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シナリオ詳細

花粉を滅ぼせ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●春の訪れと共に
 すっかり暖かくなってきた最近の幻想領内。
 冬の寒さが和らぎ、ホッとしている人々も多い。
 しかし、その一方で春の訪れを心の底から嫌がっている者もいた。
「へっくしょい! あー…また今年もこの季節が…へっくしょ! くっ、つれぇ…」
 目が真っ赤に充血し、何度も鼻をかんでいる若者がローレット本部を目指して歩いていた。
 何度もくしゃみを繰り返し、独り言も満足に言えないようだ。
 真っ赤になった目を何度もこすっている。
 よほど痒いのだろう。
「冬の寒さもきついが、これも…へくしょい! うぅ、きちぃ」
 どうやら花粉症のようだ。
 とは言っても、彼も最近まで何が原因なのか分かっていなかった。
 毎年、この時期になるとくしゃみと鼻づまり、目のかゆみに悩まされてきた。
 あるイレギュラーズが彼の両親が経営するレストランを訪れた時、初めて知ったのだ。

●花粉が憎い
 そのイレギュラーズも彼の店でくしゃみばかりしていた。
「くしゅっ! こ、今年もきついなぁ」
「お客さんもですか? へくっしょい! 失礼……俺も毎年この季節は本当ダメで」
「いい加減にして欲しいよね、花粉」
「へ? 花粉?」
 最初は花粉が原因だとは知らなかった若者だが、イレギュラーズの彼女から色々と話を聞いてようやく分かったのだ。
 杉やヒノキといった木の花が咲くと、花粉が舞って辛い症状を引き起こすということが。
 そして、彼の家兼店のすぐ裏にある山には、杉とヒノキが大量に生えていて、それが原因で毎年苦しい思いをしている、ということにも気付いた。
 そんな彼にとって、次に取るべき行動は1つだけだった。
 厳密に言うなら、他にもあっただろう。
 しかし、現実的に取れる行動が1つだったので、同じことなのである。
 とは言え、彼はただのコック見習いだ。
 山にいるであろう精霊の目を盗んで山を焼くことなどできない。

 だからこそ、彼はローレット本部へ向かっているのだ。

●花粉が襲ってくる
 その後、ローレット本部に張り出されたのは、山にいるであろう精霊をかわし、若者の家兼店のすぐ裏にある山を焼いてほしい、という依頼書だった。
 杉とヒノキを焼き尽くし、花粉を滅ぼしたい。
 それが、若者の願いだったのだ。

 そんな彼の願いを叶えようと依頼を受けたイレギュラーズが山を訪れるが、当然のごとく山の精霊は彼らがやろうとしていることについて黙ってはいなかった。
 精霊は烈火のごとく怒り、山中の杉とヒノキの花粉を集めて自分の身にまとうと、イレギュラーズを襲ってきた。
 もはや精霊の元の姿は分からないくらい、花粉にまみれている。
 花粉の化物にしか見えない。
 それが襲ってくるのである。
 花粉症の者にとって、こんな悪夢はない。
 もはや、精霊とは言えども倒すしかない状況だ。
 ただし、花粉を全身にまとった精霊に触れられれば花粉症でない者も、その瞬間からひどい花粉症になってしまうという。
 花粉症の者は、症状がかなり悪化するらしい。
 ある意味、花粉の呪いだ。
 心してかからなければならないだろう。

GMコメント

 閲覧ありがとうございます、文月です。
 今回はまず山の精霊を倒し、花粉に悩まされる若者の依頼で山を焼くのが目的です。
 以下、補足となります。

●注意
 この依頼は悪属性依頼です。
 成功時の増加名声がマイナスされ、失敗時に減少する名声が0になります。
 又、この依頼を受けた場合は特に趣旨や成功に反する行動を取るのはお控え下さい。

●成功条件
 ・山の精霊を倒す
  まずは花粉を全身にまとった精霊を倒さなければ、山を焼くことが出来ません。
 ・山を焼き払う
  杉やヒノキはできるだけたくさん焼いてください。その際は人だけでなく、山に住む動物もできるだけ逃がして巻き添えが出ないようにしてください。

●確定情報
 ・花粉をまとった精霊に触れられると、花粉症の者は症状が悪化し、そうでない者もひどい花粉症になってしまう
 ・山の精霊の生死は問わないが、少なくとも気絶させるなど山を焼く邪魔ができない状態にしなければならない
 ・小さな山だが、山なのでそれなりの広さはある
 ・山では山菜やキノコがとれる等、杉とヒノキ以外にも植物があるので採取に来る人もいる
 ・焼くなら夜がオススメ
 ・山の所有者は若者やその親族ではない
 ・山は街から少し離れている
 ・山の近くには若者の家兼店があるが他に建物はない、もしくはあっても無人で巻き添えについては考慮しなくていい
 ・両親は若者の依頼について知らない(できれば依頼については両親にバレたくない)
 ・若者の家兼店の近くには他に杉、ヒノキが生えている場所はない

●その他
 口調や性格等が分かりやすいよう書いていただけたりしますと、大変助かります。アドリブ不可と記載がない場合は高確率でアドリブが入りますのでご注意ください。
 皆様のご参加、お待ちしております。

  • 花粉を滅ぼせ完了
  • GM名文月
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月06日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

空摘・骸(p3p000065)
ガラクタあつめ
ナーガ(p3p000225)
『アイ』する決別
高千穂 天満(p3p001909)
アマツカミ
ムドニスカ・アレーア(p3p002025)
暗夜司教
アリスター=F=ナーサシス(p3p002118)
モノクローム・ウィスパー
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
Briga=Crocuta(p3p002861)
戦好きのハイエナ
クテイ・ヴォーガーク(p3p004437)
不殺の心

リプレイ

●山の調査へ
 花粉症に悩まされている青年からの依頼のため、まずは対象となる山の下見に訪れたのは、『暗闇を覆う光』アリスター=F=ナーサシス(p3p002118)と『落ちぶれ吸血鬼』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)、『ガラクタあつめ』空摘・骸(p3p000065)の3人だ。
 観光客を装って昼間に山へと入る。
 依頼主に確認してみたが、山の地図は存在していないようだった。
 所有者はあまりしっかりとした管理を行っていないのかもしれない。
 そこで、依頼主から山の地理について分かる範囲で情報を聞いておいた。
 彼の知っている中で、杉やヒノキが最も集まっている場所も聞き出し、とりあえずの目的地に設定してある。
 3人はそこへ向かって歩いていた。
「こんにちは。良い天気ですねぇ」
 すれ違い声をかけてきたのは2人の男性だ。
「こんにちは。山菜採り?どんなのが生えてるのだろ」
 アリスターが軽く雑談を振ってみる。
「ええ。今の季節はコシアブラやセリが1番ですかね。採れる場所は申し訳ないけど内緒です」
 男性が笑いながら答える。
 山菜採りを生業としているのなら、他の者にはあまり教えたくないのも当然だろう。
「ああ、わたし達は山の木を調べてるんだ。心配いらないよ」
 商売敵だと思われても困るので、そう言っておく。
 嘘ではない。
 数分はアリスターが2人と話していただろう。
 その間、クローネは飛行してマッピングし、骸は手持ち無沙汰になり近くに生えていたキノコを採っていた。
 2人の山菜採りにどの辺りにどんな木が多いかを訊ね、杉やヒノキの多い場所を新たに知ることができた。
 山菜採りの2人を見送ってからは夕方になるまで、3人で杉やヒノキを探して山の中を歩き回る。
 クローネは飛行しながら目印になりそうな木、動物たちの巣や逃げ道となりそうな獣道を探していた。
 骸は歩きながらクローネと同様に探し、マッピングしておく。
 クローネと骸がマッピングしながら探り、アリスターは山の中で他の者と出会った時の対応、白墨で木に目印をつけていった。
 誰も周囲にいない時には、落ち葉や枝などを杉やヒノキの近くに寄せ、夜に火をつける時の手間を省いておく。
 風で多少は散ってしまうかもしれないが、全ての準備を夜に行うのは厳しい。
 少しでもこうして準備をしておくのは大切だろう。

 夕方になると、3人は山を下りて他メンバーと合流した。
 その際、下見で得られた情報を他メンバーに伝えたのは骸である。
 骸の説明で足りない部分については、アリスターとクローネが補った。
 さらに、『暗夜司教』ムドニスカ・アレーア(p3p002025)が近くの街で収集した情報を伝える。
 ムドニスカが集めた情報とは、山の中で人々があまり立ち入らない場所、よく行く場所についてだ。
 これらをふまえ、どのように火をつけていくかが決められた。

●精霊の怒り
 事前準備を整え、夜になってから山へ入ったイレギュラーズだが、火をつける準備を進めているところを山の精霊に見つかってしまう。
 その結果、山中の杉やヒノキの花粉を全身にまとった精霊と戦う羽目になったのだ。
「花粉症がつらいから山を焼く? そんなふざけたことを許せるか! お前らなんか、花粉症になって苦しんでしまえ!
 そんなもので防げると思ったのか。愚か者どもが! 私の触れた者は問答無用で花粉症だ!!」
 精霊はかなり怒っている。
 花粉にまみれて黄色くモコモコの何かになっているので、何となく迫力に欠けている。
 そして、精霊なだけあって話を聞かなくても心を読んだのか、こちらの事情も理解しているようだ。
 だからこそ、これだけ怒っているとも言える。
 花粉症対策や変装を兼ねてゴーグルやマスク、スカーフなどをつけていたイレギュラーズを見て、ますます語気を荒げていた。
「これは呪いだ! お前ら全員、花粉症で苦しむがいい!」
 イレギュラーズの誰でもいいからとにかく触れてやろう、と精霊が手を伸ばしてくる。
 体術使いである『いっぴきおおかみ』クテイ・ヴォーガーク(p3p004437)は、触らずに攻撃するのも無理だと判断したのか、気にせずに突っ込んでいく。
 肉薄戦スキルで一気に距離を詰め、拳を叩き込む。
 精霊の腹部に見事な一撃が決まり、その体は後方へと下がる。
 その瞬間、クテイが大きなくしゃみをした。
 ナックルを装備してはいるが、殴った瞬間、精霊に触れられていた。
 そのせいで精霊の言っていた通り、花粉症になってしまったのだろう。
 くしゃみを3連発し、目のかゆみに襲われているのか両目をこすっている。
 精霊はというと、倒れこそしないがダメージは受けているようだ。
 『天津神の末裔』高千穂 天満(p3p001909)は、精霊から触れられないよう距離を取るため移動し、中遠距離からの攻撃を狙う。
 移動しつつ、山中で木が多いため狙うなら遠距離よりも中距離の方が良さそうだと判断すると、魔弾での攻撃を狙い精霊に隙ができるのを待つ。
 骸が近づき、団扇で精霊をあおいで花粉を飛ばせないか試したが、全くその気配はない。
 精霊の手を上手く避けながら羽箒で払うことも試してみるが、精霊の強い思念によってまとわりついている花粉は落ちてくれない。
 骸はどうにか花粉を払い落として自らのギフト、良イもノミーつけタで探り当てた最も良質な部位を奪取しようとしているが、花粉はなかなか離れてくれないのだった。
 『戦好きのハイエナ』Briga=Crocuta(p3p002861)は前衛として行動し、後衛が精霊を狙いやすいようブロックする。
 精霊から触れられてしまう危険性は非常に高いが、誰かが動きを止めない限り精霊は自由に動き回ってイレギュラーズ達を花粉症にしようとするだろう。
 短時間で決着をつけるためにも、ブロックやマークを行う者が必要なのだ。
 クローネは遠距離攻撃を狙うため、木々の間をぬって攻撃できる地点を移動しながら探す。
 暗い中で狙うため見えづらいが、Brigaが持つカンテラやナーガが持つ松明の明かりがあるお陰で、どうにかなりそうだ。
 ムドニスカやアリスター、天満も松明を持っているが、離れて攻撃しようと精霊から距離を取っているため、クローネの攻撃に関係することはないだろう。
 とは言え、距離がある中でカンテラや松明の明かりだけでは、精霊の動きが止まらない限り難しい。
 Brigaがブロックしてくれているので、精霊の動きが制限されてはいる。
 その間に、ムドニスカが中距離から攻撃できるよう移動し、呪術による攻撃を行う。
 Brigaにブロックされているせいで精霊は思うように動けず、これを食らってしまう。
「よって! たかって! こんなことして、恥ずかしくないのか! 絶対、絶対! 花粉症にしてやる!!」
 精霊はますます怒り狂っているようだ。
 そんな精霊の状態を見ながら、密かに距離を取っていたアリスターが、怒り狂って罵っている精霊めがけて全力での狙撃を行う。
 スナイパーアイで強化しているのと、Brigaによるブロック、ムドニスカの攻撃を受けての怒りのお陰で見事に精霊の左肩辺りに命中した。

 精霊は肩を押さえながら呻いている。
 しかし、花粉まみれなので黄色くモコモコした人型の何かが呻いているようにしか見えない。
「さわられたらダメ、なんだよね? ならば、ねらうはタンキケッセン!」
 そこに背水の陣スキルで自らの戦闘能力をアップさせた『アイのキューピット』ナーガ(p3p000225)が、愛用のシャベル、慈愛の円匙を精霊の頭に叩き込む。
 シャベルで思い切り殴られた精霊は、たまらずに両手で頭を押さえ、ふらついている。
 ずっと精霊の隙を狙っていた天満にとって、これは最大のチャンスだ。
 このタイミングを逃すことなく魔弾で攻撃し、追い打ちをかける。
 トドメとばかりにクテイがスープレックスを狙うが、くしゃみが止まらないままだ。
 くしゃみを我慢しようとすると鼻がムズムズしてたまらない。
 鼻をすすり、くしゃみをしながらどうにか精霊に組み付くと、何とかスープレックスで投げ飛ばす。
 ただでさえ花粉症にされてしまって苦しそうだったクテイだが、さらに精霊に触れたことで花粉症が悪化した。
 目がかゆいどころか涙が溢れ、瞼が腫れて目が開けられない。
 鼻も詰まって口で呼吸するしかなくなっているが、かなり苦しそうだ。
 クテイはそのままうずくまってダウンしてしまった。
 他の7人はそんなクテイを見ながら、たかが花粉症とは言え程度によっては戦闘不能になることを知った。
 これまで、実は精霊は大した攻撃をしていない。
 ただ花粉を全身にまとって触りに来ていたのみである。
 触れた相手をひどい花粉症にするという地味にも思える呪いだが、実際になってしまったクテイを見る限り、かなり強烈な呪いだ。
 これだけの呪いであれば、アリスターのように生体パーツがない者であっても、ひどい花粉症になって苦しむ感覚だけは感じるかもしれない。
 生体パーツがないからと油断せず、離れて攻撃することにしたアリスターの判断は正しかったと言えよう。

●精霊と山にさよならを
「おのれえぇぇぇ!! まだだ! まだ1人しか花粉症にできていない! 負けてたまるか!」
 クテイによって投げ飛ばされた精霊だが、まだ叫んでいた。
 精霊が起き上がってくる前に、とクテイ以外の7人が一気に攻撃する。
 どうやっても花粉が取れないので無傷での部位奪取は諦めた骸がフリーオフェンスと格闘による全力攻撃を行い、Brigaは全力のスーサイドアタックを行いバトルアックスで斬りつけ、クローネがとどめを刺そうとミスティックロアを使って追い打ちをかけ、ムドニスカもミスティックロアで魔力を増幅し呪術の威力を高め、アリスターはAPを使い切るまで全力で狙撃を行って、ナーガはひたすら慈愛の円匙で精霊に殴りつける。
「く、悔しい……せめて、せめて全員花粉症に……」
 精霊はそう言い遺し、息絶えた。
 骸が精霊の身体の一部をいただこうとするが、その前に精霊の全身にまとわりついていた花粉が周囲に舞い、視界が黄色くなったかと思うと全て風でどこかへと飛んでいった。
 イレギュラーズの視界がもとに戻った時には、精霊の体はなくなっていた。
 まるで花粉になって消えてしまったかのようだ。

 精霊のことを少し可哀想に思う気持ちがあるイレギュラーズもいたが、依頼をこなすための時間には限りがある。
 急いで山の杉とヒノキを燃やすための準備を再開させるのだった。
 手分けして昼間の下調べでチェックしておいた杉やヒノキに油を撒いていく。
 クテイは今も精霊の呪いによるひどい花粉症のせいで1人では身動きが取れないため、天満が面倒を見ている。
 天満がクテイに肩を貸し、山を下りながら適当に油を撒いていた。
 クテイは1人で動けない状態なので、天満の動きも自然とゆっくりしたものになっている。
 ナーガは他メンバーの手伝いを主に行っていた。
 力には自信があるため、率先して力仕事を担当している。
 ある程度終わると、肉体言語スキルを使って動物達を山から逃がすために行動を始める。
 大声を出してみたり、地面を激しく叩いて大きな音を出したり、ドラミングを行ってみたりと、様々な方法で動物たちに危険が迫っていることを伝えようとしていた。
 骸は油を撒きながら一旦麓まで戻り、そこから火をつけ始める。

「こういう使い方するとは思ってなかったけどな、これも斧だしな、ウン……。なンか間違ってるような、間違ってないような、変な気がするンだよなァ……」
 Brigaはそんな風に独り言を漏らしつつも、自分の役目を果たしていく。
 火をつけると予定されていたのと反対側の麓へと向かい、途中で動物たちが逃げやすいようバトルアックスで木を切り倒し、逃げ道を作っているのだ。

「さあ、今こそ大いなる暗夜の下、浄化して差し上げマショウ。アッレェーア!」
 ムドニスカは松明を掲げ、適当に火をつけながら夜の山道を歩く者がいないか探していた。
 もし誰かいれば自らのギフト、大いなる暗夜で布教を行い、ギルドまで連れ帰ろうと考えたからだ。
 しかし、昼ならともかく夜の山道には、依頼のためにいるイレギュラーズ以外には人がいないようだった。
 どこかにはいるかもしれないが、うまく遭遇することはできていない。
「なかなか人がいませんネ……」
 つまらなさそうに呟き、下唇を人差し指でむにーんとめくる。

●燃える山は明るくて
 ある程度、動物たちを逃がしたナーガも木々に火をつけて回っていた。
 持っていた松明で油を撒いたところを中心に、適当に火をつけていく。
 他メンバーが巻き添えにならないよう、火をつけ始める場所も予め相談して決めていた。
 ただ、風の強さや向きは不確定要素だったので、ある程度考える必要はあった。
 クローネは他の場所で、できるだけ多くの木が焼けるよう念入りに火をつけていた。
「炎にまかれて死ぬなんて吸血鬼じゃなくてもごめんだ……」
 あちこちに火をつけて回ると、いち早く離脱した。
 アリスターも杉やヒノキに油を撒くと、風上の裾野から火をつけていく。
 自分の逃げ場がなくならないように火をつけて回り、満足すると山から離れて燃える様子を見守る。
 いい感じに山が燃え、夜空が明るく感じるくらいになると、アリスターも足早に立ち去るのだった。

 一方、天満は動物達がきちんと山から逃げてくれるように促していたが、クテイを連れているために逃げるのが遅れてしまった。
 火に囲まれ、急いで山から出たが火傷を負った。
 花粉症の症状で苦しみ続けているクテイをかばった結果である。
 2人は麓で山が燃えるのを見守っていた他のイレギュラーズの助けを借り、何とか離脱することができた。

 山のすぐ近く、火の手がギリギリ届かない程度の距離にある依頼主の自宅では、念のために家族全員が避難していた。
 離れた場所で燃える山を見守り、自分達の自宅兼店が無事だろうかとやきもきする両親を横目に、依頼主は心の中でガッツポーズを決めていた。
 杉やヒノキどころか山の植物はほとんど燃えたので、来年からは彼が花粉症に悩まされることはなさそうだ。
 どこか遠い他の場所から花粉が風で運ばれてこない限りは。

 クテイの花粉症については、精霊の呪いによるものなので精霊が満足すれば治るはずだ。
 ただそれがいつになるかは、はっきりしていない。
 明日かもしれないし、来週かもしれない。
 倒してしまったが、精霊次第である。
 ちなみに、依頼主の家があるのとは反対側の山の麓では、逃げ出した動物達が走り回り、ひと騒動あったらしい。
 とは言え、特に何かの被害が出たというわけではないのは、不幸中の幸いだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大変お疲れ様でした。
 今回は私、文月の担当しましたシナリオにご参加いただきありがとうございました。

 見事に依頼は成功となりました。
 依頼主の皆様への感謝の気持ちは大きいようです。

 怪我をされてしまった方、ひどい花粉症になってしまった方もいらっしゃいますが、少しでも楽しんでいただけましたならば幸いです。
 またの機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

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