PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<すべてがYになる>百合と百足とわたし

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 今日は暖かく、洗濯物がよく乾く日だと思った。朝、サラマンダー・ジョアナルは淹れたての珈琲を一口飲み、こんがり焼いたトーストにバターとブルーベリージャムをたっぷり塗り、大きな口でさくりとパンを食べている。うん、いい焼き加減だ。幸せなことに今日は休みだ。何でも出来る。いまから洗濯物を干し、お昼はカフェで30センチのホットドッグとクリームソーダを楽しもう。時間があればその前に図書館に寄ることが出来る。なんたって、休みなのだ。最近、サラマンダーはフーディーンのミステリにすっかりはまってしまっている。一週間前から話題になった、サバ缶殺人事件は最高に良かった。
 私は特に……あの……おっと、トリックを言ってしまうところだった。
 サラマンダーは書店に何度も足を運び、ようやく、手に入れたその日の夜に一気に読んでしまった。気が付けば朝なんて、有名な児童書籍を読んだ時以来である。サラマンダーはあの日からフーディーンの作品を読み耽っている。そして、代表作の海シリーズは残り、四作。あのストーリーをどう終わらせるのだろう、サラマンダーはそればかり考えている。フーディーンは三年に一度のペースで海シリーズを世に出している。

 そういえば、昨日、街で一日中、コーンスープを配るスープ祭があったらしいけど、どうだったんだろうか。職場の同僚に誘われたけれど、仕事終わりに私は絶対に何処かに寄ったりしないのだ。コーンスープは大好きだが、私は帰宅後に読書を楽しむことにしている。その時間を一秒でも奪われたくはない。
「……」
 おやとサラマンダーは首を傾げた。呼び鈴が大袈裟に鳴ったのだ。誰だろう、サラマンダーは珈琲で口を潤し、そっと扉を開ける。
「サラマンダー!!」
 叫び、猪のように家に踏み込んでくる。
「あら、ガム。どうしたの? 珈琲でも飲む?」
「要らないよ! サラマンダー、僕を助けてくれよ!!」
 友人のガム・ラックンライトが言った。
「ちょっと……何が起きたというんだ?」
「ビャクゴウ統括機関が復活して、街中、問答無用で百合なんだよ! きっと集団感染ってやつだろう! くそ、誰がこんなことを! 幸運なことに君の家は街から離れている。だから、此処なら安全だと思って誰よりも早く走ってきたんだ」
 ガムは唾を飛ばす。
「え、あれ? 二年前にビャクゴウ統括機関は健全委員会が壊滅状態にしなかった? と言うか、ガム、君は家族を置いて逃げてきたのか?」
 サラマンダーは非難しつつ、しっかりと鍵を閉める。ちなみにビャクゴウ統括機関は百合主義を抱え、混沌全土を百合にしようとした過激集団を指す。百合憲法、百合結婚……恐ろしい思考は全ての健全を謳う健全委員会に秒で見つかり、健全委員会によって弱体化させられたのだ。
「し、仕方なかったんだよ!! 誰だって嫌だろう、知らない女と実の姉が突然、百合百合し始めたら! きついぜ、ナマモノはよ!」
 泣き出すガム。
「そうだね、私が悪かったよ。でも、その理論……百合ということは男であるガム、君は関係ないのでは?」
「……俺も始めはそうだと思ったさ。だから、親父にも言ったんだ。お袋と姉貴だけ何処かに隠しとおけば、大丈夫だって。でも、実際はどうだ? いきなり、親父がお袋のロングスカートを履きはじめて外に飛び出したんだ! あれは地獄だね、まったく!」
「……何故?」
 サラマンダーは椅子にガムを座らせ、彼のためにオレンジジュースをコップに注ぐ。
「知らんわ! で、追いかけたんだ……そしたら……同じように女装した幻想種と俺の親父が恋人繋ぎで……映画館に向かっていくところでさ……」
 ガムはぶるぶると震えている。サラマンダーは黙り、ちらちらと置き時計を見つめる。予定がどんどん狂っていく。せっかくの休日なのに!
「狂ってる、あんなの百合じゃねぇよ……TSでもねぇ……ビャクゴウ統括機関による俺達への報復だ……二年間の百合禁……俺には耐えきれねぇ……こんなん、報復されてもおかしくねぇ!」
「……被害としては百合百合し始めることだけなの?」
 サラマンダーは温くなった珈琲を飲み、軌道修正。
「いや、違う……街は今、巨大な百足が四体いるんだ!」
「百足……暴れまくっているというわけ?」
 サラマンダーは言った。想像しただけで気色悪い。
「……うんにゃ、百合百合している人々を見てただ、喜んでる……」
「は? え?」
「百合百合している人々を見て喜んでるって俺は言ってるんだよ!」
 突然、キレるガム。
「は? 聞いたよ! 聞こえてるよ! なら、その間に攻撃を仕掛けるべきなんじゃない?」
「……やってたさ、健全委員会の人達がな! ただ、その百足は……攻撃を2倍に跳ね返す特別な百足なのさ……」
「なにそれ……じゃあ、どうすれば……」
 狼狽するサラマンダー。
「攻撃の際に百合っぽい言葉を叫びながら、攻撃するんだ……そうすれば、ダメージをきちんと受けてくれるらしい……台詞によっては大ダメージを与えられる!」
 なんということだ。
「だから、健全委員会の連中はお手上げなのさ」
「そ、そんなことって……え!?」
 サラマンダーはびっくりする。扉をどんどんと叩く音。喉を鳴らし、見つめあう、サラマンダーとガム。
もしかして……街の人達が降りてきたのだろうか。
「おいおい! あれはバーベルじゃねぇか! ぐぇ……俺のお、お袋と……キスしてやがる……げっ、あっちにはヒューズおじさんじゃないか! うえ……」
 窓を覗き、その場に座り込むガム。サラマンダーの家をわらわらとゾンビのように住人達が囲んでいる。
「やめろ、精神衛生上見ない方がいい!」
 サラマンダーは急いでカーテンを閉め、すぐにローレットに電話をかけたのだ。
「た、助けてください! 街が百合に支配されています!」

GMコメント

 ご閲覧いただきましてありがとうございます。今回はyakigoteGMと百合百合しておりますよ! ちなみに皆様には百合百足を百合パワーで撃破、サラマンダーとガムの救助をお願いします。皆様はたまたま、街の近くにおり、緊急事態ということでローレットから依頼が届きました。リプレイの始まりは電話から五分後です。五分後あれば、街にもサラマンダーの自宅にも到着出来ます。ちなみにサラマンダーのもとに向かっているのは住人達だけで、百合百足は街に留まっています。

●目的
 百合百足を四体倒し、サラマンダーとガムを救出する。

●依頼人
 サラマンダー・ジョアナル
 性別不明。こんな状況でもツッコミは忘れない。せっかくの休みを百合で潰されたくないと思っているが緊急事態なので口にはしない。百合は嗜まないが、百合漫画は読んだことはある。ミステリ好きで、××殺人事件と書かれているとつい手に取ってしまう。一人暮らしをしている。自炊は得意。

●友人
 ガム・ラックンライト
 男性。とうもろこしアレルギー。百合は好きだが、ナマモノは苦手。歳の差百合を愛する百合男子。

 街の住人達 100人ほど
 ガムとサラマンダー以外、全員、街中で百合百合してしまっている。男性の場合、自らを女性だと思い、女性らしい服装になったり、メイクをしたり、はたまた、ボーイッシュ思考であればそのまま、百合百合している。ちなみに一応、同性同士で百合百合しているが、性別不明の場合は関係なく、その場にいる者と百合百合している。巻き込まれる可能性は大!

●百合百足
 全長七メートルの巨大なピンク百足。人語は話さないが、知能はある。見た目や機能は百足と変わらない。巻き付きや噛みつき、タックルを得意とし、何故か皆様の攻撃を2倍に跳ね返し、攻撃の1%しかダメージを受けない。なので、百合百足には百合攻撃(ただ、百合っぽい言葉を叫びながら攻撃するだけ)が有効である。回避力には欠けるが、体力がバケモノ級であり、油断大敵な相手である。百合味(ゆりみ)が強いと百合百足が受けるダメージが勝手に4倍になる。様々な百合台詞を試してみよう!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●場所
 とある街
 山に囲まれた街で、そこではパンが有名です。石畳の道と綺麗な街並み。此処に百合百足が窮屈そうに立って(座って?)います。皆様は建物に隠れながら戦闘を行うことが出来ます。そして、百合百足の攻撃を受けた場合、建物にめり込む可能性もあります。

  • <すべてがYになる>百合と百足とわたし完了
  • GM名青砥文佳
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ロザリエル・インヘルト(p3p000015)
至高の薔薇
猫崎・桜(p3p000109)
魅せたがり・蛸賊の天敵
藤野 蛍(p3p003861)
桜花絢爛
桜咲 珠緒(p3p004426)
桜花爛漫
レナード・バニングス(p3p004694)
バーニング・レオ
時裏 結美(p3p006677)
妹『たち』の献身
久世・清音(p3p007437)
腹黒フォックス
ヴィアベルト・ナズナ・ローネミネ(p3p007995)
普通の学生

リプレイ


 聞こえる、恐ろしい声。
「あ、あっ……あたし、エインのことが好き。愛しているの」
「嬉しい! 私もよ、ゲル」
 互いの髪に触れ、絡み合う男女。依頼人の家の周囲には様々な格好の住民達が人目を気にすることなく、密着し、泡に似た愛を贈り合う。
「蛍さん、珠緒達で早く、皆さんを救ってあげましょう。見ていて、不憫でなりません」
 『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)が地を見下ろす。 珠緒は温かな手をぎゅっと握り締め、顔を真っ赤にしている『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)の横顔と遠ざかっていくハチをそっと眺める。正直、状況の把握はしていないが、全く問題ないはず。
「そうね! 住民達の感情を無視してこんなことをさせるなんて許せないわ! さっさと救出して百合百足を倒しましょ! 二人で密やかに嗜むだけで充分幸せなのに、なんでわざわざ人前で見せ付けてるのよ……」
 ぼそりと呟き、蛍は珠緒の顔を眩しそうに見つめる。漂う、幸福オーラ。
「よく分からないけど、百合っていうのは彼女達を指すわけではないの?」
 『至高の薔薇』ロザリエル・インヘルト(p3p000015)は蛍と珠緒を見上げ、満面の笑みを浮かべる『バーニング・レオ』レナード・バニングス(p3p004694)に何気なく尋ねる。その瞬間、レナードはどうにか存在を消そうとする。
「かぁいらしい女子がいたら嬉しいわぁ」
 『お肌は手出し厳禁』久世・清音(p3p007437)が妖艶に笑う。
「どうして百足なんだろうね、数字繋がり?」
 『妹『たち』の献身』時裏 結美(p3p006677) が呟き、実際はどうだって良かったことに気が付く。
「百合と薔薇って花のことかと思ってたよ。や、今回は百合だけだっけ?」
『魅せたがり・蛸賊の天敵』猫崎・桜(p3p00010)がぼんやりしながら依頼人の家を見上げると突然、トイレの窓からガムとサラマンダーが飛び出す。
「僕たちに任せて二人は先に逃げて! うっ、何かフラグっぽい台詞な気がする」
 言い、冷や汗を掻く桜。
「ありがとう、俺達は軽トラでこのままッ……!?」
 目を見開くガム、老婆が迫ってきたのだ。
「ガムさん、サラマンダーさん!」
 『普通の学生』ヴィアベルト・ナズナ・ローネミネ(p3p007995)が咄嗟に老婆を誘惑する。
「おやおや。あんた、良い唇だねぇ」
 迫る唇。ただ、老婆を蹴るわけにもいかない。
「止めてください!」
 ヴィアベルトはどうにか老婆から離れ、走り去る軽トラックを知り、百足へと急ぐ。イレギュラーズ全員がこの場にいたお陰で住民達の意識が分散されたようだ。
 ただ──
「貴女、私を置いていく気?」
 結美の目の前にはスクール水着男。
「そうだよ、お姉ちゃんの為に百足を倒さなきゃ」
 スクール水着男を蹴り飛ばす。
「ああ、地獄だ。これを百合だと抜かしやがって……許せねぇ!」
 レナードがスクール水着男をジャンプで回避し、「待ってろ、百足野郎!」
 目を血走らせる。
「心苦しいのですがごめんなさい!」
 ヴィアベルトが飛び込んできた猫耳女を蹴り飛ばす。
「あたくしと静かなところに行きません?」
 少年がロングスカートを揺らし、清音の腕を引く。
「あぁ、行儀悪いなぁ?」
 清音は瞬時に男の手を振りほどき、蛍は珠緒とともに空を翔ける。
「ちょ、ちょっと!」
 女に後ろから抱きつかれ、顔を真っ赤にする桜。
「うーん? 何だか、全然、エモくないわね」
 ロザリエルが桜の腕を掴み、強引に引き剥がす。


 踊る、四匹のピンク百足。
「見ていて気分が悪くなりそうだわ」
 ぞっとするロザリエル。長い身体に長い足。何もかも嫌になる。
「蜜吸いに来る系のよりはマシだけど虫は嫌いなのだわ!」
 ロザリエルは巻き付こうとする百足を避け、ハッとする。レナードを見下ろす二匹の百足。
「!!」
 重い一撃。百足のタックルが決まり、その威力に驚くイレギュラーズ。レナードは壁にめりこんでいたが、すぐに地を踏みしめ、鼻血を腕で拭う。ダメージを受ける百足。
「男はいらねぇってか? ただ、言っておくぜ! お前らが見て喜んでるのは百合じゃねぇ!! なぁ、百合とは混ざるものではなく見守るもの。ああ、俺は百合の園の壁になりてぇ……」
 本音を漏らし、カッと目を見開く。「百合の間に入りてぇなんて抜かす●●(ピー)野郎に真の百合好きは名乗れねぇ。その点てめぇらは評価出来る。百合の中に混ざろうとしなかったからな。だが! 百合って言っときながら何でそこら中で男同士のカップリングが成立してるんだこの●●(ピー)が! こんなので喜ぶだと? てめぇらは百合好きじゃねぇ! ただの雑食だ!!! ──ッ!?」
 息を呑む。百合好きを侮辱された百足が左肩に食らいつく。
「はっ、怒ったんだろ? そんなん、図星だからだ!」
 吼えるレナード。空から攻撃を仕掛けるのは──
「やるわよ。ボク以外の誰にも、珠緒さんに指一本触れさせないわ……!」
 蛍は壮絶に咲き誇る桜花の幻影を百足へと贈る。恍惚の淵。
「百足を喜ばせるつもりはありません。ただ、珠緒は蛍さんの為に此処に立つのです」
 珠緒が百足を見据えた。
「蛍さんとの絆で得たこの力、他の方へは拒絶となります――【血束・歪】!」
 百足の情報を読み取ることなく、破壊する。百足は喜びながら、壁にめり込む。
「大好きだよ、お姉ちゃん──」 
 すかさず、結美が百足を見上げる。この瞬間から百足は結美の姉となった。
「ね、大好きだから独占してもいい?」
 結美は目を細め、二匹の百足に魔砲を放った。沢山の足を飛ばし、百足は破滅的な威力にのたうち回る。それでも、姉は妹への愛情表現を忘れてはいない。食べちゃいたいくらい好きとはこのことを言うのではないだろうか。百足は結美の右足に咬みついたのだ。
「過激な愛情表現だよね、お姉ちゃん?」
 ふふと笑う結美。
「ちょっと、聞いて欲しいのよ!」
 ロザリエルが皆の攻撃の合間に考えていたことを実行すべく動く。百足はロザリエルを見下ろし、どんなことを言うのかワクワクしている。何たって百合はこの世界を救うものなのだから。
「私、美少女なんだけど女の子のほうが肉が柔らかくて好みだわ。私が女の子を食べるとその時私とその子は一つになっている」
 うんうんと頷く百足。ロザリエルはこのまま、攻撃するかと思いきや、これは冗談だったらしく、息を大きく吸っている。あまりに愛がない、ロザリエルはそう思っているらしいが百足は『死ぬことで完成する愛』すら愛している。きっと、その子は喜んで殺されたのだと思う。百足は踊り、ロザリエルの言葉に耳を傾ける。
「まず私の種族って基本人間でいう女の子みたいな見た目の子しかいないのよ。植物だから性別とかあれだし……寿命もあってないようなものだからあんまり繁殖に興味ないのね。野蛮で原始的な脊椎動物どもの下品な発情期みたいなのとかないわ」
 聞き入る百足。ロザリエルは動かない百足を眺める。
「私達が誰かと惹かれ合う理由は愛よ。相手の命を、心を深く愛し合った二輪の花はずっと一緒にいようねって約束をして姉妹になるのよ。本能である繁殖欲の理由付けに人類が賢しげに語る薄っぺらな愛とは生態レベルで訳が違うのよ。でも、あれね。生まれながらに貧弱な体に低俗な本能を詰め込まれた憐れなヒューマンどもだけどだからこそ時に同性の間で生まれる……何かとかそういうのはちょっと……わかるわ。エモみを感じるわ、良いと思うな……」
 早口で言い切り、ロザリエルは百足を強かに叩く。歪む身体。それでも、百足は踊る。
「レオンハート」
 聞こえる名。百足は一直線に駆ける男を知る。手には大剣。
「カップリングを押し付けはルール違反だ! 万死に値する! うおおおお! アカリ×ソフィー(推してるキャラの名前らしい)は俺のジャスティス!!!」
 炎のように吹き荒れる真っ赤な闘気を揺らめかせ、レナードは渾身の一撃を放った。砕け散る足。百足は苦しげに蠢く。
「ちなみに大人気で公式のアンソロジーも五巻まで出ているぜ!」
 ドヤ顔。
「はぁッ──!! 四月からアニメ化だ!」
 レナードは同じ百足をバックで投げ飛ばす。

「愛の力はこんなものじゃないんだからね!」
 蛍は飛び込んできた百足のタックルを大きく避ける。安堵する珠緒。
「次は私が行きましょう!」
 抜剣する、ヴィアベルト。特殊な両刃剣を取り出す。大きく叫んだのはおぞましい百足から意識を逸らす為。ヴィアベルトは心を震わせ、どうにか接近を試みる。
「いたっ……!」
 柄の前後の刃が右腕を大きく裂きながら、転倒した百足に飛び込むヴィアベルト。百足に顔をしかめ、静かに口を開く。
「ああ、女の子って、使うシャンプーとかで匂いが違うので、そういうの、いいですよ、ね……?」
 百足を切り伏せ、ヴィアベルトはぞっとする。空から足が──
「あああ……」
 ヴィアベルトはふらつきつつ、両足にぐっと力を込める。
「わ! 今度は僕の番だ!? ええと……あ!」
 桜は清音に近づき、ぐいと手を繋ぐ。
「あら、恋人繋ぎやね?」
 清音は妖艶に笑う。その瞬間、ぴんと背を伸ばす百足。ボイ×フェムの予感。顔を赤らめる桜。
「僕、決めたんだよ。これから、君と共にずっと生きていくって!」
 桜はゲシゲシと百足を蹴り上げ、「ゆ、百合っぽい台詞をいいながらでないと攻撃反射してくるって不思議な生き物だよね……生き物……?」
 桜はぼんやりする。どうにか攻撃できた。傷だらけの百足。この調子で攻撃していけば──
「ふふ、桜はんの手、奇麗やわぁ」
 清音は集中を研ぎ澄まし、狙撃手の目で桜を見つめる。
「え? ありがとう?」
 困惑する桜。
「ウチが桜はんを新しい世界に連れて行ってあげたいわぁ」
「新しい、世界?」
 目を丸くする桜。満面の笑みで聞き耳を立てるレナード。
「表情がころころ変わって可愛らしい子やね、桜はん」
「ん? んん? 清音君? こ、攻撃するよね?」
「んー? ああ、そやね、桜はんに夢中になってたわぁ」
 清音は星狩りの大弓を構え、素早く、矢を放った。
「わ、凄いよ!」
 目を見開く桜。凄まじい速度で百足は貫かれ、体液を舞い上がらせる。やがて、百足はひっくり返ったまま、動かない。
「まずは一匹なのです」
 珠緒は呟き、蛍の背を見つめる。


 踊り子は身を捻る。
「や、柔らかい身体って、女の子特有で、いいですよ、ね」
 ヴィアベルトが真っ青な顔で、百足の足を剣で削ぎ落す。
「お姉ちゃんどいてそいつら殺せない!」
 響く声。結美が近づいてきた女を蹴り飛ばす。一方、こちらも声を響かせる。
「此処はボクが絶対に通さないんだから! あっ!?」
 くぐもった蛍の声。避けたはずの重い尾がその柔らかな身体に叩きつけられる。衝撃と肉が潰れる音が聞こえた。
「……ッ、負けないわ! 絶対に珠緒さんはボクが守るって……決めてるのよ!」
 黒色の瞳に宿る意志。蛍を見下ろす百足。
「……今はもう、この痛みさえ愛おしいの」
 必死に立ち上がり、百足を見据える蛍。睨み合うように対峙する。漂う殺気の中、蛍の傷を見つめ、珠緒が瞬く間に傷を癒す。
「珠緒さん、ありがとう!」
 蛍は息を吐く。
(珠緒さんの存在がいつだってボクに勇気を与えるんだわ)
「珠緒のために受けられた傷は、この手で癒して差し上げたいのです」
 頷き、微笑む珠緒。
「さぁ、かかってくるのよ!」
 蛍は叫び、その目に身悶えする百足を映した。

 百足は喜びの舞を見せる。そう、こちらも百合百合しているようだ。
「ヴィアベルト君は私が守るわよ!」
 咄嗟にヴィアベルトを庇うロザリエル。
「ロザリエルさん!?」
 ヴィアベルトが叫んだ。衝撃で転がるロザリエル。桜の前に躍り出る、レナード。別の百足が桜を狙ったのだ。
「はぁー? ふざけんじゃねぇ! 百合に攻撃するなんざ言語道断! 「壁」となって百合を見守ることを望むのが真の百合好きだろ!」
「レナード君!」
「がはっ──!!」
 咬みつかれ、勢いよく、めり込む。
「これぞ……かべ……」
 目をぐるぐる回すレナードに近づく結美。
「こんなことしかできなくてごめんね、お姉ちゃん……」
 結美が姉?(レナード)を治療し、今度は別の姉?(百足)に駆け寄っていき──
「!?」
 衝撃を受けるイレギュラーズ。結美が百足の足をぺろぺろと舐めている。
「お姉ちゃんの細いおみ足おいしいです。さわさわと撫でてもらうのはもっと好き。他では味わえないこの感触は最高だよ、お姉ちゃん」
「こ、これが人外百合ですか」
 ヴィアベルトが震え上がる。
「お姉ちゃんはずっと私だけのものだよ」
 歪む唇。結美は柄だけの剣をさっと取り出し、オーラの刀身で百足の胴を切り裂く。
「お姉ちゃん、痛いのは嫌い?」
 結美は答えを聞かぬまま、瀕死の百足にもう、一撃。
「!!」
 百足は体液を散らし、すぐに息絶える。
「やったね、残り、二匹だから頑張るよ!」
 駆ける桜。
「今は僕といるんだから僕をずっと見てて欲しいな?」
 桜は跳躍し、百足の頭部に回し蹴りを決める。のけ反る百足。衝撃で地が揺れる。

「こんな攻撃、ボクは平気だわ!」
 百足の攻撃を浴び、壁に吹き飛ばされるが蛍はすぅと薄い壁をすり抜け、傷だらけの百足をねめつける。
「男とか女とか、そんなに大事なこと? もしこの想いが間違ってるっていうなら……それはきっと、世界の方が間違ってるんだわ!」
 蛍の言葉に背筋をぴんと伸ばす百足。そこへ──
「百合とやらはそちらの認識。珠緒らにとって、この関係は自然なことなのです」
 しっかりと百足を見つめ、珠緒が攻撃を仕掛ける。感じる、強い思い。絆を感じ、歓喜する百足。
「特異なレッテルを貼り、珠緒らの絆を色眼鏡で見る方には、負けません」
 瞬く間に百足を破壊し、蛍の手に触れ、見つめあう。百足は痛みにふらふらと揺れ、建物を壊し、動かなくなった。
「お姉さん、ちょっとお話しましょか?」
 清音は小柄な女に話しかける。女はフリーだ。
「あら? 貴女、綺麗な人ですね。それに何だかとても良い香りがしますよ」
 見上げ、女が微笑む。
「ふふ、褒められるのは嬉しいわぁ。ウチ、可愛い子に弱いんよ」
「へぇ、お上手ですね」
「んー? 事実やね、ウチ、嘘は言わんよ?」
 顔を近づけ、見つめあう。
「これって口説いてます?」
 女の言葉に清音は楽しそうに笑い、頬をなぞる清音。
「くすぐったいんですけど私の顔に何かありますか? ちゃんと言ってくれないと分かりません」
「ふふ、いけずやなぁ」
 清音は手を握り、責任をもって口説き始める。何故って? そう、一夜の過ちみたいな悪い思い出にさせない為に。
「それにしても、そこの百足、邪魔やわぁ」
 清音は抱きつく女を脇に避けながら、思い出したように百足に矢を撃ち込み、女を見つめる。
「これから、ゆっくり愛を育みましょか?」
 清音はふふと笑う。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
 ヴィアベルトが猫耳メイド男を躊躇いがちに蹴り飛ばす。転がる男を一瞥し、結美が百足に近づく。
「お姉ちゃん、やだよ。私を一人にしないで」
 ぽたぼたと流れる涙。百足は妹を見つめた。
「ね、お姉ちゃんは私をちゃんと愛してる?」
 大きく頷く百足。
「良かった」
 結美はにこりとし、魔力銃の筒口を百足へと向け、その巨躯を吹き飛ばす。凄まじい音。吸い込まれるように壁にめりこむ百足。
「僕は君が誰を好きでも構わないんだよ」
 桜はロザリエルを一瞬、見つめ、もがく百足に蹴りを入れる。衝撃で壁の一部が落ちていく。何かを呟き、駆けるレナード。手には具現化した大剣。怒りのような闘気が噴き出る。
「あああああああああ!! 明日は、残業は絶対、貴女のせいの発売日だぜ!! 勿論、てめぇも予約してんだろ!!」
 レナードが踏み込み、大剣で百足を貫く。渾身の一撃。びくりと震える百足。入れ替わるように現れたのはロザリエル。
「最期? 残念だわ、もっと傍にいてほしかったのに」
 ふっと笑い、百足を強かに打ち砕く。

「ん?」
「え?」
「あれ?」
 声。振り向くイレギュラーズ。そこには正気を取り戻す住民達。そして、気まずそうにわらわらと戻っていくが清音と女(その名はアンジェロ)は油揚げデートの日程を話し合っている。すかさず、見守るレナード。結美はロザリエルを癒している。

「街も皆さんもぼろぼろですが解決したのです」
 蛍は珠緒の言葉に頷き、「あ、あのね。百合百足を倒すため、だけじゃなかったから……さっきの。大好きよ。ずっとずっと、傍にいさせて」
 真っすぐ、見つめる。
「はい。戦闘中も申しましたが、珠緒は蛍さんと一緒でいることが、自然でありたいのです」
 柔らかな笑みを浮かべる珠緒。
「ありがとう、珠緒さん。ボク、今とっても幸せだよ……」
「ふふ、珠緒もなのです。蛍さん」
「うん?」
「珠緒と一緒にぱん屋さんに行きましょう。この街の有名なものだそうですよ」
「いいわね、大賛成よ」
 ぱあっと顔を明るくする蛍。手を繋ぎ、パン屋へと向かう。
「うう、あちこちに百足の足が」
 ヴィアベルトは百足と百合にどっと疲れ、桜は「色々とうん、色々といい経験だったね」と言いながら、遠くを見つめる。同時刻、サラマンダーとガムは隣街の喫茶店でクリームソーダを飲み、見知らぬ少女のもとにユリ、バラ、ガーベラの美しい花束が届いた。

成否

成功

MVP

藤野 蛍(p3p003861)
桜花絢爛

状態異常

ロザリエル・インヘルト(p3p000015) [重傷]
至高の薔薇
藤野 蛍(p3p003861) [重傷]
桜花絢爛
レナード・バニングス(p3p004694) [重傷]
バーニング・レオ

あとがき

 おかしいぞ……んんん? 百合ってなんだっけか。そして、百合MVPは貴女にプレゼントさせていただきますわ。

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