PandoraPartyProject

シナリオ詳細

そうだ、みんなカモノハシになればいいんだ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ぼくたちみんな、カモノハシ
 逃げなければ。逃げなければ。
 ぼくらはみんな、みずかきのついた手足で懸命に逃げていた。
 どうしてこんなことに。いいや、原因はわかっている。村の中に川があるからだ。
 この村は川を挟んだ西と東に分かれるように作られていて、その間は船や橋で渡るようになっている。
 川は村の名物にもなっており、観光客もそれなりに訪れるため、村の収入源のひとつともなっていた。
 だが、それがいけなかった。
 なんということだろう、くまがしゃけを取りに来てしまったのだ。
 この土地は不思議なもので、年中しゃけが川を泳いでいる。それを餌とするためにくまが村に入ってきてしまったのだ。
 あいつは瞬く間に川を占拠し、泳いでくるしゃけを獲るべく自分の縄張りにした。
 抵抗なんて無理だ。相手はくまだぞ。灰色熊だ。立ち向かうなんて怖すぎる。
 いや、確かに一度抵抗をしようとはしたんだ。所詮はくま。火を使えば追い払えるんじゃないかと。
 甘かった。あいつは特殊なくまだ。あいつがいるとみんなカモノハシにされてしまう。ぼくもみんなもカモノハシにされてしまった。ええい、水かきってぺたぺたして走りにくいな。
 横にいる妹を見る。カモノハシだ。かわいい。いやそうじゃなくて、不安げな表情でこっちを、いやカモノハシの表情ってわかんないのでやっぱりかわいいだけだ。
 ぺったんぺったんぺったんぺったん。
 ぼくたちは逃げている。暇になったくまが家の近くまで来てしまったからだ。くまがどっかに行くまで友達の家に泊めてもらわないと。ああ、友達もきっとカモノハシになっているに違いない。顔の見分けがつくといいのだけど。
 悪夢だ。誰か、誰か助けてくれ。

●カモノハシになりにいこう
「というわけで、村に住み着いてしまったくまを追い払って欲しいのさ」
 集められ、説明を受けたイレギュラーズ達は揃って首を傾げた。
 確かにくまは恐ろしい生物だ。一般的な村人による対処は難しく、熟練した猟師でもいなければ追い払うことも容易ではないだろう。
 しかし、逆を言えばベテランの猟師がいればなんとか出来てしまうものである。弓でも、銃でも、方法はいくらでもあるだろう。つまり、ローレットに回ってくるような仕事ではないのだ。
「そこが問題さね。普通のくまじゃあニャアってんだよ」
 情報屋は続きを説明していく。
 なんでも、そのくまがいる周辺ではくまとしゃけ以外はみんなカモノハシになってしまい、通常の対処手段では難しいのだとか。
 そこで、荒事の専門家になんとかしてもらおうと、ギルドに白羽の矢が立ったというわけだ。
「今のとこ重傷人は出てニャアが、くまが自由に歩いてるってニャら立ち行かニャアこともあるし、ずっとカモノハシってわけにもいかニャアさ。悪いけど、頼まれてくれるかい?」

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
人里に害をなす魔獣が現れました。これを討伐してください。

【特殊状況】
・このシナリオ内では敵の魔獣としゃけを除く全ての生物がカモノハシになるので、全てのステータスはカモノハシのものになり、装備、スキルも使用することは出来ません。ギフトに影響はありません。
・カモノハシの成体は防御型、攻撃型、魔法型、回復型に別れており、プレイヤーは自分が変身するカモノハシの種類を選択することが出来ます。一度選択するとシナリオ中は変更ができません。注意してください。(プレイングに自分がどのカモノハシか明記してください。明記がない場合、幼体として認識されます)

□防御型
・HPや防御能力に優れており、後述する[くまビーム]を受けた場合、貫通後の威力を大幅に減少させる能力があります。
・防御型のかかとの爪には『怒り』を付与効果があります。

□攻撃型
・近距離での物理攻撃手段に優れており、EXAが高めですばしっこいカモノハシです。
・攻撃型のかかとの爪には『毒』の付与効果があります。

□魔法型
・遠距離からの神秘攻撃を得意とします。魔法は威力が高い[投石]と『足止』効果のある[水かけ]から選択できます。
・魔法型はHPが低いので注意してください。
・魔法型のかかとの爪には『呪殺』の付与効果があります。

□回復型
・HPを回復できる[よもぎ](遠距離・単体)とBSを回復できる[ふきのとう](遠距離・単体・BS確定回復)を使用することが出来ます。
・回復型はHPが低いので注意してください。
・回復型のかかとの爪には『封印』の付与効果があります。

◇かかとの爪
・カモノハシはかかとの爪で攻撃することが出来ます。威力は高くありません。
・至近以外の距離で使用すると確定で判定に失敗します。

【エネミーデータ】
■くま
・周囲の生物をしゃけ以外すべてカモノハシに変えてしまう特殊な灰色熊。実力は通常の灰色熊の3倍程度ですが、カモノハシにはとっても危険な相手。
・通常のくまができることは大体してきますが、通常のくまよりも知恵があるので以下のような行動も取ります。

◇くまビーム
・貫通性能があるビームです。射程は30m程。一回使うと目がチカチカするので連続しての使用はできません。攻撃前に眼が光るのでわかりやすい。

◇しゃけブーメラン
・持っているしゃけを投げます。投げた後手元に戻ってくるので、攻撃判定が2回発生します。
・プレイヤーは主行動としてこの攻撃の邪魔を行うことが可能です。この判定に成功した場合、次のしゃけが生成されるまで3ターンの間、このスキルは使用不能となり、2回めの攻撃判定も無効となります。具体的に言うと飛びかかって受け止めます。
・万能、出血。

【シチュエーションデータ】
・村の中。
・川を挟んで作られた構造をしており、村の中に川があります。
・村人や家畜はすべてカモノハシになっているので判別は非常に難しくなります。
・昼間。

  • そうだ、みんなカモノハシになればいいんだ完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年05月31日 22時36分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Suvia=Westbury(p3p000114)
子連れ紅茶マイスター
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐
シエル・フォン・ルニエ(p3p007603)
特異運命座標
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
メーコ・メープル(p3p008206)
ふわふわめぇめぇ

リプレイ

●イレgyカモノハシーズあらわる
 動物になる夢を見たことはあるだろうか。猫になり、犬になり、鳥になり、魚にだってなったことはあるかも知れない。でも、カモノハシになったことはあるだろうか。ないよな。このお話はそういうみんなの願いから生まれたんだ。けして思いついて30分で完成したわけじゃない。

 我思う故に我ありと昔の偉い人は言っていたが、彼は果たして自分が人類ではなくなった場合でもそのように口にすることができただろうか。
 指の間には水かきがつき、口はのぺっとした嘴になり、あと全体的にずんぐりむっくりしてもこもこしている。そんな生き物になった時、果たして彼は自己を保つことができただろうかと書き始めると、ややコズミホラー感が出なくもないが、安心して欲しい。
 今回は間違いなく、カモノハシロールをするだけのお話である。
「あらまあ、何ということでしょう。カモノハシになってしまうなんて」
 ついぞ、ドジソンおじさんしか書いたことのないようなことを言ったのは『子連れ紅茶マイスター』Suvia=Westbury(p3p000114)である。
「カモノハシさんとして水遊びするのも楽しいかもしれませんが、茶葉代と養育費を稼ぐために、そして大好きなお茶を飲むためには、くまさんをやっつけてしまわなければなりませんの」
『協調の白薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247)は自らの水かきがあるお手々を見つめて何やら神妙そうに頷いた。
「ツッコミを入れたら負けな気がするのです」
 表情は不明である。人間の目線ではカモノハシの表情はわからないからだ。
 犬猫ほど身近だと比較的感情表現も見えそうではあるが、カモノハシの生態とかよく知らねえしな。
「兎に角、あのクマを倒してこの愉快な状況を解決するのです!」
 ラクリマはちっちゃなお手々をふわっと握って意志を固めた。
「慣れない身体だから動かし方とか、関節の可動域とかちゃんと把握してないとだ」
 そうは言うものの、『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)の視線は自分の可動域ではなく、味方カモノハシのお腹に向いている。良い毛並みの、触れば気持ちよさそうな、そんなお腹に向いている。
「あっルフナ先輩触りたいならあたし触っていいよー。やさしく触ってね」
『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)カモノハシがお腹を見せて転がった。これで元の姿だったなら色香が……それはそれとして、ルフナカモノハシは誘われるままにそのお腹をなでていた。
「ち、違うからねフラン。これはふわふわのお腹を見て思わず前足が伸びたとかじゃ、ないんだから、あっ、わりともこもこ……」
 もこもこ、ふわふわ。ぐにー。
「ゴリラ経験はあっても、カモノハシ経験は初だから楽しみだなー。カモノハシって鳴くのかな。キョエーとか? キエエとか?」
「カモノハシだってさー! なんでだよ!」
 勢いよく裏拳気味の張り手で虚空にツッコんで見せる『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)。それはほら、あれだ。書き表すことができないくらい深淵で壮大な理由があるんだよ。書き表せないからここでは書かないけど。
「カモノハシの鳴き声調べたけどよく分かんない!」
 寧ろ姿の見分け方もよくわからない。
「ま、カモノハシになろうとおにーさんのお仕事は護ることだけどね」
「皆カモノハシだって! 可愛いよ! 絶対可愛いよ!!」
『特異運命座標』シエル・フォン・ルニエ(p3p007603)のテンションは高い。カモノハシなので無理もない。
「あっでもおっきなくまを倒しちゃうから格好いいかな!? 可愛くて格好いいこれだ!!」
 ビシッと天を指してポーズを決めるシエルカモノハシ。しゃきーん。
「よぉしっ、可愛くて格好良いカモノハシになれるように頑張るぞー!! くまさん退治だー!!」
「依頼の内容が一回じゃ理解出来なかったから、多分、十回は聞き直したワケね」
 ゼファー(p3p007625)カモノハシは眉間を抑えてうんうんと唸っている。
「其れでもどう考えても聞き間違いかなんかだとしか思えなかったワケよ。だって、ねえ? 人間がカモノハシになるとかそんな話が」
 仲間の方を振り返ると、そこではとっくにみんながカモノハシ。ごろごろぺたぺたしているではないか。
「……マジでカモノハシだったわ」
「今回はクマさんを倒しにやってきましためぇ」
『すやすやひつじの夢歩き』メーコ・メープル(p3p008206)はもしかしたら、この場でもっともカモノハシらしくないカモノハシであるかもしれなかった。だって、語尾が。
「近くにいるとカモノハシになってしまうというなんともかわい(げふんげふん)恐ろしい力を持ったクマさんですめぇ……」
 言い直すメーコカモノハシ。
「村の皆さんのためにもみんなと協力して退治しますめぇ!」

●カモノハシ、くまさんをみつける
 カモノハシの踵には毒の爪がある。体系的にどうやって使うのかよくわからないが、きっと愛くるしい攻撃に違いない。その手段が端的に言って毒殺であろうとも、カモノハシの踵攻撃はきっと可愛い。みんなもやってみたいに違いない。その願いを叶えるべく、カモノハシは毒爪標準装備なんだ。なかなかないぞ、参加者全員が踵に毒爪持ってるシナリオ。

 村の中にあるという川。
 そこにぺったんぺったんえっこらえっこら水かきを進めたカモノハシーズ達は、そこで確かに大きなくまをみた。
 あえて漢字で書かず、くま、とか、くまさん、とか書くとファンシーさが増すが、残念ながらこれは逃げろと言いつつ追いかけてきて踊りだすような言動不一致の塊ではない。
 ぺしーんと腕をふるい、川の中をしゃけをとるくま。
 さながら試される大地の土産物めいた様相をしながら、そいつはカモノハシーズに気がつくと、縄張りを主張するように猛りをあげた。
 さあ、くま退治だ。がんばれカモノハシーズ。

●カモノハシ対くまさん(当社比3倍)
 しかしここで問題があった。カモノハシで戦うべき相手とはなんだろう。きっと森の悪いやつに違いない。たぶんくまさんだ。そういうわけでくまさんが悪いやつになった。カモノハシになる理由も欲しかった。そういうわけでくまさんパワーでカモノハシになることになった。なんて悪いやつなんだ。みんなをカモノハシにするだなんて。もっとやれ。

「食らえ俺の華麗なる白薔薇キックを!! シュババ!!」
 カモノハシのラクリマ―――ラクリマシの連続かかとキックがくまに炸裂する。
 普段の戦いでは後方での役割が主体であるラクリマにとって、最前線でキックをするのはなかなか新鮮なものがあった。
 それにしても、大きい。ただでさえくまというのは、人間サイズの頃であっても大きく感じるものだが、カモノハシサイズで見上げるとなると、それはさながら怪獣のようでさえあった。
 くまの攻撃がラクリマシのずんぐりむっくりしたお腹に命中する。それはお腹の皮下脂肪で弾むと、ぽてんぽてんと地面を転がった。
 むくりと起き上がる。身体は小さくなったのに、いつもより痛くない。
「大丈夫だカモノハシになったおかげでいつもより打たれ強い気がする……いける!」
 ラクリマシはぺったんぺったんくまに近づきながら鳴き声を張り上げる。それは、細かく描写すると商業的に怒られかねない皆も知っている森で少女が貝殻のイヤリングを―――
「俺の歌をきけーーー!!」

 大きく爪を振りかぶろうとしたくまの顔に、ぱしゃりと水がかけられた。
 Suviaの魔法である。えっちらおっちら水運んできてかけることのどこが魔法かと言われそうだが考えて欲しい。普通はカモノハシがそんなことをするはずがない。つまりこれは超常現象。物理的には起こり得ないこと。じゃあ魔法である。よし、納得したな。
 思わず顔を振りながら、爪を適当にぶんぶんと振り回すくま。水が目に入ってしまったのだ。不意のびっくりもあって、ちょっとだけわたわたしている。
 こっちくんな、やーだーって感じで手をぶんぶんしているが、それでは歴戦の勇士たるカモノハシーズを仕留めることなどできはしない。
 近接タイプのカモノハシに、隙間にもぐりこまれてぽこちゃか攻撃されるくま。
 Suviaもその間に、詠唱を終えていた。手には投げやすそうな大きさの石。先がちょっと尖っているここが当たればクリティカルだ。
 振りかぶって、投げ……術式展開!!

 ルフナが水面から顔を出した。
 水場のある戦場がデメリットにならないのであれば、それを利用しない手はない。川の中こそ、水陸両用生物たるカモノハシの真骨頂なのである。
 こちらに気づいていないくまにぱしゃりと水をかけてやる。
 背後から水をかけられてひゃあと肩をすくめるくま。振り向いたそいつに睨まれたが、攻撃される前にまた水の中に潜ることで難を逃れた。
「あはは、捕まえてごらん……なんてね」
 水の中を泳いで逃げる。泳ぎに限れば、元の姿よりもこちらのほうが早いのではなかろうか。
「しゃけ、めっちゃくちゃ邪魔だけど!」
 しゃけ、居すぎである。
 そりゃあくまも寄り付くだろうという程。泳ぐ度にくちばしが、みずかきが、頭が、しゃけのなにがしかに触れていた。
 自らもう一度顔を出すと、今度はくまがこちらを見ていた。
 危険を感じてももう一度潜るには遅く、しかし自分への攻撃は味方カモノハシが受け止めてくれていた。
「ええと……」
 味方の……見分けつかない。味方のカモノハシ。

 ヴォルペカモノハシはくまビームを受け止めると、己の身体を確認して一息ついた。
 いつもと違い、防御性能のある装備など身につけていない。あるのは毛皮と皮下脂肪のみであるため、くまビームなどという恐ろしい技を受け止めることに若干の不安があったのだ。
 問題ない。毛皮も焦げていない。きっと威力だけのビームで、焼け焦げたり毒性を持つような二次効果はないのだろう。なんて優しいビームだ。
 背後の仲間を確認したが、大きな怪我をした様子はない。確かに、この愛くるしいボディでビームの威力軽減には成功したようだ。
 ビームを撃った直後で眼がチカチカしているくまの懐に取びこんで……いくのは難しいので、両手足を使って懸命につかづく。
 ぺったんぺったんぺったんぺったん。
 そしていまだくらくらして目頭を抑えているくまに向けてサマーソルトキック!!
 かかとの爪がくまの胸のあたりを裂く。ヴォルペはそのまま華麗にぺたんと着地してポーズを決めた。

 なかなかにファンシーな光景なので忘れてしまいそうだが、相手は野生の動物くまである。ファンタジーな世界で生きていると、くまがどれくらい強いのかというのはわからなくなってしまいそうだが、簡単な比較をしてみよう。
 くまはゴリラより強い。よし、くまのヤバさは伝わったな。
 よって、戦っているとどうしても怪我を負ってしまう。カモノハシが痛そうな怪我をしているところなんて可愛そうなので描写しないが、それでもダメージは蓄積しているのである。
 そんな時こそ回復型のシエルカモノハシの出番だ。そのへんに生えていたよもぎをちゃんとストックしてある。
「回復はね! んぬって力溜めてふんぬ! ってぶつけるってフランさんから聞いたの!」
 恐ろしく感覚型。なんという擬音解説。入門書でこんなことが書かれていたら破り捨てたって怒られまい。
「いっけぇぇぇええこれが私の回復だあぁぁぁ!!」
 気合だけ見ると最終最後の大技みたいですが回復です。

 うまビームに貫かれて、フランカモノハシは宙を舞った。
 なんか予想外のダメージを受けたときだけ妙にゆっくり時間が流れる描写されるやつだ。
 避けることもできた。しかしそうはしなかった。フランカモノハシは防御型。皆の盾になる存在なのだ。
「『女は度胸』。これ故郷のおかーさんの教え!」
 ぐぐぐっとカモノハシが踏ん張って立ち上がる。
 強い痛み。体力低下による気だるさ。それでも、フランカモノハシが倒れれば、それは代わりに誰かが傷を負うということに他ならない。
 他のカモノハシに攻撃を加えようとするくまの前に、フランが立ちふさがる。がおーと吠えるくま。ちょーんと仁王立ちしているカモノハシ。
 そんなフランのもとにそれが投げ込まれた。
「シエルさんの回復、これは気合入ったやつだ!」
 もぐもぐ食べる。よもぎの使用法は傷に貼り付けることであるはずだがもぐもぐ食べる。きっと効く。
「ふんぬ! 力がみなぎってきたよ! よもぎムシャアふきのとうムシャアおいしい! おいしいよ!」

 メーコカモノハシが詠唱を開始した。
 仲間の出血がひどく、よもぎで癒やすだけでは足りないのだ。
 出血そのものを止めなければ意味がない。
 詠唱の第一段階として、まず草むらに入ってふきを探す。くちばしでいらない草を掻き分けて、ふんかふんかと探すのだ。
 見つかったら第二段階だ。必要なのはくきの部分。ここがふきのとうである。これを収穫して、水場でよく洗う。今はカモノハシだけど、元の姿を考えたらみんな、土がついたままのふきのとうは嫌がるはずだからだ。
 そして手頃な大きさにしたら詠唱完了である。1ターンって何秒だっけ。
「よもぎとふきのとう、いっぱい食べてくださいめぇ」
 ふきのとうは遠距離単体型のスキルなので、近づいて直接食べさせてはあげられない。だって遠距離だから。やはり気持ちをこめてえいやと投げるしか無いのだ。
 傷ついた仲間に向けて投げつける。その頭にあたってぽんと跳ねて、地面に落ちた。
 土がついたけど、拾って食べてね。

「オラッ! さっさと倒れなさい! ええい! 元の身体ならかなり良い回し蹴りが入ってたわこれ!!」
 ゼファーカモノハシはまだカモノハシであることを受け入れきれていないようだ。
 毒の爪をくまに突き刺し、華麗にくるくる回って着地をきめたが、元の姿とのギャップに苦しんでいるようだった。
 くまももう生き絶え絶えである。よく考えたらくまの3倍の強さとか人間状態でも結構ヤバそうだが、きっとカモノハシのポテンシャルが高かったのだろう。すごいぞカモノハシ。
 くまあ最後の大技に出る。川で獲れたしゃけの尾を掴み、ブーメランの要領で投げつけた。
 ぶおんぶおんと風を切って突き進むしゃけ。しかしゼファノハシはその軌道上に自分の体を差し込んだ。
「何か今なら飛べる気がする! ってことでスカイハーイ!!」
 受け止められるしゃけ。とりあえず川に放流する。これでもう使えまい。ちょっと勿体ない気もしたが。
「食べ物を粗末にしてんじゃないわよ、この毛むくじゃらァ!」

●カモノハシフォーエバー
 もういっそこのままカモノハシでもいいんじゃないか。

 ずしーんとくまさんが倒れた。
 その背中にカモノハシーズがよじ登り、皆思い思いのポーズを決める。かっこいい。
 しばらく、そのまま時間が流れ、そろそろかっこいいポーズも限界であった頃、ふと、誰かがつぶやいた。
「これ、何時戻るんだ……?」

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

翌朝起きたら戻ってました。

PAGETOPPAGEBOTTOM