PandoraPartyProject

シナリオ詳細

神懸かった13秒

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●閑古鳥を追い出そう!
「あぁ、もう商売あがったりだ!」
 異世界のCafe&Bar『Intersection(インターセクション)』。バータイムの時間は『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)が切り盛りしている。
 普段はあまり声を荒げない彼が、前髪のセットを崩すほどぐしゃぐしゃに頭を掻いている。

 悩みの種は火を見るよりも明らかだった。依頼で呼ばれた特異運命座標が辺りを見回してはみるが、店の中には営業時間にも関わらず、客が人っ子ひとり見当たらない。
 閑古鳥の鳴く店内で、赤斗は深いため息をついた。

「よく来てくれた。今回お前さんに声をかけたのは他でもない。見ての通り客足の遠のいちまったウチの店の宣伝動画を作って欲しいんだ」

 事件の発端は一週間ほど前の事。
『境界案内人』としての仕事中に、赤斗は訳あって別の世界に数日間捕らえられていた。
 彼が不在だった空白、店を放っておく訳にもいかず、案内人仲間の神郷 蒼斗(しんごう あおと)が代理を務めていたのだがーー。

「ジントニックを一杯」
「承知しました! えーと、ジントニックは確かジンとトニックウォーターを3:1の割合で混ぜて、レモンを飾って……はい、どうぞ!」
「ゴクッ。……ぐおおぉっ! の、喉が焼けるゥ!?」
「しまった、混ぜる比率まちがえてたっ!!」

「おーい、飲み物はまだ来ないのか?」
「すいませんっ、今お持ちします! ……あれ、あのお客さん何頼んでたんだっけ。ジンだった気はするんだけどフィズ? リッキー? トニックだった気がするし……」
「ジン・バックなんだが」
「あぁそう! それ……って、どうやって作るの?」
「客に聞くなよ!?」

 バーテンダー経験ゼロの男が、何百通りもあるレシピをサクッと作れるはずがなく。
 日頃のうっかりも加わって、トラブルを連発してしまったのだ。

「ちょっとでもお客さんが来てくれれば、そこから口コミで評判が広がってくれると信じてる。
 ただ、今みたいに全く誰も来ない状況じゃあな……」

 幸いな事に、この世界での赤斗のツテで動画の配信先や撮影機材の斡旋は出来るらしい。

「広告の尺はどのくらいでもいい。好きな長さで作ってくれ。
 ただ、この手の物は最初のインパクトが大事だからな。最初の13秒くらいで視聴者のハートを掴まないと、全部見ないでスキップされちまうモンらしい」

 つまり、目に触れた瞬間「これは!」と思えるポイントさえ詰めれば、後はやりたい放題やってもいいらしいのだ。

「この店の未来はお前さんにかかってる……頼むぜ、特異運命座標」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 カクテルのレシピは追及しはじめると沼なのです。

●目標
 Cafe&Bar『Intersection(インターセクション)』のバータイムの広告動画を作る。

●場所
 異世界にあるCafe&Bar『Intersection(インターセクション)』の店内。
 店主が行方不明で物語が止まってしまっていたため、赤斗・蒼矢が代理で店主を務め、特異運命座標の力を借りる事で物語を動かそうとしている世界。

 外は幻想のような西洋風の街並みが並んでいます。外ロケも勿論オッケーです。

●登場人物
『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)
 この異世界に貴方を招き入れた境界案内人。お店のマスターでもあり、今回の依頼人でもあります。
 特異運命座標とビジネスライクな接し方をしていましたが、少しずつ距離を縮めようと歩み寄りはじめたようです。

『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
 オープニングで名前だけ出て来た境界案内人。この世界でカフェタイムの店主をしています。赤斗と同じ身体を共有しているので、呼ばれれば出てきますが基本的には登場しません。
 今回は頑張って接客をしたようですが、空回りしてしまったようです。

●お店について
 ムーディーなジャズミュージックがジュークボックスから流れる店内。
 お客さんが来ている時は、ゆったりとした大人な時間を過ごせると評判でした。

 また、100種以上のカクテルのメニューがあり、創作カクテルも人気のひとつ。
 今は期間限定で、桜シロップと季節のジュースを混ぜたオリジナルカクテル『夢見オペラ』を提供しています。

●動画について
 皆さんで1本の動画を提供してもいいですし、個別で1本ずつ動画を出し合っても構いません。
 動画のジャンルも、普通に撮影したものは勿論のこと、アニメを作ってもOKです。

 見せたいポイントやキャッチコピーなどを考えておくと、お店の魅力が伝わりやすいかもしれません。

 シナリオ詳細やオープニングになかったようなお店の魅力を新たに追加しても大丈夫です。赤斗が新しいお店の魅力として実施してくれる筈です。多分。

 説明は以上となります。素敵な動画広告をお待ちしております!

  • 神懸かった13秒完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年04月26日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

スー・リソライト(p3p006924)
猫のワルツ
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
キャロ・ル・ヴィリケンズ(p3p007903)
P Tuber『アリス』

リプレイ


「何これっ! 首だけのマネキン?」
 揃えられた機材の中に謎の生首を見つけ、『猫のワルツ』スー・リソライト(p3p006924)が驚きの声をあげる。ふわふわの尻尾を警戒気味に立てる彼女へ、背後から『P Tuber『アリス』』キャロ・ル・ヴィリケンズ(p3p007903)が自信あり気に声をかけた。
「それはダミーヘッドマイクだにゃ! ソアさん、このヘッドホンを耳に当ててみるにゃ。スーさんはマネキンの耳元で甘い言葉を囁いてみるのにゃ」
「甘い!? えーっと……『綿あめふっわふわ~っ』」
「甘いの方向性、違うんじゃないか?」
 アドリブに対してすかさず『凡才』回言 世界(p3p007315)のツッコミが飛ぶ。
「だっていきなり"甘い言葉"って言われても、私そんな――」
「ふわあああぁぁ!?」
「ソアちゃん!?」
 叫び声に振り向くと、ヘッドホンを耳に付けたまま『雷虎』ソア(p3p007025)が頬を染め、ゾクゾクと音の余韻に震えている。
「――とまぁこんな風に、耳元で囁かれるように聞こえる特別なマイクなのですにゃ」
「先に説明してよ……腰抜けちゃうかと思った!」
 へろへろになったソアを介抱してあげるスー。仲の良い2人から視線を一度離し、世界は辺りを見回した。ホームビデオを録る程度の機材が用意されているかと思いきや、素人目で見てもプロ用と分かる物ばかり。
「友人から借りたんだ」
 まだ何も聞いてないのに赤斗が答える。
「目を逸らしたまま言われても、何の説得力もないぞ」
(これは怪しいですにゃ)
 嘘の気配を感じ、世界とキャロは視線を交わし合ったのだった。


「早速始めたいけど、広告動画ってどうやって作ればいいのかな?」
 ソアの素朴な疑問へ待ってましたとばかりにキャロが胸を張る。
「動画の作成依頼とは……本職である私に見つかったのが運の尽きにゃ!(?)
 なにせ私は『P-Tuber』、練達で開発された動画投稿サービス『Pan Tube』で動画配信してるのにゃ! 皆もPan-Tuberになろう!!」
 活動について語った後は、広告ティッシュによる布教も忘れない。
「トレンドの最先端を行く動画をプロデュースしてあげる!」
 彼女がまず注目したのは動画の尺だ。広告は長すぎるとイライラされるもの。長くても30秒くらいに纏めるのだと、撮ったばかりの映像を上手く切り貼りしてあっという間に纏めていく。
 スーが覗く頃には、本格的なTVCMばりの映像が画面に映し出されていた。
「もうこんなに編集したのっ?!」
「投稿の速度はP-Tuberの命にゃ」
"Cafe&Bar『Intersection』……ジャズと無数のカクテルが彩る大人の時間をあなたに”
 最初の10秒で伝えたいフレーズと共に映し出される店の外観。分かりやすさで視聴者の心を鷲掴みだ。
「最初の10秒でお客さんの心をつかんだら、次の10秒でそれを補強するのにゃ。
 敢えてぺちゃくちゃ喋る事はせず、ジャズを流しつつ売り込み通りの大人な雰囲気を出そうにゃ。メニューやオリジナルカクテルの見た目とかーー」
「メニューのカットは俺の動画にも使いたい」
 パソコンの前で頭を抱えたまま世界が声を上げる。後で一緒に撮ろうと約束は取り付けたものの、彼はまだCMの中身を悩み続けているようだ。
「いかん、いくつか試しに作ってみたが軽くスキップされそうな在り来たりな動画になってしまうな。どう考えても13秒以上見てもらえるとはとても思えん。やはり素人には厳しいか?」
 画面を睨みつけている内に、コトリとパソコンの脇へ置かれる紅茶とチョコケーキ。
「赤……いや、その目は蒼矢か」
 自分のせいという後ろめたさがあったようで、蒼矢はヒソヒソ声で世界と話す。
「カフェ営業の時の余り物だけど、よかったらどうぞ……で、首尾はどう?」
「俺をスイーツで釣るなよ。今回はみんなの動画でなんとかなると思う。まったく……次はおとなしく休業してくれよ?」
「うぅ、面目ない」
「次にこんな事があったら一晩タダで色々奢ってもらうから覚悟しておいてくれ、なんてな」
 このバーが閉じてしまえば、お昼時間のカフェ営業も無くなってしまうという事だ。おやつ時の選択肢が減るのは世界とて見過ごせない。ケーキを一口食べた後、フォークを咥えたまま熟考する事しばし。ふと降ってきたアイディアに眼鏡の奥の瞳が見開かれる。
「……いや待て、こうなれば逆転の発想だ。13秒くらいしか見てもらえないならそれだけ短い時間に纏めてしまえばいい」
 言うなれば短めのTVCMだ。店内で流れるジャズを流しながら、店内の様子や机の上に並べられた色とりどりのカクテルや料理を映す。最後に「貴方に贈る一杯の安らぎを…」というキャッチコピーを流しながら、店名やら住所やらの情報を載せて終わりだ。
 シンプルだが何のCMか把握しやすく、綺麗に撮れさえすれば何回かは飽きずにみられるだろう。
 情報量を厳選して載せるからこそ、この一言も外せない。

(※なお撮影に使った料理はスタッフ等皆でおいしくいただきました)

「メニューの撮影OKにゃ!」
「よし。じゃあ食うか」
「世界さん、もしかしてそのためにこのカットを入れにゃ?」
 キャロの口を飴玉で塞いで完封し、世界はゆるりと晩酌の時間を楽しみ始めた。
「もごもご。次はマスターのカットを撮影にゃ」
 飴玉を口の中でころころしつつ、キャルが赤斗へ立ち位置を指導する。遠巻きに見ていた世界がグラス片手に小首を傾げた。
「背中から撮るのか」
「あえての後ろ姿にゃ。正面から映しちゃうと、イケメンを見たい目的の人が満足しちゃうからね」
 どんな目的であろうと、まずは一人でも多くの人に来て貰うきっかけが大事なのだ。
 一人でもといえばと、スーが辺りを見回す。今もお店は営業時間の筈なのだが……。
「あちゃー……。完璧に閑古鳥ってやつだねー……」
 蒼矢の出すスイーツは絶品だが、カクテルはそうもいかなかったらしい。思い出もあるこの店のピンチを黙って見ている訳にはいかない。――と決意を固めた所で、後ろから声がかかる。返事をしながら振り向くと、春色の爽やかなブルーに目を奪われた。
「衣装を着てきたよ。……どうかな?」
「ソアちゃん、すっごく綺麗だよ!」
 大人びたワンピースを纏うその姿は溜息が出る程の美しさ。セクシーでありながらも、時折零す照れ笑いは幼さが滲んでいて、見る者をますます魅了する。
「えへへ、なんてオトナ空間なんだろう、BARって!
 ボクこういうところで格好良くお酒を飲んでみたかったの! だから難しく考えないでボクが憧れたシーンを動画にしてみたいな!」
「誰だって大人な時間を楽しめる、って……とっても素敵な事だよね。大人な人も、背伸びしたい人も。ノンアルコールのドリンクも美味しいし、色々な人が来てくれると私は嬉しいかなって。
 あ、勿論! マナーとかそういうのは大切だけどねっ!」
 一緒に頑張ろう、と2人は太陽のような笑顔を向け合う。動画作りの初心者ながら、魅せるのが得意な2人がタッグを組んだのだ。名作の予感にキャロもごくりと唾をのんだ。


 真っ暗なオフィスにぼんやりとパソコンの薄明かりだけが点いている。
 カタカタと部屋の中に響き渡るタイプ音。仕事疲れの会社員が背を反らして座ったまま伸び上がると、視界に見切れた時計の針は23時をまわっていた。
「そろそろ帰るか。終電も近いしなぁ」
 こうも遅い時間だと飲食店は軒並み閉まり、残る選択肢はコンビニ程度だ。帰りがけに缶ビールのひとつでも買うかと疲労で混濁とした頭で考えつつ、ブラウザを閉じようとしたところで――たまたま目にした広告に目を奪われた。

『あなたのための夜桜に出会えます』

 カウンター席に座り、目を伏せ気味に寂しそうな顔をしているトラ耳の美女。彼女がふぅと溜息をつくと、目の前へ桜色のカクテルが差し出された。
「『花見オペラ』で御座います」
「えっ……ボク、頼んでないよ?」
「あちらのお客様からです」
 バーテンダーが示した先を彼女が見ると、そこにはトレンディ俳優ばりにスーツを纏い、中折れ帽を斜めに被った猫耳の女性が座っていた。パチンと繰り出したウインクに誘われるように、カクテルを持ったトラ耳の美女が悪戯っぽく微笑み返して隣の席へ。
 楽しげな談笑と美味しい料理。オトナの楽しみがその数十秒にぎゅっと濃縮されていて――肩を寄り添わせ、2人が尻尾を絡める最後のシーンまで、男はつい広告に魅入ってしまった。

「この時間でも、バーなら空いてるか……」

 所変わって此方は若い女性の家。なんとなしに開いたPwitter――流行りのSNSでTLをスクロールしている内に、鮮やかな料理が目に留まった。世界のCMは、映えると話題になったのである。

「Cafe&Bar『Intersection』……ジャズと無数のカクテルが彩る大人の時間をあなたに」 
 店に来ていたカップルが、お馴染みのフレーズを口にしている。
「あっちのお客さんもキャロちゃんの動画を見て来たんだね」
 凄いなぁと感心したように呟くソア。広告を世に出してから数日後、瞬く間に客足は戻り、前以上の賑わいを見せていた。臨時でスーが手伝ってくれたから捌けているものの、今夜もラストオーダーまで忙しそうだ。
「動画の最初と最後に似たフレーズを入れて、外観と名前を憶えてもらったからにゃ。ギフトで異世界にまで広告を撒いたし、当分は安泰な筈にゃ」
「【ウサギの穴】ってギフトだったか。助かった」
 料理を運んできた赤斗に、キャロが得意げにウインクを返す。
「お礼にコラボ動画はどうにゃ? 借りたパソコンのソフトで気づいたにゃ。バーチャルP-Tuberの赤……」
 もご、と今度はおつまみのオリーブで口を封じられ、口をもごもごするキャロ。

 閉店時間まであと20分。大人の時間はまだ続くーー。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM