シナリオ詳細
<星呑み竜>終わらない日々と奇跡の竜
オープニング
『かつて』この世界には空にひときわ輝いている星が浮かんでいた。その星は『タハトーディア』と呼ばれ、世間を騒がせていた。
それは少しずつではあるが、この星に接近しているのがわかったと告げられていた。本来の軌道とは異なる故に発見が遅れたのだという。この星にぶつかるまで、残り24時間。そう告げられた時の人々の混乱は、まるでこの世が地獄になったかのようなありさまだった、人類は秩序を失い、皆思い思いの形で最期を飾ろうとし始めたのである。
ある者は多額の借金を抱えてでも思い残すことのないようにと死ぬ前に一度は行きたかったという地へと騎乗専用ペガサスをチャーターして向かった。また、ある者は未来に絶望して高層ビルから飛び降りて自害を試みた。またある者は矛先のない怒りを市民に向けて大量虐殺をはじめた。また、ある者は神に祈りを捧げ始めた。
しかし、『世界は突如として救われた』のだ。
アルフェア国ツェ領に所属する軍隊が、敵対していた軍隊と共同戦線を敷き、夕方6時頃に無人偵察ロケットを発射。その後、隕石破壊兵器を2弾発射。これによって、『タハトーディア』は破壊された。同時刻、上空から強い光が見えたという民間人からの情報もあったが、共同戦線時に軍を指揮していたエーデル曰く、『隕石破壊兵器によって生じた光』であるとラジオからニュースが流れている。
―—『そういうことになっていた』。
●
「救世主はアンタたちなのに、俺で良かったのか」
世界の救世主――そういうことにされたエーデルはカストルに問いかける。カストルはもちろんそれでよかったのだと告げた。この世界の住民ではないイレギュラーズの力は、いわば『世界規模での奇跡』そのものだ。深入りされて面倒なことになっては『観測』にならない。
小さなドラゴンはプァ、プアァと間抜けな音を立てて眠っている。エーデルはなだ何か言いたげだったが、それを見て、眉尻を下げれば『わかった、でも、俺たちはアンタたちの事をわすれないから』と言って、部屋を出た。
カストルは眠っている新しい|〈境界案内人〉《ホライゾンシーカー》を撫でる。
あの時。イレギュラーズの1人が抱いた小さな願い。それによって生み出された奇跡。|宇宙竜《タハトーディア》と|妖精竜《アイトワラス》の融合存在。本来はこの世界の住民にのみ与えられるべき『悲願の成就』を|妖精竜《アイトワラス》が叶えたことによって起きた、まさに|異端存在《イレギュラー》。
|〈境界案内人〉《ホライゾンシーカー》には|〈境界案内人〉《ホライゾンシーカー》の喜びと悲しみがある。それを、カストルはよく知っている。そして、それがこの生まれたばかりのこの存在が今後それを体験することとなるのだ。
「物語はこれで終わり。僕たちはこの世界から早々に撤退しなければ。……けれど君はこれからも観測し続けるだろう。住民とは異質なる存在になってしまうとしても、それでも叶えると決めたんだね」
小さな竜は、パチリと瞳をあけた。変化する色彩を持った瞳が貴方達を見つめる。カストルが一同に目を向け、微笑んだ。
「この子の名前を決めてあげて。そして、この世界に別れを告げよう」
- <星呑み竜>終わらない日々と奇跡の竜完了
- NM名蛇穴 典雅
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年02月05日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談0日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
——まさか、こんな事になろうとは。
『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271) は、目の前で佇む小さなドラゴンを前に、頬を掻く。確かに自分はあの時そう願ったのだ。あの美しい竜がもしも生まれることができたなら、と。せめてアイトワラスくらいのサイズであればよかったのに、と。まさかそれが叶うなんて思いもしなかったのだ。
ドラゴンの名付け親、だなんて。混沌だったら大事件になっている。なおなおと鳴きながらじゃれつく『じゃいあんとねこ』陰陽丸(p3p007356) と、きれいな目ですねーと『差し伸べる翼』ノースポール(p3p004381) が伸ばしたその指先をあむあむと甘噛みするドラゴンを見て、気が抜けてしまう。
「そういえば卵の殻……あのレースは|楽譜《こもりうた》だって、仲間が言っていたのですがこの子は覚えているのでしょうか。それに、自我としてはアイトワラス、なのか。それとも、タハトーディアなのか……」
その言葉を理解してか、ドラゴンはふんふんと鼻歌を歌う。それは、あの時宇宙で聞いた『炎の子守唄』だった。
母親の思念は、思いは、受け継がれていたんだ。——その事実に、うっすらとノースポールが涙を浮かべる。よしよしとそれを撫でるラダと、励ますように頬を舐める陰陽丸。そんな彼らの前にふわりと現れた一人の影。
『珍しいな。観測を終えてしまう世界に行きたいとは』
「ギリギリだからどうしようか迷ったよ。……この世界にはお邪魔した事なかったから」
『何故今になって行くと決めた?』
「……終わってしまうかもしれなかった世界の最後を見届けようかなって。……ちょっと私達の元の世界に重ねちゃったから。干渉出来なくなるけど、これからこの世界の人達はどうするのか見てみたい」
受け答えを1人で行う少女 『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593) の姿に最初こそ驚いたものの――この世界の、自分たちが救ったこの場所がどれだけ素晴らしいかは3人のイレギュラーズがよく知っていた。それゆえに、それぞれが暖かい表情を浮かべて、彼女を歓迎する。
●
「それにしてもいつまでたってもチビって呼ぶのは面倒くさいな」
「名前がないと不便ですねえ」
「なぁおう」
「名づけを頼まれていたのだったっけ? 私が口出ししてもいいのかしら」
「もちろんです、みんなで考えましょう!」
候補は4つだ。
まずはラダが考えた名前。《エバー・アフター》。
「私はここで初めて、世界の終わりと救われた後の姿を見た。……結局、守れるのは未来だけで、世界には相変わらず不安も希望も一緒に残っている。それは混沌でも、これから出会う他の物語でも同じなのだろう。だからより良い未来への願いを込めてみた」
次に、ノースポールが考えた名前。《アイリス》。
「私からは『アイリス』を提案します。『希望』の花言葉を持つ花の名ですが、別の国の言葉では『虹』を意味するそうです。この子の綺麗な瞳にピッタリかな、と思いまして!」
そして、陰陽丸が考えた名前《アウローラ》。
「にゃうにゃう、なーお」
——名前候補、ボクからはアウローラと。『夜明け』という意味です。1つのお話が決着し、生まれた君はまさに『夜明け』です。これからも物語を覆う暗闇を払う導きとなってくださいね!
最後に、ティアが考えた名前《トラジェディア》。
「私達の元の世界では『終わりの夕焼け』という意味。観測を終えてしまうからという理由から。……でも続きがあって、『夜明けの始り』に繋がりそうだから。
それぞれが口にした名前はどれも素晴らしく、お互いに『なるほど』だとか『素敵ですね』という言葉が飛び交った。さて、当の本人であるドラゴンはくるくるとその目の色を変えながら話を聞いていた。最終的に、〈『夜明けの境界案内竜』アイリス・エバー・アフター〉と決まった。しかし、ティアの名前も捨てがたく、どうしたものかと考えた末、もはや|世界最後の日『ラストデイズ』ではない物語となったこの世界の名前を『トラジェディア』にしようと話がまとまった。
「アイリス・エバー・アフターですね!よろしくお願いしますっ」
くぁう。ドラゴンは嬉しそうに尾を振った。
●
人々は救われた事実に戸惑っていた。壊れた法律を正し、悪は悪と裁くものの、事情が事情だけに罪の軽減が行われた。数々の活躍を見せるエーデルの姿に、勇気づけられる民。ティアはその様子を見つめていた。
「生死がかかった状況から脱しても、混乱した世界。でも統率者が居ればずいぶん混乱は早く収まるんだね」
『判断は自身で行うものだが、方向性を定めてくれるモノがいるなら判断は下しやすいだろうからな』
「なるほど。指針や方針は大事ってことだね」
頷いた後、テレビから視線を外して、ティアはキッチンに向かう。キッチンでは、オムライスの調理が行われていた。
「そういえば、オムライスのつくりかた、知らないな。いい機会だし、教えてもらおうかな」
料理人の男性からオムライスの秘伝のレシピを習う、エプロンを身につけた彼女の表情は、どこか嬉しそうであった。
一方でノースポールと陰陽丸はオムライスをむしゃむしゃと頬張りながら、妊婦である奥さんに引越しの手伝いは必要かを尋ねるが、大丈夫だと教えてくれた。それならそれで、と2人は納得して、お腹の赤ちゃんがオムライスを食べられるようになる日が楽しみですねと声をかける。
「奥さん、具合は大丈夫ですか? 出産、頑張ってくださいね……!」
「ええ、ありがとう。そういえば、貴方の名前はなんていうのかしら」
「私ですか? ノースポールって言います」
「素敵な名前ね。もしも子が生まれたら、ノースポールって名前をつけるわね」
「店の名前はオンミョーマルだ。君にあやかってね」
「それでも、いいかしら? 世界の英雄さん」
世界の英雄。——嬉しいやら、恥ずかしいやら。わぁあと顔を真っ赤にするノースポールと陰陽丸に笑いかける夫婦の姿は、とても暖かい風景であった。
そういえば、と養鶏場の男にラダが話しかける。
「もし、アイトワラスに願いを叶えてもらうとしたら、どんな願いを言うつもりだった?」
「嗚呼、簡単な話ですよ」
生きてくれ、というつもりだった。と養鶏場の男は笑う。世界最後の日に生まれたのに、すぐに死んでしまうなんてあんまりだろうと。
「……なるほど」
もし、その願いが叶うのだとしたら――アイリス・エバー・アフターはきっと、滅んだ世界で
独りぼっちになって、それでも生き続けなければならなかったのだろう。故郷である星すら奪われて。宇宙で1人、漂って。
(……そうか)
願いとは全て叶えばよいものではないのだな、と目を閉じる。願いは時に呪いになりかねないのだ、と。もしそうなら……あの時、タハトーディアの延命を願った自分は果たして正しかったのだろうか。
不意に、頭に重みが増す。アイリス・エバー・アフターがいつの間にか乗っかっていた。
「まま、ありがと」
嗚呼、その言葉にどれだけ救われただろうか。
●
物語は『終わらない』。この世界からイレギュラーズが去った後も、日々は経過する。
オンミョーマルと名付けられた店が繁盛し、三ツ星レストランになった日もあった。ノースポールと名付けられた娘がオムライスを生まれて初めて食べる日もあった。エーデルが大統領になった日もあった。日々は経過し、物語は2冊目の本へと移り変わる。
「ようこそ。 |明日が続くこの世界《トラジェディア》へ!」
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
●メイン目的
「アイトワラスとタハトーディアの融合体への名付け」
ちなみに名付けに関しての文字数制限は98文字です。
(そこまで長いことにはならないでしょうが)
●サブ目的
「『ラストデイズ』の住民と思い出を作る(別れを告げる)」
登場可能な住民は以下のとおりです。また、彼らはこの世界を救ったのがイレギュラーズであると唯一この世界で知っている存在ですので、原則真実を隠す必要がありません。
・料理人の夫
……オムライスをつくるのが得意な男性。
近いうちに養鶏場の男性の近くに引っ越すらしい。卵料理専門店を作る予定。
・妊婦の妻
……優しい女性。もうすぐ子供が生まれる。
子供の名前はイレギュラーズのうちの誰かの名前になるだろう。
・養鶏場の男性
……本来の〈物語〉では彼がアイトワラスから願いを叶えてもらう存在。
・救世主『エーデル』
……イレギュラーズに力を貸してくれたこの世界の住民。
・アイトワラスとタハトーディアの融合体
……イレギュラーズのによって起こされた奇跡そのもの。〈境界案内人〉。
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