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シナリオ詳細

<Despair Blue>プリンシパリティーズ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●燃える海
 広い広い海原が燃えている。
 海洋警備船ベリーメリー号の船員たちは異様な光景に息を呑み、しかし適切に対応を始めた。
 甲板に防火シートを広げ燃え移る危険を回避し、燃えそうなものをあらかじめ船外へ捨てる。
 船での移動において船上火災など常識的な事故である。水面に広がった油が燃えているにすぎないだろうと、そう考えたのだ。
 しかし防火シートはたちまち燃え上がり、どころか船の手すりや外壁、特殊なパネルでできたデッキまでもが燃えはじめた。
 ただの炎ではない。そう直感した船員たちは次なる手段としてもえさかる海へとあえてダイブした。
 多少熱い思いはするだろうが、海中まで炎が追ってくることなどありえない。なんなら味方を治癒魔術で回復しながら飛び込めばたいした被害にならないだろう、と。
 そんな考え方を、するべきではなかった。
 『絶望の青』に至ろうという時に、常識だけで考えれば死を招く。
 飛び込んだ船員たちは油で揚げたかのように燃え上がり、真っ黒になって水面へとあがった。
 この炎は常識では考えられない炎である。そう察した飛行種の船員は翼を広げ、空へ急上昇することで逃避を試みた。たとえ海や船を燃やすことができたとて、空は自由で安全だと……。
 だがそれからそうせぬうちに、飛行種船員もまた真っ黒に焦げて甲板へと落下した。
 わずか数分のできごとである。
 ベリーメリー号は真っ黒にこげた死体の箱となって、別の部隊に発見されたのだった。

「――以上が、ベリーメリー号の検証によって得られた情報です。
 彼らは常識的であったがゆえに、海に殺されたのでしょうねえ」
 金髪に瓶底のようなメガネをかけた白衣の男。
 彼はタブレットPC端末を操作し、空中に半透明な立体CG画像を表示していた。
「だが犠牲が無駄になったとは言いがたい。
 なぜなら、我々がこの結果から情報を入手し、対策して挑むことができるからだ」
 彼は練達出身の研究者であり、海洋の組織と協力して絶望の青へ挑む共同チームの一員であった。
 チームの名は――『world end initiative』。

●world end initiative
「海洋王国の領海内にも、こうした不可思議現象がおきる海は多数存在します。
 そうしたエリアの研究を、我々は長年重ねてきました。まさに、このときのためにね」
 彼はWEI研究員ダイノワール氏。
 外洋へ向けた橋頭堡確立を目指計画に参加すべく、イレギュラーズを雇ったのだと彼はいう。
「この海がどのような性質をもつのか、その調べはつきました。
 あとは『元凶』を破壊し、海の安全を確保します。
 誰が? そう、あなたが。あなたが、燃える海を殺すのです」

 狂王種プリンシパリティーズ(仮称)。
 『炎』そのものでできた精霊型モンスターの集合体である。
 全体で一個体としての意思統一性をもつが、共通して『海域に侵入した者の破壊』を目的として動くことがわかっている。
 プリンシパリティーズ(この先はPT’sと略記する)が対象を攻撃する手段は主に二形態に分かれる。

 第一形態。
 対象の船を囲むように発生し、アメーバのように船体をよじのぼり侵入。船員を熱によって攻撃する。可燃性の有無にかかわらず攻撃が可能であり、非戦闘能力として物質透過を可能とする。包囲するまでの移動が確認できず、何らかの能力によって突如包囲状態を作るものと思われる。
 このとき個別にごくわずかな意思をもつ『群れ』として動くため、破壊するには大量の
 PT’s第一形態を範囲攻撃や的確な単体攻撃などを用いて破壊していく必要がある。
 飛行による離脱は困難であり、観測こそされていないが空中には無数のPT’sが密集していると予想される。これは高高度飛行を行わない限り攻撃してこない。

 第二形態。
 空中に待機していたと思われるPT’sが密集し、巨大な人型を形成する。これをPT’s第二形態とする。
 PT’s第二形態は水面から上半身だけを出した人型をなし、船に対して物理的な打撃をあたえる。
 このとき船をかばう形で船員を配置していないと船を破壊される危険がある。
 PT’s第二形態は一個体状態であり、ダメージを蓄積することで一括破壊が可能である。

「と……このように。一見ひどい戦場火災に見えますが、炎に見せかけたモンスターなのです。
 現場は非常に暑く、炎による攻撃も苛烈ですが、適切な対策をうっていけばきっと乗り越えることができるでしょう」
 ダイノワール氏は資料をまとめた紙束を突き刺し、メガネのブリッジをおした。
「たとえ炎であろうとも、生きているなら殺せます。我々を阻む魔物に、知識の槍を突き立てるのです」

GMコメント

■オーダー
 プリンシパリティーズの破壊

■船について
 PCが小型船系アイテムを装備していた場合、一人につき一隻までこの作戦に投入することが可能です。(これによって人員は特に増えません)
 もし誰も投入してなかった場合、ノーマルな小型船が一隻配備されます。
 船を増やすメリットは主に第一形態の分散が狙える点と、第二形態を囲むように配置することで敵の攻撃をばらけさせたり、ないしは意図的に集中させることができる点です。
 そうそうないとは思いますが、うっかり何隻か壊されても大丈夫な点も一応メリットです。

■フィールド効果について
 このフィールドでは1ターンにHPの10%ずつを喪失します。つまりノーダメージでも放っておくと10ターンでゼロになっていまいます。
 これに抵抗するにはヒールを行ったり再生をしたり、という直接的方法もありますが
 『熱さや過酷な環境に耐える』装備やスキル、ギフト等を用いることで軽減可能です。
 また、スキル等以外にもプレイングの工夫で自他の現象効果を軽減することが可能になります。
 これらは最大で2%まで低減することが可能です。
 (尚、火炎耐性は今回暑さ対策に判定しないものとします)

■第一形態
 大量のプリンシパリティーズが船をよじのぼってデッキへ侵入、攻撃を行います。
 プリンシパリティーズの機動力はおよそ2程度とされており、船の大きさからしてだいたい1ターンで1集団登ってくるくらいに考えておいてください。どうやら船ごと逃げられはしないようです。
 範囲攻撃を用いたりヒーラーを上手くかばったりなど、集団に囲まれたときの戦法が役に立つでしょう。
 彼らの攻撃には【業炎】がついています。

■第二形態
 巨人の形状になったプリンシパリティーズとの戦闘です。
 第二形態は船ごとPCたちを攻撃しようとしてきます。
 この攻撃は『船全体』に及ぶので、ダメージやヘイトの管理にお気をつけください。
 また、船そのものをかばうPCがいない場合、3~4回の攻撃で船が航行不能になります(アイテムとしては別にロストしない扱いとします)。
 船をかばいながら戦うか、あえて船を乗り捨てて攻撃に集中するのか……といった作戦を話し合って決めておきましょう。
 第二形態の攻撃には【炎獄】と【体勢不利】がついています。

  • <Despair Blue>プリンシパリティーズ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年02月13日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐

リプレイ

●炎を越えてゆけ
 熱風が潮の香りを巻き上げて、ごうごうと荒々しく吹き抜けてゆく。
 それゆえに揺れる船を、『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は巧みに操ってデッキのバランスを整えていた。
「『絶望の青』……なかなか探究心を刺激する場所じゃあないか。まさか『生きた炎』と遭遇するとはね」
 これぞ大冒険というものだ! ゼフィラは笑って船の操作レバーを握りなおす。
 デッキで手すりにつかまってバランスをとる『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)。
 アタマの上に乗ったひよこちゃんがひんやりした空気を発し、吹き付ける熱をわずかながらにも解消してくれる。
 そんなルフナの脳裏には、船ごとまっくろに焦げた先達の犠牲がよぎっていた。
「うん、痛ましい事件だよね。常識に囚われず、自分で見聞きした情報から当意即妙に動くべきだった、と。
 それにしても、人が焼け死ぬ過程を再現する練達の技術力は流石だけどこれ、真に迫ってて気持ち悪……ぅぇ」
 だいぶ思い出さなくてもいい部分(ぐろい部分)を思い出してしまい、船の揺れも相まってちょっと気分の悪くなってきたルフナである。
 一方『二代野心』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は『海の上なら無敵だ』とばかりに仁王立ちし、海面で渦巻く炎をにらみつけている。
「常識で考えるな、か。確かにな」
 エイヴァンがクーラーボックスを開いて氷の塊を地面にまくと、ジュッと音を立ててすぐに溶けていってしまった。
「まるで足しにならん。やはりこいつを持ってきて正解だったな」
 朝は聖鳥の目覚ましによって起き、『永久氷樹の腕輪』によって炎のBSダメージを無力化する。装備上の準備は万端といったところだ。
 『疾風蒼嵐』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)も同じ腕輪を装着し、頭の上に乗ったひよこちゃんと合わせてひんやりした空気に目を閉じる。
「よし、っと。それにしても、炎そのものの敵だなんてさすが絶望の青だね。
 ベリーメリー号の人達の犠牲は、絶対に無駄になんかしない。炎の熱さでいえば、冒険に燃える私の心の炎のほうがずっと熱いんだから!」

「冬の海がまるで鉄鍋で煮えるように、熱い……なら」
 頬に落ちる汗をそのままに、ヴォルペはクルーザー船の操縦ハンドルを握っていた。
 否。
 全裸一歩手前の『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)がクルーザーを運転していた。
「脱衣せざるをえないよね!」
「をえなくないです」
 赤いサングラスを指でピッてあげて前髪を抑えるヴォルペ。
 『泳げベーク君』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)はヒューマンフォームのままデッキで自分の顔を手あおぎしていた。
「しかし海で燃えてる敵と戦闘ですか……またけったいな状況ですねぇ。
 たい焼き焦げてるだの鯛の塩焼きだの言われないようにしたいところですが。いや飛び降りればすぐに塩だろ? ではなく。
 ……まぁ、僕ももう立ち止まってる暇なんかありませんからね。
 絶望の青を見るためにも、ここはひとつ推し通らせていただきます」
 キリッとするベーク。キリッとする頭上のひよこちゃん。
 『雷精』ソア(p3p007025)も同じひよこチャンを胸の谷間にぐいぐい押し込むと簡単なラジオ体操を始めた。
「海が燃えるなんて怖いね。ボクは火に強くなることも出来るけれど、それだってずっと暑かったらへばっちゃうよ」
 そういいながら着ていたTシャツを脱いで花柄水着の姿になると、水をためたおけにシャツを浸してからぎゅーっとしぼった。
「涼しい時にはコレだよね」
 ぬれたままのシャツを着込んで肌にぴっちりとさせるソア。
 流れる汗をそのままに振り返るヴォルペ。
「だね!」
「着る前段階で止まってる人がなにか言ってますね」
「ふむふむ、だいたい解ったヨ」
 『放課後のヴェルフェゴール』岩倉・鈴音(p3p006119)はボックスの上で組んでいた足を戻すと、すっくと立ち上がった。
「この袋とじの内側に生息してそうなメンツと一緒に災厄の業火を消し止めればいいんだネ!」
「まってください僕を袋とじーズに挟まないで」
「ひぁうぃーごー!」
「「ゴー!」」
「あっだめだこれ船で僕だけが常識人のパターンだ!」

 かくして船は突き進み、海上を燃え上がる炎へと迫っていく。
 対して炎はといえば、生きているかのように螺旋を描いて吹き上がり、それぞれの船をのみこもうと二つに分裂して海面を滑っていく。やがて船側面を這い上がり、デッキへと現れる『炎の群れ』。
 仮称プリンシパリティーズ第一形態、である。

●炎の群れ
「さっそくご乗船だ。頼むよエイヴァン」
「無賃乗船は御退船願おうか」
 エイヴァンは自らに気合いを入れると、盾を構えてルフナを守るように立ちはだかった。
 対する炎はバラバラに動き、ゼフィラやシャルレィスにもまんべんなく襲いかかるように動いている。
「知能が低いのか? それともこの状態で深くものを考えられないか……」
 エイヴァンはその非効率さをいぶかしんだが、やるべきことはさして変わらない。ルフナに襲いかかる炎を己の身で阻み、反撃に斧を振り回す。
 彼の後ろに隠れて、ルフナは『神奈備』を開始した。
 澱の森の霊力がエイヴァンに張り付いてじわじわと毛皮を焼き焦がしていくのを、拒絶するかのように治癒ないし復旧させていく。
「全方位からじわじわとよじ登ってくるみたいだね。一応『忌火』は使えるけど、今回は必要ないかな」
 ルフナ自身の抵抗力もさることながら、エイヴァン、シャルレィス、ゼフィラの炎耐性は充分でありプリンシパリティーズ第一形態の炎ダメージが過剰に蓄積することはすでに回避できていた。
 落とし穴的問題であるところの『対他【怒り】付与による過剰な集中攻撃リスク』は彼らがあえてそうした誘因行動をとらずピンポイントにルフナだけをかばう戦法をとったことで回避された。
「なるほど、これが生きた炎というわけか」
 ゼフィラは自身へヒルのように張り付いてじゅうじゅうと義手を焼く炎を振り払うと、懐から抜いた銃で反撃した。
 彼らに関しては陣形も整っており、味方の強化と治癒、そして攻撃のバランスがほぼ完璧だった。
 第一形態に苦戦する要素はほぼないと言っていいだろう。
 そして先述した攻撃のバランスについてだが……。
「弱い風なら炎を燃え上がらせるかもしれないけど、私の風はそんなやわじゃない!
 全力で消し飛ばしてあげるよ!!」
 シャルレィスは『蒼嵐』を抜いてぐるりと回転すると。激しい熱風によって炎の群れをまとめて切り裂いていった。
 彼女の放つ風は味方だけを的確によけて吹き、敵だけを切り裂いていく。
 つまりは『まんべんなく味方を攻撃する敵の群れ』をすべて射程にとらえつつ、防御と回復と強化を味方全体でシェアし、かつ攻撃だけを一方的に行うというきわめて美しい連携体制がとられていた。
 無駄がなくそして安全、である。

 一方ヴォルペ船。こちらはある種正攻法で炎の群れに対抗していた。
「ヘイトコントロールはおにーさんの仕事だからね、ハッハー」
 サングラスをかけて船を激しく旋回走行させるヴォルペ。
 しがみつくようにして船の各所にはりついた炎たちがなんとか彼に張り付こうと迫るが、途中に立ちはだかったベークが片っ端から踏みつけにして破壊していった。
 そんなベークにも半数ほどの炎が張り付いては焦げ鯛焼きにしようと試みたが、そちらはベークの再生能力のほうが上回ったようである。
「フッ、待っていたゾ、アメーバ」
 鈴音はさっきから炎を使ってじゃっじゃか焼いていた炒飯を供物として『バアル・ペオル』を召喚。頭上に出現した円盤が激しい雷や七色発光を起こしてなんかやたら目立っていた。
 ……目立っていただけである!
「オラァ! 周りに集まれやァ!」
 おらおらーと言いながら近づいてきた炎をビンタで破壊しつつ、ベークやヴォルペを光の下に入るように指示した。
 言われたとおり入ってみると……なんということでしょう。
 命中+4、反応+8、EXA+2、最大HP+300の付与降下が発生するではありませんか。
 特に高HP高再生反射タンクであるところのベークには後半の効果が抜群である。
 もっというと。
「これだけ刺激的なスポットライト……脱がずにはいられないな!」
 ヴォルペがわざわざネクタイをしめなおしてからそれを指できゅきゅって緩めてみせた。ビキパン一丁なのに。
「それ以上何を脱ぐんですか」
「ボクは脱げるよ!」
 ソアはあの肌にぴっちりくっついて袋とじの住人みたいになっていたシャツの胸元に手をかけると、バッていうワンアクションでシャツを脱ぎ捨てて見せた。
 どころか水着までもが宙を舞う!
「わ、わあ!?」
 思わず振り返るベーク!
 の、目に映る!
「全裸だね!」
 虎!
「一糸まとわぬボク!」
 喜べみんな、イラスト史上二度公開された『うまれたままのソア』だぞ。
「火だろうが関係ないよね! えい!」
 飛びかかってタイガークローでちゃちゃいってひっかき攻撃をするソア。
 効果音は可愛くしてみたけど人間の骨と内臓が『チラッ☆』てしちゃうタイプの凶悪な攻撃である。
 さらにはヴォルペやベークに敵が密集するのを逆手にとって、周囲に電撃をバチバチ暴れさせて敵だけを範囲識別攻撃していった。
 ハッキリ言って名乗ラーと範囲識別攻撃の相性はバツのグンである。(逆に言うと識別効果のない範囲攻撃は味方をいっそ殴る覚悟が必要である)
「このチームも順調に連携してるネ~」
 鈴音はゲーミングマイク(特に意味はないが七色に光るマイク)を取り出すと、ビッと小指を立てた。
「それでは聞いてくだサイ。『放課後ヴェルフェゴール』で『冷やめし炒飯は半熟スクランブルエッグの上に落としてから炒めるとウマい』」

●炎の巨人
 船へと迫る炎の群れを的確に排除しきったイレギュラーズたち。
 このまますんなり帰れるかといえばそうではない。絶望の青はそんなに甘くはないのだ。
 炎たちは彼らが燃やせない対象だと判断したようで、一カ所へと退いていった。そして渦巻くように吹き上がりなおすと、爆発によって炎の巨人へと姿を変えた。プリンシパリティーズ第二形態である。
「あっはは。こいつは豪快だね」
 船をかするように動かし、巨人への誘因を開始した。
「たいやきくん、一緒に頼むね」
「呼び方!」
 ヴォルペは名乗り口上を、ベークは『かえってきたたいやきくん』をそれぞれ放って巨人への【怒り】付与を試み始める。
 合体した分抵抗力や回避能力が上がっているのか、そう簡単にかかってはくれないようだったが……。
「こういうのは『ウザがらせる』のが一番ってね」
 ヴォルペはクルーザーのエンジンを唸らせると、わざと巨人に船体をごりごりこすらせるようにして連続ターン。
 よほど邪魔になってきたのか、巨人はヴォルペの船めがけて拳をたたき込んできた。
「ほいきた!」
 掲げた腕を交差して防御。激しく船が傾き、ヴォルペもまたかなりのダメージをうけたが……。
「鈴音さん、回復を!」
 攻撃を防御していたベークが鈴音に向けて叫んだ。
「そぉい!」
 バケツに水をいっぱいにした鈴音がベークのアタマからバシャー。
 更にペットボトルの蓋を開いたヴォルペのアタマからバシャーした。
「フッ……おにーさんの爽やかさが増しちゃった、かな?」
 ぬれた前髪をなであげ、さわやかに首を振ってみせるヴォルペ。
「…………」
 この人たち自由すぎるでしょって思い始めてきたベーク。
 一方でソア(ウマレタママの姿)は思い切り助走をつけてジャンプ。
 雷の翼を広げると、猛烈なスピードで巨人のボディへと突っ込んでいった。
「雷電だーっしゅ!」
 自らを雷の弾丸と変えたソアは巨人のボディを貫き、大きな穴をぶちあけた。
「やるな」
 エイヴァンは斧に氷塊弾を装填しながら狙いを定めていた。
「この状況で巨人に『リダホッド・ヴォールヌイ』を打ち込むとどうしても味方に流れ弾が飛ぶな。が、無理にこちらにヘイトを移動する理由もない。やはり『メチェーリ・スナリアート』一択だな。
 ゼフィラ、側面に回り込め!」
「いいとも」
 ゼフィラは船を巧みに操作してヴォルペの船と自分の船で巨人をややズレつつ挟むようにいちどると、巨人めがけて銃を連射した。
 銃弾に込められた毒を打ち込めればとおもっての攻撃だが……。
「さすがに狂王種。そうチョロくはない、か」
「かまわん。たたみかけろ!」
 エイヴァンは斧を野球のバットのようにスイングしつつ球を発射。吹雪のような魔法が解き放たれ、穴のあいた巨人へと吹き付けられていく。
 振り返った巨人が猛烈な裏拳(?)を浴びせ船が派手に傾くが、ルフナがすかさず手をかざして『忌火』を発動させた。
 目には目を。炎には炎。ルフナの土地に古くより密かに伝わる『災厄のみを払う炎』がカウンターヒールとなって巨人の拳を打ち払った。
「今だよ」
「斬って斬って斬って……勝つッ!」
 助走をつけて跳躍したシャルレィスが剣から激しい熱風を吹き上げた。
 風は巨大な剣となり、巨人を大胆に袈裟切りしていく。
 巨人は最後にオオオウという嘆きのような声をあげ、そして消えていった。
 そのまま海に落っこちそうになったシャルレィスを、飛行したソアが背でキャッチして通過。ゼフィラの船へと着地すると、彼女をデッキにおろした。
「これにて一件落着、だね」
「早くこの海域を出て涼みたいところだ。『ひよこちゃん』も限界だしね」
 取り出したタオルで額を拭うと、ゼフィラは苦笑しながら舵を切った。
 全裸一歩手前のヴォルペがこちらに親指をたててそれに応える。
「さあ、中継基地へ帰ろう」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――任務完了!
 ――炎の海域を攻略。海洋海軍が駐留し、橋頭堡としました。またひとつ絶望の青に近づいています。

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