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シナリオ詳細

<Gear Basilica>雲霞のごとく

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●スネグラーチカ
 火が上がったかと思えば、何か引火してはならぬものに引火したのか、どこかから爆発音が響く。
 その中で待ち構えていた死を覚悟した兵士たちが、現れた機械で出来た動物たちとぶつかり合う。
 血が舞い、硝煙の匂いが漂い、奮い立たせるための絶叫が響く。
 襲い掛かる機械の獣たちの後ろから、黒衣の兵団が姿を現して、その均衡を崩す。
 食らわれ、嬲られ、倒れた兵士達が、黒衣の者達に抱えられ、彼らが来た方向――進んでくる動く建造物の方へと歩んでいった。

●迫る大聖堂
 ゼシュテル鉄帝国首都スチールグラード。
 そしてそこに広がる広大なスラム街『モリブデン』――かの地で眠っていた古代文明が遺産たる兵器が目覚めてから幾らかの時が経っていた。
 目覚めた古代兵器『歯車大聖堂(ギアバジリカ)』は、クラースナヤ・ズヴェズダーの聖女アナスタシアを『動力源』としモリブデンの地下から現れると、帝都を疾走して離脱した。
 近隣の無数の村や、周辺の古代遺跡を『捕食』して取り込み、自らを巨大な聖堂へと膨張、拡大を続けるギアバジリカの挙動は、皮肉にも彼女が何よりも後悔し忌み嫌っていたであろう『徹底的なまでの略奪』そのものであった。
 ――そして、精神的な空隙を衝かれ,魔に堕ちた聖女『アナスタシア』を動力源とした兵器は、それ故か、彼女の信念である『国は全ての物資を全国民に分け与えるべき』という理念を掲げる様に、帝都めがけて再び進撃を開始する。
 無限に等しき吸収、膨張、拡大を続けながら走り続けるギアバジリカーー巨大な大聖堂は、だからこそ移動するだけで馬鹿にならない燃料を必要だ。
 ギアバジリカは悪趣味という他ないことに、人々の『誰かが大切にしたもの』を燃料としているらしく、略奪される側にとっては非道なことこの上なかった。
 ――もちろん、それには『大切な家族』だって、例外ではない。
 運悪く海洋王国外洋遠征へ護衛艦隊が出払い、国境戦力の緊急招集は厳しく、何より間に合う可能性すら定かではない。
 国家存亡の危機に瀕した鉄帝国において立ち上がったのはそこに住まう人々だった。
 スラム民、闘技場のファイター、村人、クラースナヤ・ズヴェズダー教団員、そして帝都にいる軍人。
 出自、立場、思想、それらがまるで違う彼らが、団結して強大な敵に立ち向かおうとしていた。

 時を同じくして、鉄帝が都『スチールグラード』にギアバジリカが襲来するという急報はローレットの下へも届く。

●閃電
 鉄帝の都スチールグラードの一角に悲鳴が響いた。
 それを聞きつけると、帽子を目深にかぶった男はほとんど人気を失った帝都を駆け抜けていく。
 ひょろりと独特な形をした尻尾が躍る。
 視線の先に、3人の姿が見えた。1組の男女と1人の少女、体格やしぐさ、ここからでもわかる大まかな容姿から見て、親子だろう。
 少女はこけてしまったのか、地面へと倒れてしまっていた。
 その拍子に少女が抱えていたぬいぐるみが宙を舞ってこちらの足元にぽとりと落ちていた。
 それを拾って走り出す。ある程度の距離まで来たところで、そっと愛刀の鞘を握り――振り抜けば、翠電が弧を描いて走り抜ける。
 少女を抱えようとしゃがんだ両親を含む3人の頭上を超え、弧を描いて飛んだ雷撃は飛び込んできた機械で出来た獣たちを吹き飛ばす。
 翠を引く刀を握りしめ、3人家族の前に現れた軍服風の男が、ややくすんだような青の髪を靡かせる。
「これは君のだろう?」
「う、うん……ありがとう、お兄ちゃん」
 ぬいぐるみを少女に手渡してそう問いかければ、少女がこちらを見上げた。
「そうか、なら、早く行くんだ。ここは危ない」
「で、ですが」
 母親であろう女性が動揺した様子でこちらを見る。ちらりと男の方へ向けば、男は少しだけ目を開いて驚いた様子を見せる。
「大丈夫だ。あれぐらいどうという事はない」
「あ、あなたは! 引退されたと聞いてましたが」
「祖国の危機だ。引退なんてしてられないだろう?」
 ぺこりと頭を下げた男性にそう答えれば、その一家は静かに後ろへと走っていた。
 立ち上がって侵入を試みる動物型の機械達を前に、残された男、バルド・レームは静かに愛刀を構えた。
 その視線は、かつての剣聖『閃電』の名を彷彿とさせる圧倒的強者の風格を見せる。
 ほんの一時、この一時のために特注で打ち立てたこの足は、特殊な義足だ。
 多数の機械の獣たち、そして――その背後から、黒衣の集団が姿を現してくる。
 力を籠めれば翠電が迸り、全盛期の姿を取った『閃電』は迫りくる敵を見据えていた。
 そんな『閃電』の温かく誇り高き光の後ろに、希望たるイレギュラーが近づいている。

GMコメント

さてこんばんは、そんなわけで、いよいよ鉄帝での事件も急展開を見せてきました。

そんなわけで、さっそく詳細をば。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。


●達成条件
 一定数の敵を討伐する。


●失敗条件
 防衛線ラインを超えて町の中に侵入される。
 イレギュラーズの全員の戦闘不能。

●特殊ルール:タワーディフェンス
【基本ルール】
 敵は時間がたつたびに徐々に増えていきます。
 下記に記される敵の数は皆様が戦場に出現した時点での敵の数になります。
 最終的な撃破数はわかりませんが、ある一定数を退けた時点でここからの進撃を諦め、達成条件成立となります。

【新しい敵の登場までの間隔】
 イレギュラーズが戦線に参加した直後から最初の敵が登場するまでのみ10ターン。
 その後は5ターンあります。

【自動回復】
 そのターンに待機していたイレギュラーズはターン終了時に最大値から20%分のHP、APが回復します。
 この自動回復は最大HP、最大APので60%までしかできません。

【ヒント】
 一体一体と対するだけであれば、さほどの敵ではありませんが、物量が圧倒的です。
 プレイングによる細かな連携、味方ユニットに任せうる場面の取捨選択が非常に大事になります。


●戦場
 避難が完了した首都市街地。

 イレギュラーズとその友軍兵士が到着した時点でバリケードが張られます。

 このバリケードを破壊されて乗り込まれた場合に失敗となります。

 多くの建築物がある大通りです。遮蔽物や盾代わりになるような建築物は多数存在します。


●敵軍戦力
【スネグラーチカ歯車兵(エリート)】×5~
 ギアバジリカに取り込まれ、魔種アナスタシアの思想に洗脳された黒衣の兵団の中でも
 洗脳のうえにスチームパンク感のある強化改造を施された上級の歯車兵です。

 魔種の影響を受けて狂気に染まっており、略奪や虐殺に対して全く抵抗がありません。
 片腕を自動小銃、片腕を刃物型の兵器に改造されています。

・ユニット特徴
 HPが豊富で、それ以外のステータスもそこそありますが、抵抗は致命的に低いです。


 もしも彼らに友軍の鉄帝軍兵、クラースナヤ・ズヴェズダー教団員が倒された場合、
 その友軍は捕獲され、そのままギアバジリカの下へ連れ去られます。

 連行中のスネグラーチカ歯車兵(エリート)はイレギュラーズ側へ攻撃せず、ひたすら連行します。
 フィールドの外へ連れ去られる前に討伐できなければ、
 数ターン後に連れ去られたユニットを洗脳、歯車兵として実戦投入してきます。

 敵性戦力の増加につながるので、捕獲されてしまった場合は
 できる限り優先的に討伐、友軍NPCの確保をおすすめします。

 戦闘行動のほか、破壊された町での略奪行為を行います。

〔スキル〕
・狂気伝播(P):自範相当範囲へ狂気を伝播しています。
・歯車式自動小銃(A):物中貫 威力小 【流血】【連】
・歯車式刺突鋏(A):物近単 威力中 【致命】【必殺】
・歯車式強化脚甲(A):物至単 威力中 【不殺】

【スネグラーチカ歯車兵】×5~
 ギアバジリカに取り込まれ、魔種アナスタシアの思想に洗脳された黒衣の兵団です。
 洗脳を施されただけの兵士達です。
 上記エリートに比べれば、戦闘能力が格段に低いです。
 魔種の影響を受けて狂気に染まっており、略奪や虐殺に対して全く抵抗がありません。

・ユニット特徴
 特筆すべき能力はなく、どれをとっても平均的です。
 強くも弱くもありません。
 ただ、エリート同様に抵抗は致命的に低いです。

 戦闘開始後に最初から登場するエネミーだけでなく、
 上記エリート兵に捕獲、連行された味方NPCが洗脳を受け
 再登場した際もこのユニットになります。

 元味方ユニットの場合でも、発動するスキルは下記のスキルになります。


 戦闘行動のほか、破壊された町での略奪行為を行います。

〔スキル〕
・狂気伝播(P):自範相当範囲へ狂気を伝播しています。
・銃撃(A):物中単 威力小 【流血】
・精密狙撃(A):物中単 威力小 【麻痺】【致命】
・軍式格闘(A):物至単 威力小 【体勢不利】【泥沼】


【動物型歯車兵器】×7~(狼:2 蛇:2 熊:2 獅子:1)
 狼、蛇、熊、獅子の形をした蒸気を吹き出す自律兵器です。
 それぞれが別の効果を傾向を持ちます。

・ユニット特徴
 狼:反応速度、回避能力が高く、CTも高めです。嗅覚に相当する機能があるのか、優先的に【出血】【流血】持ちを狙ってきます。
 蛇:攻撃力、抵抗が高めです。動きを阻害されている者を優先的に狙ってきます。

 獅子:すべての能力が平均的に高めです。建物や障害物などを積極的に破壊します。この個体はあまり出てきません。

 熊:防技、回避、HPが高く、いわゆるタンクのような能力を持ちます。

〔スキル〕
≪狼≫
・噛みつき(A):物至単 威力中 【致命】【出血】
・疾走(A):物中貫 威力中 【痺れ】【崩れ】

≪蛇≫
・毒牙(A):物至単 威力中 【猛毒】【致命】
・締め付け(A):物近列 【ショック】【麻痺】【足止め】

≪獅子≫
・飛びかかり(A):物至単小 【氷結】【痺れ】【崩れ】【泥沼】
・食らいつく(A):物至単 威力大 【流血】【必殺】

≪熊≫
・立ちふさがり(A):物近列 威力小 【出血】【流血】
・穿ち貫き(A):物近貫 威力中 【体勢不利】【必殺】


●友軍戦力
【『閃電』バルド・レーム】
 今回の事件のために調整された義手、義足を手に、一時的に最盛期の姿で舞い戻ってきた鉄帝の剣聖。
 鉄帝の危機、避難している妻や友人達を守るため、最前線へと登場しました。
 ヨハン・レーム(p3p001117)さんの実父です。
 翠色に輝く雷電を剣に纏う軍服の男性です。全盛期ということもあり、非常に強力です。

・ユニット特徴
 物攻、反応、CT、EXAが群を抜き、それ以外のステータスも非常に強力です。
 とはいえ、相手は圧倒的な物量で攻めてきています。
 如何に剣聖といえど、いつか時間切れ、対応漏れが訪れます。
 皆さんの協力がなければ成功は不可能です。

〔スキル〕
・特化戦闘兵装(P):自身のHPが0になった場合、義手、義足が機能停止し、EXF判定を無しに戦闘不能になります(デメリット)
・翠電一閃(A):物中扇 威力特大 【溜め1】【飛】【防無】【必殺】
・翠翔斬(A):物遠単 威力大 【弱点】【崩れ】【飛】
・ジェイドストライク(A):物中貫 威力大 【呪縛】【体勢不利】【連】
・インフィニティブリッツ(A):物至単 威力大 【防無】【致命】【連】

【鉄帝軍兵】×20
 スチールグラードにいた鉄帝国の熟練兵士達です。
 皆30~40代、かつて全盛期のバルドの姿をよく知っている層であり、
 彼の下での戦い、そしてイレギュラーズとの連携ということで指揮は高いです。

・ユニット特徴
 連携能力にたけたよく鍛えられた兵士達です。
 戦場では彼らを指揮をすることも可能です。

 完全に任せきりにしても十分活躍してはくれますが、
 より効果的に運用するなら指揮をしてもよろしいでしょう。

 ただし、歯車兵エリートに倒されて連行されてしまうと、敵軍に属してしまいます。

〔スキル〕
・連帯突撃(A):物特レ イレギュラーズの指示(プレイング)があり、かつ兵士が3人以上横列に並んでいる場合にのみ可能。
 ユニットの進撃方向にいる3レンジ以内の敵に全てを対象。
 威力超特大 【飛】【流血】【防無】【致命】【反動:100】

・連撃銃火(A):物中貫 威力中 【流血】【連】
・鉄帝式槍術(A):物近単 威力中 【弱点】【致命】
・応急処置(A):物近単:HP回復小、BS回復 【治癒】

【クラースナヤ・ズヴェズダー教団員】×10
 大司祭の支援により参戦した教団員です。
 皆、覚悟を決めて戦線に臨んでおり、士気は非常に高いです。

・ユニット特徴
 ヒール、サポート能力が非常に強力です。

〔スキル〕
・聖句砲架(A):神超貫 威力大 【火炎】【業炎】【炎獄】
・聖句詠唱(A):神中域 HP回復中 【治癒】
・聖句浄化(A):神中域 自分以外のAP回復中 【治癒】
・聖歌独唱(A):神中域 範囲内の味方の物攻、神攻、防技を強化

  • <Gear Basilica>雲霞のごとくLv:20以上完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年03月01日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
セララ(p3p000273)
魔法騎士
郷田 貴道(p3p000401)
人類最古の兵器
シグ・ローデッド(p3p000483)
Knowl-Edge
ヨハン=レーム(p3p001117)
ステンレス缶
雨宮 利香(p3p001254)
ゲーミング
マルク・シリング(p3p001309)
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
天穹を翔ける銀狼
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
久住・舞花(p3p005056)
月下美人

リプレイ


 ガチャリガチャリと音を立てながら、機械の姿をした獣がこちらに向かって走ってくる。
 それにバルドの背後に到着した鉄帝国の兵士たちがバリケードを張り巡らす音がした。
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ参上!」
 到着と同時、動き始めた敵の方を見ながら、『魔法騎士』セララ(p3p000273)は高らかに宣言する。
 同時に、聖剣ラグナロクより放たれた光が、たった今張り巡らされたバリケードの上から保護結界を施した。
「数だけ多いファッキンボンクラどもめ。どうせならヨハンの親父に……」
 セララに続けるように敵の前へと歩みを進めながら、『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)はつぶやく。
 縁があれば、今度は挑んでみたい。強者との闘争を好む男はそう思いをはせながら拳を構える。
 貴道と同じように思うのは彼だけではない。
(剣聖か……鉄帝にもそれほどに名のある剣士が居るのね。
 味方として戦場でその剣を直に見られるのは幸運と言うべきか。
 『閃電』の業、糧にさせていただきます)
 ほんのわずかに視線をバルドへと向けた後、前線に向かう『月下美人』久住・舞花(p3p005056)もまた、思いをはせる。
(鉄騎種のエース、ヨハンちゃんのパパの戦い方!
 鉄騎種の戦いを参考にしたい私にとっては見て盗むいい機会ですね! いひひ!)
 バルドの背中を見ながら少し笑ってみせたのは『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)だ。
「その武器、いい具合に決まってますよ! 一緒に頑張りましょうねヨハンさん!」
 利香に笑いかけられた『砲兵隊長』ヨハン=レーム(p3p001117)はハッと我に返った様子を見せて、頷いた。
 傍らにあるのは、NMフリークスーー練達製の新型巨大火砲である。
「もちろん! 鉄帝は僕の……僕たちの故郷ですから」
 ほんの少しばかりの緊張さえ見せながらも、ヨハンが答えると、利香は満足したように頷いて最前衛へと走り出した。
(ははあ、お父さん。肩を並べてとはいきませんけど、お父……閃電も別にそんなのは望んでませんね。
 今回は後ろで砲撃担当ですが無事にこの戦いを終えたら、あなたに褒めて貰いたいですね……)
 静かに敵陣を見据える『閃電』を見れば、今は振り返ることはない。
 ヨハンは少しだけ深呼吸をすると、コホンと一つ咳をした。
「僕たち一人ひとりが最終防衛ライン、『ゼシュテルの壁』だ!
 クラースナヤ・ズヴェズダー教団と協力し、誰一人欠けることなく任務を全うしろっ!!」
 後衛に相当する位置に並んで布陣した鉄帝軍の兵士達と、最後衛にいる教団員たちが雄叫びを上げる。
 閃電の子だとそう付け加えたヨハンの檄は、彼らにとっては最適といえた。
 こうしてみれば、よく似た風貌をしていることもあって、怪しまれなどはしなかった。
「そうだ、ここで止めないと多くが犠牲になる。それは、許せない」
 ギュッとアムネジアワンドを握りしめたマルク・シリング(p3p001309)は、ヨハンの檄に応じる様にそう呟くと、ファミリアを上空へと飛ばした。
「オレの故郷を蹂躙させたりしないさ!」
 そう言って拳と手でパシッと音を立てたのは『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)である。
 機械の右腕の調子はよさそうだった。
(この、おそろしい軍勢を前に、わたしのできることは、限られていますの。
 でも……これ以上、意に反して破壊を強いられる人を、
 増やすわけには、いきませんの……)
 ふわふわと水の球体ごと浮かぶ『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は、すこしだけ目を閉じて敵のことを思って、覚悟と共に目を開くと、そのまま最前衛へと進んでいく。
 イレギュラーズが各々の配置につく中、『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は空へと浮かんでいた。
 ある程度の建築物に遮られない高さまで飛び、じっと向かってくる敵を探していた。
 今はまだ、仲間たちでも見える距離と場所からしか攻めてきていない。
 しかしながら、空高く舞い上がったことで、後続の敵の数もはっきりと見えた。
 文字通り、雲霞のごとく迫る敵の数は、かなりの数だ。
「成程。物量戦か……さてはて。私は『攪乱』を試みるとしよう」
 ゲオルグからのハイセンスで敵がかなり多いと聞きつけた『艦斬り』シグ・ローデッド(p3p000483)は、近くの住宅らしき物を確認すると、そのまま走り抜ける。
 物質透過を用いて、シグは迫りくる敵にとって都合が悪そうな場所を目指して移動を始めた。

 ゲオルグの指揮下に入った3人の教団員たちがやや前へと移動すると、各々が独唱を始める。聖句の言葉が魔力となって前衛のイレギュラーズに祝福を振り注ぐ。
 散らばって進んでくる歯車兵が、歯車兵器たちの後ろから接近してくる。
 不意にシグは建物の中から姿を現すと、まだ接近してきてない歯車兵の方めがけて腕を向ける。
 放たれたのは、一発の弾丸。その一撃は、一番近場にいた一人の歯車兵エリートの脳天をぶち抜いた。
 その歯車兵が崩れ落ちるのを確認するよりも前に、シグはその場を後にする。
 ノリアは確実に近づいてくる敵陣を見ながら、ある一定の距離で海水を敵陣めがけてぶち込んだ。
 一直線に放射された海水の塊は強烈な刃物のようにさえなって最前衛でこちらに向かう手負いの歯車兵器に傷を刻む。
 利香は敵の最前線に布陣していた。自分を無視してバリケードめがけて走る敵が少しばかり増えて、後ろに通りすがっていく。
 その瞬間だった。利香がウインクをすると、魔眼による精神的な束縛が歯車兵たちの意識を一気に利香の方へと絞らせる。
 歯車兵エリートが利香に向かって自動小銃と化した腕を向け、直後に弾丸が放たれる。
 それに続けるようにして、歯車兵が散開して続く様に利香へと銃撃を放つ。
 しかし、堅牢な防御技術をもつ利香の前ではその攻撃は些細な物でしかない。
 それどころか、ぶちまけられた砲撃に対する報復とばかりに、極少の雷球を叩き込む。
 そんな利香の引きつけに応じなかった歯車兵器と兵士達を前に、ノリアは後退してから大いに隙を見せる。
 それに誘われるように、先端を走っていた狼型の兵器、数人の歯車兵がノリアの方へと動き出した。
 舞花はノリアの様子を見止めると、彼女へ迫る複数の兵士の前に立ちふさがり、斬魔刀を抜いた。
 一歩の踏み込みと共に、その場に実体かの如き残像を残し、まっすぐに歯車兵を切り伏せる。
 精密な技術で繰り出された神速の斬撃を避けることなどできず、その兵士は大きな隙を見せながら後退する。
「――仕留めます」
 隙を逃さぬとばかりに、舞花は一歩、前に出る。
 自らの身体のギアを一時的に叩き上げ、軋む身体ごと踏み込み、紫電を纏った刃を叩き込む。
 苛烈な一撃は舞花自身の身体を僅かに傷つけながらも、致命的にすぎる一撃に歯車兵は地面に倒れた。
「ぶっ飛ばされたいヤツからかかってこい!」」
 声高にそう叫んだのはイグナートだ。
 まっすぐに走り抜けて仲間の注意を引き付けるノリアの下へと辿りつくと、目にも止まらぬ乱撃を叩き込んでいく。
 乱舞は収まらず、周辺にいる多くの歯車兵を巻き込みながら多くの血を流していく。
「まずはキミからだ!」
 傷ついて倒れそうな敵を見て、拳を握り締める。
 雷撃を纏うその右腕を、イグナートはまっすぐに振り抜いた。
 雷が落ちたかの如き轟音を立てて肉体に突き立った拳の先で、歯車兵が倒れていく。
 セララは利香とノリアの誘導さえも無視して迫りくる蛇型と熊型の歯車兵器を射程に収めると、ラグナロクを握りなおす。
 そのまま、身体を振るうようにして足を軸にぐるりと剣を薙いだ。
 強かに打ち据えた一撃は蛇型をかばうようにして前に出てきた熊型の二体の身体を切り刻む。
 貴道は利香が抑えた歯車兵に狙いを定めた。
 立ち位置を整え、深呼吸を一つ。ぐっと握りしめた拳による突きが、槍の如くまっすぐに、強烈な拳圧となってその兵士へと突き立った。
 マルクは会敵直後という事もあって回復の必要がないと判断すると、アムネジアワンドを天に掲げた。
 すると、歯車兵の下へと激しく瞬く神の光が降り注ぎ、複数の歯車兵に状態異常を与えていく。
 ――一瞬。翠の光が瞬き、直後に何かを無理やり引きちぎるような音。
 見れば、獅子型の歯車兵器が倒れてかけている。
 ギリギリ持ち堪えたらしいその歯車兵器は、再びの閃光を置いて、砕け散っていた。
 ヨハンはその様子を眺めながら、ぐっと息をのんだ。
「来るぞ! 僕に続け!」
 そう叫ぶとともに、ヨハンはNMフリークスの照準を敵の方へ向けた。
 続いての号令と共に火砲より放たれた砲弾は、緻密なコントロールでイレギュラーズを避け、狙いすましたように敵軍に風穴を開けていく。
 それに続けるように、教団員達がメイスを掲げ、紅蓮の炎を敵陣目掛けて投擲していく。

 利香は自分を囲む歯車兵エリートをじっと見つめていた。
 自らの肉体に魔法電流を流しながら、隙を探る。
 その歯車兵が刃物と化している腕で貫かんと動き出したのに合わせ、電流による強化を爆発させた。
 刃物をはじき、大きく出来た隙に、目にも止まらぬ速さで夜魔剣グラムを振りぬいた。
 跳躍の後、もう一撃を見舞うよりも前に、その歯車兵は大地へと伏していた。
 貴道も今なおいる歯車兵へと至近していた。
 味方による砲撃でかなりの損傷を見受けられる歯車兵たちを見渡すと、静かに構えを取る。
「さあ、どいつから先に殴られたいんだい?」
 そういえど、相手からの返答はない。
「そうかい。どっちにしろ、全員ぶち抜いてやるよ、順番に並びな?」
 高速で距離を詰め、防具を破砕する拳が、一人の歯車兵の身体を大きく崩す。
 セララは蛇型と熊型が直線上に並ぶように位置を調整すると、ラグナロクをやや上段に構えて振り下ろす。
 まっすぐに走る斬撃は、蛇型と熊型をまとめて切り裂いた。
 シグはとある建物の中から姿を現すと、射角を調整して自らをローデッドに変化させると、刀身に炎を象った破壊エネルギーを収束させ、そのまま振り下ろす。
 魔剣より放たれた烈しき陽光の如き砲撃が、セララから逃れる様に動き出した蛇型と熊型を焼き払う。
「一撃離脱であるな。壁抜きができる以上こちらの有利である」
 その様子を確かめた後、シグは直ぐに建築物の中へと戻っていった。
 仲間たちがほんの一瞬、射程の調整で歯車兵から間合いを取る。その瞬間をゲオルグは見逃さなかった。
 集団で仲間へと襲い掛かる歯車兵の後方部分、味方のいない場所を視野におさめ、静かにソレを起こす。
 その瞬間、歯車兵器の周辺に突如として現れたのは、廃墟と化した退廃の世界。
 黒き羽根の舞い散る世界にて囚われた歯車兵達は、何かを置き去りにしたように呆然とその場に立っていた。
 ヨハンはイレギュラーズの連携で弱り始めた敵の集団に照準を合わせて再び砲撃を放つ。
 放物線を意識して飛んだ砲弾が、狙い通りの場所へと着弾していく。
 砲撃を受けた歯車兵が倒れていくのが見えた。
 そんなヨハンに続けるように、再び炎球と銃弾が敵の方へと放たれていく。
 マルクは敵の反撃を受けつつある仲間たちを見定めると、立ち位置を調整していく。
「たとえどれだけ傷付こうと、僕は死を遠ざけてみせる!」
 まっすぐに敵を見つめて、的確な指示と号令を発し、状態異常を受けた仲間の回復を施すと、ほっと安堵の域を漏らす。
 まだ戦いは始まったばかり。幸い、体力的に危険域にいる者はまだない。
 だが、共有される情報では、まだまだいることは確か。油断はできなかった。


 少しばかりの時が経った。敵が投入してくる戦力は少しずつだが増えてきている。
 対応をしつつも、鉄帝軍の方まで漏れる数は確実に増えていた。
 とはいえ、それでもかなり状況は良い方といえる。
 範囲攻撃を用いてまとめて広範囲を攻撃できる分、数の不利は補えてはいる。
 回復手となる教団員の生存している数も多い。
「行かせませんよ」
 ヨハンは鉄帝軍兵の一人へと迫っていた歯車兵エリートの前へと躍り出ると、己の身体に宿る電流を活性化させ、火砲へと注ぎこみ、思いっきり歯車兵へと叩きつけた。
 爆発的な火力の一撃を受けた歯車兵エリートはその場に倒れていく。
「皆で力を合わせれば皆の大切な人々を守り抜ける!
 だから狂気になんて負けないで!ボク達で鉄帝の人々を守るんだ!」
 セララは狂気の伝播が鉄帝軍の兵士達へ影響を与えるのを危惧してそう声を上げた。
『おぉぉぉぉ!!!!』
 返ってきた雄叫びに頷きつつ、剣を構えた時だった。
 断末魔のような声がして、そちらを向けば、一人の兵士が歯車兵エリートに叩かれ、崩れ落ちる瞬間だった。
 エリートはその兵士を起用に摘まみ上げると、担ぎ上げて踵を返す。
「ボクの目の前で誘拐なんてさせないよ!」
 ラグナロクを振るい、剣撃を飛ばせば、歯車兵エリートがこちらを視認した。
 そいつの方へ行こうとした時、横から現れた熊型の歯車兵器が邪魔をする。
「どいて!! ギガセララブレイク!」
 瞬く間に天雷を呼び寄せ、聖剣へと降ろしたセララは、雷光を纏ったラグナロクを熊型の歯車兵器へと振り下ろす。
 その一撃で崩れ落ちた歯車兵器を飛び越え、セララはこちらへ向かってくる歯車兵エリートへと走り抜けた。
 それとほぼ同時、貴道の近くでも歯車兵エリートが一人の兵士を沈黙させて担ぐのが見えた。
 貴道は拳を握ると鋭く突きを放つ。
 突きが槍のように歯車兵エリートの腹部に突き立つと、邪魔者を葬らんとばかりに貴道の方へと動き始めた。
「ヘイ、そいつは持っていかせねえよ?」
 そんな言葉と共に拳を構え、間合いを見極める。
 利香は襲い掛かってきた蛇型の歯車兵器を反撃で叩き伏せて顔を上げると、対処漏れか鉄帝軍兵を抱えて戻っていく数人の歯車軍兵を見た。
「連れて行こうったってそうはさせませんよ!」
 自分についてくる敵を振り払ってその数人の前に躍り出ると、チャームをかけて注意を引く。
 まんまと引っかかった歯車兵士を連れて、利香は少しばかり空を見上げた後、移動を開始した。
 シグはそんな利香の様子を見下ろしながら、静かに状況を見ていた。
 今、戦場にいるのは歯車兵エリートが圧倒的に多い。
 その結果、イレギュラーズは倒れた鉄帝軍兵を連れ去る敵を行かせないようにせねばならない状況だった。
 自分の周囲に連行中の歯車兵エリートも味方もいないことを見止めると、シグは自らの身体を再び剣に変え――業火の一撃を戦場へと打ち下ろした。
 一直線上を焼き払う業火の一撃が、歯車兵エリートの数を大幅に減らしていく。
 ゲオルグは利香が自分の方に近づいてきていることに気づくと、自らも近づき、利香と交代するように敵の前に立ちふさがる。
 そのまま、光の翼を歯車兵エリートへと放った。
 ノリアは自分の方へ続々と近づいてくる歯車兵エリートのうち、できる限りの多くを射程に収める様に調整しながら、水鉄砲を打つ。
 まっすぐに走る水鉄砲に押し出されるようにして複数の歯車兵エリートが倒れていく。
 舞花はノリアの近くで剣を振るいながら、ちらりと視線を巡らせた。
 すると、ノリアの怒りから逃れた数人が鉄帝軍兵の方へ進んでいるのが見える。
 舞花は彼らの前に踊りですと、堂々と名乗りを上げた。
 立ちふさがった舞花を邪魔と思ったのか、彼らが一斉に銃撃を放つ。しかし、舞花はそれを紙一重で躱しながら近づいた。
 イグナートの動きは時を経るごとにキレが増していた。
 舞花につられた一人の歯車兵エリートへと至近すると、構えられた自動小銃を蹴り上げ懐へ潜り、神速の掌底を叩き込む。
 ぐにゃりと曲がって倒れたそれを押して投げ捨て、ふぅと息をつく。
 マルクは傷の目立ってきたイレギュラーズめがけて杖を向け集中する。
 自らの身体にある調和を賦活力へと変換させ、優しき光に変えてイレギュラーズへと降り注がせた。


 戦いは続いている。
 第一波を潜り抜けた後、波を経るごとに、敵の投入戦力は増え続けていた。
 文字通りの無尽蔵を思わせる戦いに、いくつかのパンドラの輝きが開いている。
 連戦は休憩を取って体力や気力を取り戻せるといっても疲労を蓄積させる。
 特に、味方が連行される寸前に陥った時期のある鉄帝軍の疲弊は大きいように見える。
 それでもなお必死に戦っているのは、祖国のため、愛するだれかのためであることは明らかだ。
 そして何より、自分達よりもはるかに少数であるはずのイレギュラーズが未だに一人としてかけることなく、堂々と敵に対処していることが鉄帝人の魂に光をともしている。
(頑張ってくれてはいますが、鉄帝軍兵の士気はもうそろそろ限界ですか)
 ヨハンは自分の周囲にいる兵士達の士気が無理矢理強く持っている者であることを理解すると、視線を巡らせた。
(……そうだな。……む?)
 視線を巡らせた先にいるゲオルグは城壁の向こう側の様子を見て、すこしばかり目を細め、今度はマルクの方に視線を向けた。
(どう思う?)
(どうって……あれは……)
 ゲオルグからの問いに答える様にファミリアの視線共有で城壁の向こう側を見たマルクは頷いた。
(どうやら、敵はもうここから攻める気はないみたいだね)
(となると……残るはここに今いる敵だけか)
 ゲオルグは再び視線をヨハンに合わせてそれを告げる。
 ヨハンはソレに頷くと、鉄帝軍の意識をこちらに向けるため、一つ咳をした。
「お前ら! いいか、敵の増援はもうない! あとはここにいる奴だけだ!
 力を振り絞れ!あと少しで、僕たちの勝ちだ!!」
 叫ぶようなヨハンの言葉に、鉄帝軍が雄叫びを上げる。
「行くぞ!!」
 ヨハンは火砲の照準をやや高めに、戦場の中央部辺りへと上げて、砲弾をぶっ放した。
 そのあたりにいた敵が断末魔の声を上げ、軋んだ爆発音を轟かす。
 ちょうどノリアは隙だらけな自分を曝け出しながら再び教団員の射程へ歯車兵を引き連れている途中だった。
 聞こえてきたヨハンの檄と、兵士たちの雄叫びの声。
 それと同時に、自分についてくる敵兵へめがけて、炎球が複数個飛んできた。
 それに応じる様に、ノリアは自らの体内にあるあらん限りの海水を最後の一撃とばかしに敵へ向けて叩き込んだ。
 炎と水、二つの高火力の砲撃を受けた歯車兵の多くが地面へと倒れていく。
「負けられない……絶対、負けられない!」
 パンドラの加護を開き、起き上がったセララは、聖剣へと魔力を籠める。
 セララは天高くラグナロクを掲げていた。
 呼び寄せられた雷鳴が轟き、発光と衝撃をもってセララとラグナロクを焼き付ける。
 落雷を帯びた聖剣を静かに構え、眼前にて隙を見せる歯車兵めがけて叩き込んだ。
 まるで剣そのものが落雷かの如き激しい音を立て、振り下ろされた剣の先で既に歯車兵は倒れていた。
 一方、貴道はふぅと一つ脱力して見せた。そのまま体を屈め、全身をばねにするかのようなアッパーカットを叩き込む。
 伏した龍が起きると同時に敵を食らうかの如き、尋常じゃない火力の一撃を受けて、目の前にいた歯車兵が大地へ倒れていく。
 シグは比較的遠くにいて未だに無傷な敵を見つけると、静かに狙いを定める。
「……これで最後とはいえ、お前さんは面倒だからな。
 到着する前に弱っていただこう」
 金属ペンダントと両腕を融合させ、て斥力を帯びさせたシグは静かにそう告げるや、一発の弾丸を放つ。
 相手を悪夢へ叩き落すという魔弾はまっすぐに狙った歯車兵を打ち抜いた。
 利香は自らの魔眼を再度活性化させる。
 そのままウインクして見せれば、今度はその余裕そうな態度に発狂した歯車兵達が突撃してきた。
 グラムを盾代わりにして銃弾をさばききると、一気に至近。
 同時に黒刃が走り、一人の歯車兵の心臓を真っ二つに立ち割った。
 剣爪を歯車兵から引き抜いた利香は、次の獲物を見つけるや否や、艶っぽく笑んで武器を構えた。
 マルクは自らの魔力を高めると、神気閃光を比較的敵の数が多い利香の近くへと放つ。
 神聖なネメシスの刃は歯車兵達の動きを大いに乱していく。
 続けるようにして放たれたゲオルグの光翼乱破がさらなる混乱を呼び寄せる。
 舞花はノリアに向かっている蛇型の歯車兵器を見つけると、一気にそこへと近づいた。
 閃く剣閃に怯えた様子を見せた蛇型の歯車兵器が首を立ち上がらせるような仕草をするのと同時、舞花は紫電を纏う斬魔刀を蛇型の頭部付近へと滑らすように動かした。
 電気のようなものを発しながら、首がすっ飛んだ歯車兵器の胴部が地面へと落ちる乾いた音がした。
 翠の輝きが放たれ、一匹の獅子型の歯車兵器へと線を引く。
 音は微かに遅れ、獅子型を貫通した輝きはそのまま後ろにいたもう一匹――熊型の歯車兵器を貫いた。
 後ろにいた一匹が倒れずにそのままこちらへ突っ込んでくる。
 その腕がバルドにぶつかるその寸前、機械の拳が熊の頬部分を殴りつけた。
 吹っ飛ばした本人、イグナートは体勢を立て直すとともに、まっすぐに熊型を見据える。
 深呼吸と共に、イグナートと熊型がほぼ同時に動き出し――交錯。
 数秒の後、熊型歯車兵器が大地へと倒れていった。
 ゲオルグは恐らくは最後になりそうな魔術を行使する。
 開かれた異界の景色に飲み込まれた最後の数体が、動きを鈍らせる。
 ノリアはその様子を見ると、すこしだけ喉の調子を整えた。
 そのまま、すこしだけ息を吸って。
「~~~~♪」
 歌うは絶望の海を想起させる呪いの歌。それを耳に入れた敵の数体が痛みに震えながらもがき苦しむ。
 貴道はそれを見て至近すると、勢いのままに拳を一体の鳩尾に叩き込んだ。
 肉が避け、骨が砕ける音がした。
「正義の剣を受けてみろ! ――必殺! ギガセララブレイク!」
 今日何度目になるか分からない、雷神の一撃が如き振り下ろし。
 セララは、渾身の力をもってそれを一体へと振り下ろす。
 歯車兵器の機械が溶け落ちながら、焼き切れる。
 ヨハンはそんな仲間たちの攻撃を見つめながら、火砲の照準を再び合わせなおす。
 引き金にあたる部分を引くのと同時、放たれた砲弾は敵だけを選りすぐって驟雨のごとく降り注ぐ。
 続く様に現れたのは利香だ。
 ほんの少しの休憩で回復した気力と魔力をグラムに籠め、狙いをつけたのは熊型の歯車兵器。
 まっすぐに走らせた刃に雷撃を乗せ、無数に切り刻む。
 その舞うが如き妖艶な連撃の末の斬り上げを最後に、ぎちりと音を立ててソレは大地に沈んだ。
 未だ生き残った狼型の歯車兵器がイレギュラーズへ攻撃を叩き込む。
 微かな出血と、致命的な傷が浮かび上がる。
 マルクはその様子を見ると、すぐに号令を発して適切な処理を施し、狼型による反撃を最小限に抑えた。
 遅れて踊りこんできたのはイグナートだった。
 イグナートは残った歯車兵器と普通の歯車兵を順に見据えると、すさまじいまでの高速で生き残った敵を叩きのめしていく。
 次々に大地に倒れ、最後に残った一体。
 舞花は静かに心を落ち着ける。鏡花水月の心得を抱き、直後に一歩踏み込んだ。
 ずきりと響く身体への影響をねじ伏せる様にして紫電を纏った閃光が最後の一体を切り伏せる。


 最後の波を終えて、イレギュラーズは一息をついていた。
 その中で比較的、余力を持っていたヨハンは、無意識か父のことを見ていた。
 バルドの方は傷ついた鉄帝軍の兵士や教団員たちを見て回っていたが、ふと視線に気づいた様子を見せ、ヨハンの方へ歩いてきた。
「…………」
 お互いに少しばかりの沈黙。
「元気なようだな」
「はい」
「活躍は聞いていた……頼もしくなったな」
 言葉少なに、静かにそういう父の視線を仰げば、微笑みが浮かんでいた。
「今度は、お前自身の腕も見てみたいものだ。よくやった」
 それだけ言い残して、バルドはヨハンの肩をポンと叩いた。
「縁があったら今度は挑んでみたいもんだよ」
 いつの間にか隣に並んでいた貴道がそう言えば、振り返ったバルドは少しだけ黙したまま。
「今回のような事件が鉄帝で起きないことを祈りたいところだな」
 そう呟いて残し、その場を立ち去っていく。
「……それにしても隠居姿だったのね、アッチの方」
 バルドの背中を見ながら、そう言ったのは利香だ。
 頭に思い浮かぶのはモジャモジャのそれ。
 ここでの戦いはひとまず終わり。
 だが、まだすべて終わりではない。戦いは残っているのだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

行間に溢れる残骸やらの数……

まぁ、それはさておき、お疲れさまでした。

お見事です。

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