う利香。ふと、後ろから胸を掴まれる。
「あら、お客さん、クリームソーダ一つね?」
「はぁ? んなもんいらねぇよ」
 ゲラゲラ笑う男。
(うーん、常連ではない感じよ)
 ならば──
 上質なショーの幕開け。利香は、男からするりと抜け、頬に口づける。目を見開き、男は堕ちていく。
「ごめんなさい、ミルクはないの。いひひ♪」
 気を失った男を見下ろす利香。途端に大量のチップが舞う。

「凄いね、今日は」
 男は運んできたクリームソーダを嬉しそうに食べ、ちょっと遠いがアルテミアとの会話を楽しんでいる。
「ええ、そうね」
 微笑むアルテミア。目の前の男はアルテミアの顔しか見ていないが、その他の客はアルテミアをガン見している(特に胸や尻)
(ろ、露骨な視線が突き刺さるわ……)
 警戒するお触り。そう、『夜の喫茶店で知らない男達に触られちゃいました』なんてこともあるかもしれない。いや、なんだ、このチープなタイトル。
「ありがとう。なんかもう、天国みたいだよ。君は話をよく聞いてくれるし」
「それは石井様のお話が素敵だからよ」
「ありがとう。少ないんだけど君にチップを渡してもいいかな?」
「勿論よ。むしろ、光栄ね」
 アルテミアはブーケを差し出し、チップを受け取る。

「メーヴィンちゃん! スペシャルメニューまだぁ?」
「ちょっと待ってくれ!」
 メーヴィンはブルーブラッド大好きクラブの皆さんに絡まれている。
(ありがたいのか? ありがたいんだろうけど!)
 まぁこういうのはキャラクター性が強いと受けるだろうと思った自分をぶん殴りたい。
「忙しすぎじゃろ! ほら、スペシャルメニューじゃあっ!」
 どどーん! アイス。フワフワの綿飴で狐耳尻尾を型どる。そして、尾をモチーフにした牛乳プリン。
「わー、美味しそう!! んっ、美味しい!」
「可愛い~! おばあちゃんちにいるみたい!」
「なんでじゃぁ! 綿飴は乙女だし!? いや、プリン? 牛乳プリンか!?」
 反射的のグーパン。
「んっあ!?」
 会員番号8479は吹き飛んだ。
「あおと氏!?」
 立ち上がる皆さん。あ、やべとメーヴィンが抱き抱えると、あおとは幸せそうに微笑んだ。

 熱を帯びる。
「ふふーん! じゃんじゃんたのんでよねー!」
 秋奈の言葉に野太い声が同意する。
「はー! 我ながら奇麗に掃除出来たぞ!」
 店内はピカピカ。秋奈は雑巾を手に駆けまわり、炭酸水を作り、クリームソーダ用の氷をクラッシュしたのだ。
「ね、秋奈ちゃんはJKなの?」
「JKなのです!」
 男の隣に座り、身体を寄せる(新田P直伝)
「積極的だなぁ。おじさん、照れちゃうよ」
「へへぇ。おじさん、あーんなのです」
「え? あーん?」
 テレッテレのおじさん。
「クリームソーダのバニラ、美味しいですか?」
 上目遣い&敬語。確か、アリシアちゃんは表情も大切だって言ってたよね!
「お、美味しかったよ」
 うん、確か、甘かったような……? 一方、秋奈もまた、おじさんの表情を見ながら、悪いことをしているような気がしてきた。つまり、共犯者? まぁ、でも、接客ってこーいうものだよね!

「あの子、凄いわね」
 女が秋奈を見つめる。その手には冷えたお絞り。
「ええ。もしや、お嬢様は私より彼女の接客の方が良いのでしょうか?」
 悩ましげな表情。寛治は今、インテリ眼鏡のバトラー。
「お嬢様?」
 ハッとする。ぼーっとしていた。
「え? わ、私は貴方がいいのよ……で? 貴方は私に何を出してくれるの?」
 寛治は微笑し、「昔、馴染みのバーで教わったカクテル、『カリッツォ』です」
 二層の透明なフローティングカクテル。漂う、ハーブの香り。
「アブサン?」
「ご名答でございます」
「まったく、こんなものを出すとはね」
 女は笑う。私はお酒にとても弱いのよ。
 
「アリシアさん、このワッフル、ふわふわだし果物のジャムの酸味が最高ですね」
 男はスペシャルメニューの丸形のワッフル(クリームソーダのアイス付き)を食べ、「あの、迷惑じゃなければ握手してもらってもいいですか?」と笑った。
「ええ、勿論よ」
「やったぁ」
「は、兄貴、ずるい! あたしも握手したい!」
 スペシャルメニューのナポリタンを食べていた女が顔を上げた。幻想産を中心としたウインナーや野菜が沢山入っている。
「お兄様の後でもいいかしら?」
 彼女の手に触れる。接客経験と菊池のアドバイス(好意を持っている客にはあえて触れろ)を元にアリシアは行動する。
「あひ……あの、お願いします……」
 顔を真っ赤にする女にアリシアは目を細めた。

 ひかるはひかりと何度も立ち止まる。
「可愛いねぇ!」
 客はチップを床に撒く。
「ありがとうございます! ひかり、取ってー!」
「うん、ありがとうなのです」
 ひかりはぺこりとし、スカートから下着が見えないよう拾い上げていく。
「お待たせしました! こちらクリームソーダと手作りサンドイッチだよ……です!」とひかる。
「待ってましたぁ! あー! うん、美味いね。ねーね、ひかりちゃんのお待たせしましたも聞きたいー!」
「はい、勿論だよ! あ、です!」
 ひかるは笑い、客からちょっと離れているひかりを見た。
「ええと、お待たせしました。こちらクリームソーダと手作りサンドイッチなのです」
 ひかりは微笑んだ(つもり)
「はぁ~~しゅき! 制服なのがいいよね」
「えへへ、ありがとう、です!」とひかる。
「くるっとして欲しいなぁ」
「くるっと……です?」
「うん。思いっきりさ」
(──!! このお客様はひかるのパンツを狙っているのです)
 ピンとくるひかり。
「あ、ひかりちゃんも一緒にくるっとして欲しいなぁ」
「!! わ、わたしもなのですか?」
「うん。仲間外れは嫌でしょ?」
「!? え、いや……その」
 困惑するひかり。ひかるは今にも回りそうだ。
「出来ないの?」
「おらぁ! 一昨日きやがれじゃあっ!」
 メーヴィンの声。同時に一升瓶を客の鼻先に向ける。
「はぁ? こっちは客だぞ!」
「……知っているわ」
 アルテミアが近づいてくる。
「そうだろ、まったく、これだから馬鹿どもは!」
 その瞬間、アルテミアはブーケを客の顔に投げつけ、身を捻り、股を思いきり蹴り上げる。男は崩れ落ちた。
「──やりすぎよ、貴方」
 アルテミアはとても良い顔で客を見下ろす。

「秋奈ちゃーん!」
 秋奈はJKテクで客を楽しませている。
「秋奈ちゃんって好きな人とかいるのー?」
「お付き合いの経験はー?」
 秋奈はうまーく、失礼な質問をかわす。勿論、これは秘密なのだが、ヴァレー……げふん。野生のアルコールバーバリアンより彼らはマシだった。上機嫌な彼らのチップをばんばん、胸に押し込んでもらう。だって、ちっぷはむねにいれるものなのだ!

「ひかるちゃん、ひかりちゃん! チップをどーぞ★ あ、同時ねー?」
 男はチップを二枚、被らないように咥え、にこりとした。二人は体操服とブルマにチェンジ。
「……」
 ひかりは完全に引き、ひかるは少し躊躇いつつも、チップを咥え、ひかりを手招きして、どうにか二人でチップを受け取る。

 アリシアはくすりと笑う。目の前にはチップ。まずは男からの手渡しを丁寧に受け取る。今度は女がチップを口に咥えた。呆れる兄。アリシアは妹の頬にそっと触れ、キスをするようにチップを受け取り、微笑んだ。女は赤面し「好きです」と呟く。
「ありがとう、普段のショパンに私はいないけど、それでも良ければまた来て欲しいわね。ただ、私以外に触れては嫌よ?」
 流し目のアリシア。

「あ、あの……」
 ルカはさおりとショタコンおじさんのWパンチだ。
「ルカ」
 利香はすぐにルカの元に。
「お姉ちゃん!」
 助けを求めるルカ。利香はにっこりと微笑み、「ルカはとっても真面目で可愛いわよね」とさおりとおじさんに話しかける。所謂、牽制である。焦るおじさん。
「そうなの! だから、話してもいーい?」
 利香を見つめるさおり。利香は黙っている。
「うん、お姉さんの許可もとれたし。さ、ルカくん、クリームソーダを二つね」
 頷き、ルカは遠ざかっていく。
「あー、可愛いわぁ!」
「ね、耳の後ろをぺろぺろしたくなるね」
 おじさんの言葉に利香とさおりの表情が一気に険しくなる。

「お嬢様、大丈夫ですか?」
「え~? うんうん、大丈夫~。えへ~! チューしよー、チュー!」
 抱き着き、首筋にキスをする女。寛治は耳元で「お戯れが過ぎますよ、お嬢様」と囁く。その瞬間、女は酔いが醒めたような顔で寛治から離れていく。


 アルテミアは何十回目のクリームソーダを出しながら、気が付く。
(そういえば、私のスペシャルメニューの良いアイディアがあるって新田さんが張り切っていたけれど……あと二時間よ?)
「アルテミアさん、新田さんが呼んでいますよ」
「え、ええ」
 菊池に促され、向かうとそこにはスーツ姿の寛治。宣伝効果と事後のコンサルティングを交換条件に、休憩時間をもらったようだ。訳も分からず、テーブルに横たわるアルテミア。
「はっ!? い、いくら衣装で大変なことにはならないと言っても、こ、これはどういう事なのよぉ!!」
 真っ赤になるアルテミア。寛治はホイップやケーキをアルテミアの身体に。
「おっと、動かないでくださいね。折角、これだけの綺麗どころが揃っているのですから、私も楽しませていただきます」
(顧客視点での分析の為に必要ですからね)
 ただし、ルカの手前、利香は省いている。眼鏡を光らせ、寛治は胸のホイップをスプーンですくい、股に乗ったケーキを味わう。誕生する、恥辱のアルテミア。

 今度は秋奈を指名し、床にぺたんと座らせてセーラー服とタイツを良い位置に置き、「お兄ちゃん」と何度も呼ばせる寛治。その片手間にメーヴィンの尾の付け根に触れる。
「!?」
 瞬く間に歪むフレーム。食らう、メーヴィンの制裁。
「お兄ちゃん?」
 秋奈は心配そうに寛治を見下ろし、寛治はそっと拝んだ。

「ルカくんのクリームソーダ、美味しいー!」
「だねぇ」
 にっこにこのさおりとおじさん。ただ、傍に利香がいるせいで思ったより手出しができない。そのストレスからかさおりはルカに大量のチップを渡し、おじさんは利香に一枚、チップを渡す。
「お姉ちゃん」
「え?」
 見れば、ルカは眠たそうにしている。疲れたのかもしれない。
「あ」
 さおりとおじさんは目を丸くする。ルカはいつものように利香の胸に顔を埋め、すぐに「お姉ちゃん、大好き」と笑った。
 
「ええと、大丈夫なのですか?」
 ひかりは顔を腫らした寛治に驚いている。
「ええ、紳士たるものこの程度で活動を停止するわけにはいきません。此処は一夜のドリームですからね」
「はあ……」
「大変、お待たせしました! こちらスペシャルサンドイッチだよ、です! 寛治さんの為だけのサンドイッチだよね……です! このまま、あたしが食べさせてあげるです!」
 ひかるは誇らしげで、ひかりはびっくりする。ダークマターな手作りサンドイッチ。あろうことか、冷蔵庫の奥に隠していた材料で勝手に作ったらしい。ちなみにこの時の寛治は目を閉じ、ひな鳥の様に口を開け、咀嚼したのだ!
(まぁ、見た目が凄いけど味だけ普通なダークマターだから、見なければ大丈夫なのです……って、え?)
 寛治がさりげなく腰に手を回してきたので、ひかりは反射的に殺傷性の低い術を放ち、誰もいない隣のテーブルまで吹っ飛ばす。
「あら、寛治様は?」
 きょとんとするアリシア。いるはずのテーブルにいない。
「こっちですね」
 手を上げる寛治。何だろう、ぼろぼろだ。
「おや、お尻に糸くずが付いていますよ」
 何度も手を伸ばす寛治。アリシアは特に気にもしなかったが、にこにこと笑う菊池が寛治の肩をぽんと叩いた。
「お客様、ちょっとよろしいでしょうか」
「あ、はい」
 寛治は背筋を伸ばす。


「ありがとう、とても楽しかったー!!! また、来るね、菊池君! ルカ君、ありがとう。大好き!!」
 さおりは手を振ろうとするルカを引き寄せ、額に口づけ、ぱっと離れていく。
「じゃあね。お姉さん?」
 さおりは利香の胸に分厚いチップを押し込み、ひらひらと手を振り、帰っていく。
「……」
「まー、なんやかんやあったけど! 私たのしかったし! はっぴー! またせっきゃくしたいね!」
 秋奈は笑う。一瞬で殺気立った雰囲気が緩む。
「つ、疲れた」
 ガラガラ声のメーヴィン。十歳くらい老け込んでいる。
「酷い仕事だったわね」
 ジャージ姿のアルテミア。芋色だ。思い出したくもないスイーツ盛り。
「色々あったけどやり切ったね~。ひかり、お疲れ様!」
 まだまだ、元気なひかる。貴重なお仕事体験だったのかもしれない。
「お疲れ様なのです……ひかる、次からは依頼に行く前にわたしに内容を確認させてほしいのです……」
 対照的にげっそりしているひかりをきょとんと見つめるひかる。
「お姉ちゃん、頑張ったからその……いいかな?」
 利香を見つめるルカ。
「そうね。誰よりも甘やかしてあげるわ♪」
 夜の匂いを醸し出す二人。
「やりきったかしら……」
 うーんと背伸びをし、目を細めるアリシア。楽しかった。菊池は嬉しそうに笑い、イレギュラーズにたんまりと報酬を支払った。そう、この日の売り上げは今までで一番だったらしい。所謂、寛治の小切手と客のチップによって。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 出禁リストに新田寛治の名が刻まれた。

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