シナリオ詳細
戦争準備中! サロン DE ショコラ
オープニング
●いつもは平和なお菓子の街
お菓子がいっぱい詰まった、とある世界。
ここは現代日本に似ているようで、信号機がキラキラとしたキャンディ-だったり、レンガの花壇はクッキーで出来ていたりと、所々でメルヘンな物が織り込まれている。
利便性があるけれど可愛らしい。
そんな不思議なお菓子の街は、みんなニコニコしていた。
「わぁっ! 見てみて、新作かな? あのケーキ可愛いっ!」
「あっちにフルーツのたくさん入ったクレープがオススメの店があるんだ!」
町行く人は、作業場が見えるガラス窓を覗けば歓声をあげ、美味しいものを食べれば、みんなと分かち合い。
色んな国の、いろんな世界の、ここで手に入れられないお菓子はないというくらいにたくさんのお菓子が揃ったこの街は、いつも平和だった。
ある時期を除いては――
●甘き戦争
ポルックス・ジェミニはため息を吐く。
「このままじゃ、ショコラトリーの危機だわ……カリスマショコラティエのカカオットさんが指揮している、とっても美味しいチョコレートが食べられなくなっちゃう」
平和なお菓子の街が戦場となる日。それは、バレンタインだ。
「みんなには、グラオクローネって言うほうが伝わりやすいかな? ショコラトリー……チョコレートの専門店だね。そこは今の時期から大忙しになっちゃうの」
材料の仕入れも激戦ならば、調理にラッピングも大忙し。
くたくたになった所で、奪い合うように買い物に来る客までいるのだから、人手が足りない。
といっても、今の段階では様子見のお客様が多く、お店は戦争に向けて準備を始めているところだ。
「今回、皆さんにお願いしたいのは材料の運搬と販売の補助だよ! おいしいショコラトリーのお手伝い、甘いお礼ももらえるかな?」
ポルックスはチョコを一粒放り込んだように、甘く蕩ける顔をしている。
まだイベントまで余裕があるこの時期なら、目が回るほどの忙しさではないかもしれない。
一緒に手伝いをするあの人にも、そんな顔をさせることができるかもしれない。
悲惨な戦場と化す前に、あなたの力を貸してください!
- 戦争準備中! サロン DE ショコラ完了
- NM名浅野 悠希
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年01月30日 22時50分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●
「これが……車……」
ほわっとした柔らかな風貌の中、ルルゥ・ブルーの円らな瞳がよりキラキラと輝く。
歩くことにやっと慣れたディープシーのルルゥにとって、それは憧れの乗り物で、大人の仕事のイメージだった。
その側では、熱心に発注リストを見ているノースポールがいる。
「重たい物が多いですね……ナッツにドライフルーツ、生クリームに――」
これが、どんなチョコレートになるのだろう。ナッツの香りが濃厚なプラリネとか、ちょっぴり洋酒の入ったジュレに刻んだフルーツが入っていたりだとか、なめらかなガナッシュとか。それらをコーティングするチョコも、きっとつやつやに輝いていて、うっとりするに違いない。
つい緩んでしまう口許を軽く叩くと、ルルゥが不思議そうに小首をかしげた。
「……つまみぐい?」
「ちち、違いますっ! 違いますが、おいしそうな香りのする場所ですね」
ブラウニーの石畳、ビスケットで出来た建物にウエハースの屋根。こう甘い香りがいっぱいの場所にいると、お菓子のひとつも食べたくなる。ノースポールは思い出したように、トリックオアタント様ぬいぐるみを取り出した。
「今日は一緒に、頑張りましょうね!」
ルルゥの手のひらに、コロンと金平糖をひとつ。
とげとげしているのに、淡い色のせいか優しい物にみえて、ルルゥは暫し手のひらの上で転がして目を楽しませた。
「ありがとう、ポーおねえさん。ぼく、運転がんばる」
ふわふわ、ほわり。
まるで綿菓子とマシュマロが並んだような二人は、金平糖の甘さをゆっくり味わって、車に乗り込むことにした。
開店の準備を任されたリディア・ヴァイス・フォーマルハウトは、箒を片手に店内に並んだ商品を見る。チョコレートは、レジの近くで量り売りをしている物もあれば、すでに簡単なラッピングをされて並んでいる物もあり、包み方の参考になりそうだ。
リオーレはといえば、ラッピングの材料の在庫確認をし終わって、レジでお店のカタログを熱心に眺めている。
(こっちは、まわりがさくっとしてて、中がとろ~り甘くって……こっちの形が……)
本来であれば、こんな雑務は爺に任せるところだけれど、今日はそんな卑怯な手は使わない。そのほうが、『美味しいご褒美』を沢山貰える気がしたからだ。でも――。
(どんなチョコかわかんないと、おしえてあげられないって言ったのに!)
そういって小首を傾げれば、きっとチョコレートが貰えると思ったのに。手渡されたのは甘くもなんともないカタログで、ついつい口をとがらせる。
(もしかしたら……ううん、ぜったい! このボクががんばるんだから、ごほうびくれるはずだよね!)
「リオーレさん、そちらの準備はいかがですか?」
レジで百面相をしている彼が心配になって、リディアはそれとなく声をかけた。こっそり勉強をしていたのが知られたくなかったのか、リオーレは勢いよくカタログを閉じると、フフンと自信満々な笑みを見せる。
「ボクがおてつだいするんだよ? バッチリなんだからっ!」
「まあ。リオーネさんがご一緒で、とても心強いです。それでは、看板を変えてきますね」
窓ガラスに掛けられた看板をひっくり返し『open』へ。いよいよ、ショコラトリーの開店です。
●
渋滞も無く、車はスムーズに走り出す。
目的地はインプットされており、走行も停止もオレンジ色のグミのようなボタンを押すだけ。
駐車場につけば、メロン色のグミを押せば空いている場所へ自動的に停めてくれるというのだから、ファンタジーと近未来が重なった車は可愛くも便利な物となっている。
(キャンディの信号、マカロンの標識……あっ、街灯はこんぺいとう、かも)
どれも美味しそうで目移りしてしまうが、果たしてあれらは食べられるのだろうか? じっとルルゥが見つめていると、隣でノースポールが小さな悲鳴を上げる。
「わああっ!? ストップ! 停めてくださいっ!」
慌ててルルゥはオレンジ色のグミを押す。ぽふんっと跳ねるように車は停まり、白パンのような座席がふわふわと衝撃を吸収してくれた。
見れば、信号は進めのソーダ色から停まれのストロベリー色になっている。
「……あぶなかった」
「そこのアイスを食べてる方! 驚かせて済みませんっ」
「いいや、こっちも停まってくれるだろうと油断してたよ」
ニコニコと手を振ってくれたことに二人で会釈して。それからは二人で緊張して周囲を確認しながら走れば、車はすぐに荷受け場所に到着した。
「お疲れ様です、ルルゥさん。ここからは、私の出番ですね!」
ノースポールは、運搬は任せてくださいとばかりに力こぶを作ってみせる。だが、その二の腕にはよく言えば年頃の少女のような、別の見方をすれば――。
「……ぺったんこ」
ノースポールの何かによく似た、ささやかな膨らみがあるばかり。決して『何』とは言わないが。
「イレギュラーズは力持ちですから! お任せくださいっ」
ルルゥの発した言葉に刺さる物はあったが、会話の流れ的に力こぶのことだろう。そう言い聞かせ、ノースポールは笑顔で答える。だが……なんとなく、荷受けのリストで胸元を隠してしまうのだった。
「むぅ……」
バンバン売ってやるぞ! とリオーレは意気込んでいたけれど。バレンタインまで日があるせいか、客足はまばらだった。いや、お客様はいるのだが、どうにも下見といった様子で見て回る人が多く、購入には至らない。
ならば、その背中を押すまでだ。気合いを入れて、じっくり悩んでいるお客さんに声をかける。
「いらっしゃいませ」
レディに失礼の無いように、けれどどこか子供のあざとさを残してリオーレは微笑んだ。
そんな成長の様子を、木陰に隠れた老紳士が伺っていたかはさておき。ラッピングをしていたリディアは心配そうに見つめていた。
自信満々に瞳を輝かせているが、それでも幼い男の子。贈る相手に合わせた相談となると、女性のお客様は遠慮してしまうかもしれない。
「えっとね、こっちはとーっても甘いんだけど、お口に味がのこんないから、甘いのだめかもって人でもたべやすいよ! それからね……」
無邪気に続く味の感想。まるで食べてみたかのようなそれに、周りのお客さんが聞き耳をたてる。
「なら、苦みが強い物はあるかしら?」
「苦いの? それならこれはね、とっても苦いんだけど、でも、クセになるおいしさだよ!」
彼の説明がとっても美味しそうだったのか、1人2人と声をかける。興味を持てば、自分用に味見用にと好調に売れていった。
「もし、お味のこと以外でもご相談があれば、お気軽にお声かけくださいね」
年上の彼に贈るなら、友達から意識させるためには。そんな乙女の悩みには、乙女同士が話しやすいだろうと思い、リディアはリオーレのやる気を削がぬように助け船を出した。
そんなとき、荷運びの業務を行っていた二人が帰った来た。ノースポールが車への積み方や倉庫への仕分けなど運搬業務の知識があったこともあり、少し早めに終わったようだ。
「お客さん、すごい」
「ひゃ~、これは手伝ったほうがよさそうですねっ!」
とはいえ、何から手伝ったものか。ルルゥはキョロキョロと辺りを見回し、自分に出来ることを模索する。
(……そうだ、お買い物する人がいい気分になれるように)
店内に響き渡る、優しい音色。買い物が楽しくなるようにと願って、持ってきたリュートで静かな音楽を演奏しはじめた。
ノースポールは店内の様子を見て回るついでに、リディアが包み終わった箱を補充してまわる。時折、食べたいチョコレートや婚約者に渡したいチョコレートを見つけては、幸せそうに微笑んで。
「えっと、えっと……たくさん買ってくれて、ありがとっ」
リオーレは、思っていた金額とレジが叩きだした金額が違ったのか、指折り足し算を頑張って誤魔化すようににこりと笑う。隣では、リディアが丹精に心を込めて丁寧にラッピングしていた。
「り、リディアお姉ちゃん……」
ぎゅうっと袖を掴んで助けを求める姿を見れば、レジに並んでいるお客様も誰もクレームを出すこと無く、優しく見守ってくれたいた。
●
「いやぁ、皆さんお疲れ様! 今日は早めの閉店となりそうだよ」
奥から出てきたカカオットは、空っぽになった棚を見て嬉しそうに――だが少し困った顔をしていた。
「ご覧の通り、おかげさまで完売だ。生憎、皆さんへのお土産はお渡しできそうにない」
それを聞いてルルゥとリオーレは落胆し、ノースポールもお姉さんとしての意地で苦笑いに止めているが、内心がっくりと項垂れていた。
そんな3人の様子を見て、リディアはこそりとカカオットに相談する。
「あの、私で出来ることならお手伝いしますので、何か甘い物を頂けないでしょうか……?」
「う~ん、私としてもそのつもりだったんだけどねぇ……頑張ってくれた皆さんに、これをお出しするのは失礼なんだが」
奥の厨房に声をかけて、トレイを持ってこさせる。そこには、お店で出すにはちょっと形の崩れてしまったチョコレートが並んでいた。
「チョコだーっ!」
「この不揃いさも愛嬌がありますねっ、美味しそう! ひとつくださーい♪」
真っ先に飛びついたリオーレとノースポール。美味しそうに頬張る様子を見て、ルルゥもごくりと喉を鳴らす。
「ルルゥさん、私たちも頂きましょうか」
「……うん」
トッピングのバランスが悪かったり、少しコーティングが甘くなってしまっていても、それが味になるくらいには素敵なチョコレートだ。
「んんん~! このチョコ凄く美味しいですっ! ルークにも食べさせてあげたかったなぁ……!」
「ポーさんには、グラオコローネを一緒に過ごす大切な方が?」
珍しいお菓子を頬張ってみたり、恋愛話をしてみたり。甘い甘いスイーツタイムを、みんなでニコニコと過ごしました。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
初めまして、浅野悠希です。
どこの世界も、この時期はチョコレートの香りでいっぱいですね。
どうぞゆるりと、お手伝いをしてあげてください!
●目的:ショコラトリーのお手伝い
運搬は、車によく似た乗り物で運びます。
目的地などはセットされており、自動運転のため操作の心配はありません。
周囲の安全さえ確認していれば、走行と停車はボタン1つです。
時間もゆったりしているので、ドライブ気分でお手伝い出来るでしょう。
販売の補助は、お客さんの接客もあれば、ラッピングの作業もあります。
今回訪れるお客さんは、まだ様子見の時期なのか、鬼のような形相をした人はいません。
安心して、ちょっとお喋りをしながら、気楽にお手伝いをしてください。
●場所
お菓子の街のショコラトリー
●登場人物
カカオット
お菓子がとっても好きな人なら知っているかもしれない、カリスマショコラティエ。
厨房の指揮が忙しく、あまり表に出てこないが、いつも何らかの新作を考えているので、機嫌が良ければ美味しい物がもらえるかも。
他、ショコラトリーの店員や来客など、モブNPC。
※皆さんの行動を妨害する人はいませんが、皆さんが妨害する側であればその限りではありません。
●サンプルプレイング①
運搬のお手伝いをするよ。
乗り物が自動運転なら、荷運びと管理が主な仕事だね。
食べ歩きでボーッと歩く人がいないか注意しながら、運転を頑張る。
途中で美味しそうな物を見かけたら、せっかくだから食べてみたいな。
信号待ちに、助手席から食べさせてもらったり……なんて期待はしない。
きっと隣では、真面目に仕事を頑張ってる相棒がいるはずだから。
(もしお相手がしてくれたなら、デレデレして後ろからクラクション鳴らされそう)
●サンプルプレイング②
販売のお手伝い…もとい、ラッピングの補助、を。
せせ、接客は、あんまり……けど、手先の器用さ、なら!
包装紙で包んだり、リボンの先を棒状の物でクルンとさせたり、黙々。
友達は、とっても元気に接客してるから、バランスがとれてていいよね。
接客…あれ、もしかして、逆ナン、かも?(もやもや)
うーん、うーん……い、いらっしゃいませ!どの、どのようならっふぃん、ぐッ!
うう、噛んだ。恥ずかしい。でも、友達が困ってるのは、見逃せない……!
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