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シナリオ詳細

雪原のスノーボール

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 しんしんと雪が降る。
 木々も動物たちも眠りにつくような純白な世界。
 その中を少年が一人、覚悟を決めた表情で突き進んでいた。
「いないなあ……。」
 立ち止まっては周囲を見渡し、また少し進んでは同じことを繰り返す。
 そうしてだんだんと村から離れていくことにも気づかないまま、少年の姿は雪に閉ざされた山奥へと消えていった。


「あけましておめでとうございます!」
 イレギュラーズを出迎えた小さな境界案内人が新年に相応しい装いで頭を下げる。
 まだまだお年玉を貰うような年頃の少女は新年の挨拶を終えると、改めてと言わんばかりにカウンターの上によじ登る。
「異世界の危機にハッピーエンドを綴る為! 境界案内人・子羊、参上!」
 ビシッと決めたポーズ。ひらりと舞うふかふかの裾。桜色にも似た柔らかな髪から覗く角がキラリと光を反射する。
 たっぷり10秒ほどの余韻を残し、子羊はいそいそとカウンターを降りて、代わりに一冊の本を乗せた。
「冬真っ盛りのとある世界で、山の麓にある小さな村の少年が一人で雪山に入っていってしまったんだ。」
 雪山が描かれた表紙を開いて子羊は愛らしい顔をむむっと曇らせる。
「少年の名前はケイタくん。この時期、この雪山で捕れるスノーボールと呼ばれる生き物を捕まえるために一人で山に入ったんだけど、なかなか見つからないまま奥へ奥へと進んでしまって、最後には帰れなくなってしまうんだ。」
 消えてしまう小さな命を救って欲しい。
 子羊は本を閉じてイレギュラーズを見た。
「お願いしたいのはケイタくんの保護とスノーボールの捕獲だよ。スノーボールっていうのは真っ白で、手のひらサイズで、まるで雪玉にそっくりだからこう呼ばれているみたい。」
 小さな両手でぎゅっぎゅと雪玉を握るような仕草をして見せる。
「この世界に脅威となるようなモンスターとかはいないけど、雪の中でこのスノーボールを見つけるのはとても大変なんだ。だけど大丈夫! ちゃんと誘き出す方法も分かってるからね!」
 そのまま勢いよく腕を振り抜いて、子羊はにこっと笑った。
「そう! 雪合戦をするとね、スノーボールはいつの間にか混ざってるんだって!」
 随分と平和な方法に思わず笑みが零れるイレギュラーズ。
 それにね、と子羊は内緒話のように声を潜める。
「この世界ではみんなにとあるチート能力がつくよ。それはなんと!」
 またも、よいしょとカウンターの上に上り両手を開く。
「『どんな薄着でも風邪を引かない能力』!」
 だから思う存分遊んで来てね、と子羊は最後にもう一度ポーズを決めて笑った。

NMコメント

桃缶です。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

◆依頼内容と成功条件
雪山にてケイタくんを保護し、スノーボールを捕獲する。
イレギュラーズが到着した時はまだそれほど奥へは行っておらず、足跡を追っていけばすぐに合流できる距離です。
その後はスノーボールが現れるまで雪合戦を楽しんでください。
帰宅に関してはそれ以上奥に行かなければ問題ありません。

以上となります。
みなさまと共にハッピーエンドを綴れますように。

  • 雪原のスノーボール完了
  • NM名桃缶
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年01月22日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手
ティル・エクスシア(p3p007028)
憐れな子羊
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
綺羅々 殺(p3p007786)
あくきつね

リプレイ


 しんしんと雪が降る。
 まだ日が高いとはいえ灰色に染まった空から舞い落ちる雪のせいで視界はあまり良いとは言えない。まだ風がないだけマシ、というくらいだろうか。
「カカカッ、こいつぁ真っ白だねぇ。」
 『救い手』ヨシト・エイツ(p3p006813)がサングラス越しに周囲へと視線を向ける。
 降り続く雪は膝よりは下だが脹脛を覆うくらいには積り、ほんの少しの時間で足跡すら消してしまうのだろう。
(俺らみたいに雪に慣れてる鉄騎でも難儀しそうだし、雪国育ちとはいえガキが一人で踏破するにゃあ難しいな。)
 一刻も早く少年や、もしくは自分たちが遭難する前に見つけなければと、【過酷耐性】を武器に先陣を切る為に足元の雪を踏みしめる。
『電子の海の精霊』アウローラ=エレットローネ(p3p007207)もまた、電子の精霊として存在する体は寒さにも強いのか、身に纏う夜空にも似た紺色の衣装に積もる雪を払いながら【温度視覚】を用いて少年の姿を探していた。
「周辺が雪だし、人とかならすぐに見つかると良いんだけど。」
 そんな二人とは対照的に、この地に降り立った瞬間から自らを抱きしめる結果となったのは『妖刀の魂を従えし者』綺羅々 殺(p3p007786)だ。
(さむっ!! なのじゃ。これは思ったより寒いぞ、風邪を引かぬからと思い『すくみず』とやらで威勢よく雪山に飛びだす事を決めたのは良いが……運動すれば体は温まる……だが、あからさまに寒がりで根性無しと思われてしまうのじゃ……ならばここは落ちついた風体を装ってクールに徹する、それがベストじゃ)
 うん、一人は必ずいると思った。風邪引かないからって薄着する子。
 だがしかし、彼女は、彼女の熱い魂はそんな事じゃ負けないのだ。
「いや~~、清々しい程雪山じゃのぅ~~! どうした皆の者? そんな厚着でだらしが無い……。」
 堂々と胸を張って顔を上げる殺。
 やや色白な頬や鼻の頭を真っ赤に染めながら、淡く神秘的な紫色の瞳をぱちくりさせる。
 特に防寒を意識していないらしいヨシトもアウローラもどちらかといえば薄着である。
 ぶっちゃけここは常夏か? と首を傾げたくなるほど肌を露出しているメンバーである。
「くくく……」
(やべーのじゃ、この寒さ軽く死ねるのじゃ。)
「さぁ、いざゆかん雪山へ……!」
 死を覚悟した強い瞳で、殺は両手を振り上げた。
 その上空、雪に溶け込みそうなほど白い翼を広げて【飛行】する『食べ頃(?)天使』ティル・エクスシア(p3p007028)は、吐きだした息の白さと眼下に広がる景色に目を細める。
「うー寒い……でも、この一面真っ白の雪景色、素晴らしい眺めですね! 凄い、息も白いですよ!」
 高度を上げれば気温は更に下がるし、止む気配を見せない雪が時間と共に幼い足跡を消してしまう。
「こんな中を一人でですか……ケイタ様が無事であればいいのですが。」
 だからこそ心配が募ると、ティルはその金色の瞳を凝らして羽ばたいた。



 まずはケイタの探索と保護から。
 上空から少しでも情報を得ようと飛行するティルを追うように、ヨシトが作った道をアウローラと殺が進んでいく。
「おーいケイター! ケイター! ご飯が出来ておるぞー!」
 少しでも体温を保とうと声を上げる殺。
 だが雪はその結晶の形から音を吸収しやすく、呼びかけに答える声は聞こえない。
 ならばとそのギフトを発動させようとする前に、3人の前へふわりとティルが舞い降りた。
「少し先に足跡を発見しました!」
 その言葉に頷いたアウローラが【温度視覚】でティルが指した方向を注視する。
 真っ白な世界に4人とは別の赤い色が揺れたのを見てアウローラに笑顔が零れたのを確認し、ティルはまた上空へと舞い上がった。
「……あ、いますね。あの人影で間違いないかと。急ぎましょう!」
 先行するティルを追う3人が漸く小さな影に追い付いた時、ケイタは急に目の前に現れた人物たちに驚いて震えていた。
 この雪山で出会う事のないであろう翼を持った女の人に、妙に薄着な年上の男女。
「あ、あの……」
「貴方がケイタ様ですね?村の方から行方不明と話を聞き、お迎えに上がりました。」
 出来るだけ優しく、警戒を緩めるように。
 翼を消したティルが視線を合わせるように微笑むと、ケイタはやっと自分と同じ人間だと認識したのか肩の力を抜くのが分かった。
「あ、あの、俺、スノーボールを探してて。」
「おう、それな。何でスノーボールを探してんだ?」
 下半身が雪に埋もれるのも構わずにヤンキー座りをしたヨシトがほんの少しだけ上になったケイタの顔を見上げる。
 ガラの悪い姿にケイタがびびったのも一瞬で、彼のギフトで感じる良い人そうな気配と【自分より小さな生物が安らぐ空気】によってもじもじと言葉を紡ぐ。
「自分で捕まえたスノーボールを、好きな子にあげると仲良くなれるって聞いて。本当はもっと大きくなってからじゃないと山に入っちゃダメなんだけど、我慢できなくて。」
 寒さとは別の理由で頬を真っ赤に染めたケイタ。
 初々しいその姿を見てニッと笑みを浮かべたヨシトがカカカッと声を上げて立ち上がる。
「よっしゃー! なら、俺らが協力してやるよ。大人と一緒なら問題ねぇだろ。」
「そうですね、ウチも協力します。」
「アウローラちゃんも!」
「あ、ありがとう! おにーちゃん! おねーちゃん!」
 パッと花が咲くような明るさでケイタが万歳と両手を上げる。
 和やかな雰囲気の中、歩き疲れているケイタを一度休ませた後、徐に殺が立ちあがった。



「雪合戦を開始するぞ。」
 ぎゅうううっと力いっぱい雪を固めて宣言する殺。
 その目は今すぐ動かないと凍死すると言わんばかりに爛々と輝いていた。
 スノーボールの捕獲に一番効果的とされるのが雪合戦である。
 合戦と名が付く通り2人以上を必要とする遊びであるがゆえに、一人で探していたケイタがスノーボールに出会う確率はとても低い。
 チーム分けはヨシト&殺vsティル&アウローラ。ケイタは遊撃。
「雪原を歩いたりとかうさぎさんと走り回ったりとかはやった事あるけど雪合戦はアウローラちゃん初めてかなー。柔らかい雪だし、そんなに痛く無いよね? たぶん。」
「えーっと?手で雪を集めて、握って固めて……凄い! ボールができました! これを投げるんですか、なるほど! たしかスノーボールもこのような見た目でしたよね。でしたら投げる前やわざと当たって、雪玉と感触が違うか確かめる必要がありますね。」
 雪合戦は初めてだというティルとアウローラのチームは雪玉一つ作るのにも大はしゃぎだ。
 手のひらサイズに握った雪玉がただの雪である事を確認し、いざ投げようと相手チームへ向き直る。
「あ゛ーーーーつっめたい!!」
 べしゃりと音を立てて砕けた雪玉に続くようにティルの悲鳴が響き渡る。
 投球フォームをそのままにまるで悪役のような笑みを浮かべるのはヨシトだ。
「ヒャッハーッ!雪まみれにしてやるぜぇ!」
 台詞まで悪役ぶって掛かって来いと挑発する。
 その後ろでは殺が一心不乱に雪玉を作成している。
「いつの間にかスノーボールが混じっているんじゃったのぅ、良かろう……儂は凶悪に硬い雪玉を作る係に徹し、同チームのヨシトに投げてもらうぞ、くくく。(冗談じゃないわい、雪玉が肌にぶつかったら凍死してしまうじゃろ、マジ死ねるのじゃ)」
 作っては投げる。作っては投げるという見事な連携を見せるヨシトと殺。
 慣れない二人が一方的に追いつめられているのを見たケイタが、狙われていない隙をついて丸めた雪玉を手にする。
「俺、おねーちゃんたちの味方する!」
「何をする! 死んだらどうする!」
 力いっぱい投げた雪玉が大きな弧を描いてヨシトの上を通りすぎ、さてそろそろ参戦するかと立ち上がった殺へと命中した。
 砕けた雪が容赦なくスク水の隙間から入り込むのを大慌てで払い落とし、お返しだとばかりにケイタへと雪玉を投げ返す。
「よーし、アウローラちゃんも反撃するよ!」
 出来上がった雪玉を抱え、高い反応と機動力を生かして相手チームの側面へと回り込むアウローラ。
 途中で勢い余って雪へとダイブしたが、すぐに起き上がって楽しそうに笑顔を浮かべた。
「つめたーい! 雪ってこんなに冷たいんだね!」
 その声に気づいたヨシトと殺が標的を切り替えるが、ティルだってその隙を見逃さない。
 服についた雪を払い落とし、反撃だと口にした瞬間、ふわりとその金色の髪が風に舞って真っ黒に染まった。
 ティルはギフトによって悪いことを考えると堕天使となるのだ。
「え!? これ『悪い事』に分類されるんですか! 嘘でしょぉ!? でも投げますけどね、覚悟ー!」
 えいっと投げた雪玉がヨシトに命中する。
 声を上げて雪を払う姿に今だとばかりにアウローラとケイタが参戦した。
「おぶっ!」
「お返しだー!」
「ちょ、ふべっ!」
「やっちゃえー!」
「グワー!」
 次々と投げ込まれる雪玉に押され、大袈裟に後ろに倒れ込んだヨシト。
 上半身が雪へと沈んで足だけが天へと伸びるように突き出している。
「クッ……尊い犠牲なのじゃ。だが儂だってやられっぱなしではないのじゃ! オラァ! 歯ァ喰いしばれなのじゃァ! 氷上の彫刻にして負け犬と名を刻んでやるのじゃーーー!!」
 復活を待っていては二の舞になると手当たり次第に雪玉を投げる殺。
 空中で相殺し合う雪玉に、体に当たって崩れる雪玉。
 気づけば息が上がるほど盛り上がる中、アウローラは掴んだ雪玉にふと違和感を覚えた。
「え? あれ? なんか柔らかいよ!」
 感触としてはゴムのようなそれがぽーんと跳ねてティルの頭へ着地する。
「きゃあ! アウローラ様、ウチは味方で…あれ!? 動いてますね!? もぐもぐされてますね!?」
「あーーーーーー!! スノーボールだ!!」
 ティルの頭で動く雪玉、もといスノーボールは声に驚いたのかまたぽーんと飛び跳ねる。
 雪に紛れたら分からなくなると慌てて落下地点を測るその先に、雪から生還したヨシトが待ち構えていた。
「っしゃあ! 捕獲!!」
 大きな両手に包まれて逃げ出す事も出来ないスノーボール。
 雪合戦を中断して集まり、ケイタが持っていた籠に入れて一息つくと、じっくりとその姿を眺めてみる。
「これがスノーボール……見た目は雪玉じゃのう。」
「でも柔らかかったよ。」
「目とか口とか見た目じゃ分からないけど確かにもぐもぐされました。」
「持った感じ、冷たくもなかったが体温があるようにも思えなかったぜ。」
 興味津々という視線に晒されてスノーボールがぷるぷると震える。
 それを大事そうに抱え込んだケイタが息を切らせたまま笑った。
「スノーボールが何なのかなんて、大人も誰も知らないんだ。雪が降ると現れて、雪が解けるといなくなる。この子もきっと、春になったらいなくなっちゃうけど、見つかって良かった! 早くあの子にプレゼントしなきゃ!」
「おう! そんじゃ日も暮れるし帰ろうぜ!」
 帰るまでが遠足だ!と雪を払ってヨシトが笑い声を上げる。
 降り止まない雪を掻き分け、それでも楽しそうに帰路に付く5人。

 残された雪玉がゆっくりと雪に埋もれていく中でぽーんぽーんと跳ねたスノーボールが数匹、雪山の奥へと消えていった。

成否

成功

状態異常

なし

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