シナリオ詳細
無法者に審判を下せ
オープニング
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「ひぃぃっ!!」
馬車と荷物を奪われた若き商人は、平原の向こうに見える王都へ逃げてゆく。
顰め面の男はソレを追いかけようとしたが、幾分相手の逃げ足は疾い。舌打ち一つをその場に残して振り向き、後方の「戦利品」を確認する。
即ち、商人から奪った彼の脚――既に引く馬を殺された、馬車一台。他の仲間達はそこに積まれた、本来ならば市場に並ぶはずだった書物や武器やらをすでに見定め始めていた。
「……おい、終わったぜ。面倒一つ残っちまったけどな」
面白くなさそうな顔のまま男が話しかけるが、逆に馬車の中身を確かめている彼の仲間達は、その中から宝石一つを掲げ。
「知らねーよ。何かあっても返り討ちにすりゃあいいだろ」
今回の戦果に、満足そうに笑った。
「それより、オラ、さっさと運んじまおうぜ。奪ったブツの鑑定くらいは落ち着いてやりたいだろ」
「金目のモンは持ってけるだけ持ってくとして、馬はいつも通り掻っ捌いておくか。日が昇ってる内にに済ませようや」
ある程度中身を見定めたのち、自分たちでトドメを刺した馬の死体を見て、また笑う。
「人様の荷物をパクるだけで普通よりボロい商売になる。いい時代だわ、ったく」
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「お仕事です!」
ローレットの一角から、ユーリカ・ユリカ(p3n00002)が声を張り上げた。机にはすでに書き込みの入った王都全域の地図が広げられている。
声に反応したイレギュラーズたちがにわかに集まりだし、ユーリカは満足そうに微笑んでから、では、と依頼の話を切り出す。
「今回は旅の商人さんたち……隊商さんからの依頼です。この方々はメフ・メフィートでは手に入らない珍品や伝統工芸、私たちにゆかりのあるモノでは……それぞれの鍛冶屋などで作られた武器防具などを仕入れていただいているのですけれど」
その隊商の馬車の一群が、強盗団擬きのゴロツキたちに襲われてしまった。ユーリカは手元のメモとイレギュラーズの顔を行ったりきたりさせながら、話を続ける。
「商人さんは無事ですが、代わりに荷物は全て奪われてしまいました」
話によれば、乗り合わせていた商人は荷物全てを置いてローレットまで逃げ込んできたそうだ。
地図上の王都の中心より少し離れた郊外に、ユーリカは1本ピンを刺す。そこはメフ・メフィートからの道が伸びる、平原が続く所だ。
「皆さんには、このゴロツキの退治をお願いします。根城や人数、活動時間などもわかっているので、襲われた現場に行けば間違いなく逢えるはずですっ!」
ぐ、と拳を握って語るユーリカ。
商人達の証言とローレットの事前調査によれば、向こうは流通ルートやそのスケジュールを完全に把握しているわけではないようで、ほぼ毎日のように隊商の通るルートへ見張りを立て、草場に紛れるよう隠れている。
つまり、商人達と同じように、昼間に流通ルートである平原の一本道を通れば確実に遭遇できる。
「今回は場所が見通しのいい平原で、隠れられるような場所はありません。事前に張り込んだりすると、ゴロツキのほうが戦闘になる前に逃げてしまうかもですね」
そこで、今回は主に2つの作戦が考えられる。
1つ。隊商であるかのように見せかけ、ゴロツキたちをおびき出す作戦。
2つ。小細工はナシ、現地でゴロツキたちを発見・対処する作戦。
「戦いの心構えをしっかり整えれば、難しい御手ではないと思うのです。方針に関してはあくまで今の私の思いつきですので、どう動くかは皆さんにお任せするのですっ」
今回必要があればギルドから馬と馬車を貸し出すので、作戦次第で検討をしてほしい。
それ以外にも必要なモノがあれば、可能な限りギルドのほうで手配はしてくれるそうだ。
「それから、今回の目標……ゴロツキたちの情報です」
ユーリカは鞄の中から、何枚かの人相書きを机の上に広げる。
「厳ついお顔の方はハンマーを、細い顔の方だけは皆さん弓を扱うみたいです」
犯行そのものは手慣れている様子です、とユーリカは語る。
そして最後に。
「今回は彼らの捕縛か、討伐をお願いします。捕縛のための縄は用意しておきますけれど、気絶させた後の彼らをどう扱うかはお任せします」
神妙な面持ちで告げると、お願いします、とユーリカはイレギュラーズに一礼をした。
- 無法者に審判を下せ完了
- GM名山吹ヤマネ(休止中)
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年01月23日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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イレギュラーズはローレットから少し離れた馬小屋の前に集まっていた。
そのうち一人の、美しいグレーの髪をたなびかせる凛とした佇まいの女性が、しっかりと丈夫な手綱を握っている。
「コッチは問題ないわ。私達の希望通りの馬車を貸してくれた」
『Liberator』エリニュス(p3p004146) がその手綱を軽く引けば、繋がれた逞しい馬が一頭、頭を垂らした。その馬の胴は、後方にある大きな幌の着いた馬車に繋がっている。
この馬と馬車は、ローレットから貸し出されたもの。街道に出没するゴロツキをどうにかするため、イレギュラーズは隊商であるかのように見せかけ相手をおびき出す作戦を取った。
幌付きの馬車はそれ自体珍しいモノでなく、複数のイレギュラーズが希望していたこともありローレットの手回しも早かった。元々何人乗り込むかも目星がついていたので、大きい馬車もきちんと貸してもらえた。
「一生懸命商品を仕入れた商人さん達、その商品を必要としている人達にも迷惑をかけているゴロツキさん達は許せません!」
立派な馬車を見て、『特異運命座標』アリア・セレスティ(p3p000189) は情報屋からの話を思い出す。
彼らは私利私欲のためだけに、馬を殺し、商人が遠路から仕入れた馬車の中身を金銭に変えて生き凌ぐ小狡い連中だ。放っておけば次にどんな被害が出るか、わかったものでない。何よりも、他者の成果を堂々と横取りしてゆくその様は、確かな『悪』だ。
「街道の安全を護るため、悪者たちをやっつけましょう!」
元気の良い、気持ちの良い気合の一言が辺に響く。ソレを自らが被る布の確認を行っていた『断罪の呪縛』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が横目でちらりと見て。
「……悪者、か」
再び馬車と馬に視線を戻しながら、わずかな物思いに耽る。
人を斬ることに躊躇いがないわけではない。しかし、自分にとってはこの戦いそのものが、避けて通れない道だ。
いざとなったその時に、躊躇する余裕など無い。アンナはなんでもないような顔のまま、携えたレイピアの柄を軽く握りしめた。
全ての確認が終わり、イレギュラーズ7名が馬車に乗り込む。
うち一人、 『悪の秘密結社『XXX』女総統』ダークネス クイーン(p3p002874) のみ、馬車を引く騎手に成りすますため、馬にまたがりその手綱を握っている。本来の戦闘用の服ではなく、ローブをしっかり着込み相手にコチラの事情を少しでも悟られないようにしている。
「……多勢で無勢を寄ってたかって襲い奪うとは、悪の風上にも置けぬ。斯様なものを捨て置くわけにはゆかぬ」
静かにしかし強く宣誓し、深く被ったローブから街道の方向を見据える。搭乗していた馬が不安定な彼女のバランスを整えながら、ただ一回、鼻息を鳴らした。
「(ローレットでの初仕事。そして初めての、実戦)」
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)も、初依頼であるこのゴロツキ退治に強い意味を見出していた。
法を犯した乱暴者と退治し、斬り合いを行う。大なり小なりのプレッシャーはあるだろう。しかし、彼女の瞳は凛と輝き、自らの成すべきことを把握している。
「(これが、最初の一歩。なんとしても、成功させないと……ですね)」
それが名家に産まれ、父に育てられた自分にまず出来る事であり、イレギュラーズとして果たすべき事のひとつであると、リースリットは静かに決意を深める。
「フハッ」
張り詰めた馬車の空気のなかで、小さな笑い。 『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)のものだ。
「さあ、どうなるのかなあ。最後には誰も居なくなるのかな? それとも運良く誰か残るかな?」
ハットを深く被り直しながら、まるで新しい話か劇かでも見るかのように、くつくつという笑いをグリムペインは隠さない。
やがて、イレギュラーズを乗せた馬車が出発する。
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イレギュラーズ達は荷台にそれぞれ身を隠し、馬車の幌で四方から荷台が見えないようにしたり、自らが布を被って隠れるなどして、何かあればすぐ動けるようゴロツキの襲撃に備えていた。
荷馬車の中からアンナが耳を欹て、リーズリットが前方からの視界をある程度確保している。とはいえ、きちんと幌を張った横と真後ろの視界は決して良好とはいえない。
「……しかし、視界情報は騎手のダークネスがいます。物音もこの開けた平原なら、聞き取りやすいでしょう。どちらも問題ありません」
幌の隙間から外の平原を覗きながら、『■■■』Selah(p3p002648)が淡々と観察結果を小さな声で面々に伝える。
本当に、一本道以外は草が生い茂るのみの場所だ。多少伸びた草に紛れることが出来そうなくらいで、それ以外は何もない。
「すぐに動けるよう構えとかないとね。この世界に来て感も鈍っているし、肩慣らしには丁度いいでしょう」
『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)はくすり、笑ってみせる。イレギュラーズには珍しくない異世界人(ウォーカー)である彼女は、どうやら前にいた場所では並以上の経験をしているようだ。
そうですか、とセラが一度幌から離れようとした時――馬車が突然揺れて、停止する。
すぐに外から騎手役のダークネスの声。その場にいた全員が呼吸を止め、幌の外の様子を伺う。
「……ヘッ。女つきの馬車たあ、今日はついてるじゃねえか!」
馬車の中にいた面々が前方から覗いてみれば、ダークネスは降伏を示すように座り込み、厳つい男の2名がそれを取り囲んでいた――最も、降伏するフリは計画のうちである。彼らは騎手がイレギュラーズだとは、一切感づいていない。
馬車を引いていた馬はまだ生きていて、こちらにも厳つい男が一人ついている。馬の足元を見れば、そこには地面に突き刺さった矢が何本か。よくよく周囲を見れば、草の中に伏せるような形で弓使い達や他のハンマー使い達がいた。
「よォし動くなネエさん、そのきれいな顔に乱暴したくねえんだよ。……おい!」
ハンマーをいつでも振り下ろせるよう構えながら、ゴロツキはもう脅威はないと見たのか仲間達に合図を送る。するとその場に伏せていたゴロツキ達が馬車に寄り付いてくる。その全員が、下品な笑いを浮かべている。
「こんなでけえ馬車なんて滅多に通らねえ、大層立派なモン詰め込んでるんだろうよ!」
欲望のままに一人のゴロツキが、馬車の幌に手をかけ、めくり上げ。
「……え? なんだ、おま、え」
彼が荷台の中の、7人の武装した誰かを、はっきりと視界に捉えたと同時に。
「コレ以上の不法な行いは、させません!」
その7名のうちの1人、リースリットが荷台からゴロツキへ飛びかかりながらレイピアを引き抜き、風切り音とともにその胴を斬る!
「――ら、ああっ!?」
よろめくゴロツキが後退し距離を取らんとするが間に合わない。ココで初めてゴロツキ達が、自分が罠に賭けられたと気づく、が。
「自業自得ね。悪目立ちすれば敵を作ると思わなかったのかしら」
既に馬車から降りて距離を取ったエリニュスが、弓につがえた矢を既にダメージを負ったゴロツキに、放つ。
「ぐっ!」
身をよじるも間に合わず、矢は腿へと突き刺さった。厳つい顔をさらに苦しそうにゆがめながら、苦悶の声を上げている。
エリニュスはそれを一瞥し、次の矢の準備にかかる。余裕があれば自らを追い込みたかったが、相手の集まりが早く、それに費やす時間はなさそうだ。
二人の奇襲を皮切りに、武装したイレギュラーズがぞろぞろと馬車の中から降り、ゴロツキを視線で射抜く。
「済まないね、しかし赦してくれたまえ。君たちが大きな葛を開けてしまうものだから」
自分に合った距離を取りながら、グリムペインがゆっくりとスペルブックの最初の頁を開き、その1節を謳う。
「強欲者には罰下る。そういうお話さ。……さあ、我が友を謳おう――"一人は刃で真っ二つ!"」
狼の詠唱が結ばれると同時、遠距離からの術式攻撃が傷ついたゴロツキに放たれ――避ける間もなく、まともにそれを喰らい、吹き飛ばされる。
「ッが……!」
草原に受け身も取れず、まず一人が、倒れる。傷だらけではあるが、わずかに呻きが聞こえることからまだ生きてはいる。が、少なくともこの場で復帰することは敵わないだろう。
「ッそが! ……テメエら、そこ動くんじゃねえ!!」
自分たちの窮地を察したゴロツキは、一番初めに降伏した騎手を利用することを考えた。鎚を振りかぶり、イレギュラーズへ威圧的に喚き散らす。
「そっから一歩でも動いたらこの女の頭ァ骨ごと歪ます。どこの誰だか知らねえが、まさか死人一人出したか――」
「……くくく……!」
その喚きの途中で、突然、小さくも確かに女性の笑い声。それが誰のものか気づいたゴロツキが、女騎手を見る、が。
「ははははは……! はぁーっはっはっはっはぁっ!」
そこにいたのは既に、馬車の女騎手、ではなかった。
ばさり、とローブを空へ脱ぎ捨て、演技である女騎手から本来の姿を曝け出すダークネスが、そこにはいた。
「さあさあ、遠からぬ者は音に聞け! 近くば寄りて目にも見よ! そして恐れ慄け平伏すが良い! 我こそは、悪の秘密結社『XXX』(トリブルクロス)が総統っ! ダークネスクイーンであるっ!」
名乗り口上を捲し立てる彼女の蠱惑的な肉体を隠す戦闘服。その中央に刻まれた三重十字のシンボルマークが日の下に輝き、背中のマントが一陣の風に棚引いた。そのまま悪を誇る女は続ける。
「弱き者より奪う事しか能の無い下衆共! 貴様らは悪に非ず! 畜生である!」
唐突な名乗りに動揺していたゴロツキ達が、その言葉に、確かな反抗の表情を見せる。ダークネスは戦闘の構えを取る。
「我自ら制裁してやる故、覚悟せよ!」
「……さっきから舐めた口ばかり効きやがって……!」
鎚を握るゴロツキ達が、眉間に皺を寄せ、眼前を睨む。力と感情に任せたまま、その握った鎚を振るい下ろす――!
「テメエらに好き勝手にされるかよッ!!」
「――逃走を図るヒトはいないようですね」
セラは怒りを露わにする賊達を冷静に観察し、ひとつ頷く。ただ、こういう『ヒト』もいるのだとは思ったのかもしれないが、それだけだ。
「では、戦闘を開始します。手筈のとおりに」
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イレギュラーズの大方の予想通り、ゴロツキ達はハンマー使い達を前衛に上げてそれぞれの移動を阻害している。
そこから弓を持つ細い男達が、矢を放つ、放つ、放つ!
放たれた矢の雨は――全て、名乗り口上を上げていたダークネスに降り注ぐ。
が。
「――っ、温いわ!」
一つは肌を僅かにかすめ、もう一つは完全に回避。その回避直後を狙われて、最後の一本のみ脚を射抜かれたが、この程度なら何も問題はない。
「これが我が悪の生き様よ、刮目せよ!!」
そのまま目の前で仲間の不甲斐なさに歯噛みするハンマー使いを、思いきり、殴り抜ける!
蹌踉めく敵と取っ組み合いになりながら、お互いにお互いを押さえつけ、近接戦に持ち込んでいく。
横目に見える仲間の様子を気にしながら、アンナもまた自分と対峙している厳つい男に目を向ける。全ての敵側前衛は今、イレギュラーズの移動を妨害することに専念しているようだ。
「見掛け倒しね。すぐに決着をつけるわ」
これなら、とアンナは自分の中のギアを高めて――剣、一閃。肉薄した距離から、ゴロツキを、斬る。
「悪いけれどあまり余裕がないの。抵抗しないで、間違って殺してしまうかもしれないから」
「あぁ!? 出来るモンならやってみろよ、逆にノシてやらァ!」
剣の一撃を受けてもまだ口だけは元気なゴロツキ。遠くにいたルーキスが、薬瓶を手のひらで弄びながら。
「ご愁傷様おにーさん方。頭の悪い連中は大変だね。さあ、キミたちに楽しくなる薬をあげよう」
その薬瓶を、斬りつけられたゴロツキに投げつける。がしゃんと割れてまともに薬を浴びたゴロツキは、数瞬して、全身の痛みに絶叫を上げて、顔を歪ませる。
最初の奇襲で一人前衛を倒せたことは、この戦いにおいて非常に大きかった。数的有利を十分に取れたことは、ゴロツキ達にとっても予想外の出来事だったのだろう。既にこの状況下、ゴロツキ達の行動阻害は一人ひとりの集中砲火を止めることしかできなかった。
「大人しくお縄について下さい! 命までは奪いません、武器を収めてください!」
ひとり行動阻害を受けなかったアリアが、光の翼を背から展開し、低空飛行。幻影の舞を踏みながら接近し、訴える。
彼女はゴロツキ達が降参する事を望んでいた。情報屋での話を聞いた限り、馬の命は奪っても商人の命は奪っていなかったからだ。
全身の痛みに震える彼は果たしてその声が聞こえていたのか、そうだとしてもそれをまともに受け入れたのだろうか。歯軋りと、イレギュラーズを睨むその姿に、好意的な印象は持てない。
「……ッ!」
アリアは、剣を振るう。彼を殺さないように、刃は立てず、痛まないようにして、叩きつける。
歯軋りはそこで止まり、またひとり男が倒れた。前衛の数はあと3人。弓使い3名が明らかな狼狽えを見せ始める。そして、そのうちの一人が、わずかに後退し。
「……嫌だ、こんなところで死ぬのも捕まるのも嫌だ! もう俺は逃げる!!」
他の弓兵や鎚使いたちを置き去りにして、弓兵が一人逃走を図らんとする、が。
「させません」
「逃がさない」
セラが遠方からマジックロープを放ち、逃走しようとした弓兵を拘束し、さらに続いてエリニュスがより集中した射撃により撃ち抜く。二連の遠距離攻撃により、弓兵がすぐさま倒れた。コレで他のものの逃走も牽制できるであろう。
敵が失った戦力は、弓兵一人に壁役二名。対しイレギュラーズは、わずかな傷を負う程度。
既に、戦力の差は歴然であった。それでも何を思うてか、ゴロツキ達は猛然とイレギュラーズに立ち向かう。
「やれやれ」
ルーキスが頭を振る。まさかここまでの跳ねっ返りとは。あるいはどこかで自分が助かるとでも思ってるのか。
「良心なんて甘ったるいモノを、半魔の私に期待しないことね」
「ッ!?」
なんでもないように告げるその顔を見たゴロツキの一人が武器を落としかけ、そこへリースリットの剣戟がゴロツキの腕の筋を斬る。それでもまだ立ち向かおうとするゴロツキに、凛とした少女は語りかける
「私は何人かは生かして帰りたいとは考えています。ただ」
周囲のイレギュラーズたちを見渡し、もう一度ゴロツキたちを見て。
「他の方を止めたりはしません。どうかご決断を」
……そこで、ゴロツキ達は止まった。武器を落とした。
自分たちの敗北を、ようやく認めたのだ。
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気絶した者も含め、ゴロツキ達は一度縄で縛られ馬車に乗せられた。
「観念して、罪を償って下さい」
ゴロツキ達のしょぼくれた様子を見ながら、アリアは彼らの改心を願った。
「これが実践……人を指す感覚は予想以上に最悪ね」
まだ身体の中に刻まれているゴロツキに一閃を刻んだときの感覚を、アンナは思い返す。
「無事に成功できてよかったですわ。今後もこのように何事もなく進めばいいのですけれど」
「グリムペインの用事が終わったら、引き渡しの手続きに入りましょう」
少し離れたほうをセラが見つめる。そこではゴロツキのうちの何名かと、グリムペインが話している。
「さて、君たちの処遇についてどうしようかな」
その言葉に、ゴロツキ達に動揺が走った。このまま捕まっても構わない、もう何もしない、と訴え抱える。
「ふむ。では、私を言いくるめられたら何もしないよ。議題は、『なぜ私が君達を生かさねばならないのか』、だ」
ニヤリ、と。狼はゴロツキ達を見て、微笑んだ。
「ああ、私もいいだろうか?」
そして馬車側では、ダークネスが声をかけていた。コチラはゴロツキ全体に用事があると言う。なんとなしに気になって、エリニュスが。
「別にかまわないけれど、何をするの」
「決まっているだろう。悪とは何たるか、みッッッッッッッッッちり私自ら再教育する!」
女総統は、ブレなかった。
こうして、メフ・メフィートの事件の一が、幕を閉じる。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
成功おめでとうございます! ご参加ありがとうございました!
みなさんが魅力的でそれぞれ違う個性を持っていらした方だったので、
どうやって魅せようかをずっと考えながら執筆させてもらいました。
プレイングそのものに関しても、オープニングをしっかり受け止めていただいて、全員での連携が組み上がってたので、こちらから何か言えるようなことはないです。
次回以降も是非参加していただければ幸いです!
今回で諸々を掴んだ気はします!
それでは、また次の冒険で。
GMコメント
■マスターより
山吹ヤマメです。
ゴロツキに近づいて、えいや!って倒すシナリオとなります。
奮ってご参加下さい。
以下、シナリオの補足情報になります。
●成功条件
ゴロツキ8名を発見し、全員に勝利する。
ゴロツキの生死は不問。
●補足
・ゴロツキたちが商人から奪った武具などで強化されている、などの要素はありません。
・商人が奪われた荷物はゴロツキが既に裏の経路で換金している可能性が高いです。
・リプレイは「ゴロツキ発見・遭遇」→「戦闘」を予定しています。
●敵情報
・厳つい男:5名
ハンマーで武装。至近から近での戦闘を好みます。
・細長い顔の男:3名
弓で武装。中、遠距離の戦闘を好みます。
……以上8名。全員、フィジカルとテクニックがやや高めです。
ゴロツキ達はスキルを使用しません。
戦闘開始時、状況に関係なく細長い男たちは厳つい男5名から、中~遠距離のレンジを保てるように離れようとします。
●戦場について
OPにもある通り、だだっ広い平原が想定される戦場です。
一般人対策は事前にギルドで対応するため、イレギュラーズの皆さんで人払いをする必要はありません。
以上です。
では、良き冒険を。
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