PandoraPartyProject

シナリオ詳細

リビングデッド・ストリート

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●屍人の世界
 霧が濃くなったと思ってすぐ、むっとする異臭が鼻を衝いた。
 この稼業だ。当然覚えがある。死臭、腐臭、そういう類のもの。
「ア……ア……」
 霧の中からの呻くような声に身構えてすぐ、声の主がよろめきながら姿を現す。
 腐りかけた皮膚。乱杭歯。眼窩からは蛆虫が溢れ出している。
 見た限りで判断するなら、いわゆる生きる屍――ゾンビというやつだろう。動きは緩慢で、この1体だけならあしらうのは簡単そうだが、声は他にも聞こえてくる。とにかく視界が悪くて敵の位置や数が把握できない以上、同行していた仲間との同士討ちも考慮すべきだ。

 依頼をこなして街へ戻る道すがらの遭遇であり、野犬じゃあるまいし偶々出くわしたとは考えにくい。それに突然のこの霧は、おそらく何がしかの敵意ある異能の行使――いや、あるいは。

 思索を邪魔するかのように掴みかかってきた屍人の手を躱すと、さらに霧中から数体が現れた。仲間の名を呼びながら、屍人どもを打ち払い、捌き、そして包囲の隙間――輝く方へ転がり出ると、そこには“商店街”が広がっていた。

「――は?」
 ぱっと目についたのはマッサージチェアで退屈そうにくつろぐ中年女性である。看板には「FOOT MASSAGE」とあって、振り返れば相変わらず屍人どもが群がってはいるが、見えない壁に阻まれたようにこちらへは入って来ない。
 見えた範囲だけでも「HOSTEL&CAFE」「花屋」「雑貨屋」「アイスクリーム屋」などの店舗や屋台が一本道の左右に広がっており、奥行もありそうだ。通りには子連れの男性や若いカップルがのんびりと歩いていて、背後のゾンビとの絵面のギャップが凄まじ過ぎて混乱する。
「あらあら。あらあら」
 茫然としていると、ちりちり頭で恰幅のいい中年女性が箒を手にしたまま、いつの間にか側に佇んでいた。
「ああ、また来ちゃったのねえ。月曜になったら奥のツアー会社が開くから送ってもらいなさいな。大丈夫よ、どこの世界のお金も使えるから」
 そこで中年女性は急に、そうだ、という顔を浮かべた。
「丁度いいわ。明日が日曜で、強いお客さんがいるこのタイミング! そう、丁度いいッ! あなた、あそこを抜けてきたって事は強いんでしょ!手伝ってよ、送迎代負けてくれるよう、オバチャンが頼んであげるから!」

 そうか、と納得した。
 どうやらどこかの狭間の空間――奇妙な世界に紛れ込んでしまったらしい。

「ここも手狭になってきててね! 拡張したいんだけど、外はホラあれでしょう? やり方はね、簡単! この立て看をね、ここから拡げる先の通りの端にも置くの。後はその間でうろうろしてるアレを全部やっつけてくれればOK! 建物の中もきっちり掃除して。後で住むんだから建物は壊しちゃ駄目よ? 大丈夫、きっと出来るわよッ!」

 女性が指差した立て看――そこには「生存者天国」と書き記されていた。


●商店街のお仕事
 紛れ込んだのは屍人溢れる死の世界?
 でもなんか調子狂うわよねここ。
 あのオバ……中年女性が言うには、日曜限定でできる結界? 儀式? みたいなもののようね。エリア内のゾンビがゼロになった時に発動して、その後は生者しか入れなくなるんじゃないのかしら。
 ゾンビ単体はそう強くないようだし、せっかくだから帰る前にひと仕事してあげたらどう?

NMコメント

 どうも、かそ犬と申します。
 現代のような中世のような東南アジアのどこかひなびた観光地といった風情の奇妙な世界で、敵はたいして強くないゾンビとなります。数が多いのと、建物内では不意討ちに注意です。またゾンビになって日が浅い個体は、動きが俊敏で手強いかもしれません。

●達成条件
 拡張したいエリアの端に立て看を置きに行くのが最優先事項です。一度置いてしまえば立て看を死守する必要はありません。何人かに分かれる場合、基本的には数が多いか、派手に音を立てる者を狙ってきます。その後、エリア内のゾンビを掃討して下さい。
 
●プレイング
 自分がどこをメインに戦うか、【路上】【建物内】【立て看設置】のどれかを記載して下さい。あとは苦戦OKとかこの必殺技は建物壊しちゃうかもとかウチの子はゾンビ恐がりますとか書いていただけると、細かく描写できるかもしれません。
 
 以上となります。
 ご縁がありましたら宜しくお願いいたします。

  • リビングデッド・ストリート完了
  • NM名かそ犬
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年02月20日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

アウロラ・マギノ(p3p007420)
紅雷姉妹
カロン=エスキベル(p3p007972)
対価の魔女
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
奏多 リーフェ 星宮(p3p008061)
お嬢様の恋人

リプレイ

●突撃、4人の掃除人
 中年女性が指揮官の如く提示した地図によれば、封鎖すべきは2箇所。簡単に表現すれば彼女らの生存空間つまり商店街がTの字の縦棒で、封鎖して欲しいのは横棒の右側とそこへ通じる横道1箇所となる。
「こっちは封鎖しなくてよろしいのですか?」
『都市伝説ハンター』バルガル・ミフィスト(p3p007978)が地図上の横棒左側を指して全員の疑問を代弁するかのように呟いた。すぐさま、ああいいのいいのと中年女性が大きく手を横に振る。
「そっちの突き当たりはお屋敷で通りに面してないから! 右側を立て看板で塞げばそっちまでOKなのよ!」
 そういうものかと4人は思う。日曜は例の霧も出ないそうで、まあとにかく信じてやってみるしかない。
「ところでこのゾンビを阻んでる壁だけど。例えば今こっち側から飛び道具撃ったら向こうまで届くのかしら?」
『新たな可能性』カロン=エスキベル(p3p007972)が親指を立ててくいくいと背後の半透明の障壁を指し示して見せた。今も尚ゾンビ数体が壁にへばりついて侵入を試みている。
「念の為、外に出てからの方がいいんじゃないかな?」奏多リーフェ星宮(p3p008061)が思案顔をカロンへと向けた。「僕らの力はこの世界の異物かもしれない。この壁には出来るだけ干渉しない方がいいと思う」
 眉を下げた『不意打ちハンマー』アウロラ・マギノ(p3p007420)が、でっ、でもっと奏多とゾンビをちらちらと見比べて不安そうに言う。「あそこにいられると出にくいですね。出会い頭というのは恐いです」

 そこでカロンが得意気にふんす、と鼻を鳴らして進み出た。
「ひっひっひ! しょうがないわね! じゃあ私が活路を開いてあげるわ! 遅れないでよ!」
 どろりと液状化した魔女の姿は一瞬で黒猫へと変化する。黒猫カロンは仲間達を一度振り返った後で障壁の中へ飛び込み、屍人どもの足元を擦り抜けてその背後で再び人間体へと戻った。「鬼さん、こちら!」人の気配に振り返ったゾンビがよろよろと近付いてくるのを待ってカロンは煌めく魔弾を扇状にぶちまけ、障壁前の敵を一掃する。
「さすが、魔女様」心の込もらぬお愛想を言いながらバルガルが看板を抱えて障壁の外へ歩み出た。一番得物がごついアウロラが恐る恐るといった感じで続き、最後に出てきた奏多が長身の少女の緊張した様子を見て、ふっと苦笑した。

「では、みんな。手筈通りに」
 壁の向こうで見送る中年女性へ手を上げてから奏多がそう言って振り返ると、4人に気付いたゾンビが既に続々と集まりつつあった。とりあえず異能を使って意思の疎通を試みた奏多は予想通りそれが通じない事に端正な顔を少しだけ歪めた。ゾンビもある意味では不老だが、彼らに自由意志はない。魂は腐った肉の檻に閉じ込められていると言っていい。哀れだと思う。
「ここは僕が」魔弾を放とうとするカロンを制し、奏多は瞬間、魔力を全盛期まで高めた。地面が隆起して巨大な土塊が出現し、まるで巨人の拳のごとく振るわれたそれは屍人の集団をまるで玩具のように吹き飛ばした。

「そのまま!」バルガルが看板2枚を抱えたまま俊敏さを発揮し、土の巨拳を駆け上がって、手近な建物の屋根へと飛び移った。「看板を壊されちゃ拙いですからね。自分はこっちから行かせてもらいますよ」
 くたびれたオジサンといった風情のバルガルの機敏な動きに、やるじゃないと見上げたアウロラがほくそ笑む。ひょいひょいと屋根から屋根へ飛び移ってゆくバルガルを追いながら奏多とカロンが魔弾を撃ちまくる一方で、単身残ったアウロラは手近な建物の扉をきいと開け、中を覗き込んだ。
 彼女の役目は建物内の屍人の排除だ。ゾンビは扉から中へ入ろうとするがドアノブ等は操作できないそうで、掃討した後扉を閉めれば再び侵入されて二度手間になる事はない。飛び道具組は室内では建物を傷付ける可能性があるし、不意の遭遇等を考えると時間が読めないので独りでも早く取りかかりたかった。
「し、失礼します……」
 少女が一歩踏み出すと室内から腐った血の臭いが漂ってきた。血を食む吸血鬼としては吐き気のする思いだが、顔を背ける訳にはいかない。目に入った居室は思ったより荒れた感じはしないものの、2つある扉の半開きの方から微かに床鳴りが聞こえた。(――いる!)

 ここですね、と独りごちたバルガルは屋根上からひとつ目の設置点を見下ろした。突き当たりの設置点はまだまだ先であり、ここは横道との合流点だ。振り返ればカロンと奏多はまだ2軒後方で群がるゾンビをあしらっている。周囲の敵は見たところ数体で、自分だけでも十分と判断したバルガルはひらりと地上へ飛び下りた。2枚の看板が擦れる音に反応しすぐさま屍人2体が向かってくるが、その動きは幼少から鍛え抜いたバルガルの目には緩慢そのもの。足払いで倒してから正拳を突き下ろし、振り向きざまに掌底でかち上げて一回転させると、括った紐を外して立て看板を下ろす。「まず、ひとつ」

「えいっ!」壁に傷を付けないよう部屋の中央に陣取ったアウロラは、気配に気付いてよろよろと部屋から出てきた屍人を禍禍しい戦鎚で横殴りに吹っ飛ばした。壁一面に四散した血肉が飛び散り、思わず少女はああっと悲鳴を上げる。掃除すべき自分が汚してどうするのだ、と思うが今は仕方ない。後で綺麗にしに来ますね、と心中で詫び、他の部屋も調べてはみたが蛻の殻であった。そろりと窓から顔を出して覗いてみると、向かいの建物からよろよろと出て来た屍人が、カロン達が戦っている方へと向きを変えたところである。彼らはやはり大きな音に引き付けられるようで、思ったより建物内に残っているゾンビは少ないのかもしれない。彼女の推察は正しく、左手方向に進んだアウロラは次々にクリア済みの建物を増やしていき、遂には突き当たりの屋敷に到達した。

 ひとつ目の立て看板を置いたバルガルはカロン、奏多と合流し、3人はさらに奥へと進んでいた。ゾンビは相変わらず横道からも入ってくるが、看板自体を守る必要はないという中年女性の言葉通り、看板を押し倒したり壊したりはせず、何故か綺麗に避けて通る。
「ぎひひひ! 不潔だわ! 素敵だわ! 何も遠慮する事ないものね! 動いてちゃあダメよ、アナタたちはもう死んでるんだから!」雨あられと放たれた光弾で上半身を消し飛ばされた屍人どもがばたばたと倒れると、さらにテンション高く沼の魔女は高笑いした。「アウロラちゃんの掃除の手間を省いてあげたわ! さあ、バルガル君、あそこがふたつ目の置き場所じゃないのかしら! いっひっひ!」
 成程、魔女が指差した辺りは確かに地図で確認した場所であるように思える。ゾンビの頭を回し蹴りで粉砕したバルガルが確かにと頷いた。今度は奏多のアースハンマーが放たれて一旦敵がいなくなると、すかさずダッシュしたバルガルが素早く立て看板を広げて設置した。「ふたつ」
が――何も起こらない。少なくとも目に見える範囲では。
「……これだけじゃやはり駄目みたいだね。ここは僕に任せて、2人はアウロラの手伝いへ行ってくれないか」
「それ、死亡フラグって言うのよ! いっひっひ! 大丈夫なの?」
 奏多が2人を見て言うと、すかさずカロンが突っ込んだが、片翼の天使の青年は儚くも微笑む。
「ええ。こう見えてフラグブレイカーってやつでね。さあ、行って!」

 一方、そのアウロラは屋敷の1階を掃討し、ホールから2階への階段を見上げて溜め息を吐いていた。彼女の見つけた「正解」の行動は、物音を立てて誘き出したゾンビを逆に物陰から奇襲するというもので、今までは見事にハマっていたのだ。しかし2階にいるらしきゾンビ達は部屋から中々出て来ない。危険を承知でひと部屋ずつ探索する事にしたアウロラはしかし、ふた部屋目の扉を開けたところで固まってしまう。中からゆっくりと歩み寄って来るのは手を繋いだままの幼い姉妹とおぼしき屍人だったのだ。
「あ……あ」
 それを切欠に他の部屋からも使用人らしきゾンビが溢れ出し、硬直したままの少女はメイドの屍人に肩口を噛まれ、苦痛の声を上げた。さらに腕を齧られ、髪を掴まれたアウロラの頸へ屍人が迫ったところで、黒い影が突然場に躍り込む。影――バルガルは少女へ噛り付いていた屍人の首を鋭い手刀でへし折り、さらに衝撃波を伴った拳撃で通路の最奥まで数体を吹き飛ばした。「間に合ったようですね。大丈夫ですか?」残る幼い姉妹の屍人にバルガルが向き直ると、涙目のアウロラが覚悟を決めたように男を制して一歩進み出た。
「この子達は、私、が」アウロラは一瞬の躊躇の後、全力で戦鎚を振り抜いた。恐らくこれが解放と再生に繋がると信じて。

●リビングデッド・ストリート
 それから10分も経たない内に、一帯を放射状に衝撃波が広がる感覚がして、空気が一変した。死臭も腐臭もなく、清浄そのものといった感じである。どうやら外で戦っていた奏多かカロンが最後の1体を仕留め、看板の結界が発動したらしい。
「変われば変わるもんですね」合流した後で辺りを見回しながらバルガルがぼやいた。ついさっきまで屍人の世界だったとはとても思えない。
「みなさん、ご無事ですか?」
「なんとかね」
「勿論よ! まぁまぁ楽しい世界だったわ!」
 奏多とカロンが答え、アウロラは微笑を返した。それからすぐ日が落ち、宿に宿泊した彼らは早朝叩き起こされて無理矢理押し込められた馬車に揺られ、どこをどう走ったものか、元の世界の元の場所で降ろされる事になる。

 欠伸を噛み殺しながら街へと歩き出す4人の誰かのポケットからはらりと一枚の紙が落ちた。それは中年女性に半ば押し付けられたあそこで使えるスタンプカードであった。興味があるならそれを拾ってみてもいい。次に屍人の商店街に呼ばれるのはあなたかもしれないのだから。

成否

成功

状態異常

なし

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