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シナリオ詳細

5000兆Gのお年玉

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●遺産相続は突然に
 その日暮らしでダラダラ生きてる青年には、漠然とした夢があった。
「5000兆Gほしい。手に入ったら豪遊しまくって、あっという間に湯水のように使ってやるんだ」
 もちろん、その5000兆Gをどうやって手に入れるだとか、そんな真面目な計画は何一つ考えてはいない。夢だから漠然とした金額でも、無茶な話でも許される。そう思っていた。
「失礼。義元様でございますね?」
「えっ」
 ある昼下がりの道端で、黒ずくめの男達に囲まれる羽目になるまでは――。

●5000兆Gは世知辛い
「――という流れで、徳川 義元(とくがわ よしもと)という青年は、富豪徳川 雪斎(とくがわ せっさい)という人物の隠し子として徳川家に迎え入れられた。今まで隠し通してきた詫びに、5000兆Gという大金を渡されて」
 ぱっと聞く限りでは、濡れ手で粟な美味しい話に聞こえるが。
 この年明け早々、呼び出されてまでそんな自慢話を聞かされた日には、苛立つ特異運命座標もいるだろう。説明していた『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)は慌てて付け足した。
「問題はその雪斎の余命が1日もないと言われている事だァ。彼が亡くなれば、遺産の相続税は義元の元へ行く」
 相続税がのしかかれば、手元の5000兆Gが没収されるどころか、更なる負債を押し付けられてしまうのだ。雪斎の親族が義元を迎え入れたのも、その被害を彼に押し付けるためである。
「義元を救う方法はただひとつ。雪斎が息を引き取るまでに、託された5000兆Gを使い切る事だ。
 ただし、この時に『物』や『土地』みたいに手元に残っちまうような使い方をすると、それも資産として税金がかかってきちまう」

 残された選択肢はひとつ。そう――一日のうちに残らない形でパァッと5000兆Gつかいきる。とどのつまりは豪遊だ!!

NMコメント

 明けましておめでとうございます。 ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 私からのお年玉、ぜひ受け取ってください! 時限爆弾つきですが!!

●目的
 5000兆Gをたった一日で使い切る。

●異世界『成金ノ世』
 ある日突然成金になって、その後地獄のような生活を送る人間が後を絶たない異世界です。お金の魔力は怖いのだ。
 キャラクター達が暮らす混沌と同じくらいの文明レベルです。最新技術は練達で一般的に普及してそうなものくらいはあります。

●登場人物
 徳川 義元(とくがわ よしもと)
 陰謀により多額の金を押し付けられてしまった一般人。あと一日でそれが負債になる事を知っており、徳川家の屋敷の中でガタガタ震えています。平々凡々とした暮らしをした事しかないため、お金の使い道にピンときていない様子です。

 徳川 雪斎(とくがわ せっさい)
 義元のお父さん。余命あと1日だがめちゃくちゃ元気。相続税の件を知っていながらも、義元を試しているのか大金を押し付けた後は「れでぃの膝枕の上で儂ァ死ぬんじゃ!」と海外へ遊びに行ってしまいました。

『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)
 今回の異世界に連れて行く境界案内人。呼ばれれば備品の整備くらいのサポートはしますが、特に手を出すつもりはないようです。お金にも無関心な様子。

●その他
 5000兆Gの使い方にはいくつか注意点があります。
・高級な『物』や高い物件などの『土地』を買って消費する事はできません。資産と見なされ相続税がかかってしまうのだとか。
・残ったお金を境界図書館に持って帰る事もできません。境界世界から図書館へ持ち出そうとした物は紙きれに変わり、義元は使途不明金の事を言及されて、大変な事になってしまいます。

 皆様の5000兆Gの使い道、楽しみにしております。
 それでは良き旅を!

  • 5000兆Gのお年玉完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年01月12日 22時11分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

スー・リソライト(p3p006924)
猫のワルツ
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
ボーン・リッチモンド(p3p007860)
嗤う陽気な骨
リコシェット(p3p007871)
跳兎

リプレイ

●最凶のお年玉?
 昨日と変わらぬ今日がやって来る保障はない。青天の霹靂と言うべきか。唐突に莫大な資産を手に入れた義元は屋敷のソファーに座り、頭を抱えてふさぎ込んでいた。
「どうしよう……」
 頭の中が真っ白で、何から手をつけていいか分からない。
 時間だけが過ぎていくものだから、助っ人達の足音が聞こえてきた頃にはもう、泣きそうな顔になっていた。

「アンタが嵌められた件は知ってるぞ!」
『跳兎』リコシェット(p3p007871)は、まず義元を元気づけようと声をかけてやる。
「このまま待つくらいなら、使い切っちゃおうぜ。私達はアンタを助けるために来たんだ!」
 常に金銭の苦労が絶えない彼女にとって、今回の依頼は他人事では無いのかもしれない。言葉に善意を感じ、義元は縦に首を振る。
「お金がありすぎて困るって、なんだか贅沢な気がするねっ?
 ……闇市に持って帰れば、一番良いのにね」
 跡形もなく使い切ってみせる自信があるんだけど……と『猫のワルツ』スー・リソライト(p3p006924) は遠い目をしながら呟いた。闇市において回転率は正義である。
「んんー! この世界、あまり長くいると、金銭感覚がおかしくなりそうだ。
 5000兆Gなんて、パンが幾つ変えるんだ……。パン屋さんごと買えそうだな」
 スーの言葉に同調するように、リコシェットも脳内へ思い描く。パンをお腹いっぱい食べる孤児院の子供達――そんな奇跡があったらいいのに。
 妄想し始めた2人にどう声をかけようか迷う義元だったが、新たに現れた人物に青ざめる。
「ッ!?」
「カッカッカッ! いい反応だ!」
 白磁のような美しさと逞しさを持つ白骨。その姿を見て驚く義元の反応は一周まわって新しい。『嗤う陽気な骨』ボーン・リッチモンド(p3p007860) が陽気に笑う。
「しっかし、5000兆G……とんでもねぇ、金額だなァ、おい!
 あまりにも大金で顎の骨が外れちまいそうだな! まあ、実際外れるし取り付け替え可能なんだが!」
 がぱ、と実際に外した顎骨を右手で持つボーンに特異運命座標達から拍手がわき上がる。混沌肯定で慣れた面々には新年最初の宴会芸のようなものだ。
 面食らいっぱなしの義元だったが、おかげで大金のプレッシャーが吹き飛んでいた事に気付くのは、その後暫く経ってからで。
「まあ、何にせよ……派手に使い切っちまえばいいんだろ? 任せておけ!
 そういう楽しいの考えるのは大好きだ!」
 一抹の不安を覚える義元だったが、更なる追い打ちのように新たに現れた少女が、
「とりあえず参加してから手段を考えるメリー・フローラ・アベルよ。よろしくね」
 などと清々しいほどのドヤ顔で言い切るものだから、一層言葉を失くしてしまった。
 一石投じた後の『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は、そのまま「で、考えた方法だけど」と話を続ける。
 権力者にとって必要なのは咄嗟の判断力。いつか力を得ようと野望を抱く彼女は、その知性が無意識のうちについていた。彼女の提案を皮切りに4人の案を合わせ、大きな計画が練り上がっていく。

●始動、お年玉計画!
 いつもより北風が冷たく感じる冬の朝。職安から出て来た男が深く溜息をつく。
「その様子、いい仕事が見つからなかったみたいね!」
 彼の心の声を見透かすように声をかけたのは施設を張っていたメリーだ。驚く求職者を逃さぬように彼女は続ける。
「そんな貴方に私から、お年玉級のプレゼントよ!」
 見つけた求職者にお金を払って"求職者二人を探してもらう仕事"をさせる。
 そうして鼠算式に求職者を見つけ続けていけば、繰り返す事で支払い額が膨れ上がるという寸法だ。しかもそれだけではない。
「領収書の枚数もすごい事になりそうだけど、それを管理する人を雇ったり保管するスペースを借りればそれでお金を消費できるし……一石二鳥よね」
 他の特異運命座標がやろうとしている計画の人材探しまでこのサイクルに乗せ、彼女の計画は瞬く間に人員の確保と遺産の消費を進めていった。
「さて、集めた人で皆は何をするのかしら? お手並み拝見ね」

 数時間後。街の人々は空を見上げてあんぐりと口を開けた。いつの前にかビルの合間に飾り付けられた照明と、空からひらひらと舞い降りるビラ。
 ヘリコプターの扉を開けて配っているのはリコシェットだ。
「騒げ騒げ! 新年会の始まりだ!」
 街をまるまる貸し切るくらい豪勢にパーティしようというのが彼女の案。
 すでに眼下にはメリーの鼠算作戦で名乗りを挙げたスタッフが、露店を出して美味しい料理を街の人に振舞っている。
 時間は有限。途中で抜けてもいい。パーティは、そこにいる人へプレゼントしちゃえばいい。
「一人で駄目なら、皆で、だ!」
「すごい発想ですね」
 彼女の隣でビラの整理を手伝いながら、義元は感心したように呟いた。
「義元も、何かしたいこと、気になることがあったら、ガンガンやっちまえ!」
「やりたい事?」
「あぁ。人助けだと、尚良いぞ! 気持ちがいいもんな」
 視野が広がった瞬間だった。平凡に独りで生きてきた義元に、当たり前のように彼女らは人との繋がりの尊さを教えていく。

「派手ーに、豪華にやってるねっ!」
 街の中心、中央広場には街を見下ろせる程の高くて大きなステージが設置されていた。舞台裏で大きく屈伸しながらスーは身体を温めている。
「機材の用意と観客の動員は終わったぜェ。海外メディアも幾つか来てる」
「オッケー、ありがと神郷さんっ」
 これ程規模が大きくなると、人手は多い方がいい。『境界案内人』の神郷 赤斗はスーのマネージャーとして駆り出されていた。
 幻の猫耳ダンサーの一夜限りのスペシャルステージ。広告料に糸目を付けず宣伝をした事により、街の外にまで瞬く間にその存在は広まっていた。
「礼ならメリーに言ってやれ。彼女が集めた人材の中に、メディアに強い奴らが居たおかげだからなァ」
「メリーさん、ありがとう!」
「貸しひとつよ。今度ワガママ聞いてね?」
「カッカッカ! 上手くやってんじゃねえか。……そういや、リコシェットちゃんは何処行った?」
 ボーンの声に応えるように会場の外でドルルッ! とマフラーの音が響く。特異運命座標が様子を見にいくと、運び屋リコシェットがバイクに跨り会場に駆けつけたところだった。
「バイクがいいと速さも出るな。スーに赤斗からの荷物だぜ」

「皆っ! 楽しんでるーーっ?」
 会場が震えるほどの歓声があがる。
 枯らせるほどの元気な声を響かせて、スーはステージの上から大きく手を振った。
(もしも目標額が使い切れなさそうなら、その時は、幻の猫耳ダンサーの出演料ってことにしようと思ったけど……杞憂だったみたいだね)
 先に動いたメリーとリコシェットが順調に資金を活用していた。このステージも負けないくらいのコストがかかっているのだが、表舞台に立つ分、プレッシャーはそれなりにある訳で。
(……自分で『幻の』なんて言うのはちょーっと恥ずかしいけど、金額に見合うだけの踊りは見せてあげちゃう!)
 何より、今回は独りじゃない。舞台袖からボーンが現れヴァイオリンに顎を添える。一度別の異世界で伴奏を任せた彼の音で、また踊れるのだ。
 メリーが集めたスタッフがスポットライトを彼女に当て、赤斗の依頼でリコシェットが運んだ金色のステージ衣装が一層の輝きを帯びる。
「さあ、一夜限りの夢と幻のショータイム! 今夜はたとえ5000兆Gでも惜しくないくらい、盛り上げちゃうよー!」
 弾けんばかりのバブリーな舞台にパラパラのBGMが響き渡る。
 振り付けを促しながら盛り上げるスーの姿が、メディアのカメラによって世界中へと広がっていく--。

 独りから街へ。街から世界へ。
「すごい。どんどん広がってく……!」
 呟いた義元に、ボーンが軽く炎の瞳でウィンクした。踊って程よい疲労感に包まれた観衆の前へ、スーとバトンタッチして舞台の中央へあがっていく。
「皆は『100万ドルの夜景』って聞いた事はあるか?」
 皆がざわつく中、かつて《魔王》と呼ばれた彼には緊張もせず悠々と語る。
「まあ、実際はそれだけの電気代って事だが……それだけ掛けてみる夜景はとてつもなく綺麗だって事だ」

「なら、それが1000兆だったらどんだけ綺麗な夜景なんだろうな?」

 骨の指がパチンと鳴ると、一斉に照明が落ち世界が暗闇に包まれる。そして--。

「えっ? ……うわぁ!」
 舞台に引き寄せられた義元が見たのは、1000兆Gに勝るほどの夜景だった。
 街を見下ろせる舞台に、パーティが始まると同時に始まっていた飾り付け。それらはボーンの仕込みだったのだ。
「美味しい料理と美味い酒を1000兆Gの夜景を肴に味わいつくす……どれだけ『美しくて楽しい』光景になるか……カッカッカッ! 楽しみだと思ってな!」
 今まで広げた人脈や、配信を見て知った人々が一件また一件と自宅の灯りをつけて光の海を広げていく。その中心で義元にワインを振る舞いながら彼は語る。
「まあ、義元君。金よりも大事な物がある……その事を忘れないで生きていけば、楽しくて幸せな人生送れると思うぜ。もう二度と金に振り回されるじゃないぞ!」
 夜景を映していたカメラが義元の顔を映し出した。皆の視線が集まる中、一言求められた彼はリコシェットの言葉を思い出す。
「親族に嵌められたのは辛いけど、隠し子を知ったら、どの道、スケープゴートだったろうな。
 そう考えると、お父さんは試す意味と、逆転の機会を与えたかったのかな?」

 試されても、俺は平凡な人間だ。
「金の切れ目が縁の切れ目って言うけど、俺はもっと皆さんを知りたいです」
 特異運命座標が紡いだ縁を大切に。義元の素直な一言に拍手が広がる。
 背負った5000兆Gは、それ以上に価値のある出会いへと変わったのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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