PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ロマンスに山賊はいらない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「こんにちは! 今日の依頼は緊急の案件なのです!」
 それでは早速と『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、イレギュラーズ達を前にハキハキと説明を始める。
「ローレットがお世話になっているとある貴族の娘さんが、誘拐されたのです!」
 貴族の娘の名はエイダ。年は二十歳。短い黒髪が似合う美しい娘だという。
 犯人の男の名はリオン。年はエイダより少し下で、風に揺れる金髪が凛々しい男だという。
「ん~、なんか誘拐というより、駆け落ちのような……気もするのですが」
 仕事は仕事です。二人を引き裂くことになろうと、しっかり連れ帰ってください。ユリーカはきっぱりと言い切る。
 二人は王都メフ・メフィートにある実家を抜け出し、バルツァーレク領の親戚を頼って移動中とのこと。
 これはユリーカの推測だが、二人が進むルートだとバルツァーレク領に入るにはいくつか山を越えなければならない。つまり休憩できるポイントは限られている。
「小屋で二人が寝ているところに押しかけるだけで解決できる簡単なお仕事……なのです」
 ユリーカはそう言うが、楽な仕事なんて存在しない。仕事というのは、大変なものの――はず。


「僕のエイダちゃん! あんな男に取られちゃったよっ! 下男のくせに!」
 甲高い声でわめき散らす男の名はメメシー。エイダの幼馴染で貴族である。
「いけーーっ! 僕の暗殺部隊! こうなったら、二人とも殺してしまうぞっ!」
 勿論とどめは僕がさす。メメシーは先日初めて握ったショートソードを鞘から抜き、めったやたらに振り回す。
 十七年間の片思いが破れた報復は想い人へ――。
 殺意を滾らせるメメシー率いる暗殺部隊が二人を追ってメフ・メフィートを出立した。

「親分、確かこの山だ。貴族のロッジがあるってのは」
 不穏な空気をはらむ集団が、山麓から山の中腹を見上げる。男達は背中に戦斧を担ぎ、体は返り血に染まっている。
「おう。出張先の別荘に丁度いいぜ。どうせ使ってないんだろう。貰っちまおう」
 もし中に人がいたら、バラせばいいだけだしな。リーダー格の男がそう言うと、野卑な集団は隣の山まで聞こえるような大声で笑う。
 その男たちはバルツァーレク領中に名を轟かせた山賊集団、豪の者達であった。
 
「リオン、あそこよ。おじさまのところに遊びに行くときは家族でよく泊ったの」
 逃避行中の二人はエイダの家が所有するロッジに潜伏する。
「非常食は沢山あるわ。暫くここで過ごしましょう」
「エイダ、本当に俺でいいのか?」
 貴方さえいればいいの。二人は貝のように重なり合い、パンケーキに塗るシロップよりも甘い時を満喫する。
 皮肉にも、世界は二人を中心にまわっていることも知らずに。

GMコメント

日高ロマンと申します。
何卒よろしくお願いいたします。

●依頼達成条件
 エイダの生還
 ※エイダ以外の人物の生死は達成条件に関わりません

●情報確度
 A(オープニングと、この補足情報に記されていない事は絶対に起きません)

●ターゲット概要
 ・メメシーと暗殺集団・・・5人(ナイフ、スリング)
 ・バルツァーレクの山賊・・・7人(斧、弓)
 ・敵の武器を使った白兵戦の能力はLV1のイレギュラーズと同等です。
 ・特殊能力はありません。(武器のみ)

●その他補足
 ・舞台は夕方なので照明には困りません。
 ・エイダとリオンは既にロッジに居ます。
 ・最初にロッジに到着する勢力はイレギュラーズです。
 ・ロッジの近くに到着したところからシナリオはスタートします。

  • ロマンスに山賊はいらない完了
  • GM名日高ロマン
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月27日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルーティエ・ルリム(p3p000467)
ブルーヘイズ
ケント(p3p000618)
希望の結晶
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
ロキ・グリサリド(p3p004235)
侵森牢河
ロズウェル・ストライド(p3p004564)
蒼壁
栗梅・鴇(p3p004654)
金髪ヤンキーテクノマンサー
ソウヤ・アマギ(p3p004663)
これでも研究職
オロチ(p3p004910)
悪党

リプレイ

●到着
 一同が目指すのは、『バルツァーレクの門』と呼ばれる大山の、中腹にある絢爛豪華な貴族の別邸(ロッジ)だ。
 メフ・メフィートからバルツァーレク領に入るルートとしては比較的メジャーではあるが、中腹を超えた辺りからは賊や血に飢えた野犬が跋扈する危険地帯でもある。
 近年は山賊も活動範囲を広げており、貴族が建てたロッジですら止む無く放棄せざるを得ないケースも増えている。エイダの家が有するロッジもその一つである。
「うー寒い」
 山は寒いと嘆きながら、不承不承に黄昏の山路を急ぐのは『ブルーヘイズ』ルーティエ・ルリム(p3p000467)。
 それもそのはず、彼女が纏うのは僅かばかりの布であり、美しい素肌の大部分は外気に露出している。本人には気の毒だが男性陣には嬉しい限りではないか。
 後に続く『金髪ヤンキーテクノマンサー』栗梅・鴇(p3p004654)は、無意識のうちに右手でスマートフォンを握っていた。
 彼女は何も映らない液晶画面を暫し見つめて思案する。
 フーリッシュ・ケイオスでは当然ながら、現代世界の様にスマートフォンは利用できない。
 ――だから、あたしは練達に行ってスマホを使えるようにしなければならないんだ。システム・ケイオスを必ずものにして見せる。
 だが、そのためには金が必要になる。場合によっては名声も問われるかもしれない。だから、今は地道にやるしかない。
 彼女は苛立ちを胸の奥にしまい込み、一同と共にロッジを目指す。
「あれかな。うーん、周囲にはいないみたいだよ」
 『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)はいち早くロッジを見つけると右目に意識を集中して辺りを見回す。彼女は周囲の熱量を測定し人の気配を探す。
「ふむ。この距離からでは中の話声までは聞こえないねぇ」
 『これでも研究職』ソウヤ・アマギ(p3p004663)は帽子を取り、耳をすませたがエイダ達の存在までは確認できない。もう少しロッジに接近する必要があった。
 南の登山道を使い最初にロッジにたどり着いた勢力はイレギュラーズであった。
「後ろめたいことは何もないから。扉から行ってくる」
 メートヒェンは説得役としてロッジの扉に向かう。
「私も行こう。任せてもらおう」
 『蒼壁』ロズウェル・ストライド(p3p004564)は優雅にマントを翻す。その姿は華々しく、所作には気品がある。メフ・メフィートの貴族と並んでも見劣りするところはないだろう。
 ――ユリーカは、ああは言ったが。
 『希望の結晶』ケント(p3p000618)はユリーカの言葉とは裏腹に危機的状況の到来を内心は期待する。
 こんな時はどうせ刺客がくるものなのだ。だが、来るなら強い者がいい。さあ、来い。何が起こるか楽しみだ。愛用のソードブレイカーはいつでも抜ける状態だ。

 一方、東の登山道からは別の勢力が接近していた。
「あったぞっー! あれだ! あそこにエイダちゃんがいる!」
 ――殺してしまえ。メメシーが一人で喚き散らすと彼の周りには人影が忽然と現れる。メメシーの暗殺部隊である。
 メメシーは人間としては三流。戦士としては四流以下であったが、彼が雇う暗殺部隊は一流。数々の戦場を生き延びてきた修羅である。
「本当に、よろしいのですね」
 リーダー格の男は表情を微塵も変えずにメメシーに問う。
「いいよ! でも止めは僕が刺すから八割、ん~七割くらいで止めておいて!」
 ――承知。そう言い残すと影達はロッジに向かい疾駆する。だが、程なくしてリーダー格の男が部隊を静止する。ロッジにいるイレギュラーズに気が付いたのだ。
「なんだあいつら! エイダを狙っているのか! まとめてやってしまえー!」
 お静かに。気づかれてしまいます。喚き散らすメメシーをリーダー格の男は必死に諫める。

●暗殺部隊と山賊
「近づいてくる集団がある……おやおや、剣呑な雰囲気だねぇ」
 ソウヤは常人離れした視力を活かし斧を担いだ集団が西の登山道から登ってくることを事前に察知した。
「ああ、確かだ。こっちに向かって来ている」
 鴇は地面に触れ、僅かな振動から接近する者の存在を感じ取った。
 また、彼女は独自の情報網からエイダを追っている勢力は自分たち以外にも存在するという噂を聞いていた。これは信頼性が高くない情報であったため、皆にはあえて伝えていない。
「あん? 賊か?」
 『悪党』オロチ(p3p004910)は素早くオートマチック銃の安全装置を外す。やるなら構わない。彼にとって荒事はお手の物。
「おい。あっちのは、野党って感じじゃなさそうだ。貴族風の男もいるぞ」
 ケントは東の登山道でロッジを警戒するメメシー率いる暗殺部隊の存在を認識する。
「なんだか大変なことになってきたッスね」
 『侵森牢河』ロキ・グリサリド(p3p004235)は警戒するも手足をほぐしオロチ同様に『やる気』十分の様子だ。
「いったん、ロッジに入って様子を見よう。説得役にも伝えないといけないしさ」
 ルーティエがそう言うと一同はロッジ内に一度退避した。

 ――程なくしてロッジの前で山賊集団と暗殺集団が相まみえる。
「お前、なにもんだ?」
「お前らこそ何者だ! エイダちゃんは渡さないぞ!」
 山賊のリーダー格の男が、メメシーに問う。対してメメシーが間髪を置かずに喚き散らす。
「よくわからねぇけど。お前、ボンボンっぽいな。身代金を要求できるか知れねぇ。ふん縛って貯蔵庫に突っ込んどけ」
 リーダー格の男の指示で部下の一人がメメシーに手を伸ばそうとしたその時、すかさず影達が立ちはだかる。
「こうなったら、山賊どもを皆殺しにしろ!」
 承知。メメシーの合図で暗殺部隊は短刀を抜き、山賊に飛びかかった。
「ふむ。始まったようだ」
 ソウヤはロッジの分厚いドアの奥から外の様子を聴覚で探る。ソウヤに限らず、一同の方針としては漁夫の利を狙う算段であった。
「しかし広いロッジッスねぇ。流石は貴族の別荘ってやつッスか」
 ロキは三者全員が優に入れるロッジを見回してため息を漏らす。
 主な入口は、正面扉と庭から繋がる大きな窓。窓側の警戒はルーティエが率先して対応する。
 ロズウェルとメートヒェンは最奥の部屋でエイダの説得にあたっていた。

「私はメートヒェン。ギルドからの使者だよ。あなたを連れ戻しに来た」
「お父様の使いね。私たちに構わないで! 帰って!」
 メートヒェンは軽くお辞儀をし友好的な態度で接するもエイダの表情は硬い。その背後からリオンは訝し気な視線を投げかける。
「私はロズウェル・ストライド」
 ロズウェルとお呼びください。彼はそう言うと、胸に手を当て貴族の作法に乗っ取った礼を見せた。
「ロズウェル。あなたは騎士なの?」
 エイダはやや警戒を解いて応じる。
「そう思っていただいて、構いません」
 ロズウェルの返答にエイダは安堵の表情を見せたが、リオン表情は強張ったままであった。
「リオンさんに関してはこれといった話は聞いておりませんが、特に危害を加える気はありません」
 ロズウェルがそこまで言うとリオンもようやく安堵の表情を見せ、握った拳から力を抜いた。
「お願いロズウェル、私たちを見逃がして」
 エイダはすがるような目で訴えかけた。
「実際、我々という追手が現れた以上……逃げるのは難しいと貴方達は理解した筈です」
 ロズウェルは静かに言葉を返した。
「そして仮に此処で我々の手を逃れても次の追手は穏健な方々とは限りませんよ?」
 彼が続けて投げかけた言葉にエイダは言葉を失う。
 ――その時、外からは怒声の混ざった剣戟が聞こえてくる。
「外の様子がおかしい。何かあったようだ」
 ロズウェルはその場をメートヒェンに託し部屋を出る。
 無力な男女の逃避行なんてただの自殺行為。そんなことに気づけないならば、添い遂げることなんて出来るはずもない。今のままではいけないことに気が付いてほしい。それが彼の心情であった。
 メートヒェンは一人説得を続ける。
「私はハッピーエンドが好きなんだ」
 メートヒェンは俯き加減で不意に零す。
「え……」
 エイダは戸惑った表情で聞き返した。
「君たちの物語が、ハッピーエンドになってほしいから、出来ることをしたいんだ。私たちは」
 メートヒェンはエイダの目をしっかりと見据えてそう言った。
「もう一度父上と話し合ってみてはどうだ。今回の件で君たちの覚悟もわかっただろうし、前とは違う結果が出るかもしれないよ」
「だめだよエイダ、俺は殺されるかもしれない」
 リオンは狼狽えながら割って入る。
「どうしてもお父上を説得出来ずに、家を捨てて今回みたいな危険があったとしても逃げ出したいというのなら……」
 メートヒェンは人差し指を立て、更にこう言った。
「ローレットに依頼を出してくれれば駆け落ちの手伝いはしよう。だからダメだった時の事は考えずに思いっきり君たちの想いを話してくるといい」
 メートヒェンが力強く言うと、リオンとエイダは観念したように小さく頷いた。彼女の言葉を信じることにしたようだ。
「ありがとう。私も外を見てくるから、ここから動かないで」
 そう言うとメートヒェンは足早にエイダの部屋を後にした。

●撤退
「メメシー様、我々は重装の相手にする装備は持ち合わせておりませぬ。ここは引くべきです」
 数度の剣戟を響かせた後、暗殺部隊のリーダー格の男はメメシーに進言する。
「なんでー! エイダちゃんがすぐそこにいるのに!」
 ――どうしたものか。リーダー格の男はメメシーに辟易しつつも思考を巡らせる。
 山賊はいい。無傷では済まないが、短刀だけでもなんとかできるだろう。だが、ロッジに立てこもった謎の勢力がいる。重装備の者も何人か見えた。
 今出てこられては勝ち目はない。彼はそう確信し意を決した。
 ――申し訳ありませぬ。
 リーダー格の男は煙玉を山賊の集団に投げつけた後、メメシーを無理やり担ぎ上げて瞬時に踵を返した。
「きぃぃ! エイダちゃんー!」
 メメシーの甲高い声の余韻だけを残して、暗殺部隊は素早く撤収した。

「なんだあいつら……まぁいいか」
 山賊のリーダーは仲間を引き連れて悠々とロッジの正面扉に向かってくる。
 そして鍵のかかったドアをこじ開けようとする。
「おいでなすったぜ。気合い入れろ!」
 オロチは片手に鞘に入ったままの『聖剣』を。もう片手にはオートマチック銃を構えトリッキーなスタイルで臨戦態勢を取る。
「ちっ。めんどくせぇ」
 鴇はオロチ、ソウヤと共に陣形を組みエイダ達のいる最奥の部屋を守るように立つ。彼女はスマートフォンをポケットにしまい、大口径のライフルを持ち、揺れる正面扉に狙いを定める。
「面白くなってきた」
 ケントはソードブレイカーを抜き逆手に持ち替える。彼は正面と窓側を共に警戒し状況に応じて柔軟に立ち回る想定だ。
「どうした?」
 ロズウェルは奥の部屋から出てくるなり緊張状態を早々に察知し、背の大剣に手を伸ばす。
「お客さんだ。しかも質の悪いやつだ」
 オロチはニヤリと口角を上げる。
「やってやるッスよ!」 
 血の気が多そうな相手は投げ甲斐がある。ロキは念入りにストレッチを続ける。
「敵?」
 奥の部屋からメートヒェンも出てきて合流する。
「親分、窓から人影がみえましたぜ!」
 山賊の配下がそう叫んだのは中にも聞こえてきた。
「なんだ先客がいるのか。しょうがねぇ、扉をぶち破って全員ふん縛れ。抵抗したら容赦なく殺せ」
 リーダー格の男がそう言うと程なくして、正面扉が大きくひずむ。斧による一撃であろう。二度目の衝撃と同時に扉は破壊され、ロッジの内部に山賊の侵入を許した。その数は四人だ。
 同時に窓が破壊され、複数人の山賊がロッジの中を覗き込んでいる。窓側の入口は狭くそちらからは同時に攻め込まれることはない。
 ロキ、ロズウェル、ソウヤ、オロチ、鴇がエイダの部屋を守る形で正面の敵と対峙する。
 対して、ルーティエ、メートヒェンが窓際の対応に向かい、ケントは状況を見つつ遊撃手として立ち回る。
 ロッジの中は広いため、正面扉付近と窓側は戦線としては独立することになる。

●防衛
「いやっほー!」
 ロキは仲間の援護射撃を待たずして正面の敵に飛び掛かる。そして最も手短な相手の頭部を脇に抱え、片腕をロックしそのまま後ろに倒れ込む。そうすると相手は脳天から床に杭打ちをすることになる。
 ――その技の名はDDT。とある世界に伝わる伝説の格闘技がその技のルーツである。
 ロキは一撃で山賊の配下一名を仕留めた。
「隙ありだ!」
 だが、山賊のリーダーは失神した配下を蹴り飛ばし、突出したロキに襲い掛かる。
 ロキは攻勢に出るため仲間の援護射撃を待たずに突出しすぎてしまった。斧による斬撃に加え、短弓による射撃が一斉に降りかかる。彼の鍛え上げられた上半身は瞬く間に血に染まる。
「……へへ。まだまだッス」
 ロキは後退し片膝をつく。これ以上の戦闘は継続できない状態であったが、目の輝きは少しも曇ってはいなかった。
 ケントがすかさず威嚇射撃を行い、敵の更なる攻勢に歯止めをかける。
 次にオロチは最も手短な山賊の配下を狙い撃つ。ソウヤと鴇も狙いを合わせて火線を集中させていく。
「しゃらくせぇ」
 今度は山賊のリーダーが射撃を恐れず斧を振り回しながら迫りくる。放つ一撃は先頭に立つロズウェルの肩口に直撃するも彼は踏みとどまり、間髪入れずに切り返して流れを押し戻す。
 その時、奥の部屋の扉が開き、様子が気になったためか、エイダとリオンが戦場に足を踏み入れてしまう。
「悪いが、大人しくオジサンに守られてもらえないかな?」
「死にたくねえならちょろちょろすんな!」
 ソウヤとオロチの一喝でエイダとリオンは早々に部屋に戻り、事なきを得た。
「あいつをやっちまおう。リーダーを潰せばそれで御仕舞よ!」
 オロチはリーダーに射撃を集中させる。ソウヤと鴇も呼応するように狙いを合わせる。更に――。
「とどめだ」
「おしまいッス!」
 ロズウェルの渾身の一撃と、負傷を押したロキが決死の追撃を敢行する。
 熊の如き体格の山賊のリーダーは崩れ落ちた。正面扉組みが全員で勝ち取った勝利だ。
「我々の目的は彼らを守る事。あなた方は偶然巻き込まれただけに過ぎない、退くなら追いかけませんよ」
 ロズウェルがそう言うと、残った山賊の配下たちは一目散にロッジから逃げ去った。
 一方、窓側の戦場ではルーティエ、メートヒェン、ケントが肉薄する戦闘を展開していた。
「はいってくるな!」
 ルーティエは華奢な体に似つかわしくない力強い槍捌きを見せ山賊を翻弄する。出鼻をくじかれた山賊の隙をメートヒェンは見逃がさない。手にした盾で渾身の一撃を見舞う。
「そこだ!」
 メートヒェンに合わせて、ケントはロングソードを手に一気に間合いを詰め、切り伏せる。
 山賊の一人が斃れると、直ぐに二人目が窓から飛び込んでくるも、ケントはソードブレイカーに素早く持ち替えて攻撃をいなす。彼は状況に応じて得物を的確に使い分け卓越された戦闘技術を発揮する。
「狭い入口の先で籠城する相手に斧は不利だろ」
 ――弱い。もっと楽しませてくれ。ケントは斧を弾かれて狼狽える男をロングソードで一刀両断にした。
「こいつら、後何人いるんだ?」
 ルーティエはスピアを窓の外に向け身構えた瞬間、山賊が窓から侵入し彼女のスピアに串刺しになり絶命した。
「あら、悪いな」
 これで最後かな。帰ろう帰ろう。ルーティエは最後の山賊の命を奪ったことは気にも留めず、早々に帰り支度を始めた。

●再出発
 エイダとリオン。
 二人はメフ・メフィートの家に戻ることになった。あらゆる意味でそれ以外の選択肢は無いのだ。
 エイダとリオンを乗せる馬車が来るまでの間、一同は二人と僅かな会話を交わした。
「ただ逃げんじゃなくて筋通すべきなんじゃねェの」
 鴇は言葉を吐き捨ててその場を去る。エイダとリオンは何も言えず俯いたままだ。
 だが、正々堂々生きて欲しいからこそ、鴇は言う。彼女なりの激励なのかも――しれない。
「次があるなら馬車で迎えに来てもらえる伝手でも作っておくんだな」
 ルーティエは表情を変えずに淡々と言い捨てる。そしてこう付け加えた。
「定期的にやってくれると、わたし達も仕事が貰えて助かるから。また頼む」
 その言葉にはエイダも流石に憤慨する。
「ちょっと! あなた」
「頼る相手はいるようだが、流石に貴族が徒歩で駆け落ちは無理だと思うぞ。追手いなくても山賊に殺されてただろうし」
 冷静になれ。ルーティエがそう言うと、エイダ達は再び俯き黙り込んだ。
「駆け落ちも悪くないが、周りを説得して納得させる事に命を賭けてみるのはどうかな」
 なに、今回の事件に比べれば死の危険は格段に少ないさ。ソウヤは優雅に帽子を取り、会釈して去る。
「女に引っ張られて情けねえと思わねえのかよ。親御さんに認めさせるなり、テメェで攫うなり、男見せろよ」
 オロチはリオンに対しての説教だ。これからしっかりやんな。じゃあな。オロチは背中を向け軽く右手を挙げ二人の前から消えた。

 黄昏の喜劇が終わり、空の色と同じくして二人の心は瑠璃の色を帯び始める。
 エイダとリオン。逃避行が失敗に終わった二人はあえなく帰路につく。
 それはそうと、この二人の運は相当なものではないか。
 生還すら危うい今回の状況で百戦錬磨の何でも屋を味方に付かせることが出来たのだから。
 メートヒェンの案ではないが、駆け落ちを助けてほしい、なんて依頼がローレットに来た日には……。
 いや、その手の依頼は娘を持つ有力貴族の圧力で阻止されるのかもしれない。きっとそうだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ロキ・グリサリド(p3p004235)[重傷]
侵森牢河

あとがき

お疲れさまでした。無事成功です。

当然のように漁夫の利に持っていく皆様のプレイングがお見事でした。

PAGETOPPAGEBOTTOM