ねっこねこっ！

オープニング

●きみはねこ
　その世界は無辜なる混沌とはまた違った世界。旅人の中には現代日本と呼ぶ者もいた。近代的な建物に風変わりで最先端な服装……街ゆく人は今日も忙しそうだ。
　ただ君達の視界は街を歩く人々よりももう少し低いように見えて。何かがおかしいと気づいた君は自らの姿を確認する。
「ニャ？！」
　自身の獣種のような手……もとい前足を見て酷く驚く。他にもモフモフの体毛に意のままに出来る尻尾。
　これは紛れもなく猫の姿だ。
「ユキちゃーん！」
「ニャッ？！」
　自分の姿に驚いてるのも束の間、いきなりお腹の辺りを鷲掴みされて苦しげに鳴く。
「ナナちゃんっ！　猫ちゃんはそんなに乱暴に抱っこしちゃダメよ、ビックリしちゃうでしょう？」
「だってだって！　早くユキちゃんと遊びたかったんだもん！」
「……時間はまだたっぷりあるんだから優しく抱っこしてあげて？　じゃないとユキちゃんに嫌われちゃうわよ？」
「ええーっ！　そんなのやだーっ！！」
　親子だろうか、ほのぼのとした会話は微笑ましい、いつもならそう思えるはずなのに
　この、ナナと呼ばれていた女の子の自分を抱く力が強く、早く離してくれと暴れるものの暴れる度にその力は増して……段々魂が抜けそうな程苦しくなってくる。
「はっ！　ナナちゃん！　猫ちゃんが苦しそうよ！　離してあげて！」
「え？　わ、わーー！！　ユキちゃんごめんなさーーいっ！！」
　漸く解放された時にはぐったりとして暫く動けずにいた。動けない間も子守唄を歌うねと大きな声で歌を歌ったり、力強いヨシヨシをされたりと……まぁ、あの親子が帰るまで息つく間もなかった。

　親子の相手をする中、何も完全にぐったりしていた訳では無い。この猫の視点から見える物を色々と観察して……この建物の看板らしいものが大きな窓から少し見えた。
（猫、カフェ……）
　どうやらここは無辜なる混沌でも一部存在する猫カフェで、イレギュラーズである自分達はその猫達として降り立ったらしい。
　案内してくれた『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニがそんな事を話していただろうかと、イレギュラーズの一人である君は説明を曖昧にしか聞いていなかった自分に酷く後悔した。
（そう……これは確か……）

「猫さんになってお店のお手伝いをするのよっ！」
　ポルックスがそうにこやかに説明していた事を、段々と思い出してきた。
（簡単な仕事だと思ってたけど……こ、これは……）
　ちゃんと考えないと命が危ない！
　先程鷲掴まれた感触を思い出して震えながらも、君を含むイレギュラーズは意を決してお店のお手伝いをする事になった。

参加者 : 4 人

冒険が終了しました！　リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧（4人）

リプレイ

●ねっこねこだにゃ
（もともと鷹だから視点はそんな気にならないな。四足はちょっと違和感あるけども。お、肉球だ……）
　赤毛の単色、金の眼。もっふもふな大型猫、サイベリアン種の仔猫の姿になっていた『鳥種勇者』カイト・シャルラハ（p3p000684）は自身の普段の姿を思い出しつつ、今の姿が物珍しさにその前足のプニプニな肉球の感触を確認していた。
（ボクは気高いねこさん！　つーんってしてるんだ！）
　白に紫眼の気高そうな猫『バッドステータス坊ちゃま』リオーレ（p3p007577）はツンツンした様子で佇んでいる。どうやらツンツンな猫になりきっているようだ。
「自由気ままにはしゃぎまわるっすよー！　お手伝いといっても、この様子だと何か物を持ってきたり作ったりするわけでもなさそうっすからね！　……っすよね！？」
　目が毛で隠れてしまっている白と茶のぶち猫の『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラング（p3p008016）は少し不安げだがはしゃぐ気満々のようだ。
「これはワイルドにゃ……。名前、なんて呼ばれても返事なんてしてあげないから好きに呼べばいい、かと。名簿に『ゴンザレス』って書いてある？　……ぜったいおれのことじゃ、ないから返事しない」
　すわヒョウのようなロゼット模様が野趣溢れるベンガルねこ、『ぐるぐるしてる』角灯（p3p008045）は猫の名簿を見てムスッと。

　──さぁさ、そろそろ猫カフェの開店ですよ！



●
──カランコロン
　猫カフェの扉が開く音が響く。最初のお客様は少し疲れた表情を浮かべるスーツを着た男性。俗に言うサラリーマンと言うやつだろう。
「ヒイロくん……新しい猫ちゃんかな？」
　人間の店員と挨拶を交わしつつも男性がそう名簿を見て呟きながら目線を向けるのは、猫タワーで静かに居座っていたカイトだった。猫タワーにいたのはまぁ、とりだしにゃ。※ねこです。
（お、この人の興味は俺か？）
　そうだろうそうだろう！　とカイトが得意げになってみれば
「じゃあ……ヒーちゃんかな？」
（ズコーッ！）
　実際にズッコケてはいないがカイトの内心はそんな気持ちで。ので、気に入らないことを伝えるべくキッと男性を睨む。
「えっ……？　ん？　ああ！　ヒイロくんは男の子だもんね、ちゃんはないか！　ごめんごめん！　ヒーくん！」
　オスの仔猫だと思い出した男性は苦笑する。そう苦笑しつつも男性は用意していたおもちゃを取り出した。
「ふっふっふっ！　そんなヒーくんのご機嫌を取るにはやっぱり猫じゃらし！」
（俺がそんな玩具に釣られるわけ……にゃ？！）
　男性が猫じゃらしをフリフリと揺らすと、カイトの目線はキョロキョロ、ウロウロ。猫タワーに居たままで前脚をちょい、ちょいと身体が勝手に動いてしまっている。
「にゃっ、にゃっ！」
（にゃー身体が勝手ににゃ！？）
　猫の本能に抗おうとしているのに、そう思えば思うほどに反応しているような気がして。
「おぉおぉ！　元気いっぱいで可愛いなぁ！　捕まえたぞ！」
（可愛くなーい！　……可愛くないのに……か、身体がにゃあ……っ！　しかも回避自慢の俺が捕まるだと……！？　あ、おいどこを触って……！　あ、そこそこ。んにゃぁぁあ）
　モフられるのは元々抵抗のないカイトはあれよあれよと触れられる。

（もっと遊んで欲しいにゃ、でも疲れてそうだしにゃー……ハッ、俺は一体にゃにを？！）
　無意識に男性にすり寄る自分に気づいて、心の中で頭を抱えたカイトだった。



●
──カランコロン
「こんにちは……」
　次のお客様も何やら元気がなさそうな様子のスーツを着た男性。
「んあれ……新しい猫ちゃんですか？」
　そう男性が目線を送るのはつんつん！　と無愛想な様子のリオーレ。そんな彼を見て男性は静かに近づいてみる。
「君はツンデレってやつかな？　それとも人見知りなのかな？」
　話しかけながら手をそっと近づけてみるが、リオーレはペシッと軽く猫パンチ。
（ボクは気高いねこさんだからつーん！ってしてるの。かんたんにさわらせてあげたりしないんだからねっ）
　気高いねこさんを演じるリオーネは、心做しか得意げにも見える気がする。
「……これは気難しそうな子だ！」
「ふふ、おやつをあげてみて下さい。そろそろ時間なので〜」
「わぁ！　ありがとうございます！」
　男性は店員からアドバイスとおやつを貰い、再度リオーレへ近づいてみるようだ。
（！　なにそれなにそれ！！　ねこさんのたべもののあじ、気になる！！）
　ふらふらりと男性に近づくリオーレに彼は、その様子を微笑ましげに見ていて。食べてる間触っていいかな？　と、冒険心でリオーレに触れてみる。
（ボクはやさしいから、たべてるあいだはなでるのもゆるしてあげる。あ、そこ気もちいい……えへへ）
　そうゴロゴロと喉を鳴らずリオーレだったが、おやつを食べ終わってすぐさま高い所へ逃げ込んだ。
（ボクやさしいけど、いつまでもなでさせてあげるやすいねこさんじゃないんだからね！）
　つんつん！　とリオーレが態度を示せば、不意にため息が聞こえてきた。
（つかれてるのかな？　大じょうぶ？）
　も、もうちょっと撫でられようかなと思った時にはたと気づく。……降りられない。
（た、高いところ、こわいね……）
　高い所が苦手なリオーレはなかなか降りることが出来ない。けれど……彼が心配だから、勇気を出すよ！
（うー……えいっ！）
　少し不格好な着地になってしまったが良しとする。良しとするの。
「君はツンデレさんかぁ……可愛いね」
　男性はそんなリオーレをよしよしと撫で、リオーレもふふんと得意げだ。



●
　昼に差しかかる頃。
　開店直後は転がっている毛玉を意味もなく追いかけたり、キャットタワーに登ってふんぞり返って頂上で他の猫と場所の取り合いをしたりとそこそこ自由気ままに楽しんでいたリサは今はソファーでまったりと寛いでいる。
（こうしてみると猫の光景も中々に悪くないっすねー！　あ、でも充分楽しくはしゃぎまわったしそろそろお客さんの対応をしないとっすねー。雷落ちておやつボッシュートは嫌っすし……）
　ふふんとのんびりしていたがそろそろいけないと感じたリサの元へ、一人のお客様が近づいてくる。
「君、さっきから元気いっぱいはしゃいでていいねぇ〜」
　リサのお客様はどうやら癒しを求めに来たくたびれたおじさんのようだ。
（あ、新しいお客さんっすー！　おじさん遊ぼうっすよー！）
　リサは積極的におじさんの元へ駆け寄る。その様子におじさんもにっこり。
「いいねぇ〜そうやって駆け寄ってきてくれるのは嬉しいなぁ〜！　ん？　君はリサって言うんだね！　さてさてリサちゃんは何して遊ぼうか？　おもちゃはボールとか猫じゃらしがあるねぇ」
（おぉ、おじさん玩具もたくさんっすけど、それはあの……煮干し！　煮干し―！　くださいっすよー！……って、おっとっと、その前にはちゃんと一緒に遊ばないとっすねー）
　今の姿ではにゃーにゃーとしか鳴いておらず伝わらないことも相まって、リサはすぐに遊びへと意識を変える。
「じゃあねぇ〜これはどうかなぁ？」
　ふふふと笑ったおじさんはそんなリサに気付かぬまま、猫じゃらしをその手に取り彼女の方へ向けてみる。それに気づいたリサは振り返りおじさんを見あげようとしたが……
（何をするのっす……ね、猫じゃらしっすか。なんとド定番なっす……ふん、そんなものに私がつられるとでも思っているっすううううう！！　うおおおお！　体が勝手に、飛びついてしまうっすううう！！）
　猫じゃらしとは妙な魔力でも盛り込まれているのか、リサもこれでもかと言うほど猫パンチを繰り出して。
　その可愛らしい姿におじさんは猫じゃらしの動きを細かく変えながら、終始微笑ましげに戯れていた。



●
　閉店時間を回る頃、ぐったりしてるのは『ゴンザレス』と呼ばれていた角灯。
（ドタドタ走って声出して、騒がしい客は嫌い。だったり。特に子供。尻尾も無い分際でおれに触ろうなんていちまんこうねんはやい、の……）
　余程前半で子供達にハチャメチャにされたのか、酷く疲弊しているようだ。そこへまた子供達の声が聞こえる。
（うぅ……また来そう……そういう時は静かに座って飲食してる大人の膝の上に逃げ込もう……）
　そうして角灯は静かそうな人を探して、見つけた瞬間脚早にその人の元へ近づきぴょんと膝へ乗る。
「うわ？！　び、びっくりした……」
　その静かそうな女性は、自身の膝に突然乗ってきた角灯に酷く驚いた。
（ふふ！　ホラホラ、どれぇとしてお猫様はどう扱えばよろしいか見せてやるが良いかも）
　少し気を良くした角灯は得意げにそう思いながら、女性をじっと見つめた。
「えっと……このまま、なの、かな？　移動しようかなぁと思ってたんだけどな……」
　特に降りる様子のなさそうな角灯に、女性は足が痺れてきたのか苦笑しながら角灯を覗き込んだ。
（脚の上に座られたら動けない？動く必要ないでしょ。足が痺れようと、お腹がタプタプになろうと動かず我慢して、そうしたら褒美に背中を撫でてやることくらいは許したげる……かも）
　そう見つめてみれば彼女はため息をついて、このまま角灯と戯れることに決めたようだ。
（ん？　まさか猫カフェに来て基本セットのドリンクしか頼まないつもり？　おやつ買って。肉。ジャーキー。人の金で食べる肉は美味しい、の）
「な、なんか欲しいの……？」
　ジーーッと角灯が見つめてみても言葉が伝わらない彼女には何の事かわからず。
（む、これでも耐えるの。つわもの……ならこれを喰らえばいい！）
　角灯は身体を反転させて向かい合う形になれば胸によじのぼり、前足でリズミカルにふみふみ運動。
「うぅ……可愛すぎる……お、おやつあげちゃおうかな！？」
（ふふん、やったー！）
　その様子を見た店員は苦笑していたと言う。



●
　本日の猫カフェは大盛況！
　猫カフェのお手伝いは見事大成功だ！

成否

成功

状態異常

なし