PandoraPartyProject

シナリオ詳細

マスケティア・クアドラゲシマ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 むかし、むかし。
 世界は今より不安定でした。
 しょっちゅう時空がズレたので異界から入りこむ悪霊が後を絶ちません。
 神様は苦労しました。
 なにせ悪霊自体は弱かったのですが、数が多かったのです。
 けれども異界から入ってきたのは悪いものばかりではありませんでした。
 ある日、ふらりとやってきた四人の銃士が神様と協力して強固な結界で世界を覆いました。
 悪霊はいなくなり、世界は安定しました。
 感謝した神様は四人の銃士が訪れた日を祭日としました。
 銃士達は喜び、自分達の正体がバレないよう仮面で顔を隠してお祭りを楽しみました。
 そして世界の住人は銃士に感謝を示すため祭りの日には仮面をつけて過ごすようになりました。
 これが、マスケティアの日の成り立ちです。
 
 そんな伝承も忘れ去られたマスケティアの日。
 各地で盛大な祭りが開かれ、特に首都<セルトコマ>は多くの人で賑わいをみせていた。
 普段は堅物顔をした灰色の街並みが今日ばかりは極彩色で飾りつけられている。
 大通りは華やかな仮装をした人々で溢れ、街路灯にはマスケティアの日を象徴する紫と金の横幕が揺れていた。
 マスケティアの日は、王も村人も道化も銃士も、誰もが正体を隠し、仮面を被って過ごす。
 かつては異世界から来た者は幽霊(ラーヴァ)と呼ばれる顔全体を覆う仮面をつけ、元々この世界に居る者は妖精(マスコット)と呼ばれる目元を隠す仮面をつけていた。
 しかし今では自分の好きな仮面を自由につけることができた。

 通称、魔女の広場と呼ばれる中央広場では屋台街が開かれていた。
 食事はもちろん、飲み物や土産物、古本を売り出す屋台が軒を連ね、路上には仮面をつけた観光客が溢れている。流れる人を大げさな身振りの観光名所案内人が声高に勧誘していた。
 観光客用にか、いたるところに安い値段で仮面やドレスを貸し出すテントが点在している。それを身に着け、<セルトコマ>教会といった名所を巡るのだろう。
 中でもひときわ盛り上がりを見せているのは中央にあるステージだ。
 仮面コンテスト。
 仮装コンテストとも呼べるそこでは豪華な仮面や衣装をつけた参加者たちが次々とステージにあがっている。見事な自作衣装を披露しては、その度に大きな歓声があがった。
 一方、王宮近くでは芸術祭が開かれている。

 一方、周辺の演劇場やコンサートホール、王宮の庭園が一般開放され誰でも舞踏会やコンサートを訪れることが出来た。
 ここは歴史的建造物や百貨店の建ち並ぶ高級繁華街であり、普段ならば滲み出る威圧感で近寄ることも難しい界隈だ。
 しかし今日だけは違う。
 芸術家やパントパフォーマーが多く集い、道のあちこちで即興のアンサンブルやダンス、似顔絵かきが始まっていた。

 笑い声と歓声。肉と酒の匂い。はためく紫と金の旗。
 そんな平穏の上を、黒い影が横切る。
 不穏な黒雲はすぐそこまで近づいていた。


「こんにちは」
 メイド少女が本で顔を隠しながら近寄って来る。
「お祭りと平和に好感をお持ちの方と判断しました。テックのおはなし、聞いてもらえますか?」
 テックと名乗る境界案内人によると祭りに現れる悪霊を退治してほしいという依頼だ。
 また、その日は一日中仮面をかぶり、別の世界から来た者だと正体を明かしてはいけない制約もあると言う。別世界から来たとバレた時点で本から退去させられてしまうと言う。
「それと、ですね。可能であれば、お祭りを盛り上げてきてほしいのです。結界は祭りを楽しんだ気持ちで作られています。悪霊が現れると、今年のお祭りはめちゃくちゃになって来年の結界が弱くなってしまいます。……それから、その……」
 ごにょごにょした小声を翻訳するとどうやら彼女は土産話を所望しているようだった。 

NMコメント

 こんにちは、駒米と申します!
 ひっそり世界が救われているのが好物です。
 どうぞよろしくお願いします。

・目標
『異界からまぎれこんだ悪霊を退治する』
 悪霊については敵に詳細を書いています。
 昼前に到着するので、日が暮れるまでに倒してください。
 滞在時間は日付が変更するまでです。
 
『祭りを盛り上げる』
 正体をばらさずに祭りを盛り上げましょう。
 自作の仮面を持ち込んでコンテストに出る、音楽や芸で路上パフォーマンスをする、屋台で料理を作るなど、盛り上げ方は何でもありです。

・世界観
 四人の銃士と神によって作られた世界です。
 首都セルトコマは石造りの街並みで、マスケティアの祭りはベネチアのカーニバルのような怪しげな雰囲気となっています。

・敵
「悪霊」×4体
 悪霊は人の多いところに現れ憑りついて害を成す存在です。
 この世界に住む者には見えず、他所の世界から来た者には黒い霧のように見えます。
 悪霊は自分と同じ「この世界の住人では無いもの」に対して敵意を抱くので、街を歩き回っていれば向こうから出てきます。
 運命特異点は悪霊にとっての鬼門であり触れるだけでも消滅します。
 更に言霊(決め台詞)に弱く言いながら触れるとその通りに確殺できます。

  • マスケティア・クアドラゲシマ完了
  • NM名駒米
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月16日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
白いわたがし
棗 士郎(p3p003637)
 
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
回言 世界(p3p007315)
狂言回し

リプレイ


 屋台市では一つの店が盛り上がりを見せていた。
 青年の目元を隠す仮面は白磁に金の蔦。快活そうな口元から笑みが消えることは無く、鍛えられた両手に握った鉄ベラが手際よく焼きそばをかき混ぜている。
「おっと、そこの美人さん! 鳥の仮面をかぶった紫髪の」
「わ、私?」
 戸惑いがちに一人の少女が足を止めた。
「そうそう、仮面の上からでも分かるぜ?」
 耳を赤く染めた少女がふわふわとした足取りで屋台へ近づく。
「出逢ったのが今日じゃなきゃ、ハンサムな美男子ぶりを見せられるんだがな」
 青年は言葉を飾るが、芝居がかった雰囲気は仮装の祭りによく合っていた。
「誰にでもそのような口調なのか」
「いや、ざっくばらんな口調の方が『聞き慣れてなくて』新鮮だろう」
 仮面をしているにも関わらず少女は手にした扇で口元を隠した。そんな相手の仕草にグレン・ロジャースはにんまり笑う。
「おっと。呼びこんでおいて悪いが、問題発生だ」
 盾と槍を掴んで飛び出した青年を呆気にとられながら少女は見送った。

「骨董市で呪武器が出たぞ!!」
 巨大な斧の刃が黒に染まる。長い柄から伸びた靄が、女の体を無理矢理動かしていた。
 屋台広場は狂乱状態。騎士盾シリウスが斬撃を受け止めるが、荒事に慣れない民衆は足がすくんで動けずにいる。
「へっ、ちっとカッコつけすぎたかね?」
 守り続けるグレンの身体にも浅くは無い傷が刻まれている。
「早く逃げよ!」
「姫様あぶない!」
 見覚えのある鳥の仮面が誘導を始め、広場から人が減り始めた。邪魔者から排除しようと斧が狙いを逃げ遅れから変更する。
 斬撃の風圧に前髪が遊び、少女が見上げた先で艶やかな漆黒と金の髪が翻った。
「目移りなんて、妬けちまうな」
 白磁の仮面が不敵に笑い、槍を構えた。『英雄騎士』の名を冠した一槍を利き手に持ち替え、不動の背は『理想の騎士』を体現する。
 それは敵を討つ者ではなく、人々を護る者としての姿。
「背に護るは無辜の人々。立ち向かうは邪悪なる魔性」
 畏怖するように斧が震えた。
「護るは我が身に非ず、我が信念なり。貫くは我が槍に非ず、我が意志なり、ってなぁ!」
 穂先に集中した不可避の破壊は斧の刀身を砕き割り、内部に潜んだ黒霧を暴き出す。
 澱みは跡形もなく吹き飛ばされ、開放された女はその場に座り込んだ。英雄の出現に、広場は拍手と歓声に包まれる。
「仮面のヒーローってのも、中々悪くないな?」
 先程までの覇気は鳴りを潜め、手を振る今はすっかり気障な仮面の青年だ。
 紙吹雪に埋もれながら、白面の騎士は優雅に焼きそばの宣伝をした。



「銃士の結界について知りたい?」
 子供が一人で祭りを楽しむのは、犯罪が少ないこの世界では当たり前の光景だ
 そのため屋台でショコラを出していた店主は亡霊の如くふらりと現れた、仮面の少年にも驚かなかった。
「丸がついた五ヶ所が結界点だ。観光地だからすぐ分かる」
「うむ……」
 昔は結界点、今は観光名所。
 手渡された地図を、黒髪の少年は妙に気疲れした様子で受け取った。
 老成した喋り方は銃士を真似ているのだろうかと、見つめる店主の視線が暖かい。
「では店主。ワシにもショコラを」
 少年が注文を口にした瞬間、誰かが小柄な身体を押し退けた。
「お客さん、割り込みは駄目だよ」
 焦った店主に少年は首を振った。
「いや、よい。邪魔をしたな」
 すれ違いざま、少年は相手の肩に手を置く。
 ともすれば親愛の挨拶にも見える軽い所作。
「去れ、悪霊どもよ」
 鋭い視線は仮面に隠れ、ささめきは風に消える。
「ここは貴様らのようなモノが居て良い世界ではない」
 悪意、殺意、憎悪。
 青年を中心とした不可視の黒霧が吹き止んだことに誰も気づかない。
「あれ。俺、何でこんな所に?」
 不思議そうな青年を残し、少年は雑踏の中に消えた。
 
「かつての銃士の真似事をしろ、ということか」
 四人の銃士と神によって張られた結界、五つの基点。
 その内の一ヵ所に妙な歪みがあると、魔術師として長年蓄えてきた棗 士郎の知識が告げている。
「ま、残念ながらワシは正義の味方とは程遠いがね。どちらかと言うと外道の側だよ、ワシは」
 真っ直ぐ過ぎた精神と結界。だからこそ狡知な邪法の罠を見落とした。
 自嘲したものの、黒と白を渡り歩いたゆえの見識が生きる事も多い。
 それは果たして幸な事と呼べるのか。
 今や結界の歪みは正された。今後、外の悪意が入り込むことも無いだろう。
 丘の上から士郎が見たのは仮面の祭りを楽しむ民衆の姿。誰も危機が迫っていた事すら知らない。
「笑顔の絶えぬ人々、活気ある街並み、誰もが平和を享受出来る地……か」
 何とも能天気な世界だ。
「良き世界ではないか」
 ぽつりと零して次の結界点へ。
 士郎ほどの腕ならば、夜までに全ての結界点を確認出来る。

「――なので、けして観光をしていた訳ではない。あれは時間があまっただけだ。
 屋台で甘いものばかり見ていた? 気のせいだ。ワシは何も食べてなどおらん」
「シロウ様、やさしいお顔をされています。楽しかったんですね」
 呻くように老魔術師は否を告げた。



「仮面の祭り……ね」
 回言 世界は顔を覆う仮面に触れた。
 被りものは煩わしいだけで好きになれない。
 しかし郷に入っては郷に従えと、慣れない仮面をつけてぶらぶらと道を歩く。
 なるべく高貴そうな物を、と手に取ったのは孔雀羽を模った漆黒の仮面。
 銀糸によるレース刺繍が施された職人品。気だるげな雰囲気と合わせて屋台のマダム達が『お忍びの貴族!?』と黄色い悲鳴をあげていることに世界は気づかない。
「おっと」
 わざとらしく、肩がぶつかった。相手の男は虚ろな眼差しを世界に向ける。
「俺は面倒なことは先にかたづけるタイプでな」
 真正面からにこやかに告げられた言葉で、悪霊は今しがたぶつかった相手の正体が何であるかを察した。
 逃げる間もなく心臓の上に掌がそえられる。
 ――アアァァ。
 男の身体から黒煙が立ち昇り空へと溶ける。
 虚空に消えた怨嗟と怨念。その向こうには白雲と青い空、色とりどりの紙吹雪が舞っている。
「さて、どうしたものかな」
 依頼は終わった。
 これからは、まったくもって厄介な、もう一つの依頼の時間だ。

「セカイ様、これはなんですか」
「ビスコッティだ。固いクッキーで、溶けたチョコレートにつけて食べる。こっちはコーヒーに生クリームと香辛料を入れたものだな」
「屋台のおかしは、どれもおいしそうです」
「俺には甘すぎた。こっちは仮面コンテスト」
「セカイ様がいません。なぜですか」
「俺は撮影側だから写らないよ」

 テックと名乗る少女姿の境界案内人に、やけに懐かれた。
 最初に妙な親近感を抱いてしまったせいか、つい請われるまま、世界は長話に興じている。
 頬杖をつきながらテーブルの上に次の思い出を映し出す。
 土産話の一つでも、と持っていったメモリア・クリスタルには物凄い枚数が記録されていた。
 今は開き直って水晶球を境界案内人の好きにさせている。
「仮面のセカイ様です!」
 テックが記録を指さした。
 孔雀面をつけた世界が精霊操作でパフォーマンスをした時の姿だ。
 確かに盛り上がるには盛り上がったのが。
「どうしてこれが写ってる?」
 誤作動でも起こしたのか。
 それとも、いつのまにか持っていた謎の欠片が水晶球に影響でも及ぼしたか。
「素敵です。みんな、楽しそう」
 子供の涙と笑顔には勝てぬ。
 喜んでいるようだし、まあ、いいかと髪を掻き、世界は淡く微笑んだ。
「楽しいと言えばこの記録なんだが、大通りに鹿の楽団がいてな――」
 教えることも、まだまだ沢山。
 話す時間も、今ならある。



 老いも若きも 生者も死者も
 みんなみんな おいでなさい
 楽しいパレードが始まるよ――

「ふふ、鹿が鹿のお面を被るって、ちょっと面白いことよね」
 白鹿の仮面をかぶった少女がくすりと笑う。こっそり内緒話に、いたずら好きの妖精もご機嫌だ。
 お揃いの仮面をつけてくるりと回れば金砂の花火がぱっと咲いた。
「可愛い、可愛い。お似合いよ」
 ぱち、ぱち、ぱちと小さな拍手。
 おおきな白銀の名前はポシェティケト・フルートゥフル。
 ちいさな月光の名前はクララシュシュルカ。
「さあ、始めましょう」
 開幕ベルがちりんと鳴れば、大きなアコーディオンが蛇腹を伸ばした。
「本日限りの不思議なパレード。奏でますのは『鹿の楽団』。皆々様、どうぞお楽しみになって」
 揺蕩うようにポシェティケトは歩きはじめた。

 仮面の祭に 愉快な足取り 奇妙な音楽
 不思議で自由なパレードです
 さあさ、さあさ 皆々様も 
 祭の道行くパレードに どうぞご一緒いたしましょう

 純白の角を導き星に、とこらとこらと街を往く。
 角を飾るのはお日さま色の雫石。風にたなびく長い巻き毛は新雪の旗に似て。
 不思議なメロディを操る姿に「まるで幸運の白鹿みたい」と誰かがうっとり呟いた。
 ポシェティケトの呼びかけでお祭り好きの精霊たちが我も我もと詠いだす。
「みんな元気でとっても賑やか」
 幻想的な光を仲間に、いっそう一座は賑やかに。
「さあさ、出発進行、しましょうね」
 けれど、けれど。
 ポシェティケトは仮面に隠れた瞳でソレを見た。
「こんな賑やかな日に紛れ込むなんて。悪霊、寂しがりやなのねえ」
 祭りの中に浮かんだ黒。あまりに異質で目についた。
 観客に伸ばした憎悪に向かって、それでも楽長は手をさしのべる。
「悪霊、黒霧、幻みたいなあなた達も『ようこそ』と、まずは開口一番お伝えするわ」
 木洩れ日のようなその声は、祭りへ誘う最終通告。
「良い子になるなら、ワタシのパレードに入れてあげましょう。そうでなければ、さようならだわ」

「そ、それでどうなったんですか」
 前のめりで話を聞いていた境界案内人に語り手はぎぃこぎぃこと和音を紡ぐ。
「鹿は不気味もけっこう好きだけれど」
 真っ黒なアコーディオンが吐き出したのは、ちょっぴり寂しく優しい音色。
「悪霊とは仲良くなれなくて、残念ね」
 微睡むように糸車は旋律を奏でる。くるくる、くるくる。

 拍手、握手、お手を拝借。
 鹿の楽団の進むまま、悪夢はなにも、残しません
 後に残るは森のまどろみ
 おやすみなさいを、なさいませ――……

成否

成功

状態異常

なし

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