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シナリオ詳細

ジャバウォックに至る物語

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鏡の国のわたし
 それは夜も更けた時間帯。月が夜を鋭利に切り裂き、流れるのは血ではなく星だった。
 人通りも少ない裏通り。そこにはひとりの男がいた。男は仕事を終え、愛する妻と子供が待つ温かい家に向かって、帰路を急いでいた。いつもは夜でも街灯の明るい大通りを通って帰っているが、今日は遅くなってしまったこともあり、近道であるその裏通りを通って家路を急いでいる。
「…………」
 ふと。男の視界のすみに何かがかすった。
 男は足を止めてそちらを見る。見れば、そこにうずくまる人影があった。小さな少女のような影。ふわふわのミルク・ティー色をした髪に、フリルたっぷりのエプロン・ドレスを身にまとっている。しかし少女は寒そうに肩を震わせていた。
「きみ、大丈夫かい?」
 男が声をかける。
 少女が立ち上がった。
 男の方へとゆっくり振り返った。
 ――そして、それだけだった。
「!」
 振り向いた少女の腕が伸び、男の顔面を鷲掴みにした。たっぷりのフリルがついたエプロン・ドレスの皮を破り、今にも獲物に食らいつかんばかりの鋭い歯と、煌々と光る爬虫類のような眼。節ばった4本の手足にコウモリのような巨大な翅。高さは2mはあろうかという怪物に、その愛らしかった少女は変貌した。
 ぽたり、ぽたりと男の血が路地を濡らす。

 げらげらげらげらげらげらげらげら――!

 夜の闇の中に、笑い声がこだました。

●鏡の国のあなた
「緊急事態なのです!」
 ユリーカ・ユリカ(p3n00002)がギルドにいる面々に向かって声を張り上げる。その場にいたイレギュラーズたちは、何事かと彼女の方へと視線をやった。その息巻く姿を見て、多くの者がその異常事態に気付いていた。
「ある街に怪物が現れたのです!」
 なんでも、彼女の話はとある街に現れた怪物の退治依頼のようだ。その怪物は少女の姿に擬態して、獲物が近づいてきたところを狙って襲いかかるらしい。少女の姿は物語に出てくるような愛らしい姿をしている。しかしその姿に騙された者が、次々と襲われている。人間の姿を擬態しているが、知能らしきものは無く、無差別に人を襲う怪物だ。対話による説得は不可能だろう。
「みなさんの力を貸してほしいのです! 何とかして、あの怪物をやっつけてください!」
 ユリーカが懇願する。これ以上被害が広がらない内に、何とかしてほしいと。
 ユリーカが仕入れた情報をみなに開示する。怪物が現れるのは夜中。人通りの少ない裏通りで、ひっそりと獲物が来るのを待っている。裏通りは明かりこそ少ないが、月明かりもあり広さも充分なため、戦闘することに支障は無いだろう。少女の姿をしている間は逃げ足が速く、イレギュラーズたちが一斉にかかれば逃げ出してしまうかもしれない。ただし、擬態を解いて本性の怪物と化した後は、その場にいる者全員を殺すまではその場を離れることは無いだろう。化物の体長は2mほどで、頑丈な牙と爪による攻撃が主だ。爪で獲物を切り裂き、牙で獲物へ食らいつく。凶悪な敵だが、チームワークがうまく出来れば、難しい戦いでは無い。
「情報は以上です。それでは、どうかよろしくお願いします!」
 そう言って、ユリーカは思い切り頭を下げた。

GMコメント

初めまして。久部ありん(キューブ・アリン)と申します。
ご閲覧いただきまして、ありがとうございます。
今回は怪物退治の依頼です。以下に情報を開示いたしますので、ご確認ください。

●依頼達成条件
怪物を退治すること。

●怪物
体長2mほどの大きさの怪物が1匹です。
擬態をしている間は逃げ足が速く、不利だと感じれば逃げ出します。
ただし、擬態を解いてからはその限りではありません。

擬態を解いたあとの怪物は、見た目に寄らず頑丈で、耐久力もかなり有ります。
主に「爪」での「単体近距離攻撃」と、「哄笑」による「広域【痺れ】付与攻撃」を仕掛けてきます。
爪には引っ掻き攻撃の他、まれに対象一体を捕縛する効果が発動します。
爪によって捕えられた場合、「牙」での超強力な攻撃を受ける可能性があります。
また、体力が減ってくると一時的に大きな「翼」で身体を覆う行動を取ります。
翼で身体を覆っている間は攻撃して来ませんが、防御力が大きくアップします。

●状況
人通りが無い裏通りです。
街灯はありませんが、月明かりで充分周囲は確認できます。
また、広さも充分にあり人通りも無いため、戦闘に支障はありません。

以上です。
ご縁がございましたら、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

  • ジャバウォックに至る物語完了
  • GM名久部ありん(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月25日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

小夜鳴 驟雨(p3p000006)
髪を切る
蜜姫(p3p000353)
甘露
モルフェウス・エベノス(p3p001170)
堕眠
御堂・D・豪斗(p3p001181)
例のゴッド
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
百目鬼 緋呂斗(p3p001347)
オーガニックオーガ
アルク・ロード(p3p001865)
黒雪
ロキ・グリサリド(p3p004235)
侵森牢河

リプレイ

●とある物語の序章
 昼下がり。空はゼリィみたいに弾力の有りそうな快晴だった。雲ひとつなく、ただ青が絵の具で塗りたくられたかのように広がっている。太陽は自身が最も美しいとばかりに、この寒い外を照らしていた。
 そんな昼下がりに、イレギュラーズたちはある路地裏へと足を運んでいた
「少女を心配して声を掛けて襲われる。……実に不愉快な事件だ、早急に片付けるぞ」
 『鬼は血をハラハラと』小夜鳴 驟雨(p3p000006)が低く声をあげる。その闘志を受けて、彼女の瞳の色はその昂ぶりを受けて血の色に染まりつつあった。
「循環の理を乱すもの……放ってはおけないの」
 『甘露』蜜姫(p3p000353)はこの戦闘になるであろう場所の地理などを詳細に調べるつもりだった。待機できそうな場所や、距離感。そんな些細なことでも、戦闘をする上では重要になってくる。『堕眠』モルフェウス・エベノス(p3p001170)もそれにならって周囲を見渡した。
「……成程、こんな化け物もいるとは……中々物騒な場所へ呼ばれたものだと、改めて実感したよ」
「少女に声をかける優しい人がこれ以上被害に遭わないようにはやく何とかしないと」
 『オーガニックオーガ』百目鬼 緋呂斗(p3p001347)が声をあげる。
 彼は内心、少しばかり恐怖があった。しかし、いま、周りには心強い仲間がいる。これがどれほど彼の心境を晴れさせているか、わかる者は少ないだろう。
 そして二人は、人が通るならば忠告を、と思ったが、本当にそこは人通りが無いらしく、先程から一人もそこを通ってくる気配は無かった。夜となればなおさらのこと、恐らく一般人が通りすがるという可能性は杞憂であろう。それが確認出来ただけでも僥倖だ。
「驟雨さんもウォーカーで初陣なんだよね。不安じゃないか?」
 緋呂斗が驟雨へと問いかける。みなが初陣の中、せめて可能な限り事前にコミュニケーションを取ろうという気持ちだった。しかし、今はそれ以上に彼女の姿が気になっていた。
「世界が変わろうと、私の信念は変わらん」
 そうハッキリと答えた彼女の姿は、実に威風堂々としていた。その答えに、緋呂斗は思わず元気付けられる。そのハッキリとした生き様が、ただ羨ましいと、羨望の眼差しで見つめていた。
「ふうむ、リトルガールの姿をして騙すか……。嘘はいかんな、嘘は! ゴッドはどんな姿でも愛そう! だから己を偽るでない!」
 そう声を張り上げたのは『アイアムゴッド』御堂・D・豪斗(p3p001181)だ。『人間時々夢魔』雨宮 利香(p3p001254)はそんな豪斗に一瞬驚いたが、すぐに納得の頷きを返す。少女に擬態して人を襲うとは、許されざることだ。実際に被害が出ているのだから、これは潰さなければならないということ。だからこそ、いまこうしてしっかりと前もった準備をしているのだ。近隣の住民には、手分けして夜は出歩かないようにと注意喚起を行った。
 一方、『侵森牢河』ロキ・グリサリド(p3p004235)と『灰の道を歩む黒』アルク・ロード(p3p001865)は慎重に場所を調べていた。そしてロキが肩をすくませて言う。
「いあいあいあ、裏路地で夜中に蹲るガキとか。胡散臭すぎるっしょ、ていうか引っかかるヤツ良い人すぎね? スラムならあっという間に身包み剥がされそうな感じッスねえ……」
 万が一夜間に人が現れてしまうとまずいことになる。人払いをしようとしたが、やはり、人通りは無い。それを再度確認した。
 それから囮になるアルクがいる場所と、それぞれの仲間が隠れる場所も入念にチェックする。
「これ以上被害拡大はさせねえ。本性確実に暴いてから処理してやる」
 アルクが低い声で呟く。
 それに同調して驟雨も言った。
「……実に不愉快な事件だ、早急に片付けるぞ!」

 ――これで、舞台は整った。

●とある物語の審判
 アルクがひとり、夜の中を歩いている。昼は死に、夜が月明かりによって生かされていた。星々はひっそりと、月から隠れて輝いている。
 路地裏に人気は無い。昼間にも確認していたことだった。念のため付近の住民には予め夜に路地裏に出歩かないよう注意喚起もしていたことが大きく功を奏していた。
 そして、ひたりとその足を止める。
 該当の無い月明かりの下。さらに薄暗いその場所に、何者かがうずくまっていた。
 アルクがゆっくりと近づく。
 それは少女のようだった。
 たっぷりのレースの入った服にふわふわの髪。後ろ姿ではまるで人形のような姿をしている。
「おい、お前――」
 彼が少女の肩を掴む。
 ――瞬間。
 少女が振り返った。
「っ!」
 超常的な反射神経で、アルクは後方へ飛びのいた。
 先程まで彼が立っていた場所は、鋭い何かによって地面がえぐられている。
 もしも反射神経が伴っていなければ、確実にその何か――……爪によって切り刻まれていたところだろう。
 そして、少女だったモノが変貌する。
 2メートルはあろうかという異形のソレ。爬虫類のような瞳が、アルクを見て笑ったような気がした。
「目標の正体を暴いた、来てくれ!」
 アルクが大声で叫ぶ。
 それと同時に、身を隠していたイレギュラーズたちが姿を現した。その構成は実に1対8。決して難しい闘いでは無いはずだ。だが、異形の怪物はむしろそれを歓喜しているようにも見える。美味しそうな餌がたくさん来た。その程度の認識であろう。
 故に――、

 ――げらげらげらげらげらげら!

 愉悦に哄笑をあげる。獲物だ、獲物が来た! それは歓喜の雄叫びだった。
 その声に、イレギュラーズたちはビリビリとした圧力を感じた。異形の笑い声は容赦なく彼らの神経を削いでいく。
 そして、真っ先に動いたのは驟雨だった。怪物に向かって突き進む。恐れの知らない、いや、知っているからこその勇気。もしもこの怪物を逃したら、などとは考えない。そうならないよう、攻撃の手を休ませねばよいだけだ。驟雨の攻撃を受けて、そして、ぞっとするほどの血色の瞳を見て、怪物はその足をすくませた。
 それに続いて、アルクも動いた。自身の身体のギアチェンジし、反応速度を向上させる。
 モルフェウスは中衛でサポートをするために行動を起こす。身体は少々しびれるものの、動けないわけではない。彼女は夢を司る神。睡眠とは一種の死である。だからこそ、人は毎日、新しい日に生まれ変わるのだ。彼女のその夢は甘美で……そして少しだけ、寂しかった。いまの内に自身の感覚を呼び起こす。すると、そうか、と閃いた。この怪物がなぜ、しびれを伴う攻撃をするのか。それは、きっと――……。
「くっ!」
 牽制を行っていた緋呂斗の苦しげな呻きが響く。彼は怪物の長く鋭い爪によって囚われていた。そう、きっとそうなのだ。しびれさせて対象を捕縛する。それがこの怪物のパターンだ。
 緋呂斗は堅い守りに徹する。情報通りであれば、次に攻撃されるのは捕らえられた自分だ。恐らくあの鋭い牙による攻撃。それを回避するすべは無い。いまはただ、守りに徹することしか出来なかった。
 それを見て、蜜姫が次に狙われやすいであろう前衛であるロキに聖なる光を放った。ロキのしびれが治癒される。蜜姫は新たな世界に来てから、不安もあった。こうして実体を得ることなど、夢にも思わなかった。だが、いまはこうして共に闘ってくれる仲間がいる。そのことに深く頷き、癒やしの光を広げさせる。ロキの身体を苛んでいたしびれが消えていく。その勢いを殺すことなく、ロキは真っ直ぐに怪物に向かって駆け出していた。
「逃げるなよ、ラアァァッ!!」
 ロキが気合を入れて怪物にスープレックスを仕掛ける。身長差も有りうまく決めることは出来なかったが、しかし、捕らえられていた緋呂斗がそれによって解放される。
「すまない、助かった」
「いいッスよ、適当にお互い様精神で」
 ひらひらと手を振って、ロキが緋呂斗に向かって軽く言う。
 そして、怪物の次の狙いはいまだしびれが身体に残る利香だった。爪を思い切り振りかぶると、彼女の身体が宙に浮く。しかしそれで怯える彼女ではない。いつか、自分は自分の道を行く、と彼女は言った。こうして民を守り、戦うことこそが彼女の道なのだろうか。それとも、他に生きていくための糧があるのだろうか。それは誰にもわからない。いまは、まだ。
「ゴッドの名はゴッド! ユーを愛し、故に討つ者である!」
 突然、猛々しい叫びが戦場に鳴り響いた。
 見れば、遠くまで距離を取った豪斗が堂々とした仁王立ちで笑っていた。怪物も思わずそちらへ意識を奪われてしまい、爪で捕らえていた利香を取り落としてしまう。
 怪物が豪斗の元へ身体をゆっくりと向ける。それを見て、アルクがいまがチャンスであるとばかりに怪物へ奇襲攻撃を放った。父親譲りの赤き瞳と、母親譲りの蒼き瞳。その美しいコントラストが、戦闘の激しさにさながら宝石のように燃えている。

 ――すると、怪物が動きを変える。
 
 怪物の持つ大きな翼を広げ、その身体を包むこむような体勢を取った。
 これは怪物が弱ってきていることに他ならない。
 これは好機だ。そう誰もが感じ取った。イレギュラーズたちの反撃が始まる。
 まず駆け出したのは利香だった。元の世界のことなど、覚えていない。なんとなく覚えていたのは「リカ」という名前と手に持っていた黒の長剣。自分がどこの誰だかはわからない。だがしかし、それでも利香は戦うのだ。この長剣を掲げて。
 怪物に向かって、一刀を振り下ろす。しかし、堅い翼には浅い傷をつけることがやっとだった。
「か、堅ッ! でも、攻撃しないと……!」
「任せてくれ」
 前衛に出ていた緋呂斗がさらに怪物に近付く。人から迫害され続けた過去を、怪物に重ねる。もしもこの怪物に相応の知性とほんの少しの優しさがあれば、ひっそりと生きていくことも出来ただろう、と。だが、それももう叶わぬ願い。犠牲者が多く出ている以上、これ以上被害を大きくするわけにはいかない。そんな内心をぶつけるかのように、緋呂斗は相手に全力で攻撃を加えた。
 しかし、それでも翼は閉じられたまま。
 まるで何かの核かのように、がっちりと身を守っている。しかし、身を守っている間は攻撃をしてこない。これも好機であるとばかりに、モルフェウスと蜜姫がみなの回復を行った。しびれももう無い。あとは全力で攻撃を続けるだけだ。
 驟雨と利香が連続で攻撃を与える。すると、翼がわずかばかり動いた。ダメージが入っているようには見えなかったが、どうやら着実に怪物に蓄積されているようだ。
「っと悪いね。もうちょいやってくるわ」
 そう言ったのはロキだった。動かない対象へ向かってゆっくり歩き出す。ふと、元の世界のことを思い出す。密林と水に溢れた自然の世界。ここの召喚されたことは不本意で、しばらくはぶすくれていた。それでも、何か帰る方法や居座る場所を決めなくてはならない。それはどうしようもないことで、そして、いまや懐かしい思い出だった。
 そんなロキは、再び怪物にスープレックスを掛けようとする。
 怪物の方も突如浮いた自身の身体に驚いているようだった。翼で身体が覆われている以上、組み付くのは難しかったが、一度手を付けてしまえばこちらのもの。そのまま相手を投げて地面に叩きつかさせる。

 ――ぎ、ぎ……。

 怪物のうめき声が響く。翼はボロボロになり、再び身体を晒していた。
 怪物は知能のない頭で、感情だけで思いを巡らせる。どうして、こんなことになった? 自分は一方的な捕食者ではなかったのか? なぜ、自分自身が殺されかけているのか? わからない。わらかない。わからない。わらかない――!
 しかして、その疑問の答えは見つからない。
 ただ目の前にあるのは、暴力という死だけだった。
「そのソウルに安らぎと、次のライフでは善き子として我がフレンズとならん事を祈ろう!」
 豪斗の攻撃が、怪物に容赦なく畳み掛けてくる。ゴッドとして他の世界を生き、そしていまではこの世界に定着しつつある。それでもよいのだ、と豪斗は笑うだろう。自分の信徒は自分たちだけでしっかりやっていける。何しろ豪斗がゴッドをしていたのだ。残された人々は元気にやっていることだろう。そして、いまはこうして豪斗を必要としている人がいる。そんな人がいる限り、豪斗のゴッド精神はとまらないのだ。
「では、死んでもらう」
 驟雨の冷たい一声。振り上げたその刀を、思い切り怪物の胴を一閃する。
 ぼろぼろになり、留めまで刺されたその怪物は、最後に血を吐きながら笑っていた。

 ――げらげらげらげらげらげら!

 しかし、笑い声はそれだけで、イレギュラーズたちには異変は起こらなかった。
 ただ、愛らしい少女が不気味な怪物へ変貌した。
 そして、最後は笑いながら死んでいった。
 たったそれだけの、ちっぽけな事件だったのだから。

●とある物語の終焉
 怪物の事後処理はギルドの方でしてくれるらしかった。
 いまは、蜜姫とモルフェウスを中心に、みなの怪我を癒やしていた。
 一方で、驟雨は近くを見回っている。彼女の瞳の色は、いまではすっかり落ち着いていた。
「初陣はこんなところか」
 ふう、と驟雨は溜息を吐く。
「軽い軽い、とはいえ……重さは結構あったから色々壊しちまったなあ……これ後で謝って赦して貰えるッスかね?」
 そんな彼女に話し掛けたのはロキだった。自身がスープレックスで地面をえぐった痕跡などが見られている。けれど、もう不穏な事件は起こらないだろうし、ギルドの方で何とかしてくれるだろう、多分、と彼女は答えた。
「おい、二人共。ギルドへ報告に行くぞ」
 アルクが二人を呼びに来た。どうやらみなの治癒も終わったらしい。
 二人がみなのところへ戻ると、もうすっかり元気になった仲間たちがいた。
「お疲れさまなの。痛いところ、まだある?」
 蜜姫がぺこりと頭を下げる。桜の小枝がそれに合わせて揺れた。それはとても美しい形をしていた。彼女と桜は切っても切れない縁。それがとても、どうしようもなく、ただただ美しかった。そして彼女の答えにはノーを返して、治癒は不要だと伝えた。
「ねぇねぇ、早く行こうよー」
 しびれを切らせて利香が声をかける。一度は爪に捕らわれたにも関わらず、すっかり元気になっているようだ。
「それじゃ、行くか」
 そうして、アルクは歩き出す。
 空ではすっかり月も眠っていて、紫のグラデーションが美しい。
 ああ、朝が来るのか。
 イレギュラーズたちは、何となくそんなことを思った。
 あの異形の夜が明けていく。
 朝が来て、再び夜がやってきても、もうあの路地裏には誰もいない。
 平和を守ったのだ、全力で。
 そんな漠然としていた事実を、いま、ハッキリと理解した。

 ――せめて、これ以上世界が悪くなりませんように。

 そう呟いたのは、誰だったか。他の世界からこの世界に召喚され、あるいは突然イレギュラーズとして召喚されたときの不安はどれほどだっただろう。しかし、この世界で、この現実で生きていかねばならないのだ。

 こうして、イレギュラーズたちの長い長い夜が終わった。
 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。
この度はご参加いただきありがとうございました。

皆さまのおかげで、街に平穏がもたらされました。
念には念を入れたプレイングには驚きました。
よく考えられていて、とてもよかったと思います。

素敵なひとときをありがとうございました。
次回もご縁がありましたら、ぜひよろしくお願いいたします。

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