PandoraPartyProject

シナリオ詳細

美容の秘訣はスライム

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●奥様のお悩み
 幻想にある貴族らの屋敷が集う上流住宅区。昼の間は主である貴族の男達は、自身が持つ仕事に大忙しで外へ出ているか屋敷に籠っているかのどちらかだ。
 だが、その妻達は違う。
「そうなのよぉ。うちの子はもうやんちゃで……」
「私の所もメイドや爺やによく悪戯しちゃっているわ……叱ってはいるのだけれども」
「私は逆ですね。本を読んでばっかりで……夫に似たのかしら」
 暇な昼には、誰かしらの貴族邸に近所の奥様達が集まっては茶を飲み、こうして日頃の愚痴を言い合っていた。飲んでいる茶は勿論、テーブルから椅子まで全て高級品ではあるのだが、話している内容は全くの庶民の悩みと一緒である。
 今日もまた、三人の奥様方が日課となっているお茶会を楽しんでいた。
「あら、貴方……」
 その中の一人が茶のおかわりを淹れていたメイドの方を見る。
「はい? 私に何か……?」
 何か粗相でもしただろうか? つい、身構えてしまったメイドであったが……。
「いつもより肌がツヤツヤとしているわね。化粧水を変えました?」
 奥様からは予想をしていなかった言葉が投げられる。
「あら、本当ね。ツヤだけじゃなくて、張りもあるわ」
「貴方ちょっと睡眠不足で肌が荒れていたでしょう? 心配だったのよ」
 話題がメイドの肌になった途端、三人の奥様方が椅子から立ち上がってはそのメイドに集まる。
「ちょっと、頬じゃなくて腕の方も綺麗よ! 指先も!」
「とても水仕事している手ではないわ!」
「一体、何を使ったらこんな風になるの!」
 頬から始り、腕や手、最後には脚の方にまで奥様方の手がメイドの身体に伸びていた。ぷにぷにとその肌を指で突かれたり、揉まれたりと玩具となってしまっている。
 貴族の一員といえば女性には変わりがない。美容に対する好奇心も庶民と変わらないのだ。
「こ、これは保湿パックを使ったのです……スライムの……」
 やっと解放されたメイドが、肩で息をしながら、やっと答えた。その言葉に三人の奥様達はきょとんとする。
「スライム……?」
「は、はい……山岳部にある迷宮に生息しているスライムの死骸を材料にしたものです。死骸と言っても、核を抜いただけのものらしいのですが……」
「そんなものをどうして貴方が?」
「私の恋人が商売に携わる人でして……たまたま、冒険者から入手したから私に、と……」
「その恋人の話も後で聞くとして……ふむ」
 迷宮に住むスライムがモチモチ肌の救世主。その話を聞いたからには無視する事は出来ない。
「まだ市場に残っているかしら?」
「いえ、もしかすると鮮度も関係あるかも知れませんわ」
「そうなると採れたての方が……」
 三人の奥様達が顔を見合わせて、同時に頷いた。
 幸い、資金なら十分にある。ギルドに依頼を二、三度出した所で問題はない。むしろ、それで若々しい肌が手に入るのならば、安いものだ。
 そう考えた奥様達は、メイドからそのスライムの居場所などを聞き出し、共同で資金を出してギルドに依頼を出した。

●出された依頼
「これが今回の依頼なのです」
 いつものように『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がギルドで受けた依頼の内容を説明していた。
 場所は山岳部に出来た小さな迷宮。そこに生息している『ビヨウスライム(命名:貴族奥方連合)』の討伐及び死骸の回収という仕事内容だ。
「迷宮そのものは小さく、一時間もあれば踏破できるダンジョンなのです。スライムは核さえ倒せば、あとはゼリー状の何かしか残らないので、それをこの瓶に積めて持ち帰って来て欲しいのです!」
 そう言って、ユリーカは机の上に水が二リットルは入りそうな透明な瓶を置く。口の部分はコルクで蓋をされている。
「それと、そのスライムはどうやら女性を好むようでして……優先的に狙って来る習性があるようなので、気を付けて欲しいのです」
 最後にユリーカは目を若干そらしながら、少しはっきりとは言いにくそうにスライムの特徴を説明する。
 かくして、奥方達の美容を守る依頼が始まる。

GMコメント

 橘 遊輪です。よろしくお願い致します。
 今回はスライムです。ぷにぷにのぬるぬるです。皆さまのリアクションをとても楽しみにしております。


【成功条件】
・山岳の迷宮に住む『ビヨウスライム』の討伐及び死骸の回収。

【敵情報】
・ビヨウスライム×5匹
 大きさは高さ1メートル、幅2メートルサイズの青色のスライムです。中央に球状の赤い核があり、これに傷が付けば死を迎えます。核がなくなっても体はそのままです(流石に丸一日そのままだと干からびます)。
 身体そのものはゼリー状で、例え核と切り離しても元に戻ろうとします。核が無くなれば、切り離した身体も動かなくなります。

 ビヨウスライムの攻撃方法は以下の通りです。
・纏わり攻撃
 単体の至近距離ですが麻痺を付与します(ダメージはありません)。
 ビヨウスライムは自身の身体を広げて獲物に纏わりつき、その身体から麻痺毒を肌から注入させます。麻痺で動けなくなった獲物を身体に取り込み、じっくりと時間をかけて溶かして吸収する捕食方法をとっています。

・消化
 こちらも単体の至近距離攻撃ですが、麻痺を受けている相手にしか使用しません。また、危険を感じている時には使いません。使う時は、依頼を受けたイレギュラーズ全員が麻痺を受けた時に限定されるので、使う事はほぼほぼ無いでしょう。

 また、ビヨウスライムは最も距離が近い女性を狙う習性があります。同距離の場合は、ランダムです。
男性が狙われるのは女性全員が麻痺を受けた後です。性別:不明は男性よりは優先されます。これらの時も、最も距離が近い者に狙いを付けます。

【地形情報】
 迷宮という名前ですがほぼ一本道です。途中、大きな広間があり、そこにビヨウスライムが生息しております。広間は十分に戦闘ができる大きさです。
 しかし、辺りは暗いですので灯りを持っていく事を推奨いたします(プレイングに書いて頂ければ、依頼主から支度品として支給されます)。


【その他】
 プレイングにアドリブの可否を添えて頂くことや、キャラクターの口調をわかりやすく書いていただけると、私が大変助かります。

  • 美容の秘訣はスライム完了
  • GM名橘 遊輪
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年03月24日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
アルファルド・オズ・クエララ(p3p000090)
嘆きの魔術師
猫崎・桜(p3p000109)
魅せたがり・蛸賊の天敵
四矢・らむね(p3p000399)
永遠の17歳
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
ルナシャ・クレスケンス(p3p004677)
くろうさぎ。
人畜無害(p3p004867)

リプレイ

●迷宮
 山岳部に存在している迷宮。そこに各自装備を整えたイレギュラーズが入り込む。
「ビヨウスライム!! この世界にはこんな素晴らしいモノがあるんですね!」
 暗がりの迷宮に光を与えるランタンを持ちながら、意気揚々と話しているのは『永遠の17歳』四矢・らむね(p3p000399)だ。
「人工皮膚のメンテナンスは、この世界での生活における悩みの一つでもございました。是非わたくしも体験したく存じます」
「わたしは、美容のことは、よくわかりませんの……でも、大切なお仕事ですから、頑張りますの!」
 依頼主と同じく美容を求める反応を示した『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)。とは正反対に『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は純粋に依頼を達成しようと意気込みを見せている。
「コラーゲンスライム……やっぱり、定番はお鍋でしょうか?」
 ぷるぷるぷよぷよをコラーゲンと捉え、あげく食そうと変わった考えを持ってしまっているのは『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)。直接摂取する事で美容を得ようとしているのか、それとも単純に食したいだけなのかは不明である。
 そして、もはやスライムを浴びる前提で肌の露出度が高いビキニアーマーを着込んでいる二人がいた。
「せっかくお肌がつるつるになるなら、多少スライム浴びても我慢しないとね♪」
「美容にはそこまで興味はないが……今着ないでいつ着るというんだ?」
 それが『特異運命座標』猫崎・桜(p3p000109)と人畜無害(p3p004867)の二人である。特に人畜無害に至ってはわざと小さめのサイズにしているせいか、余った肉が盛り上がってしまっている。
「なんか皆やる気だよねー? ちょっとなんかわりと怖い」
 同じくランタンで迷宮を照らしている『くろうさぎ。』ルナシャ・クレスケンス(p3p004677)は周囲の異常なやる気に押され気味であった。
 そして、この依頼を受けたメンバーで唯一の男性である『嘆きの魔術師』アルファルド・オズ・クエララ(p3p000090)も、またルナシャと同じく女性陣の熱量に恐ろしさを感じている一方で……。
(実のところ、吾輩もスライムに興味あるのだ。最近、肌の緑色が楠んできたような気がしなくもない)
 意外にも美容効果の有無に惹かれている。
 各自、何かしらの想いを胸に秘めて、暗がりの迷宮を進んでいく。

●遭遇
 ランタンの灯りを頼って道なりに進んでいくと、広い広間にたどり着く。ランタンの淡い光が周辺を照らし、揺れる炎によって幻想的な雰囲気を作り出している。
「……いない?」
 桜がきょろきょろと辺りを見回して呟く。広間の奥の方まで光は届いているのだが、討伐対象であるビヨウスライムの姿が見当たらない。
 どこかに移動したのだろうか。その考えが過った時だ。
「上でございますっ!」
 エリザベスが叫ぶ。その言葉に全員が上を向いた瞬間、天井から5つの緑色をした水の塊が落下して来た。ビヨウスライムだ。
 全員が地面を強く蹴り、花火のように散開した。
 だが、不幸にも隊列の中心に居たらむねと桜が逃げ遅れ、ビヨウスライムに纏わりつかれてしまう。スライムは自らの身体を自在に変形させ、二人の装備の僅かな隙間にすら入り込み、そのか弱い肌にひんやりとした冷たさと、痺れるような感触をプレゼントしていく。
「あ、ダメです! 胸の間とかお尻とかちょっと拭き取るの大変なんで! ひぃ!? それ以上はいけません! ストップ!!」
「ひゃっ! 鎧の中に入り込むし!」
 二人はスライムの中で身動きが出来ずに溺れ、身体の隅々まで侵食してくるスライムに悶えるしかない。しかも、スライムから吐き出される麻痺毒によって、その抵抗も徐々に弱々しくなっていく。
「ランタン消してください! 見せられな、ひゃんっ!」
 らむねが可愛らしい声を上げた。彼女の体を這い寄るスライムは胸元や脚部から服の中へと入り込んでいき、その中で蠢いていく。麻痺毒もあるが、その四肢も捕まってろくに動かす事も出来ず、彼女はただスライムの捕食を待つ身へとなってしまっている。
「ぁ……にゃん、だか……ちくちく、しちぇ……っ!」
 一方、同時にスライムに飲み込まれた桜も同様であった。彼女の場合、ビキニアーマーを着ていた為に元から肌の露出が多く、その分、スライムから撃ち込まれる麻痺毒が多く注入されている。既に呂律が回らなくなってきている。もはや、ビキニアーマーの下にスライムを着ているような状況にまで陥っている。
「いま、たすけるぞー」
 何故か棒読みの声を出して、人畜無害がスライムの群れに向かっていく。一番近い女性を狙う習性を持つスライムは、当然ながら彼女へともそもそとゆっくりとした動きで這い寄っていく。
「ぅ、ふひゃっ、えひひひっ! く、擽った!」
 やはりというべきか、人畜無害は一体のスライムに取り込まれてしまう。小さ目のビキニアーマーで隙間はないかと思われていたが、それでもスライムは強引にその身体をねじ込ませて、肌に纏わりつかせていた。その感触に人畜無害はくすぐったさを覚え、身をよじらせてしまっている。
「くっ……さぁ、かかってこいスライムども!」
 想像以上に擽ったためか、人畜無害が半ばヤケ気味になってスライムを挑発する。その挑発に応えたのかどうかは定かではないが、彼女の脂肪が乗った肌に次々と纏わりついていく。ただでさえ小さいサイズできつかったビキニアーマーだが、間にスライムが入った事でさらに窮屈となり、鎧の留め具の限界に徐々に近づいていく。
「うわぁ……これが旅人の薄い絵本で有名なヤツなんだねー……たしかに、ちょっと、その、うん」
 そんなスライムまみれになっている三人の光景を見て、ルナシャは何とも言えない表情を浮かべている。
「皆様の大活躍をこの両の眼にしかと記録しております。ご安心ください」
 どこから取り出したのか『●REC』と書かれたプラカードを掲げてエリザベスは、その光景をメモリに焼き付け、『その時だ。乙女の柔肌に湿り気を帯びた襞が這いより……』と並列して文字としても記録している。
「あぁ、素敵でございます! そう、その表情ですわ! 我が身では視聴者の皆さまのご期待に応えることが出来ないのが、慚愧の念に堪えませんわ!」
 妙に興奮した声を出しているエリザベスは何やら実際にカメラを持ってズームレンズを調節しているようなパントマイムをしている。気分はカメラマンだ。
「助けなくていいのか……?」
「そうでございますね。では、そろそろ真面目に」
 巻き込まれたくないと後方にいたアルファルドに催促に、エリザベスが切り替えて戦闘態勢に入る。ライフルを構え、らむねに纏わりついているスライムに銃口を向ける。その狙いは真の身体を意味する赤い核。
 引き金を引くと、迷宮の広間に爆発音とキンと空気が震える音が共鳴し、響き渡る。
 放たれた銃弾は緑色の体組織に吹き飛ばしながら進み、核を破壊する。
 心臓でもある核を撃ち抜かれたスライムは死に至り、らむねの体を弄んでいた体組織の動きが止まる。
「大丈夫かなー?」
「はひ……ひひっ……」
 動かなくなった緑の液体からルナシャが引っ張って救出されたらむねであるが、注入された麻痺毒が既に回っており、自分の意志では動くことが出来ない。その麻痺毒の影響か、粘度が高い液体まみれの肌はうっすらと赤く、火照っているようにも見える。
「回復をしよう」
 エリザベスが残りのスライムを引きつけている間に、アルファルドは聖なる光を照らし、らむねの体を犯している麻痺毒を無力化させていく。
「ちょっと肌がツルツルになったような……?」
 麻痺から回復したらむねは何とか起き上がり、自分の二の腕を撫でる。早速、美容の効果が表れたのだろうか。
「わたしも行きますの!」
 今度はノリアが気合の入った声を上げて、ダガーを抜いて人畜無害を取り込んでいるスライムに向かっていく。そのスライムは人畜無害に夢中になっているようで、近づくノリアの存在には気づいていない。
 ノリアは間近まで行くと、深く息を吸い込み、肺を膨らませた。周囲が何をするのかと疑問に思った瞬間、ノリアは自らスライムの中へ頭から突っ込み、潜り込んだ。
「スライムで泳いでる!?」
 ルナシャが驚くのも無理もない。
 ノリアはあろう事か、ダガーでスライムをかき分けながら核へと向かっていく。スライムを海に見立てた潜水である。しかし、その光景は優雅に潜る可憐な人魚ではなく……。
「ドジョウ地獄鍋?」
 その呟きはルナシャがぼそっと呟く。
 そんなノリアはなんとか赤の核までたどり着くと、その核に抱き付いては圧力をかけて破壊した。人畜無害を捕らえていたスライムは活動を停止する。
「回収するよー」
 ノリアの尻尾と人畜無害の足を掴んだルナシャは、そのままずるっと引っ張ってスライムの死骸から二人を救出する。
「どろっとした中を泳ぐのは……疲れましたの」
「ふひぇ……はへ……」
「わー……わー……やっば……鼻血出そう……」
 ノリアも人畜無害もべとべとのスライムまみれとなり、その光景に何故かルナシャが鼻を抑えていた。
「家に帰りたい……」
 女性陣が自ら喜んでスライムの餌食になっているようにも見えてしまうアルファルドは、若干の現実逃避が入りながらも二人に麻痺毒を治療する光を浴びせていく。
「今度は私が助ける番です!」
 復帰したらむねが、いまだに囚われ続けている桜を救出せんとスライムに狙いを付けた。
 らむねが放つ魔力弾は核こそは破壊できなかったが、桜に纏わりついている体組織の一部を吹き飛ばす事に成功する。なお、衝撃で飛び散ったスライムの一部がらむねの顔や太股にかかる様子をエリザベスはさり気に記録していた。
 スライムの拘束力も低下し、その隙にらむねは桜の救出を行い、距離を取る。そして、天に祈りを注ぐ事で、桜を犯している麻痺毒を浄化させていく。
「や、やっぱりこのぬめぬめはあまり気持ちいいものじゃないかもだね……」
 身体から麻痺が抜けた桜は、よろよろと起き上がる。しかし、スライム効果のおかげか、肌がツヤツヤとしているのを感じていた。無駄に露出度が高いビキニアーマーを装備してきた甲斐があったというものだ。
 ならば、桜の答えは一つ。
「突貫しまーす♪」
 浴びても良し。倒せても良し。どう転んでも美味しい状況に、桜はスライムに突撃する。
「援護しますよ!」
 さらに、らむねが再び魔弾を作り出しては撃ち放ち、核を守るスライムの体組織を吹き飛ばしていった。
 飛び散ったスライムの破片が元に戻る前に、桜が残りの体組織を蹴りでかき分けて、核を露出させた。
 そして、桜は露となった核に拳を突き出し、破壊した。
 残りのビヨウスライムの数は2匹。終わりが見え始めていた。
 多少のハプニングは起きているが、残りも片付けようと桜が思った時であった。異常な光景が瞳に写る。
「はみはみはみはみはみ」
 スライムが体に纏わりつき、四肢を拘束されて身動きも出来ない状態であった樹里の姿であった。それだけであれば、他の被害者と同じなのではあるが、違っている点が一つあった。それは、咀嚼している事である。
「ごくっ、んんっ……これは……あれです。奥様方に渡す前に安全かどうかを確認する味見です……!」
 顔を覆うとするスライムのゼリー状の体を、ひたすらに口に含み、飲み込んでいたのだ。周囲から向けられる白い眼に対して、樹里は取ってつけたような返答をする。話せるという事は、まだ麻痺を受けてはいないのだろう。
「はみはみ……んぐっ、切り離されたスライムさんってどうなるんでしょうね?」
 食べておきながら、胃の中に入ったスライムの存在が気になりだしたマイペースな樹里である。
 何らかの事由で分離したスライムの体組織は、通常であれば本体である核へと戻ろうとする。密閉された状態になれば、どういう行動を取るのかは不明だが、もし通常通りであるのなら……。
「……逆流する前に核を壊した方が良いだろうな」
 直視が出来ない状況になる前に対処しろとアルファルドが遠回しに言った。
「そうですね」
 流石にお腹に入った物がせり上がって来るのは嫌と感じた樹里は、そのままの状態で魔力を純粋な破壊力として放出した。
 その威力は自分に纏うスライムをその核ごと吹き飛ばすものであった。
「お腹の中で動いていた感じがしたのですが、今はもう平気ですね」
「……それは良かった」
 どこまでもマイペースな樹里に、アルファルドは何も言えなかった。ただ、『国に引きこもりたい』という口癖と思考が頭を埋めてしまっていた。
「これで最後でございますね」
 この迷宮を縄張りにしていたビヨウスライムは残り一匹のみ。エリザベスがルナシャを襲おうとしているスライムに銃口を向けて、ラストシューティングを決めた。
 この一撃で赤い核はこの広間になく、残っているのは周辺に撒き散らされているビヨウスライムの死骸――緑色のゼリーだけである。
「おわったー! おつかれー! そして、ご馳走さまでした。色々と」
 戦いが終わり、主にスライムの被害にあったメンバーに何故か両の手を合わせて礼を言うルナシャ。
「……ふむ」
 手分けして保湿パックとなるビヨウスライムの死骸を瓶に詰め込んでいる中、人畜無害はそれを指でつまんではこねて、ぬちょりと音を鳴らして様子を見ていた。
「ま、死にはしないだろ」
 そう言って、指に付着しているスライムをパクっと口にする。先ほど樹里も食べていた。それも生きている状態のものだ。ならば、問題はないはずだ。
 危険もあるかもしれないが、それ以上に好奇心の方が強かったようだ。
 結論からいうと、その味は喉奥が酸味の強みが広がるお酢のような味であった。

●保湿パックとその効果
 いつもの昼下がり。奥方達によるティータイムの時間。
「素晴らしいですわね、あのスライムパック♪ こんなにスベスベになっちゃたわ」
「私もよぉ。それにむくみまで取れちゃって……本当に素晴らしいわぁ」
「私なんて、昨日、夫に『いつもより綺麗に見えるよ』なんて言われちゃったわ♪」
 ギルドに出していた依頼が達成され、ビヨウスライムの瓶詰が手元に届いた奥様方は、早速それを試していた。その結果は、聞いての通りである。
「これも教えてくれた貴方のおかげよ。ありがとう」
「いえ、私は何もしておりません。私はただその価値も知らずに使っていただけに過ぎませんから……」
 ビヨウスライムの存在を教えてくれたメイドに礼を言う奥様。
「それで? このスライムの保湿パックをプレゼントしてくれた彼氏とはどんな人なの?」
「私もそれが聞きたかったのよ。商人なのよね? 真面目な方?」
「優しかったりするのかしら? それともクールなタイプ?」
「あっ、えっと……その、奥様方、少し……落ち着いて……」
 ぐいぐいとメイドに迫る奥様方。
 貴族と言えど、美容を気にし、恋愛話に興味を持つのは世の女性となんら変わりがないのであった。


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 この度はこの依頼に参加していただきましてありがとうございました。
 ひどい目に合いながらも、スライムの退治に成功し、女性が気にしてしまう肌を無事に守ることができました。成功です。

 またの機会がございましたら、是非シナリオに参加して下さい。心よりお待ちしております。

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