PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ラージキンタマ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻影国に住まう紳士諸君よ、貴君らはブラジャーなるものをご存じか?
 大召喚以後、爆発的に増えたウォーカーたちがもたらした、ご婦人方のおっぱいを優しく包んでクイッとあげる革命的下着の名称である。
 カップ状の布に豪華にレースを使ったもの、細かな刺繍をあしらったもの、色もとりどり……。それは乙女の柔肌の上で咲き誇る文明の花。
 特に春ものは瑞々しい桃の色や菜の花の淡い黄色、芽吹きだした若葉の色に文字通り花の形をしたものや蝶のレース飾りがふんだんに使われている。
 が、しかし。
 紳士諸君、吾輩は気づいたのだ。
 この素晴らしき下着は……ご婦人方の胸を包むためだけのものではないということを。男にとって、愛でる以外にも使い道があることを!


「とんでもない変態が現れたのです!!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、固めた小さな拳をダンとテーブルに叩きつけた。
「変態はブラジャーをつけていそうな若い女性がマンホール近くを通りがかると、下に引きずり込んでおぞましい犯行に及ぶのですよ! 服をビリビリに破いてブラジャーを取ったあと、女性をそのへんに『ぽい』投げして逃げるのです!」
 ユリーカは両腕を回して自分の体を抱くと、ぶるぶると震えた。
 犯罪が多発する人気のない路地に放置された場合、女性が二次被害を受けるかもしれない。あなたならどうするだろうか。もし、上半身裸のうら若き乙女が暗い道の端でうずくまっていたら……。
 幸い、これまでの被害者たちは擦り傷と経度の打撲、精神的苦痛を受けているものの、全員が無事に保護されていた。
「でも、何かあってからでは遅いのです! このど変態を捕まえて懲らしめて欲しいのです!!」
 ちなみに、はぎ取られたブラジャーは数日後にすべて見つかっている。ただ、被害者たちは全員、決まってブラジャーの受け取りを激しく拒絶するのだ。理由は分からない。盗まれたブラジャーを見ると、誰もが固く口を閉じて顔を背けてしまうらしい。
「ボクだってそんなもの返してほしくないのです。あ、そうそう。変態が犯行時に叫ぶ決まり文句は『ジャストふぃぃぃぃぃっと!』らしいのです。そして女性たちはそれを聞いた直後に気を失っているらしいのです。何か意味があるのでしょうか?」
 ユリーカは首を捻った。

GMコメント

●目的
ただ、変態を捕まえて懲らしめる。

●場所と時間
夜。
これまでの犯行パターンから一番出現確率の高いユージン通り。
・ユージン通り。
北端でエスト通りとワイマール通りに分かれている。
 南端はノートン大通りと垂直に交わっており、角には女性に人気の貸衣装屋がある。
 貸衣装屋で着替えOK。
 変態は貸衣装屋の中を覗き見てターゲットを決めている可能性高し。

 ユージン通りには3つのマンホールがある。
UM1……通りの北端。
UM2……通りのほぼ中央。
UM3……通りの南端。貸衣装屋のすぐ前。

下水路は地上の道とほぼ同じ位置にある。幅も地上に準ずる。
 幅は5メートル、高さは2メートルほど。
 両端にメンテナンス用の石道(幅1、25メートル)がある。
真ん中を深さ2メートルの下水が南から北へ流れている。流れは遅い。
 一応、等間隔で壁にカンテラが吊るされている。明かりは弱い。
 なんとなく見える感じ。
北端がY字型の三叉路、南端がT字型の三叉路になっている。
 つまり、変態の逃走経路は地下が4つ、地上が(マンホールを上がって)4つとなる。

●その他
数少ない証言によると……。
・変態は1人
・ものすごい跳躍力
・ものすごい力持ち(用済みの女性を、 地上へ投げ飛ばしている)
・背が低い
・大ハサミと手斧を持っていた。
・上半身、皮鎧装備
・下半身は皮ブーツのみ装備
被害に遭った女性は、いずれもフルカップのブラを身に着けていた模様。
変態はどうやらアンダーのサイズより、カップのサイズを重視しているらしい。

  • ラージキンタマ!完了
  • GM名そうすけ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月14日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リオネル=シュトロゼック(p3p000019)
拳力者
因 千波(p3p000170)
外道の
ツカサ・カルデローネ(p3p001292)
異世界転生勇者少女(おっさん)
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
Masha・Merkulov(p3p002245)
ダークネス †侍† ブレイド
コリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)
ルクス=サンクトゥス(p3p004783)
瑠璃蝶草の花冠
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered

リプレイ


 宵闇の街に香を放つ花――。
 『外道の』因 千波(p3p000170)は足を止めると、大通りを見回した。通りを渡ったところで、正宗くん2号を連れたコリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)が点検予定と書かれた看板を手にして立っている。東の方角に、点火棒を持った点消方が小さく見えた。
 さりげなく視線を流して、匂いの元を探す。目よりもどちらかというと鼻の方が先に動いていた。目の効かない夜であれば、嗅覚のほうが鋭くなるのだろう。
(「うーん。いい匂いなんだけど、ちょっと……くどすぎるのよね」)
 ガス灯に火が入り、石畳の通り道を暖かな光が照らした。目指す貸衣装屋の窓縁にたくさん吊るされた紫の花を見つけたのはその時だ。
(「あれは、ライラック?」)
 『瑠璃蝶草の花冠』ルクス=サンクトゥス(p3p004783)なら、紫色の小さな花が穂のようになって咲く姿見る前に匂いだけで解ったかもしれない。だが、正解を聞こうにも、彼女はすでに『ダークネス †侍† ブレイド』Masha・Merkulov(p3p002245)ら他の仲間たちと一緒に下水道に潜入していた。
 それにしてもどうしてあんなにたくさん吊るしているのか。窓という窓、二階と言わず一階の窓にもギッシリとライラックが吊るされている。よくご近所から苦情が出ないものだ。ここの店主は、そうとう鼻が悪いに違いない。
 貸衣装屋のショーウィンドウを覗き込みながら、ずれたブラの肩ひもを直した。このさりげないしぐさ――「ブラつけています」アピールを、変態野郎がどこで見ているはずだ。
 ふと、視線を感じた。
 気づくと窓ガラスを介してMashaが連れて来ていたロバ、バルトロメオと目があっていた。
 ニヤリ、とガラスに映るロバが唇をめくる。
(「いやいやいや、これ、バルさんに見せつけたかったんじゃないから!」)
 ん、もう。
 首を振って狂った調子をとり戻すと、千波は店内に入った。
 その頃、『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)は下水道の中にいた。
 最初は自分だけでロープを使った罠を仕掛けようと奮闘していたのだが、片手ではどうにもならず、UM1からもう一つ北にあるマンホールを開けて一緒に下へ降りた『拳力者』リオネル=シュトロゼック(p3p000019)の片手を借りていた。
「……クサイにゃ。お鼻が、曲がってしまいそう……なの」
「しゃべるな。呼吸は必要最低限にしておけ」
 二人とも片手で鼻をつまんでいるので、話し声がくぐもって聞こえる。
 時々、漂流物が流れの中で向きを消えるたびに、何とも言い難い悪臭が暗渠の中に広がった。ゆっくりと流れていく下水に何が浮かんでいるのか、確かめる気にもならない。ただ、下水に落ちるとシャレにならないことはよく解る。
「こんなの……聞いていなかった、の」
 いや、ここ下水道ですやん。シッコが流れ、ンコがドンブラコする下水道ですやん。そのほかにもいろんなものが流れてまっせ。
「――?!」
「どうした、の?」
 ミアは、急に手を止めて暗がりを注視するリオネルを見上げた。ルクスと五感を共有する黒猫も、闇の中から金色の目を向ける。
「さっきへんな訛りの……いや、なんでもない。オレの気のせいだ」
 酸欠による幻聴か?
 長時間、ここにいると危険だ。リオネルは、はやく出てきやがれ変態、と内心で毒づきながら、トラップの作成作業を再開した。
「どうしたのじゃ? 向こうで何かあったか」
 ルア=フォス=ニア(p3p004868)は表情を固めたまま、動かなくなったルクスが倒れて下水に落ちないように、腕を取って支えた。
 誰が捨てた木箱の影で耳を澄ませていた『異世界転生勇者少女(おっさん)』ツカサ・カルデローネ(p3p001292) も、何事かと対岸にいる三人へ目を向ける。
 返事を待たず、Mashaは走りだした。
 いま身を潜めている場所から、変態が出入りに使っているらしき三か所のマンホール下へ行くためには、跳んで下水の川を渡るか、少し戻ったところにかかるメンテナンス用の石橋を渡るかのどちらかだ。自走なしに身長の二倍近くある幅の川を跳び越えるのは無理なので、ルクスと違って飛べないMashaとルアは橋を渡るしかない。
「……なんでもなかったようである。リオネルが何かを聞いた様子じゃったが、勘違いだったようであるの」
 Mashaは橋の真ん中で立ち止まった。
 口々から失望のため息が漏れる。
「くそ、勿体ぶらずにさっさとデカイ玉引きずって現れやがれ。タヌキ野郎が!」
 ツカサは立ちあがった。木箱を蹴り倒そうとして寸で止める。どこで変態が聞き耳を立てているかわからないのだ。大きな音を立てるのはさすがに拙い。
 ちっ、と小さく舌を打つと、木箱の後ろに再び腰を落とした。
 四人は陽がくれる前から人目を盗んでは個別に下水道に降りてきていた。あまりにも長い時間、悪臭の中に身を置いていたのですっかり鼻が馬鹿になってしまっている。このぶんだと、服や髪にもしっかり匂いが染みついているだろう。
「駄洒落ではないが花も枯れそうである……」
 さっさと変態をシバキ倒して地上に戻り、胸いっぱいきれいな空気を吸い込みたいと、誰もが思っていた。
 そこへ、カッン、カッンと、マンホールを打つ音が聞こえて来た。千波が店に入ったというコリーヌからの合図だ。
「あともう少しのガマンでござるな。――と、拙者はこのまま橋を渡って向こう側で変態が現れるのを待つであります」
「ふむ。では儂はマーシャの反対から向こうに渡って、ツカサと一緒に待機するのじゃ。ルクスはどうする?」
「我はここで待つ。もうしばらくの辛抱である、と北の二人にも伝えてやりたいし、変態が出れば飛んで行けるのでな」
 そういうと、花贄の魔術師は目と口をしっかり閉じた。


「ここで着替えて行ってもいいよね?」
「もちろん」
 エプロンをつけた小太りの店主が、長すぎる棒で背中をかきながら目を細める。
 千波はカウンターで料金を先払いすると、気に入った貸衣装を持って試着室に入った。
 手にしたのは、リボンの花がふんだんにあしらわれた可愛いドレスだ。桜の花柄レースに刺繍マシマシ、可愛らしい桃色のフルカップのブラとまるで揃えたかのようなデザインで、背中の合わせをリボン布で編み上げ、腰で大きく蝶結びにして止めるようになっていた。
 服を脱ぎ、ドレスの袖に腕を通そうとしていると、後ろでカーテンが細く開かれた。慌てて大きな胸を隠す。
 小さな木の手が、カーテンをひっかけているのが鏡に映っていた。その手の先に小さく店主の顔が見える。カウンターの後ろに座ったまま、背中をかいていた長すぎる棒でカーテンをひっかけているのだ。
「お嬢さん、背中を止めるお手伝いをしましょうか?」
 即座に、結構です、と断る。
 すっと木の手が引っ込んでカーテンが閉まった。

「飛び出した時にこれが絡みついてくれればー、逃げにくくなる筈っ」
 コリーヌはUM1と名付けられているマンホールに、お手伝いメカ・正宗君の手を借りて網布を被せた。南のUM3上にはすでに点検予定の看板を立ててある。これで変態の使うマンホールが一か所に絞られた。準備万端だ。
「よし、じゃあ、そこのカフェで何かテイクアウトして待とうか。……て、あれ? バルトロメオは?」
 どこへ行ったのか。姿が見えない。
「ま、いいか」
 あっさりあきらめて正宗君とともに移動し、カフェの横でサンドイッチをぱくつきながら変態の出を待つことしばし。
 貸ドレスに着替えた千波が貸衣装屋から出てきた。ドアの前でカンテラに火を入れると、すぐ角を折れてユージン通りへ入っていく。万が一に備えて正宗君を大通りの入口に残し、コリーヌもユージン通りに入った。

 ――と。

 貸衣装屋の裏から人影が飛び出してきたかと思うと、横から千波に抱き着きそのまま肩に担ぎ上げた。大ハサミの先をUM2マンホールのへこみにひっかけてフタ外し、斜め前へポンと飛んで下水道に消えた。
「パン……ティ……?」
 マンホールから悲鳴が聞こえてきた。はっ、として駆けよる。マンホールの穴の縁に膝をつき、頭を入れて中を覗きこむ。
 忍び寄るロバの影に気づかず、無防備に尻を晒しながら。


「わっ、なの!」
 下水道を乙女の悲鳴が響き渡った。
 ミアは黒猫とともに駆けだした。反対側の通路を全身発光、金ぴかリオネルが走る。
 南側で待機していた四人も、UM2マンホール下へ急行する。下水路を挟んで東側の通路をツカサとルアが、西側の通路をルクスとMashaが行く。カンテラの灯が集まるにつれて、下水道が驚くほど明るくなった。
「そこまでじゃ! 汝の悪行はお見通しじゃよ!」
 腕で胸を隠す千波のすぐ前に、ブラジャーを手にした変態がいた。下半身を剥き出しにし、顔にパンティを被った変態が。
「いますぐ無駄な抵抗を……」
 ルアの声がすぼまっていく。
 特筆すべきはやはり――。
「ラ、ラージ……」
 中身は正真正銘オッサンのツカサが驚きに目を見張る。
「キンタマ……」
 女の子がいっちゃダメ、な言葉をポロリと出させてしまうシルエット。ハンパのない大きさと重さ。
 ラージキンタマはブラックホール級の引力を発揮して、集まってきたイレギュラーズたちの目をぐいぐい吸い寄せた。
 女たちの足が、ゆっくりと、止まる。
「これは、これは。お嬢さんたち、おそろいで散歩ですかな? いや、もしかしてブラに秘められていた新しい使い方をカレシーに教えるため、私に会いに来たとか?」
「そ、そんなワケないなの!!」
 ミアのリボルバーが火を噴いた。
 ほぼ同時に、変態の真上からコリーヌが落ちて来た。

 ――チュィン、チュィン、チュィン!

 的から外れた弾が道と壁にこびりついていた正体不明のヌルヌルを削って飛び回る。
 ミアは変態の膝裏を横から狙ったのだが、コリーヌと頭をぶつけた変態がよろめいたために弾が外れたのだ。
 弾は最終的に下水に落ち、水しぶきが上がった。
「ギャー! 汚いでござる!」
「クセーッ!!」
「わわ、押すな。危ない、落ちる!」
 悲鳴と怒号が飛び交う。騒然とする中、変態は千波ブラの匂いを嗅いだ。
「ムホホホ。微かに甘い体臭が鼻腔を漂い、血が騒ぎ出す。このぬくもりが失せぬうちに……よろしい、見給え。タマブラを装着した我が雄姿を!」

 1、まずカップの形を整える。
 2、よじれに気をつけながら肩ひもに足を通す。
   足の太さに合わせてひもを伸ばしておくこと!
   サイドボーンは抜くか、グニャグニャ揉んで柔らかくするといいぞ。
 3、ブラを引き上げて、カップにキンタマを丁寧に収める。
 4、尻の肉を引っ張り上げるようにサイドベルトを前に回し、ホックでとめればOKだ。
   とめられない場合はホックベルトを継ぎ足してね♪

「ジャスト・フィーィィィィィット!!」
 変態のポールが雄々しく立ちあがる。が、桜のレースのカップに包まれたラージキンタマに比べれば存在感が薄い。
「ムフフ……まだ解っていないようだね、お嬢さんたち。タマブラを装着することでキンタマフリーになったコレの真価が!」
 あはん、うふん、と怪しい節をつけながら、変態が腰を激しく振りだした。

 まわる、まわる。てぃんてぃんが回る。
 ぐるん、ぐるん。てぃんてぃんが回る。

 かぶりつきで「ブラでジャストなラージさとか超見て見たーい!」と言っていた千波だったが、ブンブン回るチンをみてナチュラルにゲロを吐いた。某世界の某国にあるマーラ○オンみたいに。
 巻き起こるチン烈風! 口から流れ落ちるゲロを風下へ激しく飛ばし流す。
 真後ろにいたコリーヌとMashaにゲロ飛沫が直撃した。ルクスは飛んで下水流の上に飛んで逃げたが――。
「ひぃぃぃぃー!」
「ぎゃあぁっ!」
 チンの回転数が上がり風力が増す。下水が大きく波打ち、ルクスに襲い掛かる。
 東側の通路にいたルアと、とっさにミアを庇ったツカサもクサイ波をかぶった。
 壁に当たって砕けた汚水と汚物が跳ね返り、変態の後ろにいたリオネルにもかかる。さすがに体に突いた汚物までは発光させられない。
 リオネルから光が失われた。
 汚物の侵入を防ぐために鼻をつまみ、口を大きく開けずに怒鳴る。
「τε、τεμελεηαζετταιψυρυσανεε!!」
「ηενταισηισυβεσηι!!」
 何を言っているのかまったく分からない。
 汚物まみれ、血走った眼、意味不明の叫び。まるで怪物だ。
 黒猫は逃げ出した。
「それではお嬢さんたち、失礼するよ」
「ϑω!!」
「とぉー!」
 変態が跳びあがった。
 変態が落ちた。
 変態が弾んで下水にダイブする。
 第二のビックウェーブ。飛び散るンコ、充満する悪臭。
 流されていく変態と汚物マミーレたち。

 事件は予想外の展開となった。


 地下が阿鼻叫喚地獄と化していたその頃。
 地上でロバがロボと異種コミュニケーションを試みていた。

 ――キミ、名前は。
 ――ピポ……ポ? (いま……の?)
 ――オレか。オレの名は……いや、よそう。
 ――ピ?  ピピピッ!(え? コリーヌッ!)
 ――今夜はただのロバでいよう。
 ――ピポピピピッ!(助けなきゃ!)

 どん、と下から尻を突き上げられて、バルトロメオの体がほんの少し浮き上がった。
 正宗君――コリーヌのギフトが消えた。

 ――ふっ。月が、綺麗だ。


 波は大通りの下、T字路の壁にぶつかった。
 まず、汚物まみれの変態が。続いて汚物まみれのイレギュラーズたちが通路に打ち上げられた。
 気絶状態から最初に立ち直ったのはミアだ。小さな体を怒りで震わせつつ、ばば色に染まったブラタマを蹴り飛ばす。
「グェッ!」
「汚いの、蹴っちゃった……の……」
 脳天を突き抜けた痛みで変態が目を覚ました。ヨロヨロと立ちあがる。
 恥じらい、何それ?
 腕を解いた千波が、毛の生えたケツに鉄拳を叩き込む。
 右、左。右、左!
「オロ、オロ。オロ、オロ!」
 Mashaはほら貝を投げて、まだ元気な変態のチンに被せた。それからグリモアールをべりっと開く。
「下半身を重点的に攻めさせていただきますぞ! ほれ、ほれ、ほれ!!」
 魔弾がチン貝に当たって、ティンティンティン音を立てる。
 変態がアンアンアンよがる。
「小汚い音で儂の耳まで穢すか、痴れモノが!」
 ルアが放ったマギシュートは、ややカーブして跳び左横からチンを叩いた。
 衝撃でほら貝とホックが外れてチンとタマがポロリする。
「ほれ、千波。ブラを取り返すがよい」
「い、いらない」
 変態はむき出しになった股間を手で押さえると、泣きながら逃げ出した。
「おい、待てやこら! この勇者ツカサ・カルデローネ様から逃げられると思ってんのか!」
 金的攻撃の効果絶大さを知るツカサですら、変態にまーたく同情しなかった。目を吊り上げ、ハルバードの柄でケツをフルスイングする。
「オラァー!!」
 変態は跳んで対岸へ逃れた。
「逃がすかよ!! 今この場で終われ、信楽焼ヤロウがぁ!!」
 リオネルは変態の足目がけて盾を投げつけ、転ばせた。リボルバーを構えると、念には念を入れて、変態の足を撃つ。
 その間にコリーヌはメンテ用の石橋を渡った。
 ルクスは杖に絡みつく蔓を一本取って贄にした。太くしなやかな蔓を変態の真下から生やして体を縛る。
「もう観念した方がいいと思うんだけどなー?」
 コリーヌはもがく変態の顔からパンティをはぎ取ると、額に銃口を突きつけた。
 悪足掻きする変態の顔を見て千波が叫ぶ。
「あっ、貸衣装屋!!」
「なんじゃと?」
 正体がばれて観念したのか、変態は抵抗をやめた。
「貸衣装屋の主人だったのか。そうと解っていりゃ……」
 ツカサは歯をきしらせた。
 よくよく考えれば、女性の着替えを覗くチャンスがある者なんて限られている。タイミングよく駆けつけられるのも、すぐ近くにいればこそではないか。
 どうしてそこに思い至らなかったと己を攻める。こんなクサイ目に合わずに済んだのに。
「しようがないよ。誰だって犯行現場に注目すると思う。一番、情報量が多かったし。しかしまぁ、うん。……スゴイ、ねぇ?」
「ほんにスゴイのぅ。ここまでのモノは超レアじゃぞ?」
 だらんと伸びたラージキンタマを注視しながら、コリーヌとルアが変態をロープで縛り上げる。
「こらこら、女の子がそんな汚いものガン見しちゃいけません」とツカサ。
「よし、上に戻るぞ」
 リオネルは梯子をあがると、マンホールを横へずらした。
 ぐいっと体を持ち上げる。

 ――ボイィィン。

 リオネルは下水へ落ちた。
 ミアとルクスが腕を伸ばして流れていく足を捉え、踏ん張って引き上げる。
「どうしたのじゃ!?」
「あ!?」
 Mashaは見た。
 マンホールを塞ぐロバケツを。
「ゴラーッ! 尻をどかすでござるよ! もう終わったでござる!」
 下からグーパンチを見舞うもピクリとも動かない。
「あっちのマンホールから出よう」
 変態を引きずってイレギュラーズたちは走った。
 いち早くたどり着いたコリーヌが梯子をあがる。
「だ、ダメだ。開かない」
「お主、お手伝いを召喚しておったであろう? 呼びかけてみよ」
 正宗君には通信機能がない。それ以前に、さっきコリーヌが気を失ったときに亜空間へ戻っているのだが……。
 長い間、ギャーギャー、ワーワー叫んだ挙句に正宗君の手伝いを諦めて、イレギュラーズたちはまた走りだした。
「くそ! ここも駄目か。上に何か乗ってやがる」
 乗っていやがるのはバルトロメオである。さすが【荒野の弾丸】。足が速い。
「次だ! 次へ行くぞ!」
 

 結局、イレギュラーズたちが捕まえた変態とともに地上に戻ったのは夜明け前のことだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

成功です。
貸衣装屋で風呂に入り、貸衣装に着替え、ライラックの精油で匂いを誤魔化して帰路につきました。
しばらくの間、臭いに悩まされるかもしれませんが……。
あ、貸衣装屋はイレギュラーズの通報で憲兵に捕まっています。
変態はもうでない……はず。

この度はひでえ依頼にご参加くださり、誠にありがとうございました。

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