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シナリオ詳細

犠牲者の椅子~紫陽花館の贄~

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●犠牲者の椅子が4つ
「まさか貴殿らにこの様なことを申し上げねばならないとは甚だ遺憾である、が」
 境界案内人のヱリカは渋い表情を集まったイレギュラーズ達に向ける。
「殺人事件の犠牲者となり、死んではいただけまいか」
 そう言って頭を下げたのだった。

「詳しく説明しよう。
 貴殿らに向かっていただく世界は所謂「ミステリ」の世界である。
 悪辣なる犯人が居て事件を起こし、名探偵がこれを解決する……逆説的に、そのような儀式がなければ存在する事の出来ない世界。
 その世界で殺人事件が起ころうとしている……これ自体は問題ない。
 だが、事件が起こる直前に犠牲者役が消えた。
 文字通り、消えた。今まで生きてきたという証すらまとめて消えた。
 今あの世界で犠牲者になるはずだった4人の存在を覚えている者はおらぬ。」
 重苦しい息を吐き、ヱリカは目頭をもむ。
 原因は特定することが出来なかった、と絞り出すような声で補足して。
「故に、存在するはずだった4人の犠牲者として赴き、滞りなく殺人事件が行われるように努めて頂きたい。
 幸い……と言うべきなのかは分からぬが、その世界の住人は消えた4人の事に関しての記憶が曖昧になっておるようだ。
 犠牲者の椅子に座らば、貴殿らの考えた来歴を元に世界が記憶を補完するであろう」
 ヱリカは集まったイレギュラーズ達の顔を一人一人焼き付けるように見回すと、再び頭を下げた。
「どうか、どうか、よろしく申し上げる」

●紫陽花館の贄
 鬱蒼と広がる森の中にぽつんと洋館が立っていた。
 庭に植えられた様々な種類の紫陽花から通称「紫陽花館」と呼ばれるそこは、明治初期に富豪が別荘として使っていた由緒ある建物なのだという。
 かつての所有者が凄惨な事件を起こして以来、長らく放置されてきた紫陽花館であったがこの度リノベーションしホテルとして再スタートを切る事となったのだ。
 不吉な謂れがあるといったところで、その噂を知る者など当時の関係者位なものであるし、フランスから技術者を呼び寄せて作り上げたという内装や代々の主が集めた美しい調度品の数々は眠らせておくには余りに惜しい。
 そういうわけで、正式オープン前にプレオープンの客として6人の客人が招かれたのだ。
 招かれたのはいずれも館で起こった事件の関係者ばかり。
 一人は四葩・蒼(よひら・あお)。凄惨な事件を起こした前所有者の娘。事件当時は小学校入学前で事件後は親戚の下で育てられた。
 一人は島村・清司(しまむら・きよし)。本来呼ばれた招待客の代わりに現れた名探偵。
 そして……。

NMコメント

 どうしてもミステリ書きたかったんですが、トリックが思いつかなかったので皆さんには犠牲者の席に座っていただくことになりました。
 多分これが普通のライブノベルでは10本目。七志野言子です。可愛がってください。

 死にますが重傷になったりパンドラ減ったりしないのでご安心ください。

●目的
 殺人事件の犠牲者として死ぬ

 リプレイでは死ぬ直前の状況と殺された後に登場人物に発見される描写が主になります。

●NPC
 四葩・蒼(よひら・あお)
 こいつが犯人です。
 動機は「かつての事件の犯人にされた親の仇を討つため」です。
 ただし、皆さんの考えた来歴に沿って多少変化する場合があります。
 ついでに言えば、皆さんの考えた死因をすべて実行できるように存在も変化します。
 IQ1000の天才少女かもしれないし、力技トリックをこなすゴリラウーマンかもしれない。

 島村・清司(しまむら・きよし)
 名探偵です。
 リプレイの後に真相にたどり着きます。
 主人公ですがここではチョイ役です。もしかしたら出番ないかも。

●場所
 『紫陽花館』
 紫陽花がたくさん植えられた洋館です。
 洋館にありそうなものは大体ありますし、秘密の部屋や隠し通路もあるかもしれません。

●かつての事件
 四葩・蒼の親が犯人であるとされている事件です。
 でも真犯人は別にいるようです。
 やりたい立場に合わせて自由に設定してください。
 統合性は七志野が頑張って取ります。
 逆に何も設定しなくても大丈夫です。

●プレイングに関するお願い
・どういう立場で紫陽花館に訪れたのか
・どのように殺されるのか

 この2点をプレイングにお書き添えいただくようお願いします。

●サンプルプレイング1
 私はこの館の今のオーナーの娘という立場で紫陽花館に招かれるわ!
 オーナーの娘の立場を利用して一番いい部屋を貰って死ぬまでの間豪遊してやりましょ!
 おほほほ!ビールと裂きイカをありったけもってきなさい!
 かつての事件の事なんて知らないし、好き勝手やってやるんだから!
 あら?なにかしら?あの部屋少しだけドアが開いてるわ?ちょっと覗いてみましょう。
 ヒッ!まさかアンタは四葩・蒼!?
 いやっ!助けて!この事は絶対誰にも言わないから!あーれー!
 こうして可愛いわたしの刺殺死体が完成。
 翌朝、色が昨日と変わってしまった紫陽花の下から掘り出されるのよ……。

●サンプルプレイング2
 ケッ、まさかこの館にまた訪れる事になるとはな。
 俺はかつてこの屋敷で事件を起こしたと言われているアイツの親友だった……。
 だが、あの事件で俺はアイツを裏切ってしまった。
 妻を人質に取られてアイツが犯人であるかのような証言を警察にしてしまったんだ……。
 まさか今更その事を脅迫する手紙と招待状が送られてくるなんてな。

 誰が犯人なんだ!!俺は知ってるんだぞ!犯人はお前らの内の誰かだってな!!
 くそっ!くそっ!今更敵討ちのつもりか!
 こんな所でじっとしてられるかよ!俺は部屋に戻らせてもらう!
 ってかんじでフラグ踏み抜いて、館に施された仕掛け扉から現れた犯人に寝ているところを殴られて死ぬ

  • 犠牲者の椅子~紫陽花館の贄~完了
  • NM名七志野言子
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年05月31日 22時36分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
ガーベラ・キルロード(p3p006172)
noblesse oblige
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼

リプレイ

●第一犠牲者
 雨がしとしと降っていた。
 館の名前にもなっている紫陽花は天からの恵みを受けて一層葉を輝かせている。
 その中に『noblesse oblige』ガーベラ・キルロード(p3p006172)はあった。
 昨日、紫陽花館のオーナーとして挨拶した際の艶やかな笑みは既にどこにもない。そして、もう二度と浮かぶこともない。
 ガーベラは艶やかな金髪を打ち広げ横たわって死んでいた。
 紫陽花は赤く色づいている。あたかも返り血を浴びた犯人の様に。

 紫陽花館に招かれた内の一人である『腕時計で殴る』秋宮・史之(p3p002233)は頭を抱えた。
 史之がこの館へ訪れたのはスマホに送られてきた動画が発端だった。
 動画の向こうで包帯まみれの男が「おまえに四葩家の遺産をくれてやる。代わりに紫陽花館で過ごせ」と告げたのだ。
 再生が終わると同時にスマホはクラッシュし、その後、紫陽花館への招待状が届いたことで四葩家の遺産が真実であると史之は悟った。
 しかし、そこで殺人事件が起こるなど予想できようか。
 昨日、出迎えてくれたガーベラは無残な姿で発見された。死因は不明。外傷がほとんどない事から毒殺であろうと推測されている。
 探偵だという島田は恐らく別の場所で殺されて紫陽花の花壇に捨てられたのだろうと話していたが、それならば周囲に残っていた大きな……男物の靴の足跡は犯人のものだろうか。
(靴のサイズが近いからって俺が殺人犯だと疑われたりしないといいけど)
 頭を振って嫌な考えを追い出そうとしていると、ドアをノックする音が響く。
「秋宮さん?」
「君は四葩さんだっけ、どうしたの?」
「……貴方が何も知らないのは不公平だと思って」
 ついてきて、と言う蒼に誘われるままに史之は部屋を出た。
「じゃあ俺と四葩さんって異母兄弟?」
「そう、お父様の一晩の過ちの結果よ」
 蒼が案内したのは屋敷の中にある隠し部屋だった。
「これが四葩の遺産。沢山の人が求めて争ったエメラルド」
(ディープ・グリーンじゃん)
「毒を避ける魔力があるという曰く付きのものなの」
(そりゃ、毒無効だからね)
 隠し部屋の中で見せられたのは拳大ほどもあるエメラルドだが、史之の目にはよく闇市で見かけるソレにしか見えない。
「持っておいて。私は……あまりそれにいい思い出がないの」
「そこまで言うなら……わかったよ」
「よかった。じゃあ、もう少し話さない?今度は貴方の部屋で……私は軽食でも持っていくから」

●第二犠牲者
 二日目、雨は未だ降止まず、益々勢いを増して振っている。
 だが、そんなことはもはや史之には関係ない。
 起きてこない彼を呼びに来た使用人により史之は「発見」された。
 彼の右腕は切り落とされており、それがもう生きていないと誰の目にも明らかだった。
 瀕死の状態でも彼は必死に犯人の手がかりを残そうとしたのだろうか。
 左の指先は「ガーネット」と自らの血で綴っていた。

 『何事も一歩から』日車・迅(p3p007500)は、史之の死んだ部屋の中でふすっと鼻を鳴らした。
 この殺人現場はおかしい、と迅の軍人としての本能が叫んでいた。
 紫陽花館の闖入者である島村はむしろダイイングメッセージの方に興味を惹かれていた様子だったが、迅はこの部屋全体の雰囲気に言い知れぬ違和感を覚え、こうして一人で現場の確認に訪れたのだ。
「……血、でしょうか」
 じっと、史之の死体を検分して迅は小さく呟いた。
 そうだ、斬りつけられた人からは勢いよく血が噴き出る。まして片腕が落ちたとなれば床がびしょぬれになる程血が出ていなければおかしい。
「死んでも居ないのにこんなに血が出ないなんてあり得るのでしょうか?
 しかし島村殿はダイイングメッセージの筆跡は史之殿のもので間違いないと仰っていましたし……」
 一頻り迅は首をひねり――ふと、背後に気配を感じて拳銃を抜いた。
「きゃあ!」
「やっ、四葩殿でしたか! どうしたのですかこんな所で!」
「誰か中にいるみたいだったから気になって……」
 扉の前に立っていた蒼は、史之の遺体を見ないようにしながらそっと迅の傍へと近寄った。
「何かわかったんですか?」
「ご婦人に聞かせられるような内容ではありませんが……」
「構いません。なにも知らないよりも怖い事はありませんから」
「そうですか……。
 どうやら秋宮殿は死んでから腕を切り落とされた様なのです。
 体勢から考えて何かを守る様に必死に抱いていたのでしょうね……」
 まぁ、と蒼は小さく声を上げた。思案するように口元に手をやり。
「では、このダイイングメッセージは吐いた血で書かれたのでしょうね。口元に少しだけだけ血の跡があります」
「なるほど! 早速、島村殿にお伝えしなければ! しかし、ダイイングメッセージのガーネットというのは……」
「エメラルドでは、毒殺できませんからね。緑色のガーネットにこっそりすり替えたんです」
 迅は今度こそ拳銃を引き抜いて蒼に向けて構えた。狙うのは足。
 此処まで至近距離で自分が犯人であると告げるなど如何なる魂胆か。一旦無力化して話を聞く、に迅の思考は素早く切り替わった。
 しかし、引き金を引いても銃声は鳴らず。
(こんな時に不発とは!)
 迅に限って言えば拳の方が拳銃よりも強い。だが、それは殺すという事だ。
「こっちは秋宮さんほど苦しみませんよ。試したので間違いないです」
 思考が切り替わる前にちくりと痛みが走り、迅の意識は永遠に闇の中へと沈んでいった。

●過去を知る者
「マサカ、君がハンニンだったなんてね」
 断崖絶壁に立つ『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は後ろを振り向いた。
「みんな嘘ばっかりつくのね」
 視線の先にいるのは四葩・蒼だった。
「少なくとも貴方は私が犯人だって分かっていた筈よ。
 秋宮さんをこの屋敷に呼び寄せ死体から腕を切ってガーネットを奪ったのも、私が殺したガーベラを紫陽花畑に捨てたのも貴方なんだから」
「ソウダネ。ショウコヒンをそのままにしておけば君が動きにくいし、ハヤク死体が見つかった方が君も急ぐだろうと思って」
 それを聞いて 眉を寄せる蒼に、イグナートは極力軽薄に聞こえるように「ドウしたの?」と尋ねた。
 正直なところ、出来るだけ蒼に罪悪感を抱かせないように復讐を完遂させてやりたいという気持ちがイグナートの中にあった。
 そして、可能であれば自分が全ての罪を背負い、犯人として自殺するというフィナーレを迎えたいという気持ちも。
 その思いの起源は10年前の事件当日に遡る……。

 蒼の父は慈善家だった。
 福祉施設への寄付だけにとどまらず、自ら所有する紫陽花館に子供たちを招き歓待するほどには。
 その日イグナートも数多く招かれた子供の内の一人として遊んでいた。
 しかし、いつの間にか一部の大人たちが殺し合いを始めていたのだ。
 最初は脱出の出来なくなった館の中で逃げ惑い、怯え、後はもう集団ヒステリーだ。
 全員が全員「殺さなければ自分が死ぬ」と信じ切って大人も子供も殺し合った。帰ってこない参加者の家族からの通報を受けた警察が踏み込んで来るまで何日も。
 イグナートも混乱の中で手を汚したが、それでも逮捕されていないのは蒼の父が黙って全ての罪を背負ったからだ。
 それ以来、イグナートは蒼の父への贖罪の為に生きている。大学で彼の行っていた研究を引き継いだのもその一環に過ぎない。
「私、あの事件は貴方が悪かった訳ではないと知っているわ」
 それなのに蒼はぽつりとそう告げた。
「それでも、お父様の無実を知りながら黙っていたのは許さない」
 次の瞬間、イグナートの体は突き飛ばされ崖の下へと転落していった。

●一日目夜
 紫陽花館に到着した夜。ガーベラは蒼を屋敷の中の隠し部屋に招き入れていた。
「フフフ、久しぶりですわね、蒼。随分と大きくなりましたわね」
「ガーベラさん、お久しぶりです」
 実をいえばガーベラと蒼は旧知の仲であった。蒼の父と実業家であるガーベラは親交がありその縁で知り合っていたのだ。
「心配してましたの……だって貴女はあの人の娘……私は貴女を娘だと思ってますもの」
 ぽっとガーベラの瞳に情愛の炎が宿る。
「ご存じですわよね。あの人は私の愛を受け入れてくださらなかった……。
 だから少々「痛い目」に遭って頂いただけですのに……」
「四葩の家宝をちらつかせて、たくさんの人を殺し合わせた事が……お父様にその罪を被せたのが「痛い目」……?」
 感情を押し殺した、しかし抑えきれぬものがあふれた震える声で蒼が問いただせば、ガーベラは破顔した。
「オーホッホッホ! あの人が罪を被ったのはご自身の意思ですわ! 私はそのお手伝いをしただけ!
 子供たちの未来を奪いたくないだなんて……なんて優しい方!
 そして残酷な方! 永遠に私の手から逃れる手伝いをさせたのだから!」
 ガーベラは服の中に隠していたナイフを取り出して、とろけるような笑みを浮かべる。蒼は小さく「狂ってる」と呟いた。
「ですので、蒼……貴女には期待してますの……私の愛を受け入れてくださると!」
「嫌ッ! 貴女なんか絶対に受け入れたりしない!」
 刃を振りかざし襲い掛かるガーベラ。しかし、それよりも蒼が同じく隠し持っていた針でガーベラを突き刺す方が早い。
「あ……」
「私もね、貴方と同じでみんな殺してしまうつもりなの」
 一突きされただけでガーベラの膝が崩れた。毒だ。
「私は、お父様を陥れた貴女も、お父様が無実と知りながら声を上げなかった奴も、私と同じ立場なのに今までのうのうと生きてきた奴も、みんな許せないの」
「……ああ期待通りですわ……蒼。この調子で復讐を完遂しなさいな……これで私は……あの人の許へ逝ける……」
 最後の瞬間にガーベラに映るのは自分と同じ狂気を孕んだ愛する人の面影を映す少女の姿。

成否

成功

状態異常

なし

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