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シナリオ詳細

<Kirschbaum Cocktail>桜ノ淡夢

完了

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オープニング


 山に春が巡りくる。
 冬の間寒さに耐えた草木が芽吹き、少しずつ少しずつ、瑞々しい萌黄の色合いが増えてゆく。
 風はまだ冷たいけれど、日差しの温もりが山を育てる。
 固く縮こまっていた蕾も、息を吐くように緩み、やがては開いて山を華やかに彩るだろう。

 けれど。

 その桜の古木はもう咲くことはない。
 耐えて耐えてきたけれど、この冬を越えることが出来ずに、力尽きてしまったのだ。
 あと少しだけ持ちこたえられたなら。
 あと一度だけ咲くことができただろうに。
 古木は諦めきれない悔いを抱いて、最後の命をゆっくりと手放そうとしていた。
 薄れゆく意識の中、桜はほんのりと薄紅色の酔いに似た夢に漂っていた。


「さてここに、きれいなリキュールがあるのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が見せた壜の中で、桜色が揺れる。
 最近急に出回りだしたという桜のリキュールは、その色合いを目にするだけで気分が上向いてくるような、澄んだピンクだ。
「なんだが出どころがよく分からなかったりするのですけど、みんなで飲めばきっと大丈夫! 毒見の余りを……こほん、えーっと、特別提供で春の宴用にどうぞなのですよー!」
 こっちがお酒、こっちはノンアルコール、とユリーカは何本も壜を並べた。
「近くの山に、お花見にいい大きな古い桜の木があるのですよ。って、あれ? あの桜は枯れたって聞いたような気もするです」
 どうだったか、とユリーカは首を傾げたが、思い出せないようだ。
「まあ、行ってみればわかるですね」
 枯れていたら枯れていたとき、と適当なことを言ってユリーカは桜の木の場所を教えると、いってらっしゃいと笑顔で手を振った。

GMコメント

 さくらのあわゆめ。
 桜のリキュールの力を借りて、枯れ木に花を咲かせましょう。
 酔って、歌って踊って、ゆっくり過ごして。
 咲きたかった桜の夢をほんのひととき、叶えてください。
 という依頼です。

 長く長く生きた桜の想いの力と、刻と場所の巡り合わせと桜のリキュール。
 多くの偶然の条件が重なって生まれる夢なので、リキュールが桜に影響する力を持つのは、この刻この場限りです。他の<Kirschbaum Cocktail>シナリオにも効果は持ち込めません。

<第一章>
 明るい時間帯から薄暗くなるころまで。
 ユリーカに教えられた場所に行くと、そこにあるのは枯れた桜の古木のみ。
 けれど、この場所で酔うと桜の夢に干渉することができます。酔うのは、お酒でも、雰囲気でも、自分に酔っても、なんでも。
 どうぞ酔いに来てくださいませ。枯れた桜見をしたいのであえて酔わない、というのでも結構です。

 桜が目覚めたら、第二章では花見の宴の予定です。日は暮れ、月が顔を出すころ。
 歌舞音曲。楽しく過ごしてくださいませ。

 第三章ははらはら舞い散る桜吹雪の夜。
 桜の本当の最期の刻を桜リキュールと共に……となる予定です。

 初リレーなので、ちょっとドキドキしてますが、よろしくお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、想定できること以外起きないとは言い切れないのでこの精度ですが、警戒などは必要ありません。

●ラリーシナリオ
※報酬について
 ラリーシナリオの報酬は『1回の採用』に対して『難易度相当のGOLD1/3、及び経験値1/3の』が付与されます。
 名声は『1度でも採用される度』に等量ずつ付与されます。パンドラはラリー完結時に付与されます。

※プレイングの投稿ルール
・投稿したプレイングはGMが確認するまでは何度でも書き直しができます。
・一度プレイングがGMに確認されると、リプレイになるまで再度の投稿はできません。リプレイ公開後に再度投稿できるようになります。
・各章での採用回数上限はありません。

  • <Kirschbaum Cocktail>桜ノ淡夢完了
  • GM名月舘ゆき乃
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年04月19日 22時10分
  • 章数3章
  • 総採用数12人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

 最高潮を迎えた桜は、はらはらと花びらを散らしてゆく。
 夢の時間はあとわずか。
 彼方へと旅立つ桜を送る、それは真に最期の宴。


第3章 第2節

ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて


 温度のない雪が降るように、桜の花びらが舞い落ちる。
 ひらひらと。くるくると。
 次々に風に運ばれる、月光に白く浮かぶ無数の花びら。

「桜ってこんな風に散っていくんだ」
 夜に溶けてしまいそうな花びらへと、『風のまにまに』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)は手を伸ばした。
 手のひらに入りそうで入らない。やっとひとひら留まった花びらをそっと手に包む。
 この桜と出逢ってから、1日も経っていない。けれど、桜が積み重ねてきた年月を、ドゥーは確かに感じた。
 その最期が、この桜吹雪なのだろう。
 共に過ごせたのは須臾。
「けど、嬉しいよ……初めて見る桜が貴方でよかった」
 これから何度も何本も桜を見るだろう。けれどその始まりの一点にはこの桜があり続けるに違いない。

 舞い降り、吹き上げられる桜の中、ドゥーは桜リキュールを飲んだ。
 ずっと同じ壜から飲んでいるはずなのに、今は切ない味に感じられるのは何故なのだろう。
 悲しい、寂しい……でもそれだけじゃない。
 胸に一輪桜が咲いたような、そんな優しい気分がある。

 満開に咲いて、惜しげもなく散る。
 枯れてなお焦がれた古木の夢。
 桜がすべての花を散らすまでを、ドゥーは見届けた。
「ゆっくりおやすみなさい、ありがとう」
 永い眠りに就こうとしている桜へ挨拶すると、ドゥーは手を開く。
 手の中のひとひらの桜は風に乗り、ドゥーの周囲をくるりと飛んだあと、高く高くどこまでも昇っていったのだった――。

成否

成功

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