シナリオ詳細
伝説の料理を求めて
オープニング
●伝説の料理を求めて
「ははは。馬鹿じゃねぇです?」
思わず渇いた笑いをあげながら、『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)は呟いた。
「はて、何か言ったかな?」
とある幻想貴族は、静かにそう返した。一度目は許す。二度目はないぞ。言外にそう含ませて。
「いえいえー、恐らくカラスが鳴いたのでしょう! あ、皆さん皆さん、美味しいお話ですよ! 比喩ではなく本当に美味しいお話!」
と、ファーリナは、イレギュラーズに向けてそう言った。
「なんでもこちらの貴族様が、皆さんに料理をお願いしたいとか。そう、今回は料理をするだけのお仕事! あ、料理と言っても、調理方法はとってもシンプル! こちらの資料をお読みください!」
と、ファーリナはテーブルの上に、資料をばちん、と叩きつけた。
ある料理書より
カッカツオの蒸し焼き
材料 (2~3人前)
カッカツオ 一匹
調味料 お好みで適量
調理器具
ココミザクラの木 一本(生えているもの)
山 一山
調理方法
調理方法はいたってシンプルです。生えているココミザクラの幹を大きくくりぬきます。表皮は後に蓋として使います。丁寧にくりぬいてください。
続いて、くりぬいたココミザクラの木の中に、カッカツオを吊るします。一本の木につき1匹が適量です。吊るしたカッカツオには、お好みで調味料を適量、振ってください。用意が出来たら、先ほど先ほどくりぬいた木の表皮を5cmほどの厚さの蓋にして、閉じます。釘などで軽く固定してください。
準備ができましたら、周囲の木々に火を点けます。一山燃える位の火力が理想的です。ココミザクラの木は非常に難燃性に優れ、とりわけ生えている状態では水分も豊富に含んでいるため、たとえ燃え移っても中は殆ど無事です。安心してください。
半日ほども山を燃やせば十分でしょう。周囲の火などに気をつけて、ココミザクラの木の蓋を取り外しましょう。しっかりと蒸し焼きにされていれば完成です。
ココミザクラの含んだ水分で蒸し焼きにされたカッカツオにはココミザクラの香りがうつります。この甘くもスッキリとした優しい香りと、程よい火力で蒸し焼きにされてほくほくとしたカッカツオの身が、まさに最高の味と言えます。
「はい、至ってシンプルですね! 生えてる木のお腹をくりぬいて、魚をつるして蓋をどん! そうしたら山に火を点けて完成です!」
半ばやけっぱちになっている感じもあるファーリナであったが、そんなことより、イレギュラーズはその調理方法とやらに驚いたことだろう。
山を焼く?
魚を蒸し焼きにするために?
「何か問題でも?」
貴族はあっさりそう言った。
なんでも、今回火を点ける山は、彼が地主から、適切な値段で合法的に購入したものだ。つまり、貴族の持ち物である。となれば、自分の持ち物で何をしようと貴族の勝手であろう。
が。
「何を勘違いしているか知らんが、地元で反対運動が起こってな。とりわけ頑固な連中が、武装して山の入り口を占拠しておる」
フン、と鼻を鳴らし、忌々し気に貴族が言った。
「ちーなーみーにー。その山って言うのはですね、ココミザクラがそれはそれは美しく咲く、地元でも有名な花見の名所だそうでしてね。まー、そりゃ反対運動もおこるよなーみたいな感じです」
と、ぼそり、とファーリナが言った。
そもそも、山に火を点けたりしたら、野生動物に甚大な被害が発生するだろう。住処を追われた猛獣の類が山を下り、人里へやってくる可能性もある。
百害あって一利しかない。とんでもない料理法だが――。
「とは言え、美味しいらしいですよ、この調理法で作ったカッカツオの蒸し焼きは。どうしても食べてみたいのだとか。そいうわけで、今回の依頼なのです。料理をするだけ、と言いましたが、正確には違いますね」
正しく言えば、入り口を占拠している武装集団を排除し、料理をする。
「もちろん、タダで、とは言わん。適切に報酬は支払うし、貴様ら一人に一匹ずつ、カッカツオも分けてやる。活きのいい最高の品を用意した。貴様らでは一生食えんような美味が味わえるぞ」
意地悪気に笑いながら、貴族が言う。
「まぁ、そんなわけですので。是非是非お仕事を完遂していただきたい次第」
営業スマイルを浮かべながら、ファーリナが言った。
さて、イレギュラーズ達は、この依頼、どう料理するか――。
- 伝説の料理を求めて完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常(悪)
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年04月07日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●今日は絶好のお料理日和
季節は春。時刻は少々朝早く。天気は良く、風も心地よい。今日は絶好の『お料理日和』と言えた。
そう、料理、である。
イレギュラーズ達の今回のお仕事は、ちょっとしたお料理だ。カッカツオと言う魚の蒸し焼き。非常に『豪快な』調理法で作られるその料理は、なんでも伝説に残るほどの絶品なのだとか。
そう言ったわけで、イレギュラーズ達は、調理器具と材料を持ち、目的地である、とある小さな山へと向かっていた。
「いやー、山を焼かれちゃ村人さんも困っちゃう、可愛そう……ま、どうでもいいよね。私には関係ないこと! それより楽しみだね。どんな味なんだろ!」
『戦神』御幣島 戦神 奏(p3p000216)が笑いながら言った。そう、焼く。山を焼く、と言った。
「ねー、美味しそうだよね。楽しみー」
『「冒険者」』アミ―リア(p3p001474)が、にこにこと笑いながら言った。山を燃やす、と言う所には触れない……と言うより、興味がない、と言った様子だ。
「実に気になります。山一つを燃やす調理法とは、なかなか斬新ですからね。異世界料理も侮れません」
頷きつつ『 』ヘルモルト・ミーヌス(p3p000167)が言う。
イレギュラーズがこれから行う料理とは、山一つを焼いて作られる蒸し焼きである。実に豪快、かつ斬新だ。
「カッカツオ、とてもおいしいとは聞いてるけど、どんな味なんだろうな。食べるのが楽しみだ」
『藤の花』藤花・遥音(p3p004529)もまた、楽しげに言う。話によれば、この調理法で作られたカッカツオは、まさに絶品だというのだ。いったいどれほどのものなのか、期待が膨らむと言うもの。
「……どこの誰が考えた調理法なのかしら? ココミザクラの木で作ったポットにカッカツオを入れて陶芸用の窯で一晩焼くとか、他に方法がありそうなものだけど」
『トワイライト・ウォーカー』リア・ライム(p3p000289)が言った。その声色には、流石に呆れた、と言うような色が見て取れた。
確かにその通りではあるが、或いは、まだ窯などの技術が発達していない時代の調理法なのかもしれない。なんにせよ、美味いと言われればどうしても食べてみたくなるのが、美食家と言う奴の業である。
「ま、貴族らしく、虚勢と自己満足に満ちた料理じゃあないか?」
『堕眠』モルフェウス・エベノス(p3p001170)が答える。確かに、らしいといえばらしい調理法だ。
「やれやれ、貴族の良識というのは、一般人のそれとかけ離れているものだな。依頼者の中では、木々や動物達の命までは、守るべきものと認識されていないのだろう」
『静寂望む蒼の牙』ブローディア(p3p004657)が言う。今回の依頼では、料理の前に、今回の料理に反対する住民の強制排除も依頼されている。勿論、血なまぐさい事はなしで、だ。
「だよねー。山は燃やしておkなのに、一人も殺しちゃ駄目なんて中途半端な依頼人なんだよ。村ごと消しちゃえば目撃者自体いなくなるんだから、ずっとシンプルなのにね?」
『Code187』梯・芒(p3p004532)が、少々ずれた答えを返した。とは言え、今回の反対派住民の排除と、その不殺に関していえば、目撃者を消すとか、命を守るとか、そういう意図ではなく、単に「邪魔だからどかしてくれ、でもこれから料理する場所で人が死んでるのは気持ち悪いから、殺さない方向で」程度の事なのだ。どこまでも自分勝手なのが、この国の貴族と言うものである。そう言った意味では、やはり非常にたちが悪い。
さて、一行は、山の入口へと差し掛かった。
「おっ、いるねー」
と、顔に手をかざして、奏が言った。
視線の先には、バリケードの中からあたりを見回している村人たちと、それを守る様に立っている傭兵たちの姿があった。
「朝早くからお疲れ様って感じ……それいったら私達もか」
「あの貴族の手の者か!」
こちらに気付いたらしい、村人の一人が、声を張り上げた。
「はい、こんにちわー、わるものでーす。ピースピース」
ピースサインなぞしつつ、奏。
「帰れ! 我々はこの山を守るぞ!」
村人たちが叫び、わめきたてる。
「帰れ、と言われて、そうですね、と言える身分ではないのでね」
モルフェウスが、嘆息しながら言った。
「一応聞くけれど、道を譲ってくれたりは……しなさそうだな」
モルフェウスの言葉に、返ってくるのは怒号のみである。
「んー、じゃあ、さっさと片付けちゃおうか」
武器を取り出しつつ、アミ―リア。
「早くしないと、調理するだけで日が暮れちゃいそうだし。早く終わらせて、ご飯食べよ」
アミーリアの言葉に、イレギュラーズは各々武器を取り出す。もとより対話で何とかできるなら、既にそうなっているだろう。結局のところ、こうするしかないからイレギュラーズが呼ばれた、ともいえる。
「くそ、アイツらやる気だ!」
村人の声が響いた。それに応じるように、傭兵たちも武器を構える。
双方が、じりじりと距離を詰めた。
そして、調理の為のお片付けが始まる。
●まずは調理スペースのお片付け
「まったく、こんな反対運動なんかしてる余裕があるなら、桜の一つでも別の場所に植樹すれば……」
呟きながら、リアが矢を放つ。前衛、巨大な盾を持ち、後衛に位置するサポーター達を守る様な動きを見せる傭兵を狙う。
大盾の傭兵が、その矢を盾で防いだ。その隙をつくように、奏が二振りのショートソードを携え、肉薄する。
「はい遅いー!」
二振りの刃が煌き、大盾の傭兵を斬りつける。鎧によって止められたが、その衝撃はダメージとなって大盾の傭兵に蓄積する。
「くそっ、お前ら、正気か!?」
大盾の傭兵が毒づく。恐らく、山を燃やすことを言っているのだろう。
「正気正気! いや、狂気かもしれない。私ってばバーサーカーだし!」
けらけらと笑いながら、奏が答えた。
「むしろ、正気を疑うのはこちらの方です」
ヘルモルトが言った。
「山(オーブン)を前にするというのなら、この場は巨大な調理場。台所でメイドに戦いを挑むなど。無礼にして無謀と言うものです」
ヘルモルトはそう続けると、ぐっ、と大盾の傭兵の腕をつかみ、そのまま一本背負いに放り投げた。突然の攻撃にロクに受け身も取れず、大盾の傭兵は背中からたきつけられる。
「という事だ。こちらには怖い人たちがたくさんいるのでね。できれば早く投降してくれると嬉しいのだけれど」
モルフェウスの言葉に、
「うるさい! 貴族の手先が!」
村人の怒号が返ってくる。
「ううむ、まぁ、そうなるだろうね……仕方ないか」
残念そうに言いつつ、しかし攻撃の手は緩めない。モルフェウスは衝撃波を、ヒーラーへ向けて放つ。今や大盾の傭兵が無力化されたため、後衛への攻撃を遮るものはいない。
「悪いけど、こっちも仕事だからね」
遥音は言いながら、ウィザードへ向けて遠距離術式を発動。狙い撃ちにした。
「ほらほら、芒さんの特別サービス、殺さない攻撃だよ。さっさと諦めて倒れてくれると、お互いストレスたまらなくて済むんじゃない?」
芒がウィザードに接近し、その腕をひねり上げた。ウィザードが悲鳴をあげ、降参の声をあげる。
「ごめんね。こっちもお仕事なんだ。もちろんあなた達の命を奪うつもりはないけれど、手荒なことはしたくないし、ここは退いてもらえるとうれしいな」
ブローディアの操り手、サラがそういうのへ、
「仕事って言うなら、こっちも仕事だからな。クライアントがやれって言うなら、こっちもやるしかないのさ」
と、剣の傭兵が答える。
「……だよね。なるべく痛くしないようにはするよ」
サラはそういうと、蹴りを主体とした格闘戦を展開する。その一撃が剣の傭兵に突き刺さり、剣の傭兵は意識を手放した。
「はい、これで全員」
アミ―リアが宣言する。言葉通り、傭兵たちは、瞬く間にイレギュラーズによって無力化されていた。イレギュラーズ達と言えば、少々の傷は負ったとはいえ、全員が健在である。
「ほらー、そろそろ帰った方がいいんじゃなーい? このまま帰るなら怪我しないよー?」
と、アミーリア。村人たちが、顔を合わせ合う。もとより、村人たちにロクな戦闘能力などないのだ。それ故に傭兵を雇ったわけであるが、こうなっては抵抗する手段などない。
「……確かに、最初から、この山って貴族の持ち物だったからな……俺達が間違ってたのかも……」
と、突然、村人がうつろな目で言いだした。どう見ても正気ではない。
「ほらほら、仲間もそう言ってるんだし、帰った帰った」
そういう奏の瞳が怪しく光る。どうやら、魔眼の力で、村人の一人を催眠状態にしたようだ。
「く、くそっ……なんて奴らだ……!」
村人の一人が悔し気に吐き捨てる。
「分かった、わかった! 降参する……! くそっ、悪魔め……!」
両手をあげて、村人たちがバリケードから出てくる。
「あ、この傭兵さんたちも連れて帰ってね。邪魔だし」
そういう芒を、村人たちは忌々し気に睨みつけると、言われた通り、傭兵たちを連れて何処かへと去って行った。
「さて。では、早速調理を始めようか」
遥音の言葉に、イレギュラーズ達は頷いたのだった。
●調理、そして試食
山頂に到着したイレギュラーズ達を迎えたのは、見事に咲き誇るココミザクラだった。その美しい光景に、一瞬、心揺さぶられたものもいるかもしれない。とは言え、今回は花見ではなく、料理だ。ココミザクラも、料理の為の素材に過ぎない。
さて、イレギュラーズ達は、早速料理の準備に取り掛かった。とはいっても、作業自体は難しいものではない。桜の幹をぶち抜いて、魚をつるし、蓋をするだけだ。時間自体はかかるものの、皆順調に調理を進めていった。
そんな調理の合間を縫って、リアや遥音、モルフェウスは、辺りの草木や花の種などを採取していた。勿論、食べるわけではなく、持ち帰ったり、その後に植え直したりするためだ。結局、今回の調理法は山を一つダメにしてしまうわけで、少しでもその復活、或いは命を繋ぐことができれば、という事なのだろう。
かくして、準備は完了した。味付けなどは、専門職であるヘルモルトが居たこともあり適切なものとなった事は確実である。後は、この山に火を放つだけだ。
「では、着火しますね」
ヘルモルトが言うと、たいまつの火を、集めた枯れ木に近づけた。瞬く間に、彼機が燃え盛る。それを数か所。まんべんなく山に火が通る様に、着火していく。
あっという間に、辺りの草木に火が燃え移った。このペースでいけば、火力は十分とれるだろう。それを確認すると、イレギュラーズ達は麓へと避難した。頂上にいては、自分達も巻き込まれてしまう。蒸し焼きを作りに来て、自分達が蒸し焼きになってはたまらない。
蒸し焼きが出来上がるまでには、半日ほどの時間がかかる。イレギュラーズ達はその間、思い思いの時間を過ごしていた。
「いやぁ、壮観ですな、絶景ですな!」
安全地帯から、ぼうぼうと燃え盛る炎を眺めつつ、奏が言う。
「んー! おいしー!」
と、焼き芋を頬張りながら、アミ―リア。空いた時間に女子会と言う名のお茶会がしたい、と冷たいお茶と芋を持ちこんで、その場で焼き芋を作り、皆に振舞ったのである。
半日ほどもたてば、勢い良く燃え盛っていた火の手も収まってきていた。山はすっかり黒焦げで真っ裸になっている。これは、山が元の景色を取り戻すためには相当の時間がかかるだろう。
イレギュラーズ達は、早速山頂へと向かった。周囲の景色は、半日前とはすっかり様変わりしていて、当然ながら生き物の気配などなく、焦げ臭いにおいがあたりに漂っている。まさに死の山と言った風情であるが、仕方があるまい。これも美食の為である。
山頂には、焼け落ちながらも、その原型をほとんどとどめていたココミザクラの木が立っていた。イレギュラーズ達は、各々自分が仕込んだココミザクラの木の前に立ち、その窯の蓋を開けた。
例えるなら、桜の香りの爆発であった。
幹の中に封じ込められていた桜の香りが、一気にイレギュラーズ達の鼻孔をくすぐった。何とも言えぬ芳醇な香り。その中に漂う魚介の潮の香りが、イレギュラーズの食欲を、否応なしにくすぐった。
なるほど、これはおそらく、この瞬間から食べる料理なのだ、とイレギュラーズ達は思った。まずは窯からだし、その香りを楽しむ。そう言う料理なのだ、と。
イレギュラーズ達はゆっくりと、カツオの身を取り出した。アレだけの大火力にもかかわらず、一切焦げていないのはココミザクラの力か。皿にカツオをうつし、熱々のその身をひと切れ、頬張る。
ああ。
これは。
なんて。
食レポじみた感想など一瞬で吹っ飛ぶようなうま味。ただただ美味い、と言う言葉しか出てこぬほどの圧倒的な味の暴力。
言ってしまえば、ただ調味料を少々ふって、木にぶち込んで焼いただけである。野蛮と言えば野蛮な調理法だ。
それがどうして。
こんな上品な味に生まれ変わるのだ!
なるほど、伝説、と言われるだけのことはある。夢中になってカツオを食べ尽くしたものもいるだろう。芒が、桜の幹で炊いたご飯も、その消費量を加速させた。このご飯がまた最高に美味しい。絶妙な炊き加減に、ほのかに香る桜の香り。ご飯の甘みをよりはっきりと際立たせるようなそれは、ご飯だけでご飯を食べられそうな勢いである。
遥音の作った燻製も、実に絶品と言えるものであった。鶏肉とチーズの燻製である。火加減が良かったのか、はたまたチップとして投入したココミザクラの香りのおかげか。いずれにせよ、食が進むのは間違いない。
朝から作業し通しでおなかが空いていたこともあって、イレギュラーズ達にとっては最高のご馳走となった。
●ごちそうさまでした
「……ごちそうさまでした」
満足げに、アミ―リアが言う。
「異世界料理……侮れませんでした……」
感心したように、ヘルモルト。
「なるほど、確かにこれは……うん、美味しかった」
モルフェウスが、こほん、と咳ばらいをしつつ、呟く。
「やった……ご飯は正解だった。不殺で我慢した甲斐のある味だったね」
芒もまた、満足げに笑った。
「私は食べられないが……そんなに美味しかったのか」
尋ねるブローディアへ、サラがこくこくと頷く。
「いずれも絶品だったよ。癖になりそうだ……いや、なったら困るのだが」
遥音が言う。何せ調理法が調理法である。
「いやぁ、貴族の人、今度は焼き立てが食べたい、とか言ってくれないかなぁ。また依頼してくれないかなぁ」
と、奏。
さて、満足しきりのイレギュラーズ達ではあったが、仕事はこれで完了と言うわけではない。最後に残った一尾のカツオを、貴族へ届けねばならないのだ。
イレギュラーズ達は、支給されていた保温材のケースにカツオを入れる。そして出発しようとするのへ、
「悪いけれど。私は残るわ。やることがあるのよ」
と、リアが言った。イレギュラーズ達はそれを了承し、リアを残して貴族のもとへと向かった。
さて、残ったリアであったが、まずは残しておいた自分の分のカッカツオを、細かく砕き始めた。そのカッカツオはすっかり焼け焦げている。リアは、自分の分のカッカツオを、調理法通りに料理する事をよしとしなかった。桜の幹に穴を開けず、その前にカツオを置いただけだったので、火力に焼かれ、すっかり焦げてしまったのだ。
リアはそれを比較的無事なサクラの木の根元にまいて、肥料とした。あたりに事前に採取しておいた種や草木を植え、桜の枝には接ぎ木を行う。
そのまま跪いて、祈りをささげる。
どうか、この命が明日につながる様にと。
その祈りが届いたかどうかは、わからない。それはいつか、この山に再び命が戻った時に分かるだろう。
リアは自身が整えたサクラの木に触れ、しばし目をつむった。そして目を開くと、今度は振り返らずに、山から下りて行った。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
依頼主は大変満足しております。
ファーリナも皆さんのご報告を聞いて、「食べたかった!!」と喚いていたそうです。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
こちらの依頼、ちょっとしたクッキングとなっております。
●注意
この依頼は悪属性依頼となっています。
成功時に名声がマイナス処理されます。
この依頼を受けた場合、依頼の成功を妨害するような行為はおやめください。
どのような形であれ、受けた依頼は完遂するのがローレットのルールです。
●成功条件
反対派住民・傭兵を殺害せずに無力化し、カッカツオをレシピ通りに調理、料理を完成させる。
●情報確度
A。予定外の事態は発生しません。
●山について
ちょっとした小山、程度の、小さな山です。頂上にはココミザクラと言うそれはそれは美しい桜の木がたくさん生えていて、地元民たちの憩いの場や、花見会場として、長年親しまれてきました。
小さい山ですが、野生動物もそれなりにおり、山菜、きのこなどの類もよく取れる、恵みの山でした。
現在、頂上へと向かう山道の入り口には、武装した住民と、数名の傭兵がバリケードをはって占拠しており、これを突破しなければ――無視してもいいですが、作業を邪魔されそうですし――調理を行う事は難しいでしょう。
なお、住民、および傭兵の殺害は、貴族から止められています。
こちらは、ただ平和的に、自分の土地で料理をするだけですので、血なまぐさい事は避けてください。
●調理器具・材料について
基本的に、調理に必要な器具(斧とかのこぎりとかドリル的な物とか)や、材料は、全て貴族から支給されています。皆さんが新たに用意・購入などする必要はありません。
ただし、配布された器具や材料を、武器などに転用する事は出来ません。これは調理器具です。
また、皆さんが新たに材料や調理器具を持ち込むことは止めません。持参した材料で蒸し焼きを愉しんでもいいでしょう。ただし、貴族が食べる分であるカッカツオ、最低でも一匹は、レシピ通りに調理したものを用意してください。
●敵について
村民 ×5
農具などで武装した、反対派の付近の村の村民です。
基本的には、イレギュラーズよりはるかに格下の相手です。
全員後衛で、攻撃は、近・単・物の通常攻撃(かなり弱い)を使ってきます。
傭兵が全員倒れるまでは、バリケードの中にいます。
傭兵 ×5
普通に武装した、村民が雇った傭兵です。
基本的には、イレギュラーズLv1より弱い相手です。
敵の編成は、
前衛
剣で武装した傭兵 ×2
使用攻撃
近・単・物 通常攻撃
大盾を持つ傭兵 ×1
使用攻撃
近・単・物 通常攻撃
後衛を庇う(特殊。このユニットがいる限り、後衛への攻撃はすべてこのユニットが代わりに受ける)
後衛
ヒーラー傭兵 ×1
使用攻撃
遠・単・神 HP低回復
魔術師傭兵 ×1
遠・単・神 魔術弾
遠・範・神 魔術散弾
以上の内訳になります。
なお、傭兵と村人は、殺害しないようにくれぐれも注意してください。
以上となります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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