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シナリオ詳細

<ちゃうねんなんか2019>スニーキングミッション・ザ・サンタウロス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●その名はサンタウロス
 しんしんと、しんしんと。
 本年も晩の頃となれば、それはそれは寒気が肌を刺すものであるのだが、瀬の時期というものはどこか誰もが浮かれている。
 家族にか、恋人にか、それとも一年を頑張った自分へか。人々は自分をいたわり、何かに感謝し、贈り物を求めて街を歩いている。
 傘をさすでも無い程度の雪が降りはじめ、手のひらを上にかざして夜空を見上げた。天は遠く、日は沈みきってその顔色を見せてはくれない。しかし、それすらもどこか煌めいて見えた。
 シャイネンナハト。今日は聖なる夜。
 しかし、そのような目出度い中でも困っている人はいる。せっかくの祝日にも頭を悩ませていうというのだから、少しだけ、手を貸してはもらえないだろうか。
「というわけで、本日の依頼人さね」
 どこか古めかしい口調の女がその人物を紹介する。集められたイレギュラーズ達の前に現れたのは、赤い服を来て、豊かな白ひげを生やし、傍らには大きな白い袋を置いた人物。
 まさか、と一部が目をみはる。いいや、この混沌だ。ありえない話ではない。
 そう、その人物――と、その上で肩車されているリリファ・ローレンツ(p3n000042)だった。
「ちょっとまってなんですかこれ! なんで私肩車されてるの!? せっかく今日に向けてお洋服も用意したんですよ!!?」
 リリファは可愛らしいサンタ衣装に身を包んでいる。凹凸の少ない身体のせいで(「キシャアアアアアアアアアアアア」)色気というものはまるで無いが、ミニスカートのサンタクロース衣装はとても可愛らしいものだ。
 それが今、似たような赤い服(無論、ミニスカートではない)を着た長身で筋骨隆々のヒゲオヤジに肩車されて、必死で自分のスカートを抑えながら喚いている。
「高い! 視線が高い!! 高くて怖い!! やめて不用意に動かないで! やめろ! 下から覗くなよ! 絶対だぞ!!!??」
 なんだろうこれ。
「そう、ご存知サンタウロスさね」
 …………そうか、サンタウロスか。
 じゃあ仕方ないな。
 ミノタウロスは半人半牛。ケンタウロスは半人半馬だ。ということは、サンタウロスは半人半サンタクロースなのだろう。だからサンタクロースのボディの上に人間(リリファ・ローレンツ(p3n000042))が乗っている。
 うん、何もおかしいことはない。おかしいのはこの世界だ。
 慣れというか諦観というか後でしっかりツッコミを入れようという気持ちからか、その現実を受け入れようとした時、サンタウロスが口を開いた。
「良い子達よ、実はとても困っているのだ。知っての通り、サンタウロスはこの時期、良い子の家にプレゼントを配る役目を担っている。だがこの通り、今年は本来のヘッドパーツが不在なのだ」
「私をヘッドパーツって言うな!!」
「絵物語で見たことがあるかもしれないが、私の本来のヘッドパーツは恰幅の良い高齢の老人でな。いい加減肩車はキツイし煙突にも腹が引っかかるから痩せろと毎年言っているのだが――いや、それはいい。トナカイ達は何故か爺が太ましい程張り切るしな。しかし今年は、膝と腰を痛めおった。これではプレゼントを配れない」
 プレゼントを配れない。それは一大事だ。良い子達は毎年、サンタウロスが来るのを楽しみにして眠りにつくというのに。
「そこでだ、今晩だけでいい。私のヘッドパーツになってもらえないだろうか」
 なんと、自分たちにヘッドパーツに。それはつまり、あの大任務の代役を。
「そう、私と一緒に、良い子の元へプレゼントを届けてほしいのだ。済まないとは思っている。これは激務だ。肩車をしながら街中の煙突という煙突を家主に気づかれぬようくぐり抜け、子供の枕元にプレゼントを置き、また煙突を登って出ていかねばならぬ」
 サンタウロスの仕事は何時だってサイレントミッションだ。最近は良い子のお父さんとお母さんが色々と夜更ししているケースも多い。だが彼らの就寝を待っていては街中を回ることなど出来ないため、それに隠れて行うスニーキング技術も求められるのだ。
「頼む、良い子たちが待っているのだ。私とともに、任務を果たして欲しい」
 子どもたちの笑顔のため。そう言われて、断れるわけもなかった。

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

サンタウロスのヘッドパーツとなって、良い子達にクリスマスの贈り物をしてください。
子供が寝静まった時間帯。各家の煙突をくぐり抜け、あとを残さないよう家の中に侵入し、子供の枕元にプレゼントを置いて、また煙突を登って家から脱出する。という難しいミッションを、サンタウロスのレッグパーツに肩車されながらクリアせねばなりません。
良い子達は良い子なので間違いなく寝ていますが、お父さんやお母さんは起きているかもしれないし、肩車するには天井が低すぎたり、子供部屋には鍵がかかっている可能性もあります。最近では警備会社と契約し、常に監視カメラと熱センサーで24時間見張りを立てている家もあるかもしれません。
しかし良い子達の笑顔のため、この難問をクリアしてください。
なお、家にはどのようなトラップが待ち受けており、どんな技術や知恵を持ってクリアしたのかはお任せします。
サンタウロスとして行うスニーキングミッションを、プレイングに明記してください。

【キャラクターデータ】
■サンタウロスのレッグパーツ
・長身で筋骨隆々のヒゲオヤジ。赤いサンタ服を着ている。
・本来は一心同体であるはずのヘッドパーツが本年は膝と腰を痛めて療養中。

【シチュエーションデータ】
■良い子の家。
・少なくとも良い子は寝ている家。
・他の家人は起きているかもしれないし、防犯設備が整っているかもしれない。
・侵入、脱出経路は煙突を用いる。
・煙突がない? そんな家はない。集合住宅? 煙突はある。大丈夫だ。煙突を信じろ。

  • <ちゃうねんなんか2019>スニーキングミッション・ザ・サンタウロス完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年01月12日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
ヨハン=レーム(p3p001117)
ステンレス缶
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
ムスティおじーちゃん
カレン・クルーツォ(p3p002272)
蝶かげろい
フィーゼ・クロイツ(p3p004320)
穿天の魔槍姫
ティスル ティル(p3p006151)
白雀
サイモン レクター(p3p006329)
吸血鬼を狩る吸血鬼
リコシェット(p3p007871)
跳兎

リプレイ

●彼らはサンタウロス
 ご存知のとおりだが、サンタウロスの仕事は激務である。良い子ポイントを貯めた少年少女にプレゼントを配布する善良な業務であるのだが、最近の家々はどこもセキュリティに厳しい。去年などは練達性の熱感知センサーまで用意されていた。私は長年の相方であるヘッドパーツと共に苦難を乗り越え、子供たちに夢と希望を与えてきたのである。しかし、今年はとある問題が発生した。ヘッドパーツが腰をやったのである。

 どうにも、この日は浮足立つと言うか、心が自然と弾んでしまうものだ。何というわけでもない、誰それの誕生を祝うわけでもない。しかし、確かにその日は特別であるのだ。
 と、鼻先に冷たい感触。雪だ。雪が振り始めた。意識して口を広げながら息を吐き出せば、それは真っ白になって空気中へと散っていく。しんしんと、しんしんと。雪は冷たい。冷気は肌を刺す。しかしこの日はどれだけ振っても、すべて輝いて見えるだろう。
 それはそれとして、気温が下がるということは激務である。
「サンタさんは実在した! 証明完了!」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)でのサンタウロスは実在が確認されておらず、否定派と肯定派で戦争が起きる寸前であったが、混沌ではちゃんと存在している。子供たちに夢と希望を与えてくれるのだ。
 しかしその身も半欠けでは役目を全うできないだろう。つまり、イレギュラーズの出番である。
「今夜はボクも手伝うよ。魔法サンタ、セララ参上! 子供達に夢を届けるのだー!」
「意味が分かりませんね!!」
『孤高装兵』ヨハン=レーム(p3p001117)は喚いていた。
「なんかシャイネンナハトのお仕事、多くはイベントだったと思うんですがこれだけ異様なオーラ漂ってましたし!! プランちゃんが出てきた時からもう薄々わかってましたよ!! ナハト手当はでるんですかこれ! ほかの人がシャイネンナハト楽しんでるときに何でおっさんと合体しないといけないんですか!! きいい!!」
 手当など無い。仕事なので報酬が出るんだよ。
「サンタウロスのレッグパーツ……とても魅力的な男性だね」
『ムスティおじーちゃん』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)がうっとりとした瞳でレッグパーツを眺めていると、彼は雄々しい笑みで答えた。
「褒められて光栄だ。しかし、私には先約が有るのでね」
 年の瀬の仕事を楽しもう。夢と希望を与える側が、それを見失ってしまわないように。世界にそれが満ち溢れていると証明するために。
「さあ、頑張るぞ!」
「ええ、シャイネン・ナハトは素敵にケーキとチキンで過ごすつもりだわ」
 しかし『蝶かげろい』カレン・クルーツォ(p3p002272)が迷い込んだのは残念ながら『ちゃうねんなんか』である。さあ、夜通しお仕事です。
「サンタクロースについては知っているわ。白いお髭の優しいお爺さんがクリスマスのプレゼントを贈ってくれるの。元の世界に居た頃はお姉様が――――サンタウロス……? え、私の信じてるサンタさんと違う……」
「ふむふむ、サンタクロースも大変なのね。でも、夢を与えるのは良い事だと思うのよ」
 常に肩車体勢で夜通し家々を訪問して回るとは、なんとも激務だと『黒曜魔弓の魔人』フィーゼ・クロイツ(p3p004320)。sかし、一年間良い子であった子供たちが笑顔になれるよう贈り物をするのだから、その仕事は素晴らしいものだ。
「でも同時に、クリスマスは大人も子どもも関係なく夢を見て良いと思ってる」
 サンタからすれば、どこまでが良い子なのだろう。
「……なんか色々言いたいしツッコミたいけど、それは置いといて」
 物を横にどけるジェスチャーをする『雷雀』ティスル ティル(p3p006151)。
「それじゃ、夜中の弾丸配達やっていこっか。良い子の願いが叶うように私たちで頑張らないとね!」
 サンタ業務を手伝える。そう考えれば、中々に希少な体験ではなかろうか。子供の頃のわくわく感を思い出せば、仕事にも熱が入るだろう。
「……ところでこれ、上のパーツはサンタ服着る感じなの?」
「サンタの仕事ってのも思ったよりも大変なんだな」
 伝承にもしっかりと残っているため、『吸血鬼を狩る吸血鬼』サイモン レクター(p3p006329)もその業務内容についてはある程度知っていた。
 しかし、それをタスクごとに細分化すると、なるほど、確かに激務である。肩車姿勢のままトンネルを潜り、家人に見つからず、何の痕跡も残さずにプレゼントだけを置いて帰るのだから。
「どうせ暇してたとこだ、手伝うぜ」
「サンタウロス……」
『跳兎』リコシェット(p3p007871)はレッグパーツである男性を見上げてつぶやいた。毎年の激務に耐えるためか、その肉体は完璧に磨き上げられている。たぶん、イメージ通りなのはヘッドパーツの方なんだろうな。
「レッグパーツとかヘッドパーツとか、もう突っ込まない。人間、諦めが肝心だ」
 諦めたようにため息をつくと、頬を軽く張って気合を入れる。
「サンタウロスはともかく、子供にプレゼントを届けるのは大事だからな。子供たちの夢を守る仕事。協力するぞ!」
 それではと、全員が渡された赤い衣装に着替えていく。スニーキングミッションでは有るのだが、同時にイメージも大切にしなければならないのだ。

●そろそろサンタウロス
 そもそもだ。サンタウロスという激務をこなしながらあれだけ太れるということがおかしいのだ。明らかに、摂取カロリーの異常である。ここ数年、何度も注意してきたのだが、ヘッドパーツは私の言葉に耳を貸さなかった。どころか、それがストレスだとより食べ始めたではないか。なんということを。いくら彼が私の普段使うバーベルより軽いとは言え、あれでは体に影響が出ることは目に見えていた。

「それでは、まずはここから始めよう」
 時刻は深夜。良い子であれば眠っている時間である。
 おあつらえ向きに煙突の有る一軒家。良かった、煙突なければ一軒目から煙突を設置しなければいけないところだ。
「では行くぞ、シャイネンナハトが子供たちを待っている」

●今宵はサンタウロス
 当日ギリギリまで看病を行っていたが、どうにも回復は見込めそうにない。しかし、レッグパーツだけで配るわけにも行かないのだ。なぜならそれはサンタウロスだから。どちらのパーツも揃ってこそサンタである。子供たちの夢を壊すわけにはいかないのだ。そこで、臨時のヘッドパーツを雇うことになった。たまにはそういうのも良いだろう。

 セララはいきなり懸念していた問題にぶち当たっていた。
 この家、灯りがついている。
「寝てないじゃん……!」
 しかし慌てることはない。一軒家の広さをお父さんお母さんの二人だけで目を光らせ続けることなど不可能だ。
 玄関でチャイムを慣らし、そのまま裏手にダッシュ。煙突に登り、中へと侵入するのである。
 両親のふたりともが釣れなくても、どちらかは玄関まで向かったはず。つまり警備が手薄になっているのだ。
 子供部屋の鍵はかかっていない。中へと侵入し、速やかに靴下へとプレゼントをシュート。
 ついでに枕元へ魔法騎士セララの漫画も置いておく。あれ、犯人の手がかりじゃね?
「ふっふっふ。これがボクの目的。クリスマスプレゼントのついでに魔法騎士セララの漫画を広めよう大作戦だよ!」
 抜け出し、次の家を目指しながらセララは笑う。
「目指せ、発行部数歴代最高! さあ、世界中に配っていくよ! 走れサンタウロス! 疾風のごとく!」

「ぬおっ、この力は……!」
 ヨハンに渡されたプロテインを飲むと、サンタウロス(レッグ)は全身の筋肉にさらなる力が宿ることを実感していた。
「この肉体、サンタ業務の為に完成させたと自惚れていたが、まだ先があったか……!」
 そしてヨハン(ヘッド)を装着(肩車)。いつもより荒々しく寝静まった家へと向かう。
 ヨハンの保身もばっちりだ。きぐるみを着込んでいるので、遠目ではあれがヨハンだとはバレないだろう。レッグパーツは一目瞭然だが。
「しまった、監視カメラとかあるんですか……!?」
 鳴り響く警告音。このままでは警備会社が突入してくるだろう。
 大急ぎでプレゼントを靴下に放り込むと、煙突から屋根屋根を伝って逃げていく。
 既に集まり始めている警備会社の人達。
「リリファ・ローレンツ(p3n000042)です! 私はリリファ・ローレンツ(p3n000042)です!!」
 がっつりと知り合いに罪をなすりつけつつヨハン(ヘッド)はその場を逃げ切った。

 煙突。サンタウロスの業務をこなす上で絶対に通る必要があるのが煙突である。これは世界中に散らばったサンタウロス伝承のどれにも記載されている常識であるため、サンタウロスは煙突以外からの家屋侵入を許されない。
 よって、ムスティスラーフにとって最大の難関がこの煙突からという最初期段階であった。
 おなかがつっかえるのである。ヘッドパーツ氏はどうやってこれを毎年くぐり抜けてきたのだろう。
 ムスティスラーフは術式を編んで体型を変化させる。激ヤセである。知り合いが見たら体調を心配するかもしれない。
「……まさかこれが役に立つ日が来るとは思わなかった」
 速やかに侵入を成功させるが、まだ一部の部屋は灯りがついている。どうやら両親の寝室であるようだ。
 邪魔をされては敵わない。ムスティスラーフは甘い香りのするポーション瓶の蓋を開けると、非致死性手榴弾のように扉の隙間からそれを投げ入れた。
 これで邪魔にはなるまい。寧ろこっちが邪魔者になるのでさっさと退散しようか。

「監視システムはここと、ここと……」
「ここはどうだ? 死角になっていて見つけづらい。以前にも同じような間取りの家があった」
「え、本当? 確認させるわね」
 カレンとレッグパーツは侵入前に使い魔による偵察を行い、家の中のマップを構築。監視システムの有無・設置箇所の割り出しを行っていた。
 システムが厳しいからと後回しや諦めるということはしない。子供の夢を壊すわけには行かないからだ。サンタはこの日、プレゼントを届けねばならない。
 息を潜めて中に侵入。監視カメラの位置はわかっている。映らないルートも構築済みだ。
 しかし誤算があった。子供部屋まですんなり到着できたのはいいものの。敏感な子供だったのだろう。ベッドに寝ていた少年は起き出してしまったのだ。
 目をこすり、あくびをする少年の首にカレンは素早く当身。空手チョップ。少年失神。プレゼントは靴下に投入。
「『どついたるで!』って言うのよね? 関西人ムーブメントなら何とかなるわね」

「ここのシステムは堅牢だな。死角が存在しない」
「ねえ、こっちのケーブルであってる?」
「ああ、赤い方を切るんじゃないぞ」
 フィーゼとレッグパーツは侵入ルートにある監視システムの配線を予め切断し、経路を確保していた。
 時折、こういうセキュリティの万全な家がある。その際には、システムを排除するしかない。
 中に入ると、薄暗がりの中でお父さんが仕事をしていた。シャイネンナハトだと言うのに、ご苦労なことだ。
 フィーゼは背後から近づいてそっと口を塞ぎ、首を腕でホールドする。そのまま頸動脈を締めていけば、数秒で気絶するだろう。
 落ちる寸前、耳元で「メリークリスマス」と囁いた。暗殺の仕事だったっけ。
 そして安らかに眠った(生きてます)彼の近くにペアリングを置いておく。今日くらいは大人も夢を見て良いはずだ。
 メッセージカードを添える。内容は一言。『夫婦仲良くね』。
『残り短い人生を噛み締めろ』とも読めてしまうかもしれない。

 家の中に侵入したはいいものの、ティスルは困り果てていた。
 親御さんががっつり起きていたところに遭遇仕掛けたのである。
 顔を合わす前に手早く家具の幻影を生み出し、その向こうに隠れているのだが、この部屋からふたりとも出ていく気配がない。
 このまま悪戯に時間がすぎれば、いずれは幻影も解けてしまう。何より、シャイネンナハトの夜に夫婦で仲睦まじいプライベート空間に隠れているのはえらく気まずいものだった。
(低空飛行してもいいけど、たぶん羽根残しちゃうんだよ……!)
 この距離ではどれだけ音を殺しても足音が伝わってしまうだろう。時に、レッグパーツはどこへ――その時だ。
 がしゃんと、別の部屋で音がした。
 親御さんらはびくりと身体を震わせると、音の正体を確認するために部屋から出ていく。
 その隙間に部屋の外で脱出。子供部屋に向かうまでの廊下でレッグパーツと合流。そして合体。
 室内で大人の肩車は天井が近くて辛いが、これも様式美だ。

 サイモンが担当する家はなかなかに大きなものだった。明かりは消えている。ということは大人も寝静まっているのだろう。もしかしたら、両親も水入らずでどこか出かけているだけかも知れないが、それはそれで仕事がやりやすいというものだ。
「どれ、煙突を……む! この家、犬を飼ってやがるな……」
 犬は強敵だ。やつらは鼻が優れているので、いくら音を消して侵入しても意味がない。ニオイを完全に消し去ることも、家人と同じ匂いを纏うのも不可能だ。
 仕方なく催眠をかけて眠らせることにした。朝にはちゃんと目覚めることだろう。
 煙突から中へ侵入。よく手入れがされているのか、潜っても煤がつくことはなかった。
 中は暗い。少し耳を傍立ててみたが、人が起きている気配もなさそうだ。
「俺は暗いところでも見えるから問題ないがレッグのおっさんは大丈夫か?」
「問題ない。この通り鍛えているのでな」
 全く意味はわからなかったが、見えるならいいかと二人は子供部屋を探し始めた。

「サンタウロス、お前なら行けるだろ。今年は軽量型サンタウロスだ。コーナーリングは私に任せろ!」
「おうとも!」
 リコシェットをヘッドとしたサンタウロスの動きは素早かった。本来のヘッドパーツよりも遥かに軽いリコシェット。さらにバーニアの推進力とレッグパーツが装着したローラースケートによる機動力が合わさり、かつてないスピードタイプのサンタウロスが誕生していた。
「監視カメラがあるなら――」
 その前を平然と通り過ぎたが、警報が鳴り出すことはない。
「映像に残らない速度で進めばいい! なんでか落とし穴トラップがあっても――」
 ぱかりと足元が開いたが、その頃にはもうサンタウロスは遥か向こうにいる。
「開く前に渡ればいい!」
 そう、センサーに引っかからなければ、そこに居たことにはならないのだ。誰も確認していなければなかったと言い張れる。
 これぞ量子論的サンタウロスの爆誕である。
 家中、ローラースケートの擦れた跡がすごそう。

●来年もサンタウロス
 帰りに湿布を買って帰ろうと思う。

「ありがとう良い子達。本当に世話になった」
 一晩中家々を駆け巡っていたため、疲労と眠気がひどく、朝日は目に眩しい。
 しかし、やりきった充足感が体の芯に満ちていた。
「これは私からの気持ちだ。受け取ってくれ」
 そう言って渡される小さなプレゼントボックス。サンタから手渡しでプレゼントをもらうなど、世界でもほんの一握りではなかろうか。
「では諸君、良いシャイネンナハトを!」
 そう言って、朝日をバックにサンタウロス(レッグパーツ)は伝承の中に帰っていった。

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

サンタウロスのおじさんはいいました。

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