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シナリオ詳細

酔える恋は赤信号 ~神郷 赤斗のグラオ・クローネ2020~

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●赤信号に気を付けて
「特異運命座標。お前さん、この日の夜は空いてるか?」
 その日、境界図書館を訪れていた貴方は『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)に呼び止められた。彼が手にしていた黒革の手帳。その中身を覗き込めば、万年筆で指示されていた日時は――なるほど、グラオ・クローネに近い。
 何故自分を誘ったのかと問われると、彼は口角をつり上げる。
「そりゃ、俺と一緒に行って欲しい異世界があるからだ。
 頼む、とびっきり酔える一杯用意しとくからさ。未成年にはノンアルコールだが」

 神郷 赤斗は仕事の鬼である。
 より詳しく言えば、ビジネスライクな関係を特異運命座標に対して貫いてきた人物だ。
 依頼がある時だけ境界図書館に現れ、終われば雑談もせずにフラリと消える。
 日常の他人とのやり取りに至っては、同じ身体を共有しているもう一人の『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)に任せっぱなしで自ら出向いて来ないのだ。

 そんな男が今、誘いをかけているのである。
 好奇心か、はたまた別の心情か。貴方が応えるように頷くと、赤斗は人懐っこい笑みで喜んだ。
「いい返事だ! それじゃ、ここ(境界図書館)で待ってるからなァ」

●酔わせて特異運命座標
「改めて、ようこそ異世界のCafe&Bar『Intersection(インターセクション)』へ。
 俺はBarタイムのマスター、神郷 赤斗だ。Cafeタイムも営業はしているが、そちらは別の境界案内人、神郷 蒼矢に任せている」
 ほどよく照明の落ちた店内に、優雅に流れるジャズミュージック。ムーディーで口説くにはもってこいの"大人の空間"である事は、特異運命座標達にもよく分かった。

……そう。特異運命座標"達"は。
 この場に呼ばれた特異運命座標は一人ではなかった。おまけに呼び出された者は皆、いつの間にやら店の制服を着せられている。

「混沌にもある行事らしいが、この異世界にもグラオ・クローネがある。今はその真っ最中でなァ。店の期間限定カクテル『恋信号(スウィート・シグナル)』にまつわる"伝説"を信じて若い男女が大勢来るんだ。いやぁ、最初は俺一人でどう捌くか悩んでたが、お前さん達が時間を割いてくれて助かった」

 この時の笑顔がまた、騙してやったぜというより本気で助け手に感謝しているような表情なのだから始末が悪い。
「頑張ってくれたら、後でまかない代わりに美味いの奢るからよ。頼むぜェ特異運命座標」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
『神郷 赤斗のグラオ・クローネ2020』開催です。仕事人間ってそういうものよ?
※赤斗と会った事のない特異運命座標も、ぜひぜひご参加ください!

●目的
 お客さんにロマンティックな給仕の方法でオリジナルカクテルを出す。
 お店の営業終了後、お酒(未成年・年齢不詳はノンアルコールドリンク)を楽しむ

●場所
 異世界にあるCafe&Bar『Intersection(インターセクション)』の店内。
 店主が行方不明で物語が止まってしまっていたため、赤斗・蒼矢が代理で店主を務め、特異運命座標の力を借りる事で、物語を動かそうとしているのだとか。

●登場人物
『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)
 この異世界に貴方を招き入れた境界案内人。冒頭にも書きましたが仕事以外の事をあまり語らず依頼の時だけ現れる、プライベートやその他の人間関係が謎に包まれた人物です。
 今回も個人のお誘いと思いきや、仕事のお話でした。

『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
 オープニングで名前だけ出て来た境界案内人。今回は同行しないのでリプレイには出てきません。
 この世界でCafeタイムを任された様子。赤斗と同じ身体を共有していますが、こちらは普段、怠惰でダラけているようです。

●期間限定カクテル『恋信号(スウィート・シグナル)』
 毎年グラオ・クローネの時期になると、この店で提供される不思議なオリジナルカクテル。
 独りで来た男性が、同じく独りで飲んでいる女性にこのカクテルを奢ると、カップルになれるという伝説があります。実はこのお酒には魔法がかかっており、店員が"自分の思うロマンティックなカクテルの出し方"でお酒を提供するほど、美味しい一杯になるのだとか。店員が女性へ出す時のキメ台詞は「あちらのお客様からです」が鉄板ですが、お客さんの胸に刺さる言葉であれば、どんな台詞でも構いません。

●その他
 仕事が終わったら、労いに赤斗がカウンターに立ってお酒を振舞います。
 ※未成年や年齢アンノウンの方にはノンアルコールの物を提供させて頂きます。
 お酒はオーダーしてもいいし、赤斗に任せてみても構いません。貴方に合いそうなものを勧めてくれるでしょう。
(※甘い物が好き、酒っ気の強い物がいい……等、リクエストを添えると、より特異運命座標にあった物が提供されるかもしれません)

 また、バーカウンターに立っている限り、赤斗はバーテンダーらしく対話にも応じます。謎に包まれたプライベートを掘り下げるもよし、グラオ・クローネの贈り物を渡して驚かせてみるのもよし。勿論、店の雰囲気を独りで楽しんでも構いません。素敵な時間をお過ごしください。

 それでは、異世界でお会い致しましょう!

  • 酔える恋は赤信号 ~神郷 赤斗のグラオ・クローネ2020~完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月23日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

辰巳・紫苑(p3p000764)
死と共に歩く者
スー・リソライト(p3p006924)
猫のワルツ
ボーン・リッチモンド(p3p007860)
嗤う陽気な骨
奏多 リーフェ 星宮(p3p008061)
お嬢様の恋人

リプレイ


 ムーディーなジャズミュージックが流れる店内で、若い男女が寄り添っている。久しぶりねと寄り添う女性。君との時間が永遠に続けばいいのにとため息をつく男性。
 その甘いひと時を邪魔しないよう遠巻きに眺めながら、『猫のワルツ』スー・リソライト(p3p006924)はうっとりと目を細めた。
「時間が違うとこうも雰囲気が変わるんだね。ここからは大人の時間! って感じかなっ?」
「スーと奏多は確か、カフェタイムも店を手伝ってくれたんだよな」
 夜の時間の店主こと『境界案内人』神郷 赤斗が話を振ると、奏多は首を縦に振る。
「疲れたけど、甘い物も食べられたし悪くなかったよ」
「甘い物。そうよ……美味しいケーキはどこ?」
『死と共に歩く者』辰巳・紫苑(p3p000764)が辺りを見回すも、店内を彩っているのはカクテルとちょっとしたおつまみだ。事情を察したスーが、あー……と言いにくそうに笑った。
「紫苑さん、ひょっとしてそれ、蒼矢さんの依頼の事なんじゃないかな? 同じ姿で見分けがつきづらいけど、今回声かけてくれたのは"赤斗さん"の方だよっ」
「……あら? 色々間違っている?」
 同じ身体に2つの魂。蒼矢と赤斗の見分けがつかず、じぃと包帯の隙間から赤斗を凝視する紫苑だったが、その肩にポンと白骨の手が降った。
「カッカッカ! 赤斗の旦那も存外仕事人間だな! まあ、そう言う人も居るのが人の世って奴かね」
 暗い店内にぬっと髑髏のシルエットが浮かび上がる。『嗤う陽気な骨』ボーン・リッチモンド(p3p007860)だ。
「包帯に触れないで。私は死を与える者よ」
「おっと。気をつけるよ紫苑ちゃん。まぁでも俺は見ての通り、すでに死んでる」
 死と共に歩む者と、死線をすでに超えた者。なんとも数奇な組み合わせだ。
「ふふふ。何はともあれ、ロマンチックな時間作りっていうのも面白そうだし、頑張っちゃう!
 その代わり仕事が終わったら、期待して良いんでしょっ?」
 カフェタイムにも同じような質問をしたような。既視感を覚えつつスーが問えば、赤斗が首を縦に振る。急であろうと依頼は依頼だ。気を引き締める得意運命座標たちであった。


「とはいえ、悩み所だよね、ロマンティックな給仕の仕方って」
 ダンサーとして普段は脚光をあびるのが主のスーにとって、今回の仕事は悩みどころだ。こういう時の主役はお客様。あまり長い時間目立つワケにもいかない。
 悩んでいる隣でシェイカーを振る音が軽快に響く。振り返るとそれは奏多だった。
 指先まで意識した繊細な動きでグラスへ酒を注ぎ、ベリーとハートのチョコレートを添え、目の前の女性客の前に置く。
「お待たせしました。当店自慢のカクテル、『恋信号』です。
 あちらのお客様から、貴女にだそうですよ」
 奏多が微笑み示した先には、グラスを煽る男性客の姿があった。男女の視線が絡み合うーー。

「うわぁ……かっこいいね、奏多さんっ!」
「スー君にも出来るよ。カクテルを作ってお客様にお渡しするだけでも、雰囲気的にはロマンチックだからね」
 お客様に喜んでもらえたら嬉しいという気持ちがあれば大丈夫。彼の後押しを受けて、スーはカクテルを手に取った。

「本当は今晩、彼と来るつもりだったの」
 もう終わりね。
 喧嘩別れした女性客がテーブル席で俯いていると、彼女の目の前で銀の蝶がひらひらと舞った。
 顔を上げればそこにはウェイター姿の猫耳の女性が立っている。悪戯な微笑みと共に差し出されたのは『恋信号』。結ばれるための恋する一杯ーー。
 諦めかけていた女性の耳元に唇を寄せて、スーは二言ほど囁く。それは今しがた彼女が占った恋の顛末。驚く女性に"皆には、内緒だよっ?"とばかりに人差し指を唇に当てて微笑み。
 直後、店の入口の扉が開け放たれた。肩で息をしながら男性がテーブルへと歩み寄る。
「ごめん、俺……!」
"好き"の気持ちは、何度だってやり直せるのだ。

 スーの静かな接客に対し、こちらは何やら賑やかだ。正確に言えば黄色い声があがっている。無精ひげを生やした白髪の精悍な男性がシェイカー片手に笑顔を振りまいてーー。
「「誰!?」」
 得意運命座標の声がハモると、イケメンはカッカッカ! といつもの快活な笑顔で仲間の疑問を吹き飛ばした。
「スケルトン姿は一般人の心臓に悪いからな。どうよ? 少しは男前になったんじゃねェか?」
 ボーンのギフト『幻術変化』は生前の姿を再現する能力だが、そこらの地味な男性客よりワンランク上の男前だ。
「素敵なレディー。こちら、あちらのお客様からです。どうぞ素敵なお時間をお過ごしください」
 この甘いマスクでヴァイオリンの演奏まで出来るのだから、ファンが増えない筈もなく。
「なぁ赤斗の旦那。俺にだけ、やたら"自分で飲む用"の『恋信号』を頼むお客様が多い気がするんだが?」
「そりゃ増えるだろォ。全部対応してやってくれ」

 黄色い声からは少し離れた静かな場所で紫苑は接客をしていた。なし崩し的に手伝う事になったものの「頑張ってくれたら、後でまかない代わりに美味いの奢るからよ」と赤斗が言うのだ。キッチリこなしておきたい。
「にしてもロマンティックに、ね……。駄目だわ、私にとってのロマンティックはどうしても猟奇的とか残酷な方面になってしまうわ」

ーー花にしましょう。好きなの、花。

 悩んだ末に女性客の前へと立った紫苑は、ふわりと目の前に藤の花を現した。その花言葉は"歓迎"そして"恋に酔う"。まさに『恋信号』に相応しい。
【幻影】によって生み出された花は美しく、驚く女性客の前でカクテルの中へ溶け込むように消えていった。
「……あちらのお客様から、恋に酔う花を溶かし込んだカクテルです」
 照れたように後ろ頭を掻く男性客。女性客はクスリと笑い、カクテルを持って寄り添った。

 甘い時間が恋人たちを癒していくーー。


「「乾杯ー!」」
 店じまいを終えたバーは賑やかな雰囲気に包まれた。
「任せられてよかったよ。おかげで店は大盛況だ!」
 何が飲みたい? と問われて奏多は甘口のノンアルコールの飲み物を頼んでみた。出された赤いカクテルをストローで一口すすると、確かに甘くはあるのだが。
「不思議な味だね。牛乳が入ってるのは分かるけど」
「『コンクラーベ』のカクテル言葉は"鍵のかかった部屋"だ。ミステリアスだろう?
 味を楽しみながら推理してくれ」
 なお、散りばめられた星型のゼリーは"星宮"のために用意したオマケらしい。
「推理といえば、スー君が接客の時に出してた光の蝶は凄かったね」
「実は【ステップマジック】を使ってみたんだっ! 上手くいってよかったよ」
 そう笑うスーの手元には『キティ』という赤ワインのカクテルが握られている。名前の意味は"子猫ちゃん"。酒に弱い彼女でもゆっくり飲める一杯だ。
「あんまり信じて貰えないんだけど、これでもちゃーんと成人なんだから!」
 ほろ酔いでご機嫌そうに尻尾を揺らすスーだったが、隣から強い酒の匂いがして思わず耳を逆立てる。
「ぼ、ボーンさんっ?」
「赤斗の旦那! 俺には度数濃いの頼むぜー!」
「おいおい、今夜はそれぐらいにしとけよ。泥酔しちまうぞ?」
「俺は今酔いたい気分なんだよ……こっちはロべリアちゃんにフラれちゃったからな……いやまあ、大切に想ってはくれてるみたいだが」
 男泣きに泣くボーンの周囲には、すでに空のグラスがゴロゴロ転がっている。"レディーキラー"と呼ばれるようなアルコール度数の高い飲み物をガバガバ煽り、すっかり酔っぱらいだ。
「もういっそここにいる女性陣に恋信号を奢るか!? カッカッカ!」
「『義理恋信号』ってどうなのかしら」
 紫苑がやれやれとため息をつき、ショコラ・マティーニのグラスを傾けた。せめてカフェ時間のように甘い物をーーと出されたのは、チョコのお酒をベースにしたカクテルだった。小さなプラリネのチョコレートも肴として添えてある。
 ふと話の流れで思い出したように彼女は疑問を呟いた。
「そういえば、この『恋信号』にもカクテル言葉って奴、あるはずよね?」
 その答えはカウンターに仕舞われたカクテルのレシピノートにあった。前の店主が残していった物らしいのだが、恋信号のカクテル言葉の欄は空白になっている。
「あえて付けなかったのかもな。恋ってのは色んな形があるから、楽しむお客さん一人ひとりが、好きなメッセージを込められるように」
「そういう赤斗の旦那は恋しちゃたりすんのかよ? 悩んでる事とかあれば相談乗るぜ、この骨野郎に全部吐いて楽になっちゃえよー」
 うりうり、と赤斗の頬にグラスを押し付けてくるボーン。絡み酒だぁと驚くスーだったが、こんな会話が出来るのも珍しい機会だ。
「折角だから、赤斗さんのお話も聞きたいなっ」
「俺かぁ? ……会えなくなっちまった人はいるよ。それが恋かどうかは分からなかったが、心はその時から止まったままだ」
……何せ俺は"赤信号"だからな。
 笑おうとする赤斗の肩をボーンは慰めるように強く叩いてーー顔を真っ青に青ざめさせた。介抱のためにソファー席へ転がされる彼だったが、クッションの間に何か挟まっているのに気づく。見るとそれはヒナゲシの花だ。自分が接客した誰かの"落とし物"らしい。
「まあ、こっちはこっちで思い続けるのは構わんだろ? 新しい恋に目覚めるかは……運次第って所だが」

「はい」
 帰り際、紫苑が差し出した箱を見て、赤斗が目を丸くする。
「……あげるわ。私がいた世界では、お誘いを受けたら何かしら贈り物を持ってくるのが普通なのよ」
 グラオ・クローネ? 丁度良かったじゃない。
 彼女は笑い、それじゃあねと返事を聞く前に去っていく。
「参ったな。甘い」
【ふわあまチョコレート】を口に頬ると、赤斗は夜空を仰いたーー涙が零れないように。
 得意運命座標となら、歩み出せるかもしれない。そんな予感を胸に抱いて。

成否

成功

状態異常

なし

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