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シナリオ詳細

<Despair Blue>九頭の巨大海蛇

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●苦戦を強いられる、海洋軍艦
 海洋の『大号令』は、鉄帝の横槍などがありながらも進展を見せ、いよいよ『絶望の青』に挑む局面に入った。だが、これまでの幾度の『大号令』を退けたように、『絶望の青』は海洋の艦隊を越えさせまいと、今度も理不尽な災厄を降り注がせる。

「ちいッ! こいつ、不死身かよ! ヒョウモン、戦えるのはあと何人残ってる!?」
「十、ですが……皆、毒にやられていて長くは戦えませんぞ!」
 先遣艦隊として『絶望の青』を進む海洋軍艦『アンリミテッド・バイオレンス』は、早速その洗礼を受けていた。九つの頭を持つ巨大な海蛇が突如出現し、瞬く間に随伴艦二隻を沈めてしまったのである。
 『アンリミテッド・バイオレンス』は生存者救出の時間を稼ぐため巨大海蛇との交戦に入ったが、巨大海蛇には高い再生能力があり、『アンリミテッド・バイオレンス』の攻撃を受ける側からそのダメージを回復してしまっていた。
 有効打を全く与えられない長時間の戦闘を強いられ、艦長ホオジロも副官ヒョウモンも、その部下達も疲労困憊となっていた。それだけでなく、瘴気に近いレベルの毒が彼らを蝕んでいる。
「――『絶望の青』に散る、か。悪くはないが、付いてきた奴らは助けてやりたかったな」
「いや、そう悲観したものでもありませんぞ。『シーガイア』が救援に来たようです。確か、イレギュラーズ達も乗り合わせていたはず」
「アモンのジジイに、イレギュラーズか! ――おい、お前等! イレギュラーズが来たぞ! これで、勝てるぜ!!」
「うおおおおおおおっ!!」
 自嘲気味に諦めを呟く艦長ホオジロの言葉を、副官ヒョウモンは否定して救援の到来を知らせる。イレギュラーズ達も来ていると知ったホオジロは破顔し、部下達を鼓舞しにかかる。不可能を可能にする特異運命座標達の存在は、『アンリミテッド・バイオレンス』の乗員達を大いに勇気づけた。

●『シーガイア』のイレギュラーズ
 時は僅かに遡って、『アンリミテッド・バイオレンス』の後方を進む、海洋軍艦『シーガイア』。
 その甲板で、あるイレギュラーズが潮風を浴びながら物思いに耽っていた。
(――これは、何時からだ? 昨日から、いや一昨日か。そうだ、あの時何か『すさまじく臭かった』が……)
 『絶望の青』に足を踏み入れて以来、イレギュラーズ達は妙な胸のざわめきや体調の不良を覚えはじめていた。
(海洋によれば、『絶望の青』では何が起きるか分からないし、大号令の難敵のうちには奇病も含まれると言う。この妙な感じ、気のせいであって欲しいところだが――)
 そのイレギュラーズの思考は、艦長からの招集によって遮られた。

「早速だが、貴殿等の力を借りたい」
 『シーガイア』艦長室。集まったイレギュラーズ達を前に、艦長である老騎士アモンが告げた。先行している軍艦『アンリミテッド・バイオレンス』の前に、突如九頭の巨大海蛇が出現した。随伴艦を瞬く間に沈められ、生存者を救出するためにやむを得ず交戦しているが戦況は苦しく、救援を求める伝令が来たとのことだ。
「三隻分の人員も、ホオジロやヒョウモンも、見捨てるわけにはいかん。激しい戦いにはなるだろうが、貴殿等がいれば勝てると儂は信じておる。――どうか、力を貸してくれい」
 深々と、頭を垂れる老騎士。元より、イレギュラーズ達は『大号令』を成功させるために『シーガイア』に乗り合わせている。老騎士の懇願を断る理由はなかった。
 イレギュラーズ達の快諾を得た老騎士は、『アンリミテッド・バイオレンス』を救援すべく、『シーガイア』とその随伴艦三隻を全速力で戦場に向かわせた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 海洋の『大号令』も、横槍を入れてきた鉄帝との戦争を乗り越え、いよいよ『絶望の青』に進むまでに至りました。しかし、『絶望の青』の脅威は早速海洋の艦隊とイレギュラーズ達を襲います。
 今回は、九つの頭を持つ巨大な海蛇を撃退し、海洋軍艦『アンリミテッド・バイオレンス』の救出をお願いします。

●成功条件
 九頭の巨大海蛇の撃退(生死問わず)

●失敗条件
 以下のいずれかの事態が発生した場合、依頼は失敗となります。
 ・ホオジロ、ヒョウモンいずれかの死亡
 ・『アンリミテッド・バイオレンス』の大破
 ・『シーガイア』の大破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●戦闘開始時の状況
 オープニング前半の描写の直後となります。『アンリミテッド・バイオレンス』の左前部と巨大海蛇の胴体前面は接触しています。
 戦闘開始時の『シーガイア』の初期位置は、イレギュラーズ達が戦いやすいように自由に選べます(『シーガイア』側でそうなるように操船してくれます)。
 ただし、巨大海蛇の後部が海中にあるため、巨大海蛇の後方から海面に現われている前部や『アンリミテッド・バイオレンス』に接近することは出来ません。

●九頭の巨大海蛇 ✕1
 今回、撃退するべき敵です。全長30メートルと非常に巨大であり、海面にはそのうち15メートル弱が姿を現しています。
 九つの頭は首の長さ10メートル強で、太さは直径1メートルあります。
 そのサイズから攻撃力と生命力と特殊抵抗は尋常ではないレベルで高いのですが、逆に回避と防御技術と反応はほぼ皆無と言ったレベルで低くなっています。なお、【怒り】についてはその凶暴性故か、特殊抵抗に大幅なペナルティーがかかります。
 EXAによる連続行動は発生しませんが、九つの頭はそれぞれが毎ターン1回、同じタイミングで行動します。
 また、オープニングで描写しているとおり再生能力を持っていますが、その扱いについては後述します。

・巨大海蛇の首 ✕9
 それぞれが意識を持ち、毎ターン各個に行動します。頭ごとに相互感情と連鎖行動を所持しているため、一つの頭が行動したタイミングで残りの頭も行動します。
 当然ながら、首の届く範囲で動くことが出来ます。
 攻撃を集中して一つずつ行動不能に陥らせることは可能ですが、全体のHPが危険な領域に入っていない限り、翌ターンの最後には再生して復活します。

 攻撃手段など
 突進(通常攻撃) 物近単 【移】【弱点】
  首を伸ばして頭部で体当たりします。勢いが付いている分、ダメージは強烈です。
 バイティング(通常攻撃) 物至単
 【弱点】【疫病】【毒】【猛毒】【致死毒】【呪い】
  噛みつき攻撃です。牙からは瘴気じみた毒が流れ込んで来ます。
 瘴気ブレス(アクティブスキル) 物遠範
 【万能】【識別】【災厄】【毒】【猛毒】【致死毒】【呪い】
  瘴気のブレスを吐きます。突進やバイティングよりはダメージは低めです。
 連鎖行動(パッシブスキル)

・再生能力
 高い再生能力がありますが、『アンリミテッド・バイオレンス』と『シーガイア』の攻撃によるダメージで、事実上阻害されます。逆に言うと、『アンリミテッド・バイオレンス』と『シーガイア』の攻撃では、再生能力を上回るダメージは与えられません。
 再生能力を阻害している割合は、シーガイアと随伴艦全体で50%、ホオジロが20%、ヒョウモンが20%、残りの『アンリミテッド・バイオレンス』戦闘要員で10%です。

●艦長ホオジロ、副官ヒョウモン
 好戦的な海洋軍人である、ホホジロザメの海種と、ヒョウモンダコの海種です。
 戦闘開始時点で、【毒】【猛毒】【致死毒】【呪い】を受けています。
 生命力が高いので戦闘不能に陥っただけでは死亡しませんが、止めとして追撃を受ければ死亡します。
 二人とも戦闘不能に陥った場合、戦況次第では『アンリミテッド・バイオレンス』自体が攻撃される可能性があります。

●『アンリミテッド・バイオレンス』戦闘要員 ✕10
 ホオジロやヒョウモン達の部下です。二人と同様に戦闘開始時点で、【毒】【猛毒】【致死毒】【呪い】を受けています。また、戦闘不能時などの扱いも二人に準じます。
 ホオジロやヒョウモン程強くは無いため、彼らが健在であっても『アンリミテッド・バイオレンス』自体への攻撃は押しとどめることが出来ません。

●『アンリミテッド・バイオレンス』
 警戒・索敵のため、『シーガイア』に先行して『絶望の青』を航行していた海洋軍艦です。随伴艦が2隻いましたが、瞬く間に沈められました。その生存者の救助は、現時点でほぼ終えています。
 随伴艦よりは強靱であるため一撃で巨大海蛇に沈められることはないでしょうが、二~三発ならともかく、五発以上攻撃を受けた場合は大破・轟沈する恐れがあります。

●『シーガイア』、随伴艦✕3
 『アンリミテッド・バイオレンス』を含む艦隊の旗艦と、その随伴艦です。
 『シーガイア』は、戦況次第では巨大海蛇の攻撃を受ける可能性があります。大型艦故に数発程度では沈むことはないでしょうが、それでも二桁以上被弾すると流石に危険な水準に陥るでしょう。
 『シーガイア』自体は先述したとおり、イレギュラーズ達の希望する位置に移動します。随伴艦は巨大海蛇から距離を取り、弓矢や砲撃などの遠距離攻撃を行います。

●イレギュラーズの胸のざわめきや体調不良
 このシナリオの時点においては、戦闘その他に影響を与えることはありません。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <Despair Blue>九頭の巨大海蛇完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年02月09日 22時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き

リプレイ

●会敵、巨大海蛇
「来て早々にこんな怪物だなんて……絶望の青とはよく言ったものだわ」
 海洋軍艦『シーガイア』の甲板から、海洋軍艦『アンリミテッド・バイオレンス』を襲う九頭の巨大海蛇の姿を目にして、『少女提督』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)は溜息をつくように独り言ちる。もっとも、常軌を逸した怪物が相手だからと言って、こんなところで躓くつもりはアンナにはない。ただ、損害を抑えるよう立ち回るだけだ。
「オーケー、怪獣退治だな、任せときな! 派手なファイトになりそうじゃないか!」
 これからの戦闘が楽しみで仕方ない、と言った様子で『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)は豪快に笑う。二メートル半の巨躯である貴道さえも比較にならないほどの巨大な敵ではあるが、むしろそう言う敵との派手なバトルは大好きという性なのだ。
「……如何にも伝説の怪物、と言った風貌であるな。研究者としては、全く以て興味がそそられる物である」
 剣の姿を取っている『『知識』の魔剣』シグ・ローデッド(p3p000483)の言葉どおり、多頭の蛇や竜と言った存在は、数々の神話や伝説にその姿を残している。これもその類いだろうかと、貴道とは対照的に静かに笑いつつ、シグは興味深そうに巨大海蛇を眺めた。
 シグとは別の方向性から巨大海蛇に興味を示しているのは、『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)である。
「ハ、ハ、ハ! 泥鰌が出てきてコンニチワ、どころではないなあ!! あれは海蛇かい? それにしては多頭だね。尻尾を割いたら剣が出てきたりしないかな? ああ、何より食べられるのかな? あれ。やはりそこが重要だ」
 ――普通の海蛇なら食している世界はあるが、この巨大海蛇が食べられるかどうかは現時点では定かではない。

●イレギュラーズ参戦
 それから間もなく、『シーガイア』は『アンリミテッド・バイオレンス』の右横に到着した。接舷とまでは行かないが、梯子をかければ乗り移れる距離である。
「せんちょー! おっちゃん達の船に近づけてくれてありがとー! ホオジロのおっちゃんとヒョウモンのおっちゃん! 助けにきたぜー! かいよーの男は仲間をみすてねーってやつだぜ! 大船に乗った気持でいるんだぞ!」
 以前、『アンリミテッド・バイオレンス』との演習に参加していた『海のヒーロー』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195) は、『アンリミテッド・バイオレンス』に向けて叫びながら、水中に飛び込む。そして、巨大海蛇の首を複数巻き込める射線を確保すると、海豹牙斗燐具武放猛怒の射撃準備に入った。
「ヘイ、こっちを向きな? このミーが相手をしてやるぜ!」
 次いで、貴道の拳魔槍が巨大海蛇の首の一本に槍のように突き刺さる。そのダメージに、攻撃を受けた首は貴道をギョロリと睨め付けた。
「行かせねえぜ、ユーのターンは終わったのさ!」
 巨大海蛇の自由な行動を封じようと、貴道は『アンリミテッド・バイオレンス』とは別方向に首の注意を引き付ける。他に名乗り口上などを使う者が、別方向から別の首の注意を引き付ければ、首同士で動く方向に齟齬を起こし、胴体は自由に動けなくなるという寸法だ。
(前に演習だか何だかでやり合った時よか大分弱ってるみてぇだが、あいつら無しでこのでかいのを倒すのは骨が折れそうだしなぁ……後でサボ――楽させてもらえるよう、ちっとは恩を売っておくとするかね)
 やや動機が不純ではあるが、ワモンと同じくかつて『アンリミテッド・バイオレンス』との演習に参加した『うそもまこともみなそこに』十夜 縁(p3p000099) は水中から巨大海蛇の首の意識を引き付けにかかる。
「そんじゃ、ちっとは働くか。か弱いおっさんが餌にされちまう前に、早いとこ助けにきてくれや」
 やる気は無いが仕方なしに、と言った風情でつぶやきつつ、縁は欺瞞偽証で巨大海蛇の首達の大半に自身への軽侮の念を抱かせる。縁を軽く見た巨大海蛇の首は、さっさと縁を仕留めようとしてくる、と言うわけだ。
(アンリミテッド・バイオレンスもシーガイアも、名前は聞いた事あるんすけど良くは知らねーんすよね……)
 とは言え、その事実が『蛸髭 Jr.』プラック・クラケーン(p3p006804)にとって、助けるべきかそうでないかを左右したりすることはない。誰であれ窮状に陥った人々を、プラックは見過ごすことが出来ない。
「――なんてったって、俺達はイレギュラーズ! 助けを求める声を無視する訳にゃいかねぇよなぁ!」
 縁とは反対側に回り込んでから、プラックは裂帛の気合いを込めて大津波を放つ。モロに大波を受けた三本の首が、怒りを湛えてプラックを睨んだ。
(誰も死なせねぇ、誰も失わねぇ。九頭竜だか蛇なんだか知らねぇが、俺が居る限りは全員無事に帰らせて見せる!!! 絶望の青で、希望を掴んで見せてやる!!! ――行くぜ、輝きな! ブリッツボーイ・ガントレット!!)
 その視線を真っ向から受け止めつつ、プラックは皆を護り、無事に帰らせるという意志を強く固めていく。それに応じて、両手のブリッツボーイ・ガントレットが眩く燃えるような光を放っていく。その光は、たちまち彗星となって三本の首のうち一本に深々と突き刺さった。魔術による噴水を推進力として、プラックが突撃したのである。

「蒼蘭海賊団団長、湖宝卵丸参上! 二人とも、助けに来たんだぞっ!」
 ホオジロやヒョウモン達と、巨大海蛇の間に割り込むように『刺天の輝虹子』湖宝 卵丸(p3p006737) が『アンリミテッド・バイオレンス』の甲板に降り立つ。卵丸も、ワモンや縁と同様に『アンリミテッド・バイオレンス』との演習に参加しており、その相手の窮地を海の男として、そして正義の海賊として、見過ごすことが出来なかったのだ。
「これ以上、好き勝手にはさせない! 輝け、虹の煌めき――必殺、蒼・海・斬!」
 卵丸はすかさず得物のキルデスバンカーに虹を纏わせると、大上段に構えてから振り下ろす。衝撃波の如く放たれた虹は、巨大海蛇の首のうち三本を縦に斬り裂く。うち、プラックの攻撃を受けていた一本が、力尽きてくたりと垂れ落ちた。
 さらにアンナとシグが、ホオジロやヒョウモン達の側に降り立ち、ブレイクフィアーで瘴気じみた毒を除き、傷を癒やして生命力を回復させていく。
「防御は私達で受け持つ。あなた達は再生されないように全力で攻撃して」
「……毒を払う剣、というのも悪くはない」
 二人がかりによる回復を受けたホオジロ以下『アンリミテッド・バイオレンス』戦闘員達は、それまでの状態が嘘であるかのように活力と気力に満ちあふれていた。
「ありがてえ! 助かったぜ!」
「そのお言葉に甘えさせて頂きます。イレギュラーズの皆様が防御を受け持って下さるならば、私達は安心して攻撃に回れます」
 ホオジロはイレギュラーズ達の救援に快哉を叫び、ヒョウモンはアンナの言葉に返答しつつ深く頭を下げた。かつての演習に参加していないアンナは知る由もなかったが、防御を考えることなく「全力で攻撃」できると言うのは、ホオジロ達の気性と能力に非常に合っていたのだ。

「やあやあ! 御飯を貰いにやってきたよ。死んでないかい? ジョリー・ロジャーではないけれど、海上での決闘が終わるまでに沈んでしまっては面白くないだろう! シーンは苛烈に、舞台は絢爛に、さあ、昔話にしてやろう」
「ガハハハハ! どうにか、まだ生きてるぜ! 確かに、決闘が終わるまでに沈んじゃ面白くねえな!」
「それにしても、昔話にしてやろう、と言うフレーズはなかなか良いですな」
 飄々とした語り口で『アンリミテッド・バイオレンス』の甲板に降り立ったダカタールは、ホオジロ達と軽く言葉を交わすと、きさらぎ経由の特急鉄道』巨大海蛇を攻撃する。
 警笛が鳴り響くと同時に、空中に突如として流線型のマリンブルーの特急列車が現われ、巨大海蛇の首の大半を轢き飛ばしていった。

 巨大海蛇の八本の首は、五本が縁を、二本がプラックを、一本が貴道を攻撃する。しかし、縁には一本の牙が掠ったのみであり、プラックには一本の突進が命中したがブリッツボーイ・ガントレットでしっかりと受け止められてしまった。

 ホオジロ麾下の『アンリミテッド・バイオレンス』の戦闘員達は、水を得た魚のように巨大海蛇に猛烈な攻撃を浴びせる。『シーガイア』は『アンリミテッド・バイオレンス』から離れつつ射撃戦闘の態勢に入り、随伴艦は既に大砲やバリスタでの射撃を巨大海蛇の胴体に向けて行っていった。

●再生の果てに
 ――巨大海蛇との戦闘は、続いていた。
 ワモンの海豹牙斗燐具武放猛怒とダカタールのきさらぎ経由の特急鉄道、そしてシグの異想狂論「偽・烈陽剣」が、それぞれ角度を違えながらの十字砲火となって、複数の首を巻き込んで傷を負わせていく。
 さらにプラックのブリッツボーイ・ME、縁の乱流翠渦、貴道の拳魔槍、卵丸のキルデスバンカーと、巨大海蛇は歴戦のイレギュラーズ達による熾烈な攻撃に晒され続けていた。その首は既に何度も力尽きており、今も新たに二本がズタズタに傷ついて頭を下に垂らし、活動を停止する。
 だが。巨大海蛇はそれでもなお、力尽きた首を再生させてくる。つい先程力尽きた二本に代わり、既に力尽きていた首二本が何事もなかったかのような無傷に戻って、鎌首をもたげた。
「――はは、まだ復活してくるのかい。面倒だねぇ」
 その様に、縁がやれやれと言った様子で苦笑いを浮かべる。周囲の海水は、流れ出た血と混ざりあって暗い紫に染まっている。巨大海蛇の攻撃は大振りで雑ではあったが、度重なる攻撃の全てを回避しきれず毒牙を受けてしまっていたのだ。
 プラックも同様に、迫り来る蛇の頭に跳ね飛ばされてしまっている。まだ倒れこそしていないが、次を受ければ危ない、と言う状況であった。
 それでも二人がまだ倒れずに戦っていられるのは、巨大海蛇の首の半数近くの、注意と攻撃を引き受けているアンナの存在があったからだ。イレギュラーズ達の中でも特に回避と防御に優れているアンナに攻撃を命中させるのは巨大海蛇の首達にとって困難であったらしく、二、三度アンナは巨大海蛇の攻撃を受けて流血こそしているものの、傷はまだ浅かった。

「これで潰せなきゃやべーな……。残りのアザラシパワー、全部叩き付けてやるぜー! 海豹牙斗燐具武放猛怒!!」
 ワモンは巨大海蛇の左後方に回り込んで、首をより多く巻き込める射線を入念に探す。『海豹牙斗燐具武放猛怒』は、渾身のアザラシパワーを込めてガトリングを撃つ技であるため消耗も大きく、次が最後の一撃となっていたからだ。
 そしてワモンは十分な射線を確保すると、咆哮と共に余力を全て注ぎ込んで、ガトリングを掃射した。四本の首が鱗を貫かれて蜂の巣となり、そのうち既に手負いの一本がぐったりと力を失って頭を下に垂らした。
「あなた達の相手はこっちよ。ほら、いらっしゃい」
 アンナは新しく再生してきた巨大海蛇の二本の首を中心に、『名乗り口上』で首達の注意を引き付ける。新しく再生したうちの一本はアンナに敵意を示したが、もう一本はアンナは何処吹く風で、何かを探している様子だった。
「……何をする気?」
「――ふむ。危なくなったと見て、逃げ道を探しているのではないか?」
 自身に注意を奪われるわけでもなく、かと言って他の者に敵意を示すでもない、この敵が見せたことにない反応を、アンナは怪訝に思いつぶやく。その疑問に、シグが推論で応えた。
 事実、巨大海蛇は頭こそ再生しているものの、『アンリミテッド・バイオレンス』や『シーガイア』の射撃や砲撃によって受けた胴体の傷は、塞がることなく残り続けている。巨大海蛇の生命力の限界が、シグには見えていたのだ。
「……どこかの世界の伝説によれば、九頭の大蛇の頭を剣で切り下ろしたと聞く……ならば、魔剣たる私にも、出来るのではないかな?」
 シグは剣と化している自身の身体に、猛烈な炎を模したエネルギーを纏って、勢いよく横薙ぎに己の刀身を払った。刀身から発された炎のようなエネルギー波が巨大海蛇の前方から後方へと走っていき、遅れて巨大海蛇の首三本にぱっくりと深い斬り傷を負わせる。そのうち直撃を受けた一本は、ズズズ、と傷から上が次第に横にずれていき、ボチャンと海中に落ちていった。
「やれやれ、やっと終わりか……もう充分働いたし、後は酒でも飲んでのんびりしてえな?」
 決着が見えてきたとあってか、縁はこれで終わらせようと、海面から『アンリミテッド・バイオレンス』の船体を蹴って空中へ飛び上がると、手近な頭を真っ正面から鉄拳で殴りつける。鼻先に叩き付けられた天下御免の一撃に、頭を殴られた首は一瞬の間を置いてから、スローモーションのようにゆっくりと倒れていった。
「よくもここまでやってくれたなゴラァ! でも、これで終わりだ! これ以上、誰もやらせたりしねえよ!!」
 プラックは内臓が痛みで悲鳴を上げるのを堪えつつ、ブリッツボーイ・ガントレットに意識を集中する。ブリッツボーイ・ガントレットが、さらに煌々と輝きだしていく。
 次の瞬間、巨大海蛇の首の一つに向けて閃光が迸る。光が収まると、首の上半分が消滅していた。プラックの放ったブリッツボーイ・ミーティアが直撃し、その衝撃が首を吹き飛ばしていったのだ。
 次々と巨大海蛇の首が倒れていく様に、卵丸も戦闘の決着が近いと肌で感じていた。
「くらえ音速の一撃、零距離銛撃ち術なんだからなっ!」
 巨大海蛇の首は残り三本。卵丸はそのうち一本の根元に向けてキルデスバンカーを構えると、次の瞬間にはソニックエッジでキルデスバンカーを深々と突き刺し、さらに杭の部分を射出する。中心を深々と貫通された首はそのダメージに耐えられるはずもなく、すぐさま意識を手放した。
「さあさあ、打出の小槌よ。大岩を氷塊を、あの蛇に降らせておくれ」
 ダカタールはいつの間にか黒漆塗の小槌を握り、願いを口にしながら巨大海蛇に向けて何度も振っていく。すると、上空から大岩や氷塊が次々と降り注ぎ、巨大海蛇の胴体を何度も打ちのめしていった。
 大岩や氷塊が降り注ぐのが止んだところで、貴道は巨大海蛇の懐に潜り込む。そこで、貴道は身体中の筋肉を弛緩させる。そのイメージは、水の如し。
 それを怪訝に感じた巨大海蛇が動きを止めた瞬間、貴道が動く。瞬時に筋肉に力を漲らせ、大気を強く蹴り、一息にアッパーカット――伏龍――で下から突き上げる。
「未だ伏せたる龍の一撃、本調子には程遠い――だが舐めるなよ……龍は龍だぜ、蛇野郎!」
 ――ズン!
 貴道の拳が、巨大海蛇の胴体に深々と突き刺さる。やや遅れて、二本の首がふらふらと揺れながら、海面に出ていた胴体諸共海中へと倒れ落ちていった。巨大海蛇の生命が尽きたのだ。

●戦闘の後
 『アンリミテッド・バイオレンス』の救出は、無事に完了した。
「二人とも、無事で本当に良かったんだぞ」
「ああ、助かったぜ。嬢ちゃん」
 無事を確認して微笑みかける卵丸に、豪快に笑いながらホオジロが返す。
「なっ……卵丸は、男なんだからなっ!」
「わかっていますよ。艦長のちょっとした冗談です。――皆さんの救援、本当に感謝します」
 卵丸の反応に、ヒョウモンは軽く噴き出す。そして笑いを収めると、真剣な面持ちになってホオジロ共々イレギュラーズ達に向けて深く頭を下げた。
「ホオジロのおっちゃんとヒョウモンのおっちゃん、治療できるやつのとこまで行かなくて大丈夫か?」
「ええ、大丈夫ですよ。それに私達は安穏と休んでるわけにも行きませんからね」
「随伴艦の連中を再編成したり、破損箇所を修理したりと、忙しくなるからな」
 自分達を気遣うワモンに、ヒョウモンとホオジロは笑みを見せて応える。その様子に、ワモンはホッとするのだった。

「こういうのを怪我の功名とは――言わねえかなぁ」
 縁はプラックと共に、『アンリミテッド・バイオレンス』の医務室で治療を受けて寝かされていた。後始末をサボれて酒を飲めてはいるが、傷を負った結果というのは縁にとっては不本意だったかもしれない。
 プラックは怪我の治療中なのに酒を飲んでいる縁に呆れつつも、今回の結果に満足していた。『アンリミテッド・バイオレンス』の随伴艦から死者こそ出てはいるが、少なくともプラックが到着してからは誰も死んでおらず、救える限りの人々を救いきったと言っていい。

「これは長く厳しい戦いの序章に過ぎなかった……となりそうなのが洒落にならないわね、全く」
 『シーガイア』の甲板で、目前に広がる『絶望の青』を見据えながらアンナがつぶやく。
「それはそれで、興味深い事象と遭遇出来そうで楽しみだな」
「ミーも、こんな相手とまたファイトするのが楽しみだぜ!」
 だが、シグも貴道も、この先に広がる『絶望の青』を恐れる様子はない。

 ――なお、「折角生き物を殺したのなら食べないと」と巨大海蛇を回収して食べようとしたダカタールだったが、それは叶わなかった。巨大海蛇の身には瘴気とも言える毒が満ちており、見るだけでも食べられないとわかったからだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

十夜 縁(p3p000099)[重傷]
幻蒼海龍
プラック・クラケーン(p3p006804)[重傷]
昔日の青年

あとがき

シナリオへのご参加、どうもありがとうございました。
リプレイ執筆が遅れてお待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした。

さて、皆さんのおかげで巨大海蛇は見事に退治され、
『アンリミテッド・バイオレンス』は無事に救出されました。
お疲れ様でした。

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