シナリオ詳細
進撃鐵鋼真夜中特急最終便
オープニング
●月黒に煙る
汽笛のあがる黒煙が、満月の夜を黒く塗ってゆく。
連結して回る車輪が力強く、連なり列をなす車両が長い車輪と枕木を踏んできしむ声をあげた。
やがて先頭車両が高い音をたててとまり、無人の駅……いや、駅ですらないスラム街の一角に停車した。
「おいコラ、さっさと降りてこいってんだよ。おめーはほんっとにトロいんだからよー」
「おあー……すまねえだ。オラぁ、夜は眠いだよお」
先頭車両のブレーキレバーを確認して、アライグマ系の小柄な獣種男性が車両から地面へと飛び降りた。
一般的なプラットホームの高さは120cm程度と言われるが、それはほぼ彼の身長と同じであった。頭はアライグマそのものであり、手足も栗色の毛皮がはえそろっているので、ともすれば服を着たアライグマにすら見えるだろう。
その後ろから飛び出し、背中からはえた翼をばさばさと羽ばたかせる鳩系スカイウェザー。彼も彼で首から上が鳩ではあったが、体つきは屈強で背も高く、むしろ首だけ違和感があるほどった。
工具を担ぎ、後部車両に走って行くアライグマ獣種。
「なあなあ、フレアナットぉ。この後オラたちどうするんだったか」
「どうすると思う、クルッポ」
「おあー………………」
鳩飛行種クルッポは宙に浮かんだまま制止し、三秒ほど首をかしげたまま黙った。
「バッカヤロー!」
「あイダッ」
小さなレンチを投げつけるフレアナット。
「いいかー? 俺らは今からそのスラム街までいって、家に押し入って子供をパクる! パクって列車に乗せる! 乗せてズラかる! それで仕事はオシマイだ。うまくやりゃあ金も儲かるし首都の永住権だって手に入るんだよわかってんのかー?」
「おあー……家、壊したらいいのか?」
「もうそれでいいよ。準備しろ」
「わかったダ」
後部車両がウィングドア形式で開放され、ベルト固定された複数のパワーアーマーが姿を現す。
ドラム缶めいたボディ。キャタピラ式の足。太い両腕。魔力で動くこの古代兵器改造品を操る彼らを……鉄帝軍は『魔動戦騎部隊』と呼んだ。
「『鐵鋼号改』、8機揃ったダ」
「ほんっとこういうの作るのだけは天才だよなオマエ」
●シルヴァンスの民
「ノーザンキングス連合王国って知ってるかい? 鉄帝北部にある三部族が結託して、鉄帝国の侵略に抵抗するっていう組織さ。
彼らの一部、シルヴァンス族の『魔動戦騎部隊』が帝国首都内に侵入したって情報が入ったから追ってみたんだけど……どうやら破壊工作って感じじゃあないんだよね。
興味があったら、ハナシだけでも聞いてみない?」
鉄帝首都にある酒場『くろがね屋』にて、あなたの隣に座った『黒猫の』ショウ(p3n000005)は焼酎の入ったグラスを片手にそんな風にあなたへ問いかけた。
どうやらこれは、遠回しな仕事の依頼であるらしい。
シルヴァンスとはノーザンキングスを構成する一部族であり、獣種や飛行種を中心とした器用で知恵の回る者たちである。ゲリラ活動を得意とし、鹵獲した武器や発掘した道具などを上手に改造して利用することで知られている。
ただ利用するだけでなく闇市なんかにも流すので、イレギュラーズの中には彼らの作った品を知らずに利用している者もいるかもしれない。
「今回は彼らが鉄帝軍から内密に拉致の仕事を受けたみたいでね。
同族の手引きでスラム街に侵入したってことらしいんだ。
なんでそんなことまで分かるのかって……手引きしたシルヴァンスにそのまま情報を売ってもらったからさ。キャットワン部隊って言ったかな。彼らはローレットに借りがあるんだって言ってたよ」
おかげで、『魔動戦騎部隊』の作戦開始時間と詳細な戦力がまるっきり把握できたというわけである。
「じゃあ、説明していくね」
『魔動戦騎部隊』の戦力はパワーアーマーと重火器を装備した8人で構成されている。
パワーアーマー鐵鋼号は闇市にも流れたくらい安定した人気のある品で、高いHPと物理攻撃力、そして防御性能が魅力だ。
弱点はAPや反応速度の低下。回避性能も若干低いとされている。
「本来なら、スラム街の家屋を破壊して子供たちを拉致する段階で駆けつけるのが限界だったんだけど、作戦開始時間もそのルートも分かってるからね、スラム街の端で待ち伏せが可能なんだよ」
今回は沢山のスチールコンテナが置かれたエリアに陣取り、彼らをスマートに迎撃するこができる。
「純粋なパワーで解決できるっていうのは、うれしいよね」
最後にショウは資料一式をあなたに手渡し、コインを多めにカウンターに置いて席を立った。
どうやら、ここはおごりだという意味らしい。
- 進撃鐵鋼真夜中特急最終便完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年01月16日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●夜は鉄の味がする
スチールコンテナの並ぶスラム街鉄道沿線。
荷車で運ばれてきた柱やら木製パレットやら網やらを、『白黒の傭兵』メル・ラーテ(p3p004228)はコンテナの間間へ大雑把に散らしてく。
「このくらいでいいの? てっきり、コンテナごと動かしてぴったり隙間を埋めるんだと思ったわ」
『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は召使いに作業を手伝わせつつ、コンテナの上からその様子を眺めていた。
「クレーンいるっての。それに、小さい障害物を散らすだけで咄嗟の行動は絞れるもんだぜ。『土壁より縄』は陣地構築の基本だな」
ぱしぱしと軍手の土を払って外し、尻ポケットにねじ込んでいく。
「こんなもんでいいだろ。キッチリやりすぎて感づかれても面白くねえしな。今度はキッチリとハメてやりたい」
「ほう? ずいぶんとやる気ではないか」
インスタントタラップを使ってコンテナに登り、パルクールジャンプで先にのぼったラーテに引っ張り上げてもらう『九尾の狐』綺羅々 殺(p3p007786)。
「クソ駄賃でクソ仕事してる奴が気にくわねーだけだよ。八つ当たりだ」
「くく……儂らも奴らを叩けば金が出るぞ。八つ当たりで儲かる良い役回りではないか」
「そうねえ。悪いことしてお金をもらおうっていうのは、今の世の中珍しくないものね」
縁に座って足をぶらぶらとさせるゼファー(p3p007625)。
頬杖をついて目を細める。
「色々事情はあるんだろうし、同族に情報を売られて先回りされちゃうことに同情もするけど……ま、雇われ商売はお互い様、よね」
シルヴァンス『魔動戦騎部隊』。彼らの誤算があるとしたら、寄る辺なきはずのスラム民に、きわめて安価に依頼を受けるローレットという何でも屋がついたことである。
そしてその事実は、彼らにとって大きな教訓を生むことになるのだが……。
「キャットワンさん達! ありがとうございます!」
虚空にむかって手を合わせる『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。
「いやあ、情けはひとのためならずとはよく言ったものですね。ご厚意に報いましょう!」
「あのときの決断が良い方向にうごいてなにより、だ……が」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は弓矢の軽い点検をしながら息をついた。
「金や永住権のために子供浚うシルヴァンスもいれば、命の対価に同族を売るシルヴァンスもいる、か。彼らもなかなか一枚岩ではなさそうだ。
それに『魔動戦騎部隊』といえばノース331基地で軍備の収奪作戦を行っていた部隊だったはずだ。今はどうなっているのか、気になるね」
「へえ、そんなことが」
本件と直接関係しないことだが、ゼフィラは『少しばかり懐かしい』といった様子で頷いた。
「たとえば……訴えかけて戦闘をやめさせたり、使う兵器の情報に対抗したり、とか」
「まさか。彼らが作った兵器に改良を加えないわけがないし、感情で仕事を切り上げるくらいなら最初からあんな仕事はうけないさ。
重要なのは彼らがビジネスで動いているということ。だから……」
「『交渉』が可能、ですね!」
混沌世界においては例外も多いハナシではあるが、傭兵という職業の特徴は金で動くということである。
逆に言えば金にならないなら動かないし、損が上回ればリスクカットを行う。
彼らにとって条件達成が不可能であることを示し、なおかつ損が出すぎないうちに切り上げる選択を与えることが、今回は可能なのだ。
そしてそれに気づいているかいないかで、戦術のとりかたも今後の流れも大きく変わってくるだろう。
さて、ここまで話題にでた『魔動戦騎部隊』。
彼らがそのユーモラスな外見に反して狡猾で強力であることを、『猫さんと宝探し』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)はしっかりと把握していた。
「油断は禁物だね。全力でぶつかって速攻でお帰り願おう!」
「子供を攫うって……どこでもそんな話があるもんだね……命はお金じゃ換えれないのに」
やれやれ、といった様子で息をつく『天京の志士』鞍馬 征斗(p3p006903)。
(魔動戦騎部隊の撃退……一応完全殲滅が目的ではないけれど……。
彼らによって被害が大きくなる前に止める意味では、良い牽制にはなるだろうかね。
まぁ、出来る事をしようか……自分でもね)
ふと空を見上げると、偵察に出していたカラスがこちらへ接近するライトの列を発見。
と同時に激しいショックによって共有五感が切断された。
「カラスが落とされた。どうやら敵に偵察を気づかれたみたい」
「問題ないよ。この距離なら――!」
アクセルはぴょんとコンテナからジャンプすると、勢いをつけて羽ばたいた。ビュンと風を突き抜ける音とともに、アクセルの姿がかき消える。
●星無き夜と羊皮の香り
防弾クリアパネルの内側でレバーを操作する小柄なアライグマ系獣種、フレアナット。
彼は自分と同じくパワーアーマーを装備した部隊員とともに、スチールコンテナの並ぶエリアをキャタピラシューズで走行していく。
装備車の小柄さが想像できぬほど堂々とした、しかしずんぐりとした鋼のボディ。
鹵獲品その他を上手に組み合わせ作り上げたそれを、彼らはメインウェポンとしていた。
「だいぶ走破性能があがってるな。耐久性も充分だ。数もそろえたし、基地の時みてーにはならずに済みそうだぜ。名前はなんつったっけ?」
『宵鋼号っていうダ』
上空からハイテレパスによる通信。
『カラスがこっちの部隊をやたら見てたから打ち落としたンだけども、もしかしたら敵が待ち伏せてるかもしれねえダな』
「あー? んなわけねえだろ。寝静まってるタイミングをわざわざ調べて襲撃してんだぜ。襲撃情報が漏れてるんでもなきゃ――」
と、その瞬間。
『敵襲ダ!』
鳩飛行種クルッポの呼びかけと同時に、アクセルが猛スピードで接近。
低空飛行状態からルーン・Hの爆撃を開始した。
鋭い飛行姿勢から生成された魔術ミサイルが、くるりとターンをかけるアクセルから切り離されフレアナットたちの宵鋼号へ急速接近。
「やっべ、散開!!」
レバーを強く引いたフレアナットに応じてパワーアーマーは反転。肩部のシールドを前面に出した防御姿勢をとり、左右の部隊はそれぞれ広く分散を始めた。
とはいえ、それほど広い場所を走っていたわけでもないために数機が爆撃に巻き込まれていく。
「こんにゃろ」
ガトリングガンを突き出し、アクセルめがけて発射。
空中で回避行動を開始するアクセル。
その一方で、黒い布を被っていたラーテはそれを振り払ってたちあがり、大砲を発射した。
弧を描き飛んでいったフレシェット弾が無数のダートをばらまき、部隊へ鋼の雨を降らせていく。
「畜生情報が漏れてんじゃねえか!」
『どうするダ』
「突っ切るしかねえだろ。そのためのパワーアーマーだ!」
進行をやめない魔動戦騎部隊の様子に、ラーテは『そうだろうな』と小さくつぶやいた。
「クソ仕事のツケを払わせてやろうぜ。殺、レジーナ。たたみかけろ」
「あい了解。アライグマと鳩とカラクリを格好良く追い払えばいいんじゃな?」
コンテナのうえで何かをもくもくさせてわざと目立ってみせる殺。
「お主らが児童を攫う悪党か……儂こそが正義の味方ジャスティス天狐なのじゃ!!」
妖気でできた刀を抜くと、吹き上がる毒の妖気を魔動戦騎部隊めがけて叩きつけ始めた。
と同時に、レジーナの天譴・華咆一閃が発動。
桜吹雪のごとき火の粉が周囲に踊り、魔動戦騎部隊を包み込んでいく。
物理攻撃に偏ったうえAPの弱い彼らには相当キツい攻撃のはずだ。
「決まったのぅ……世界を置き去りにする感覚は儂にぴったりじゃの」
「世界を置き去りに?」
と、自分にうっとりしている一方で。魔動戦騎部隊は複数のコンテナの列に分断する形で移動を続行。その状態からガトリングガンとミサイルによる火力の集中を行っていた。
魔動戦騎部隊の特徴は耐久と攻撃の高さと基本攻撃射程の長さである。
そうしたチームの強みはなんといっても火力集中による短期的な撃破だ。
回復の間を与えず一人ずつ素早く撃破するというものである。
ただし敵陣の突破を主目的にしている今、射程外に外れてしまう対象へ火力を集中しずらく、彼らの強みは今現在あまり活かせていないと言えた。
「やあ、いつぞや以来だねシルヴァンス諸君。
しかし巷で噂の人さらいに一枚噛んでいるとは……ノーザンキングスから鉄帝に鞍替えかな?」
コンテナの上を同じ方向に走りながら、ぴょんと魔動戦騎部隊の中央へと飛び降りるゼフィラ。
着地とともに繰り出されたチェインライトニングが彼らを包み、ゼフィラは長くとどまることなく即座にその場から飛び退いていく。
「今の奴、見たことあんぞ!?」
「何か言ってなかったかニャ?」
猫銃種のパイロットがそんな風にいいながらゼフィラへ狙いをつけようとする……と。
突如コンテナの隙間から飛び出してきたゼファーのチャージアタックが炸裂。
「ニャニャ!?」
槍を先端にして勢いよくつっこみ、機体下部に食い込ませた状態でドラム缶を支点にしたてこの原理でひっくりかえす。
「ほら、今よ!」
「お言葉に甘えましてっ!」
ウィズィニャラァムがずとんと力強く足踏みし、一度閉じた目を大きく見開いた。
パープルに輝く右目。
「恋人直伝――これが! 私のっ!」
スーディヴィライ。
ウィズィニャラァムが新たに獲得した疑似魔眼である。
あくまで疑似としているのは、彼女が右目に焼き付けた恋の感覚を反射したいわゆる『恋の魔法』ゆえである。
恋は盲目などというが、時として恋は眼力そのものとなる。
相手の目で世界を見たいという気持ちを、きっと恋と呼ぶのだろうから。
「恋の魔眼だぁーーっっ!!」
大きく見開いたと同時に光の柱が発生し、ひっくり返ったパワーアーマーを吹き飛ばしていく。
もちろんすぐそばにいたゼファーもろとも。
「あぶない!? って、ちょっとウィズィ! 今の危なかった! 普通に危なかったわ!」
などと言いつつも、ちゃんと直前で飛び退いてダメージを軽減するちゃっかりさである。
「咲け、悲哀の黒い華……恨みは無いけれど、君たちにはね……!」
そこへ追撃のように『ロベリアの花』を打ち込む征斗。
「ニャニャア! やべえニャ! こいつら思ったより戦力いるニャ」
『空から見えづらい所に隠れたみたいダ』
「完全に待ち伏せされていやがんな……しゃあねえ、行けるところまでいくぜ。どのみち振り切っちまえばこっちのもんだ!」
キャタピラシューズを加速させる魔動戦騎部隊。
征斗はその様子を確認しながら、コンテナの上を走って行く。
「予定通り……かな」
地面をまっすぐ、大きなスチールコンテナの間をすり抜けるように突き進んでいく魔動戦騎部隊。
一方で征斗たちはコンテナの上を走り、時にコンテナ間をジャンプでわたり、常に相手の高所をとり続けながら戦っていた。
この立地の有利さは、魔動戦騎部隊にとっては数十メートル先がどうなっているか分からない上にコンテナの向こう側に降りられると射撃が通らないという不自由さがあるのに対し、こちらは先の展開が分かる上防御をしやすいという所にある。
とはいえ魔動戦騎部隊も火力を集中させた時のダメージが激しいので、元々のHPが高くないと味方の回復支援を受ける前に落とされるなんてこともザラである。
「自分はここまでみたい。あとは任せるね」
征斗は最後の最後で高威力の陰陽術を解き放ち、敵のパーワーアーマーへ発射。
風と氷の複合魔術によって動きを激しく鈍らされたパワーアーマーの様子を確認すると、征斗はぴょんとコンテナの内側へと飛び込んで身を守った。
「よっしゃ美少女ちゃん一人倒したぜ」
「バっカ野郎喜んでる場合か。次来るぞ!」
ビュンと風をきって飛んでくるアクセル。
今度は魔動戦騎部隊の後方から煽るようにして、神気閃光を次々と打ち込んでいく。
アクセル主観でみたならば、月に照らされた夜のコンテナ郡の上を飛び、溝へと統べるように飛び込んでビームを連射。反転してミサイルの射撃を仕掛けてくる魔動戦騎部隊から逃れるべくすぐさま溝から脱していくといった姿勢である。
「追い込み完了。行けるよ」
被弾した翼をかばうようにしてコンテナ上に着地するアクセル。
と同時に、レジーナとラーテ、そして殺がそれぞれ道の前後へと着地した。
スチールコンテナである程度限定された一本道。
気づけば縦一列になって通行してた魔動戦騎部隊の真正面を塞ぐ形での着地である。
自殺行為? 否、これこそが彼女たちの狙いである。もちろんフレアナットもしれに気づいて声を上げたが、もう遅い。
レジーナは紫の薔薇が散るかのような魔砲を発射。
ラーテはその側面から次々に擲弾を投げ込み爆発させていく。
「城攻めしかり砦しかり、陣地ってのは攻められる時にこそ効果を発揮するもんだ。地形そのものが罠……ってことだな」
「然様。この戦い、始まった時点で儂らの勝ちはきまっていたのじゃ!」
後方。つまりは退路を塞ぐ形で構える殺。
妖気の剣をぼわぼわと変形させると、沢山の花がついた杖へとかえた。
「これこそが我が魔法のステッキ! ラヴィアン☆ロォオオーズ! なのじゃ!」
妖術砲撃。
連続爆発。
魔動戦騎部隊のうち一機が破壊され、ドラム缶状のボディ丈夫から猫獣種が飛び出してきた。
「やっべやっべ、死ぬニャ!」
「そもそもバレバレなんですよ、あんたたちの作戦は! そんなことでこの防衛網を突破できると思ってるんですか!」
コンテナ上に陣取ったウィズィニャラァムが手をかざすと、うねる愛の情熱が巨大なナイフを形作り、おなじみの投擲フォームによって解き放たれた。
ガゴン、という音をたててパワーアーマーの装甲を貫くナイフ。
小爆発を起こし、フレアナットはパワーアーマーから飛び出した。
「チッ、こんな防衛戦力があるなんて聞いてねえぞ。なんだよあのクソハゲ将校俺らをハメやがったな!」
フレアナットはガトリングガンをひっこぬいて構える……が。
「このまま去れば追いませんよ!」
と、ウィズィニャラァムが突然の停戦を持ち出した。
「でも! 逃げないならば一切容赦しません! 貴方も、貴方を信じた仲間達も、全員殺します!」
「…………」
「…………」
ちらりとお互いを見やる魔動戦騎部隊たち。
ウィズィニャラァムを守るように槍を水平に構えて立ったゼファーが、彼らにウィンクをしてみせる。
「こんなケチな仕事で死ぬつもり?
私だったらやっぱ無理でした☆ って帰っちゃう展開ですけどねぇ。
逃げるなら別に追いもしませんし、誰ぞにチクる気もありませんし……どうぞお好きに?」
「フレアナットォ……」
「ええい畜生」
フレアナットは銃を放り出すと、両手を掲げて見せた。
「焦って汚え仕事を受けた報いってやつだ。殺されねえだけオトクだと思うしかねえ……で? 本当にタダで逃がしてくれんのか?」
小首をかしげるフレアナット。
ゼフィラはそれに苦笑で返した。
「個人の主義主張はあるが、あくまでローレットは『何でも屋』でね。受けた仕事をこなすだけさ。つまり、君たちをスラムに入れずに撃退することだよ」
「こういうときは感謝を強要したり拷問して情報を絞り出したりするもんだがな……わかったわかった。おとなしく帰るよ。前金と損害額でまあトントンってとこだしな」
「オイ」
手榴弾を手のひらでころころとやってみせるラーテ。
それを見てフレアナットは顔をしかめた。
「わーかってるよ。俺だって好きでやってるわけじゃねえんだ、もうこういう仕事はやらねえよ」
「わかりゃあいいんだ」
と、こうして。魔動戦騎部隊はダメージもそこそこに部隊を引き上げ、撤退していった。
こちらの損害はそこそこあったものの、双方甚大(ないし致命的な)損害を受けずに戦闘が終了したのだった。
この結果がいかなる未来をつくるのか。それはまだ、わからない。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
■オーダー
コンテナエリアで『魔動戦騎部隊』を迎撃すること。
彼らは別に死にに来ているわけじゃないので、損害が大きくなると普通に撤退していきます。
『撤退のしやすさ』という点から言うと、一体ずつ潰していくより全体にまんべんなくじわじわダメージを与えていく方が効果的です。(特に彼らは生き残ることにかけては判断が速いと言われています)
余談ですが、今回の依頼主は『ヒミツ』だそうです。匿名の依頼なんですね。若干バレバレですが。
エネミーデータはOPにあるとおり、フィールドも同じです。
補足するなら、彼らのパワーアーマーは防具扱いであり取り外し(ないし略奪)不可。
コンテナは日本の湾岸倉庫に沢山並んでる、大型トラックの荷台部分みたいなアレです。
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
Tweet