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シナリオ詳細

<Despair Blue>国壊しの遊興劇

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 波は高く雨雲は厚く、吹き荒れる嵐に船体は傾き、頬をうつ雨が音を持ち去っていく。
「姫様ァ! こりゃあ無理ですぜ、船が壊れちまう!」
「泣き言なんか聞きたくないね。それでも海の男? あたしのためにひと肌……いや、鮫肌脱ぎな」
「「ええい姫様のためにィ!!」」
 ええんやこらとロープをひっぱり、へし折れそうな帆をささえる鮫海種たち。
 アロハシャツや和服を着込んだ彼らの胸には一様に燕黒家の家紋があしらわれた金バッチがついていた。
 腕組みをして、荒れ狂う海を呼吸する燕黒 姫喬。
「もし『あの話』が本当だったなら、あたしらが出なくちゃ話になんないでしょ」
 まるで火のつかぬカラッポのキセルをくわえ、ギザギザの歯でいひひと笑った。

「燕黒の。そしてイレギュラーズの諸君。よく来てくれた」
 広い板間。囲炉裏を半円状に囲んだ三人の老人。
 彼らの向こうには、八つの家紋が円縁を描いた大きな旗が飾られていた。
 そんあ旗のすぐそば。つまりは部屋の最奥であぐらをかいた男が、鯨骨のキセルでカンと囲炉裏の縁を叩いた。
「我ら『うろこ諸島八家紋』。それがしは代表を務める欧鰐法重郎と申す。
 本来八家紋全ての当主が出迎えるべきであったが……」
 ハア、と鰺ヶ沢と糸魚川の家紋をつけた男たちがため息をついた。
「依頼を受ける側である燕黒は別としても、貝塚は領地の混乱により首都へ招集、甲羅戯は甲羅戯艦隊事件の責任をとって外洋へ、海老名はグレイス・ヌレ海戦の折りより連絡がつかぬ」
「然様。いまここに参上できるのは欧鰐、鰺ヶ沢、糸魚川の三家のみ……チョベリバにござるよ」
「古来よりうろこ諸島を守り海洋に広く手を伸ばしてきた我ら八家紋が崩れかけておる。
 それも、たった一人の男の『遊興』によってな」
「『人喰和邇』八十神 劫流……」
 顔をしかめて、燕黒 姫喬(p3p000406)がつぶやいた。
「然様。あの男を無名島Y83にて発見したと甲羅戯から報告を受けた。
 それも、良くない報告としてな」
 無名島Y83は海洋王国大号令のもと、絶望の青攻略のための中継基地のひとつとして確保された無人島である。
 甲羅戯家を中心としたうろこ諸島連合艦隊がこの島へ上陸し、着々と基地建設を進めていたが……。
「そこへ、あの八十神劫流は現れた。
 奴の手下である『化骨衆(かこつしゅう)』と、無数の『幽霊船』をつれてな」
「…………んん?」
 姫喬が首をかしげたのも無理からぬこと。
 八十神が化骨衆をつれて現れるだけならいざしらず、そこに『幽霊船』が加わるとはいかなる珍事か。
「素早く上陸した化骨衆と幽霊船団によって島は占領。多くの兵が殺され、残った兵士たちは島より離脱。一時は逃げ切ったようだが、追撃を受けるのも時間の問題」
「その艦隊の撤退を助ければいい、ってワケね」
「然様」
 顎を上げ、こちらをじっと見つめる欧鰐。
「くれぐれも、奴に壊されぬようにな」

 うろこ諸島連合艦隊の撤退作戦。
 追撃するは八十神率いる化骨衆。
 彼らの運命や、いかに。

GMコメント

■オーダー
 成功条件:うろこ諸島連合艦隊の撤退を完了させる
 現在航行可能な5隻のうち3隻以上の撤退が完了すれば依頼成功です。
 具体的には、それが済むまで化骨衆および幽霊船団からの襲撃を防衛し続けなければなりません。
 また、化骨衆及び幽霊船団を現状の戦力で全滅させることは『極めて困難』であります。

■うろこ諸島連合艦隊
 かなりの数が島へ上陸していましたが、現在航行可能なのは5隻。
 乗り込んでいる兵士たちもほとんどが重症状態であり、武装もほぼ残っていません。
 悪あがき程度はできるかもしれませんが、彼らに戦闘能力は皆無であると考えてください。
 PCたちが到着した段階ですでに追いつかれており、撤退中の彼らの船をかばいつつ化骨衆たちに戦闘を挑む流れになると思われます。

■エネミーデータ
●化骨衆
 八十神の思想に共感した危険人物たち。今回もっとも危険な対象です。
 入団条件が八十神との一騎打ちで傷を負わせることであるため、個々人が高い戦闘力をもつ。
 今回確認されているのは八十神を含め幹部の八名。彼らは『裏八家紋』と呼ばれている。
 個体戦闘力の高さは確認しているが、チームとしての戦術レベルは『やや高い』。
 作戦を立てるなら敵の戦術レベルを計算に入れなければ危険です。
・『人喰和邇』八十神劫流
 リーダー的存在。炎を操る力を持ち、安定した破壊力を持つトータルファイター。
・『黒人キックボクサー』殴鰐ドレッド
 大柄でパワフル。防御を打ち抜く高い火力と耐久力を持ったトータルファイター。
 好戦的で強い相手を見ると直接殴り合いたくなる性分らしい。
・『銀色の女忍者』愛魚渇Trachurus
 忍者刀による斬撃と敵を攪乱するBS攻撃を得意とする。
 反応速度と回避能力が高いことが判明。
・『拳銃少年』鰺ヶ裂タイガ
 アクロバティックな動きと拳銃による距離を問わない戦闘スタイル。
 他人を騙すのが得意だが、いざ戦闘になると引き撃ちや射程外からのH&Aなどいやらしい戦術を使う。
・『粘液』海老泣泥泥
 人間に化ける能力をもった意思のある粘液。ギギギと鳴く。こうみえてディープシー。
 偽装能力は非戦相当らしく戦闘には用いない。
 戦闘時には粘液状態のまま戦い、相手にからみついたり口を塞いだりといった攻撃を行う。
・『タカアシガニ槍兵』蟹壊タカアシ
 身長3m近いタカアシガニ海種。背伸びして高所から槍状の腕で連続攻撃をしかけてくる。
 【弱点】【防無】といった攻撃が得意。
・『ホタテ砲兵』貝墓ホタテ
 巨大なホタテ貝に見えるウォーカー。
 大量のBSによる範囲攻撃と呪殺を得意とする。中には少女が入っているが、めったに出てこない。そして防御が堅い。
・『甲羅心眼』甲裏切スッポン
 正体不明のひとり。ディープシーらしいというところまで分かっている。

●幽霊船
 数隻(少なくとも3隻以上)の幽霊船です。
 ぼろぼろの船で乗組員は全てアンデッド系。
 船の大砲による砲撃のほか、船を直接ぶつけて乗り込んでくるといった戦闘方法をとります。

■船について
 小型船系アイテムを装備していた場合1PCにつき1隻まで、戦場に自船を投入できます。
 船を増やすメリットはメンバーによりけりですので、相談して決めてください。(装備したけど投入しないという選択ももちろんOKです)

  • <Despair Blue>国壊しの遊興劇Lv:15以上完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年02月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
燕黒 姫喬(p3p000406)
猫鮫姫
ダークネス クイーン(p3p002874)
悪の秘密結社『XXX』総統
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
桐神 きり(p3p007718)

リプレイ

●絶望の中に見える光
 次々にあがる砲音を背に、船乗りたちは舵や手すりにすがりついていた。
 降り注ぐのが雨なのか鉛なのか、それとも幽霊船の放つ恨みや憎しみでいっぱいの怨念弾なのか。それともすぐそばの味方が直撃を喰らって血と肉になって舞い上がったのか。
 理解も観察もする余裕がない。激しく揺れる船をとにかく海洋王国側へ向けて走らせることしか、彼らにはできなかった。
 いや、もうひとつある。
 ここで死んでしまいませんようにと、神や女王や、あの日表彰台に上ったイレギュラーズたちに祈ることだけである。
 前二つは、彼らに手を伸ばすことはなかった。
 だが一つ。
 ただ一つだけ。

「――待たせたね、あんたたち!」

 『猫鮫姫』燕黒 姫喬(p3p000406)率いるイレギュラーズ混成艦隊。欧鰐家より貸し出された装甲屋形船の屋根に乗り、姫喬は耀化鮫牙造御神楽宝刀『八尋火』を抜刀。
 そりたつしゃちほこに刀身を叩き付け鱗をがりがりとこすると、燐光を美しく輝かせた。
 いま、五隻からなる艦隊が、この海域へと駆けつけた。

「旦那ぁ、邪魔が入りましたね」
「燕黒姫喬に、ローレットか……まあ、ここで来なければ奴ではない」
 幽霊船のひとつに乗り、さび付いた鉄の箱に腰掛けてキセルをくわえた『人喰和邇』八十神 劫流。
 そばに控えていた精鋭化骨衆は、彼の『散れ』という一言でそれぞれの幽霊船へと乗り移っていった。
 計五隻ある幽霊船たちは左右に大きくひろがり、うろこ諸島連合艦隊への砲撃を一旦停止。
 ドレッドヘアの殴鰐が腕組みをしたまま左右へと視線を走らせた。
「HUM……回り込む作戦らしいな、クレイジーボーイズ」
 殴鰐の言うとおり、連合艦隊とすれ違うように燕黒装甲屋形船が一隻。乗り込んでいるのは四人。
 一方で回り込むように待ち構えていた左右二隻ずつの船が展開する幽霊艦隊のへと襲いかからんとしていた。
 愛魚渇がボディスーツのファスナーをさげ、人型をした粘液こと海老泣が小刻みにふるえた。
「連合艦隊を助けるつもり、みたいねぇ」
「ギギギ……」
「無視というわけにもいくめえな。クラーク家の出世頭はタカアシとホタテ。名誉大佐の野郎はタイガとスッポンに任せて残る三隻で中央突破だ」
「敵の総数が分からないわよ?」
「なんでもいい。ぶつかっちまえば、じきに分かるもんよ」
 どこか、八十神の様子が若々しかった。
 まるで若かりし頃を思い出しているかのような。
 すりきれるほど古い約束を、守ろうとしているかの、ような。

●過去をかついで山を登れ
「甲羅戯と化骨衆……つながった、な」
 航海日誌を懐にしまいなおし、『二代野心』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は斧銃【白煙濤】のスライドを操作。ガキンと氷塊弾独特の音と共に、エイヴァンは獣のごとく吠えた。
 これまで数々の戦いをくぐり抜けた砕氷戦艦『はくよう』。
 これに並ぶは七海征服号XXXサンシャイン(仮)の船首像――の上に堂々立ち腕組む『悪の秘密結社『XXX』総統』ダークネス クイーン(p3p002874)。
「化骨衆なにするものぞ! 我こそは悪の秘密結社『XXX』総統! ダークネスクイーンである!
 エイヴァン、分かっているな?」
「愚問だぜ」
 連合艦隊の船を追いかけようと進む幽霊船。エイヴァンとダークネスクイーンは同時に構えると、船側面に向けて防御態勢をとった彼らめがけて同時に攻撃を放った。
「『メチェーリ・スナリアート』!」
「『世界征服砲』!」
 オーラと氷塊ガトリングが合わさり幽霊船のデッキをなめるようにすぎていく。
 攻撃を引き受けた幽霊船員たちが剣を抜くが、かまわず二人は船へと飛び込んでいった。
 まずエイヴァンは海へ飛び込み、幽霊船下部の装甲へと狙いをつけた。水面下に沈んでいるためこちらも大きく潜る必要がるのだ。
(悪いが俺の方は遊びに来たわけじゃないんでな……! 沈んで貰うぜ!)
 『メチェーリ・スナリアート』を船の下部装甲めがけて撃ちまくる。
 命中した氷塊弾が装甲をなでていく。
 威力としては、およそ40発ほど直撃させればエイヴァンを倒せる程度といったところだろうか。
 そこへ。
「ようこそ私のスイートルームへ」
 甲羅の盾に足を組んで座り、短い手槍を片手にもって目隠しをしたディープシーが目の前へと下りてきた。
「甲裏切スッポンか」
「いかにも。流石名誉大佐殿、勘が鋭い」
「アンタと遊ぶのは後だ」
「そうはいかん。感動の再会がまだなんでね」
 スッポンがにやりと笑うと、更に数人の幽霊ディープシーが下りてくる。
「エイヴァンたいちょう」
「どうして守ってくれなかったんです」
「僕の唯一の役割だったのに」
「お前たち……甲羅戯艦隊の!」
 目を見開き、ふりかえるエイヴァン。
 幽霊たちは恨めしそうに手を伸ばし、エイヴァンへと組み付いていく。

「おねーちゃん、強いね?」
「褒めてもカリスマオーラしか出んぞ少年」
 幽霊船デッキ上では、ダークネスクイーンが船の大砲めがけて世界征服砲を連射していた。
 とはいえ、周囲の幽霊船員たちとて黙って見てはいない。
 二丁拳銃の少年鰺ヶ裂タイガは彼ごと吹き飛ばそうと駆け回るダークネスクイーンからひらひらと逃げながら銃撃をしかけ、数人の幽霊船員が斬り付けるというコンボを仕掛けてきた。
「船を沈めて連合艦隊を追う力をそぐって作戦だね? 悪くないよ。僕だってそうする。けど、一隻に対して戦力が小さすぎたんじゃない?」
「かもしれぬな」
 ダークネスクイーンは海面から飛び出し自分の船にとびのるエイヴァンを見ると、自分もまた助走をつけて自らの船へとジャンプで舞い戻った。
「だが足止め(いやがらせ)は成った! 貴様はもはや連合艦隊に追いつけぬ!」
「――」
 目を見開き、そして連合艦隊へと振り返るタイガ。
「あちゃあ、やられたね……じゃあせめて、手柄くらいは立てないと怒られちゃうな」
「同感ですな」
 ちゃぷんと海面から顔を出すスッポン。
 素早く転身して撤退を始めるダークネスクイーンたちを追うように襲いかかり始めた。

●死はいつもすぐそばにある
 金色のプレートが陽光にひかるモルティエ号。
 『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は『グラン・ギニョール』の力を自らの左手に、あふれ出る真珠色の魔力を右手に、それぞれ纏わせてグッと拳を握りこんだ。
「海に生きる者なら海で死ぬのは自然なこと。
 でも、そうじゃない人が死ぬことはない。
 たくさんの人を生かせるなら、その日はきっと良い日です。がんばりましょう」
「いかにも!」
 横に並んで進む『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)の豪華旅船『ビッグドリーム号』。
 狙うは敵片舷部隊幽霊船。
 連合艦隊へ未だに砲撃を続けつつも、しかしこちらの突撃を察して船員の殆どは迎撃の構えを取っていた。
 迎え撃つは幽霊船員複数と蟹壊タカアシおよび貝墓ホタテ。
「来いやオラァ! ワシらのジツリキ舐めたらあかんで!」
「アレ? あの子仲間かな? ちがうな? じゃあ殺そうね」
 射撃が浴びせられる中、二人は船をまるごと幽霊船にぶつけることで敵船の進行を妨げた。
「良い度胸なのじゃー!」
「あれ仲間かな? 違うな。だったら水没してね」
 なんだか悪い意味で気の合う敵味方である。
 ココロは船のデッキでクラウチングスタート姿勢をとると、衝突と同時にその勢いをダッシュにのせて跳躍。両船の手すりを飛び越えると、ハッと見上げたホタテめがけて真珠色の右ストレートをたたき込んだ。
「ひい! 近距離パワー系だよおこのひと!」
 貝で防御するホタテ。
 かまわんとばかりに拳の衝撃だけを浸透させると、続けざまに黄金の左。
 拳から伝った毒がホタテへと浸透していく。
「ひい! パワー系と見せかけて毒タイプだよこのひと!」
「今気づいてももう遅いよ」
 ココロはギランと目を光らせると、猛烈なラッシュを開始した。
 最後に打ち込むのは『グラン・ギニョール』を宿した虹色の右。
 蓄積した呪いのダメージがたたき込まれ、ホタテの貝装甲が吹き飛んだ。
「きゃひい! やめてよこわいよこのひと!」
 姿を見せた白スク水の少女がココロめがけて反撃の魔法を打ち込んでくる。
 防御もままならずこちらもまた吹き飛ばされるココロ。
「ホタテはんの貝を破るたぁ、さてはおたくらビルド強者やな!?」
 タカアシフルガード! と叫んで槍状の腕をクロスするタカアシ。
 デイジーは彼をガン無視して船の甲板に『ディスペアー・ブルー』の魔術を叩きつけ始めた。
「なっ、なにやっとるんやタコちゃん!」
「みてわからぬか。沈めるのじゃ船をぉ」
「やめぇやめぇ、元々沈んどった船になんてかわいそうなことするんや!」
 オラァといって槍を繰り出してくるタカアシ。
 デイジーは『ツボガード!』とかいいながら壺のくぼみで槍をうけつつ、しかし衝撃がはしって吹き飛ばされたりした。
「ぐぬう。流石に一発二発じゃ船は沈まぬか。威力的には1000は越えたはずじゃが?」
「泥船じゃあるまいし! 兵隊一人分より脆い船があってたまるかい!」
 構えるタカアシ。
 構えるデイジー。
「ククク、ならば船員の貴様らを『ふしぎなちから』でしぬことにならすだけじゃ」
「しぬことにならすだけ!? それ日本語かタコちゃん!?」
 取り囲む幽霊船員たち。
 いざ、死闘の始まりである。

●国壊しをもういちど
 装甲屋形船めがけせまる三隻の船。
 放物線を描いて飛んでくる巨大な鉄球を、『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)は斜め上へ打ち出すようなパンチによって粉砕した。
「化骨衆っていったか、連中。そういや前に殺し損ねたなぁ? ドレッド野郎」
 貴道はすぐさま地面を殴るような姿勢で飛び上がると、空気をまるごと殴りつけるようにして八十神の乗る幽霊船へと突撃。
 弾丸のごとく繰り出された彼のパンチを、ドレッドが片手で受け止めた。
 そして貴道の肩に手を置くと。
「HEY」
 どこかシニカルに笑って彼を投げ飛ばした。
 空中で身をひねって着地する貴道――へ追いついたドレッドの鋭いハイキックが襲う。
 体勢をひくくして回避した貴道は彼のボディめがけて拳を打ち込んだ。
「前より強くなったなボクサー。ユーみてえな奴がいるとついつい溶けて死ぬのが惜しくなっちまうぜ」
「あぁ……?」
 顔をしかめる貴道。
 が、そこへ新たに姫喬と『雷精』ソア(p3p007025)が飛び込んできた。
「裏だか表だか知らねぇが、悪趣味な御遊びをいつまで続ける気だい!」
「無論死に滅びるまで」
 姫喬の斬撃を炎を纏った素手で受け止めると、八十神は掌底を繰り出した。
 命中、と同時に姫喬の体内で何かが燃え、血の代わりに炎を吐いた。
「姫喬さん、深追いしすぎないでください!」
 桐神 きり(p3p007718)が黒銀魔剣に治癒弾を装填。
(精兵8名に加えて雑兵多数、更には防衛戦と……。
 いやー、めっちゃハードな仕事でやばいですね!
 自分が生き残る事に関してはそれなりに自信がありますが、護衛だとどうなる事やら)
「ま、やれるだけやってやりますけどね……!」
 剣をライフルのように構え、姫喬へと治癒の弾を撃ち込んでいく。
「おっと、悪いね」
 姫喬は口元をぬぐってから、再び八十神へと突撃していく。
 攻撃は届かないが勢いだけならまだ届く。そのまま船の手すりまでおいやって、強引なタックルでもって自らもろとも海中へと落とした。
「ちょっと旦那ぁ!」
「よそ見はさせないよ!」
 Trachurusが追いかけようとしたところで、ソアが肉球ハンドから大きな雷のツメを構築。斬りかかった。
 ナイフを抜いてそれを受け止めるTrachurus。
 ソアはちらりと砲台をみやった。
 船員は連合艦隊への砲撃をいまだに続け、残る幽霊船員たちはソアや貴道たちを取り囲もうと展開を始めていた。
 一方で残る二隻の幽霊船はソアたちの船を通り抜け、逃げる連合艦隊へと接触。船内へと幽霊船員たちが流れ込んでいった。
「連合艦隊の船が!」
「おっと、そっちこそよそ見をするんじゃあないわよ」
 助けに走ろうとするソアの襟首をつかみ、Trachurusは彼女をデッキに投げ落とした。
 更にナイフで胸を突こうとしたところ――。
 ソアは足をからめて逆にTrachurusを投げ倒した
「沈めちまうのが一番だが……そんな余裕も無さそうなんでな、スマートに行かせてもらうぜHAHAHA!」
「いいぜ、そういうスマートはキライじゃねえ」
 一方で貴道とドレッドは目をギラギラと光らせながら互いの拳をドカドカと打ち込み合っていた。
「私は……」
 きりはあちこちで散発的に始まった戦闘に対して、どうヒールワークを構築するかを考えた。
 相性からして簡単に倒れなさそうな貴道は後回し。
 敵に対してダメージを受けすぎそうな姫喬とソアを重点的に……かといって幽霊船員たちに取り囲まれてはそれどころではない。
 などと考えていた矢先に、海老泣泥泥が彼女の背へと飛びついてきた。
「ギギギギ!」
「いつのまに!? 離れなさい!」
 空を舞うように強引に飛行し、泥泥を振り払おうとするきり。
 泥泥はそんな彼女の腕や首に絡みついて治癒スキルの使用を封じようとしてくるようだった。
 そうはいくまい。とサバイバルナイフを突き立てて引き剥がしにかかる……と、周囲の幽霊船員たちがきりへと次々に飛びついてきた。

 ぶくぶくと沈む姫喬。
 鮫のような狡猾さと俊敏さで迫る八十神の手が、彼女の首をつかみ取った。
「唯の遊びにしちゃあ悪趣味な取巻だぁね。遊び相手買って出てやってんだ。あのほとけさん達ゃどちら様よ?」
「わからんか? わからんよな。奴らは『二十二年前』に海へ溶けた同胞どもよ。ま、一部はつい最近仲間入りした連中だがな」
 二十二年前。つまりは、全開の外洋遠征である。
「答えな! うろこ諸島だけがアンタの狙いなのか!? 絶望の青への道を阻むなんざ、どういう魂胆よ!」
「儂に応える義理が……? ううむ」
 切り捨てようとして、八十神は首をひねった。
「あるかもしれんな。こちとら古ぅーい約束でな。絶望の青に挑むやつらは残らず壊すと決めている。
 そこへくれば、ここは海に溶けて消えちまうまでを眺める絶好の特等席よ」
「……『廃滅病』!」
 記録によれば、前回の大号令のおり絶望の青から戻ってきた者はいない。
 その理由がつい最近判明した廃滅病によるものだと推論がつきはじめたところである。
「だったら、アンタはどうしてそれを知ってる? 『誰も戻ってこなかった海』の呪いを、何故知ってる!」
「さぁてな。そこまでは教えてやらん」
 強く蹴りつける八十神。次の瞬間、猛烈な速度で潜水してきた貴道が姫喬を掴んでかっさらっていった。
 担いだまま海面から飛び出し、更に飛行状態になり装甲屋形船へと帰還。
 きりやソアも同じ船に乗り込んでいた。
「アンタら……」
「ここはもう限界です。撤退して鮫人さんたちと合流しましょう!」
 振り返れば、連合艦隊の船たちが燃えていた。
 ギザギザの歯を食いしばる姫喬。
 ソアはグルルと唸って雷撃の牽制射撃を発射すると、きりに『船を出して!』と叫んだ。
 見れば、幽霊船員たちが手を振っている。
 『お前たちもはやくこうなれ』と、言っているように見えた。
「なってたまるか。必ず、乗り越えてみせようね……」

成否

失敗

MVP

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳

状態異常

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)[重傷]
波濤の盾
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)[重傷]
共にあれ

あとがき

 ――連合艦隊の撤退は失敗しました
 ――イレギュラーズはいくつかの情報を獲得し、帰還しました。

 ――八十神は『廃滅病』のことを事前に知っていたようです
 ――化骨衆の一部もしくは全員は廃滅病にかかっているようです
 ――八十神の目的は絶望の青に挑む海洋王国の英雄たちが前回のように全滅するさま、ひいては大打撃をうけた王国が少なからず崩れるさまを間近で眺めることのようです。
 ――八十神がいかにして廃滅病の知識を得たのか、なぜ王国そのものの破壊を望んでいるのかはいまだ謎です

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