シナリオ詳細
いいから早くピザパーティーだ
オープニング
●千河ちゃんの故郷の世界で、大変な病気が蔓延しているそうです
「くあ……お疲れ様ー。ちょっと皆にお願いしたいことがあるのよ」
境界案内人、『雑踏の黒猫又』稲森・千河は小さくあくびを零しながら、その場の特異運命座標を見渡した。
そうして彼女が取り出したのは、一枚のチラシだ。簡素なデザインに赤文字ででかでかと『緊急のお願い』と書かれている。
首を傾げる特異運命座標に、千河が告げる。
「実はねー、私の故郷の世界でこのところ、感染力の高い新種の病気が流行ってて……そのせいで社会全体の経済活動がストップしちゃってて大変なのよ」
曰く、新型のウイルスによる感染症が世界全体で蔓延、多数の死者が出ており、各国政府とも大いに打撃を受けているのだそうだ。
人から人に感染するウイルスのため、極力他人との接触を避けることを要請しており、国民が出歩かなくなってしまったことが原因だという。
なんとも恐ろしい話に、千河が肩を竦めつつ頭を振る。
「特に打撃を受けているのが飲食関係。農家さんや酪農家さんは出荷先が減っちゃうし、飲食店はお客さんが来ないし……スーパーは開いてるから物を買えないわけじゃーないんだけど……んー」
そう話しながらも眠たいのか、伸びをする千河。緊張感が無いように見えるが、これがいつもの彼女である。
そして、彼女がもう一度特異運命座標に示して見せるのが、件のチラシである。
「で、私んちの近所のピザ屋さんが悲鳴を上げててねー、『安くするしテイクアウトもやるからピザ買って! おつまみも買って!』ってのが、そのチラシ」
彼女が言うに、チーズやクリーム、牛乳の仕入れ先として頑張ってはいるものの消費が追いついておらず、このままでは悪くなる一方だし酪農家さんも困るのだそうだ。
なのでテイクアウトを推進しつつ割り引いて、お客さんに買って家で食べてもらおうとしているのだということだ。
たくさん食べるには人手がいる。彼女一人だけでは限界がある。
ということは。何かを察した特異運命座標たちに、千河は笑いかけた。
「そ。つまりは皆にピザパーティーに参加してもらいたいのよ。好きな店で、安くて美味しいからさ。潰したくないわけ。
パーティーやる場所は私んち。あんまり大人数になるとそれはそれで感染リスク上がっちゃうから、まぁ呼べて四人までかなー」
彼女の自宅は、キッチン2畳に洋室8畳、バス・トイレ別の単身者向け賃貸物件。一人暮らしして使っているが、友人を呼ぶには十分な広さがあるということだ。
自宅に呼んで、ピザやおつまみを食べながら楽しくワイワイ。そういうことらしい。
「ピザは大概のものはメニューに載ってたはず。シカゴピザみたいな分厚いのとか、やたらでかいのとかは流石に無理だけど……まぁ、言ってもらえれば何とかなるんじゃないかしら。
おつまみ系もメニューの全品がテイクアウトOKだから、好きに頼んで。飲み物に関しては別のお店で調達する必要があるけど、スーパーが近所にあるし、まー何とかなるでしょ……」
そう話す彼女が、あくびを噛み殺しながらポータルを開く。開いた先の世界はいつも通り自然も文明もごっちゃ混ぜ、しかしどこか人気が少ない様子で。
「じゃ、準備はいいかしらー? それじゃ、よろしく頼むわねー……ふあ」
- いいから早くピザパーティーだ完了
- NM名屋守保英
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年05月14日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●ピザは正義です
「それじゃあ、まずメニューの端から端まで……」
「待って待って」
文明が発展したとある世界、日本っぽい国のとある場所、『雑踏の黒猫又』稲森・千河の自宅にて。
『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)がメニューを指さして言う前に千河が声を上げた。
ラヴと、一緒になってメニューを覗き込んでいた『ドブネズミ行進曲』パティ・ポップ(p3p001367)、『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が、揃って目を見開く。
「依頼人、やっぱりお金が足りなくなるでちゅ?」
パティが発した言葉に千河は、深くため息をつきながら呆れるように口を開いた。
「端から端まで頼むこと自体は止めないわよ、お金はあるし」
「そ、そうよね。はしたなかったわ」
「ちがーう」
焦りながら再びメニューを見始めるラヴに千河が強い口調で眉をひそめ、そして中央に設置されたテーブルを指さした。
「一気に頼んだピザ、どこに置くの?」
「あっ……」
何かに気付いたラヴが声を上げる。一人離れてカーペットに腰を下ろしていた『凡才』回言 世界(p3p007315)が、小さく肩を竦めた。
「そうだね、ピザを置けそうなのはこのテーブルか、キッチンくらいだ」
そう、千河の家は8畳の洋間の他は、2畳のキッチンと三点ユニットバスくらいしかない。狭いキッチンに何枚ものピザを置くことは出来ないし、テーブルの上も三枚が限度だ。
ゲオルグもうんうんと頷きながら口を開いた。
「うむ、一気に頼まずにタイミングを見計らって頼まなければな……冷めたピザは美味しくないともいうし」
「確かにそうだわ……冷めたら幸せではないもの」
ラヴがしゅんと肩を落とすと、千河が軽く腕を組みながら四人を見回す。
「そういうこと。せめて一度に三枚までにして。そうじゃないとお店の人も困るわ」
彼女の言葉にラヴもこくりと頷いて。メニューの一点を指さした。
「じゃあ、私はこの。『デラックスボリューミィ』と『ミート!ミート!ミート!』と『チーズマウンテン』のLサイズを。それから、フライドチキンとフライドポテトのパーティサイズをお願いします」
「いいちぇレクトでちゅ。チーズはちぇいぎでちゅ」
ラヴの発した注文を千河がさらさらと紙に書き留めていく。パーティーだし、ポテトやチキンがあっても問題はない。
パティが腕を組みながら頷いていると、笑顔を溢れさせてラヴが言った。
「それで、皆は何にするのかしら?」
「「えっ」」
その発言に呆気に取られたのは、一人二人ではない。パティがぷるぷると震えて、ラヴを見上げて口を開く。
「ラヴちゃん、まちゃかちょれ、全部ひとりで……?」
愕然とした表情で言う彼女に、穏やかな笑みでラヴが返す。
「ええ、解ってる。しっかり自重してるわ。足りなくなったらまた買いにくればいいのだもの……あ、チキンシーザーサラダもくださいな?」
「あっやばいガチだ。ラヴさん待って、せめてまずどれか一枚に!」
さらりと発せられた彼女の発言に、俄かに千河が慌てだした。何とかピザ一枚に抑えてもらおうと交渉する彼女を他所に、ゲオルグとパティは一緒にメニューを見ていた。
「ふむ、生地にも色々種類があるのだな……色々試してみたいところだ。パティはネズミだが、ダメなものはあるのか?」
「結構何でも食える感じでちゅ」
「なるほど。ではまずツナマヨコーンからにしよう。あとはコーラなる飲み物も頼まねばな」
ゲオルグはコーラ初体験。ピザに合うというその飲み物が、今から楽しみで仕方ない様子。
他方、世界は手元のメニューに視線を落とすことなく、鉛筆を走らせる千河に声をかけた。
「千河、そのピザ屋、チュロスはメニューにあるか?」
「チュロス? あるわよ」
「そうだな、十本頼む」
その口から発せられた注文に、先程ほどでは無いが千河の目が驚愕の色を帯びた。
「早くない?」
「ああ、もちろんピザもちゃんと食うから大丈夫だぞ。あとはオレンジジュースもつけてくれ」
「あ、オレンジジューちゅ、あちしもほちいでちゅー」
どうやら世界は、ピザよりもチュロスを主として食べたいらしい。
ともあれ全員の注文がようやくまとまり。スマートフォンを片手に千河が四人に目を向ける。
「決まった? じゃあ電話するわよ」
「「はーい」」
返事が返って来て、頷く千河が電話をかける。その背後で、カーペットに座って会話を交わす四人の声が聞こえて。
「食べるだけって、なんて優しい依頼なんでちゅね~」
「食べるのが仕事。何て素敵なの……」
「食べるだけでいい楽な依頼……いいな」
「あからさまにおかしい量のピザを頼んでも人助けだからOK! 残さずしっかり食べれば問題ないのだ!」
なんとも気楽。しかしこの場を設けたのは他ならぬ自分だし。
今は、気楽に楽しんでもらうのが大事だ。
「まぁいいか……いいよね」
●ピザパーティーは正義です
クリスピークラストのツナマヨコーン。
ハンドトスのチーズマウンテン。
ソーセージクラストのクアトロフォルマッジ。
フライドチキンにシーザーサラダ、バスケットにそれぞれ盛られたポテトとチュロスがテーブルに並ぶ。
ほかほかと湯気を立てるピザを前にした四人が、ごくりと唾を飲み込むと。
コーラで満たした紙コップを持ち上げながら、千河が口を開いた。
「じゃ……食べて飲みましょー。かんぱーい」
「「かんぱーい!! いただきまーす!!」」
それぞれの飲み物が入った紙コップを高々と掲げれば、全員が即座にそれを置いてピザに手を伸ばした。
伸びるチーズ、滴る脂。生地の焦げも、具材の味わいも、全てが調和していて。
「熱、っ。はふ。うん、うん、うんっ……美味しいっ」
「うん、うん……おいちいでちゅ~」
ラヴが、パティが、満面の笑みでピザを頬張れば、ツナマヨコーンを取った世界が、それを飲み込んでは感心して頷く。
「ピザなんて久しく食べてないが、こんな味だっけか? かなり美味いな」
「最近は美味しくなったと思うわよー」
千河と言葉を交わしながら数度首肯した。実際、飲食業界のクオリティ向上は目覚ましいものがある。
もう一枚に手を伸ばしたところで。世界がハッとした顔でチュロスを見る。
「おっと、俺の本命はこっちだ」
「はっはっは、甘いものは別腹と言うが、最初から甘いもので膨らませたらどうなるんだろうな」
ゲオルグもギフトで呼び出した羊のジークと一緒にピザを食べつつ、世界の言葉に笑みを零した。それに対し、不敵な笑みで世界はクアトロフォルマッジを頬張る。
「いいんだよ、実際いくらでも腹に入りそうだ。もうちょっと多く頼むべきだったか?」
そう言いながらがぶりとピザ生地を噛んで、飲み込んで、手元を空にしてからチュロスに手を付けていく。
カリッとした食感、砂糖の甘さ、これがチュロスの醍醐味だ。
他方、パティはその小さな両手でピザを持っては、はぐはぐとかお腹に収めていく。
「チーズが乗ってるのも、硬いのもいいでちゅね。おもちろいでちゅ……あっ」
ピザをあれこれ食べていて、気が付いた。量があるから仲間と一緒に食べてもいいかも。
「ちゅー、ちゅー、ちゅううう!!」
パティが天井に向かって叫ぶも。
返るのは静寂。
「……あれ?」
「ポップさん、ここはあたしんちよ」
チーズを伸ばしながら、にやりと笑って千河が言う。
そう、千河は猫又だ。ネズミが来れようはずもなく。
「……ハッ、そうでちた!!」
結果、またピザにかぶりつくパティである。
程なくして、ラヴの手が彼女の頼んだチーズマウンテン、その最後の一切れを口に運ぶ。気付けばサラダももう空っぽだ。
「あぁ、美味し……あら、もう無いわ」
そういう彼女に、苦笑しながらゲオルグがツナマヨコーンを彼女の方に差し出す。
「なんならこっちも食うか? 他の者とシェアするのも醍醐味だろ」
「いいの? ……いただきます」
シェアもパーティーの醍醐味、その言葉を噛み締めながら、ラヴの手が四角く切られたピザの一切れをつまみ上げた。
●甘いものもまた正義です
その後も何度か注文して、時にはラヴが自らピザ屋に注文に行って。
そうして数時間が経過して、テーブルの上が空になった頃。
「ふー、食った食った」
「満腹でち~……」
ゲオルグもパティも世界も千河も、皆が膨れた腹をさすりながら笑っていた。
ただ一人を除いては。
「皆、満足しちゃった? それじゃあ私は……もう少し買い足してきて良いかしら」
「「えっ」」
お察しの通り、ラヴである。まだ腹は満たされない様子で、財布を片手に立ち上がる。
「だって、流行り病の影響で、早めにお店を閉めるって貼り紙があったわ? 急いで買いに行かないと……『ペパロニオンステージ』も美味しそうだったわ。ふふ……」
「あ、ラヴさん、またレシート貰ってきて、後で清算するから」
千河が彼女の背中に声をかけるが、自身も腹が重くて動けない。ただ玄関に向かうラヴを見送るばかりである。
「ちゅごいでちゅ……」
その大食いっぷりに、誰もが呆気に取られていた、その時。
世界が鞄から、菓子折りを一つ取り出して封を切った。
「じゃあ、食後の甘味と行くか?」
「え、世界さん、さっきあれだけチュロス食べてたのに」
千河が呆気に取られて言うもどこ吹く風だ。
「アレは飯だろ。これは別腹に入るから無問題だよ」
「えー……」
あれだけ甘いものを食べていたのに、あれは甘味ではなかったというのか。納得しきれない千河が口を尖らせる。
そんな彼女から視線を外し、菓子折りをテーブルに置きながら世界は言った。
「まあ、細かいことは気にするなって」
「ははは、その通りだ」
彼の言葉にゲオルグも笑い、菓子折りに次々手が伸びていく。
そうこうするうちにラヴが大量のピザとサイドディッシュを抱えて帰ってきて。
まだまだ、パーティーは終わりそうにない。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
特異運命座標の皆様、こんにちは。
屋守保英です。
千河ちゃんの世界も何やら大変なことになっているようなので、食糧消費のお手伝いをしましょう。
●目的
・ピザパーティーを楽しむ。
●特記事項
・手洗いうがいはしっかりしてからパーティーに臨みましょう。
・飲酒は20歳になってから。年齢UNKNOWNな方については、外見が20歳以上なら飲酒OKとします。
●場面
稲森・千河の自宅。時刻は昼間。
8畳の洋室に大きなテーブルを置いてピザパーティーです。
ピザは千河の自宅近隣にあるピザ屋さんでテイクアウトしています。
飲み物は千河が買って冷蔵庫で冷やしています。
それでは、皆さんの楽しいプレイングをお待ちしております。
Tweet