シナリオ詳細
炭鉱の怪異
オープニング
●ある日の炭鉱
幻想領内、外れの方にある炭鉱での出来事だ。
いつの頃からか、ここではある特定の時刻になると、何者かが走り抜けていくようになった。
何者なのかは誰も分からない。
何故なら、誰もその姿を捉えられないほど素早いからだ。
分かっているのは、変な声で笑いながら走り抜けるということと、走り抜ける大体の時刻だけ。
今日も、その時刻が近づいてきていた。
「お前どう思う?今日も来ると思うか」
「そりゃ来るだろ、もう毎日のことじゃないか」
炭鉱内でせっせと掘り進めながら、炭鉱夫達が雑談のネタにするくらいになっている。
「お、そろそろ来たんじゃないか?」
2人の横からもう1人の炭鉱夫が言ったかと思うと、どこからともなく声が聞こえてくる。
「にょほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ」
「あー、もう15時か」
「時報代わりだな、完全に」
毎日のことで慣れてしまっているのか、炭鉱夫達は動じない。
そして、来たかと思うとすぐに声は聞こえなくなった。
「まったく、また土埃が舞っちまったじゃねえか!」
あまりに素早くて見ることはできないが、風が巻き起るせいで地味な害を残していく。
今回も土埃が舞ってしまって、落ち着くまで視界が悪くなってしまった。
「休憩できるのはありがたいけどなぁ…不気味なんだよな……」
何のために走るのか、何者なのか、何も分からないので気味悪がって気の小さい者などは、長期休暇を取る始末である。
「誰か何とかしてくれねぇかな……」
●炭鉱夫達の証言
現場を監督している炭鉱夫がギルドを訪れ、イレギュラーズに助けを求めたのはその数日後のことだった。
早速、ギルドから派遣された調査員が炭鉱夫達から話を聞いたのが、以下である。
「そうだなぁ、もう3ヶ月くらいになるかね?急にだよ。最初はそりゃ、びっくりしたさ。何が何だか分かんないしよ。けど、俺は1ヶ月もしたら慣れちまったなぁ」
「あの笑い声、本当怖いんだよな…不気味なんだよ。変に甲高いというか、耳につくというか。怖いから辞めたいけど、ここ辞めちまうと生活がな…」
「あー、あれか。別に走って通り抜けるだけみたいだし、俺は気にしてないけどね。怖がってる奴も結構いるみたいだなー」
「俺、こんな図体だけど気は小さいんだよ。休みを取ったって奴もいるし、俺もそうしたいけど、かみさんの方が怖いもんでさ。家も炭鉱も怖いってなったら、俺もうダメかも…」
「捕まえようとしたこと?ああ、あるよ。けど、普通のロープじゃ相手が早すぎるせいなんだか、理屈は俺には分かんないけど簡単に切れちまってさ。もっと頭使わなきゃ無理だな、って」
「どれくらいの速さかって?うーん、どうだろうな。あれだけ風が起こるんだから、かなりのもんじゃないか?姿も見えないし。動体視力がいいって自慢してたのがいたけど、あいつも見えなかったらしいな」
「俺の動体視力をもってしても見えなかったんだ。影みたいなのは一瞬見えた気がしたが…え?そうだな、大きさは人間の大人くらいじゃないか?それ以外は分からん」
「アイツ、いつも15時に来るじゃん?俺っちの考えだと、おやつでも欲しいんじゃね?って感じなんだけど、アンタどう思う?」
「うーん、特に通る道筋は決まってないように思ったな。ま、早すぎてよく分かんないだけかもしんねぇけどよ」
「そういえば、誰も怪我させられたとかはねぇな。びっくりして勝手に転んで、すりむいたってドジはいたが」
●ローレットにて
「今回は、怪奇現象の調査なのです」
この依頼を受けようと、ローレット本部を訪れたイレギュラーズに『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が説明する。
「分かっていることについては、まとめておいたのでしっかり読んでおいて欲しいのです」
ユリーカはそう言って書類を渡してくる。
おかしな依頼だが、炭鉱夫達は困っているらしい、というのは事前に聞いている。
炭鉱での仕事が滞れば、いずれ幻想領内のあらゆる場所で影響が出る可能性もなくはない。
怪異に耐えかね、炭鉱の仕事を辞めてしまう者が出る前に、解決する必要があるだろう。
「おばけとか、ボクは別に怖くないのですけど、炭鉱夫の皆さんの中には怖がっている人も多いそうなので、少しでも早く解決して欲しいのです。ボクは別に怖くありませんけど」
聞いてもいないのに、怖くないと強調してくるのが気になるが、あえて触れないことにする。
怪異の正体を突き止めるのが今回の依頼だが、果たして……?
- 炭鉱の怪異完了
- GM名文月
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年03月14日 22時00分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●怪異を暴きに炭鉱へ
昼食後、炭鉱夫達が午後の仕事を始める頃。
この炭鉱に毎日現れるという怪異の正体を暴こうと、イレギュラーズが進めていた準備が整いつつあった。
姿を捉えられない程の高速で走り回る怪異の正体を暴くには、まずその動きを止める必要がある。
そこで炭鉱を訪れた8人のイレギュラーズは何組かに分かれ、それぞれが立てた作戦の準備を進めていたのだ。
『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)とコリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)は炭鉱夫達から人数分の地図の写しをもらい、内部の構造や作戦に使えそうな物がないかを聞いている。
「にょほほではなくぽぽぽなら、知己の怪異に居るんだが」
さらにグリムペインは、怪異についてのより詳細な情報も尋ねているようだ。
そのお陰で、怪異の通った後に足跡はなかったこと、仕事中でもあるために出入口で誰かがこの怪異を止めようとしたことはなかったこと、ロープはどのように張っていたのか等を確認できた。
「さて、どーこかっなっと」
『モノクロ道化師』メル・ディアーチル(p3p004455)が欲しいものを高確率では見つけられるというギフト、他力本眼を使ってこの怪異がどの辺りから出て来るのかを突き止めようとしている。
メルは魔力で糸を作り、その先に石をつけてダウジングを行う。
結果として、どの通路から来るかは分かったが、はっきり「ここから出て来る」ということは分からないようだ。
動きが早すぎて、はっきりしないのかもしれない。
とは言え、大体の出現場所が分かったので、メルは『戦神』御幣島 戦神 奏(p3p000216)と『メルティビター』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)に手伝ってもらい確保に動く。
幸い、出現場所は一本道になっている通路だ。
分かれ道の手前で待機していれば大丈夫だろう。
ルチアーノは入り口の近くに鎖を張っておきたかったのだが、炭鉱夫達から出入り口に鎖は困ると言われ断念していた。
もうすぐ15時である。
それぞれが所定の位置について怪異の出現を待つ。
ルチアーノは気配遮断を使い、静かに待機している。
「おーあーいむすかーりー。そーあーいむすかーりー」
奏はと言うと、ざんげちゃんに会いに行くために怪異からそのダッシュ力を伝授してもらえないものか、と考えつつ鼻歌混じりに待機している。
「お、15時だねー。2人ともやっておしまいなさーい」
15時になるとすぐにメルが奏とルチアーノに声をかける。
「アラホラサッサー!」
ルチアーノがまずこれに応え、両手を大きく広げて飛び出す。
「セイッ! ディーフェンスディーフェンス!」
奏も応えて仁王立ちする。
どうやら2人共、怪異を体で止めようとしているようだ。
2人が通路に飛び出すのとほぼ同時に、噂の声が聞こえた。
「にょほほほほほほほほほ!」
聞こえたかと思うと、凄まじい速さで何かが通り抜けていくのを通路の奥で立ち上る土埃が教えている。
ルチアーノも奏も通路に立ちふさがって、この怪異を止めようとしている。
が、しかし。
「うわああぁぁぁっ!」
「のー!!」
それぞれに悲鳴を上げ、狭い炭鉱内の通路で吹っ飛び、壁や天井に激突してから地面に落ちてきて気絶してしまった。
ギャグのような吹っ飛び方をしているが、かなり痛そうである。
目に見えない速さで突っ込んで来た相手に対し、相手に避けられることなく当たりに行けたのはさすがイレギュラーズ、ではある。
そうは言っても、2人とも超高速で突っ込んできた相手に生身で立ちふさがったのだから、痛いどころの話ではない。
しかも周囲は炭鉱の通路であることを考えれば、生きていて良かったと言える。
一般人であれば、即死だったかもしれない。
「ごめええぇんんねえぇぇぇえ!」
凄まじい速さで走り抜けながら、怪異が2人に向けて謝っている。
姿は見えないので、声だけがすごい速さで遠ざかりながら聞こえてくる。
怪異が常に叫ぶようにしているのは、素早すぎて声が届かなくなることを予想してのことだろうか。
とにかく、怪異は急には止まれないようだ。
奏とルチアーノが吹っ飛ぶのを目の前で見ていたメルだが、飛んで怪異を追おうとする。
しかし、怪異はあまりに速すぎる。
2人が地面に落ちるのを見て、我に返った時にはもうどこにいるのか分からなくなっていた。
飛んで追えたとしても、あれだけ土埃が立つ程の勢いで走っているものの近くを飛べば、無事ではすまないかもしれない。
そして、離れたところを飛んで追うには、炭鉱の通路は狭すぎた。
●止まらない?止まれない?
グリムペインは、通路に「15時に炭鉱内を走り抜ける者へ 話がしたいので20時に炭鉱出入口まで来られたし」と書いた看板を立てていた。
炭鉱夫に聞いたところ、20時なら片付けも終わり出入り口周辺で人が集まっていても問題ない、ということだったので20時に設定したのだ。
袋小路の奥にビー玉を転がし、その上に木の板を置いて罠を設置する。
上に乗れば滑って転ぶようになっているのだ。
手前には金貨を置いてみたり、赤い糸に鈴をくくりつけて張ってみたりと、様々な仕掛けを施す。
15時を過ぎ、メル達の作戦が失敗したすぐ後。
グリムペインの耳にもあの笑い声が聞こえてきた。
「にょほほほほほほほほほほ!」
すぐに袋小路の壁に、先にはまだ道が続いているように見える幻影を投影する。
看板に書かれた文字を怪異が読んだかどうかは分からない。
鈴の音が鳴るとすぐにグリムペインが袋小路の入り口を塞ぐが、笑い声は遠ざかっていく。
どうやら、仕掛けておいた罠はどれも通用しなかったようだ。
普通のロープでは止められなかった、という炭鉱夫達の話を聞いて、それなら3本使えば止められるのではないか、と考えたのは『暴牛』Morgux(p3p004514)だ。
人間の大人の膝辺りの高さに3本のロープを張り、ガッチリと固定する。
通路は全て通るのだから、どこに張っても良いだろうと適当なところに張ってある。
ロープを3本張るだけなので、そんなにやることは多くない。
早めに準備を終え、その時を待っていると、Morguxのいるところにもあの笑い声が聞こえてきた。
「本当ににょほほって笑うんだな」
平常心のスキルを使っているお陰か、いつも以上に冷静なMorguxが呟く。
土埃のお陰で大体の居場所は分かるがいかんせん速い。
とても目で追えるものではないだろう。
とは言え、ロープを張り終えて通路の陰で待ち伏せしているMorguxがやることは特にない。
怪異が止まるのを祈るばかりだ。
しかし、ロープに引っかかった怪異は2本をその勢いで一瞬にして引きちぎり、残り1本も切れる寸前まで追い込み、その後さすがに転んだかと思いきや宙返りで体勢を立て直し、そのままのスピードで走り去った。
「ひどおぉぉいっ! でもアテシはこのくらいじゃ止まれないのよぉ!」
Morguxの目にはその様子が見えたわけではないが、怪異の声を聞くとそういうことだろう。
「このくらいじゃ止まれない、か…」
冷静なまま、怪異の走り去っていく土埃を見つめるMorguxであった。
一方、怪異は春の妖精ではないかと考えた『彷徨のナクシャトラ』暁蕾(p3p000647)は、怪異をもてなす方向で考えていた。
炭鉱内の比較的広い場所に、温かく美味しい匂いのするはちみつ湯と肉まんを用意し、分かりやすいよう「炭鉱のランナーさん、温かく美味しいはちみつ湯と肉まんをどうぞ」と書いた張り紙もしておく。
また通路の要所要所に、このプレゼントの位置を示すような看板、張り紙等を設置しておいた。
暁蕾はこのプレゼントの近くで待機する。
15時を過ぎると、暁蕾の元にもあの特徴的な笑い声が聞こえてくる。
足を止めてくれるだろうか、と少し緊張しながら待っているとすぐに土埃が舞い、通り過ぎてしまったのが分かった。
「ああぁぁ! 美味しそうなのに! 止まれないのぉぉ!」
どうやら、怪異はプレゼントに気付いたようだが、止まれないらしい。
暁蕾は困り顔で怪異の去っていったであろう方向を見つめていた。
●怪異が止まる時
もしかしたら怪異は体を温めたいのかも。
そう考えた『布合わせ』那木口・葵(p3p000514)は、事前に裁縫スキルを使って大きめのマント、マフラー、帽子、手袋を作ってきていた。
見た目が分からないため、一応は人間の体に近い形を想定して用意したのだ。
炭鉱内に看板と一緒に設置すると、練達上位式を使ってぬいぐるみを人間大に変化させ、通路を塞ぐようにスクラムを組ませておく。
ぬいぐるみは、用意したあったか装備をスルーされてしまった時のための策である。
15時を過ぎ、葵にも怪異のあの笑い声が聞こえた。
来たかと思うとすごい風で用意しておいた服が吹き飛びそうになり、慌てて葵が押さえる。
「あっ…ああぁぁぁ、欲しいっ! 止まってえぇ!」
そんな葵のすぐそばを怪異が叫びながら通り過ぎたようだ。
その先にはぬいぐるみ達が待ち受けている。
「どいてどいて危ない!! どうして今日は障害物がこんなにもおぉぉっ!?」
怪異の声と謎の土埃に、ぬいぐるみ達が道を開けてしまった。
練達上位式で作り出した式神には知性があるが、これが逆効果になってしまったようだ。
怪異が走り抜けた後も、まだ怖がっているぬいぐるみ達に囲まれてもふもふしながら、葵は遠ざかっていく怪異の声を聞いていた。
コリーヌは、ギフトの頑張れ!『正宗くん2号』で召喚した正宗くんとバリケードや柵の設置を行っていた。
柵やバリケードには、炭鉱夫達から借りたものもある。
コリーヌは自分の持つスキルや能力を最大限に活かし、バリケードや柵を使って行き止まりへと向かう一本道ルートを作っていく。
万一を考え、設置は急な曲がり角の近くなどは避けてある。
地面には燃えにくいように加工されたワックスを塗って滑りやすくしておく。
さらには葵から人間大のぬいぐるみを何体か借り、行き止まりに設置してある。
「つるーって滑った先のクッションで、もふっとキャッチ。名付けて、つるつるモッフン!」
「ソノママ デスネ……」
正宗くんの言う通り、そのままだが非常に分かりやすい作戦名だ。
作業は15時になる直前まで続いた。
15時になり、他の7人の時と同じように怪異が近づいてくると、コリーヌが緊張しながら見守る。
「にょほ…にょほほほ…!」
普段と違い多くの妨害にあったせいか、少し元気のない笑い声を響かせながら怪異が一本道に入る。
「にょほおぉぉっ!?」
ワックスで滑ってしまったのだろう。
素っ頓狂な声を上げている。
その直後、逃げ場のないぬいぐるみに怪異が突っ込んだのだろう、「ぼふんっ!」という音がした。
ようやく、怪異の動きを止めることに成功したらしい。
コリーヌが怪異の姿を確かめようと走り寄る。
そこには、ぬいぐるみに突っ込んで目を回しながらもどこか幸せそうにもふもふしている怪異の姿があった。
すぐに近くの炭鉱夫へと声をかけ、他のイレギュラーズを呼んできてもらう。
●怪異の正体は
怪異の元へイレギュラーズが集まってきた。
その中には、負傷した奏やルチアーノもいる。
ルチアーノはメルに支えられ、奏は壁にもたれているが2人共かなり辛そうだ。
「結構ひどい怪我をさせてしまったのね。本当にごめんなさい……今まで、アテシを止めようとして飛び出してきたなんて、いなかったものだから」
怪異が本当に申し訳なさそうに2人に謝っている。
誰かを傷つけるのは好きではないようだ。
「いえ、こちらこそ」
「私はただのバーサーカーだからね! 気にしないで!」
そうは言いつつ、2人は傷が痛むのか普段よりも声に元気がない。
先程まで超高速で走り回っていたのは、頭がやかん、胴体はドラム缶、両手はマジックハンド、両足は何故かムキムキの人体模型という、謎の生き物だった。
そもそも、生き物と言っていいのかもよく分からない。
葵が少しおそるおそる、といった感じで話しかけてみる。
「えーと、私は那木口・葵っていうんですけど、怪異さんは?」
「アテシには名前なんてないのよ。ちょっとした魔術の実験で生まれてしまっただけの生き物だもの」
元気のなさそうな怪異が普通に返事をしてきただけで、遠巻きにしている炭鉱夫達がざわめく。
頭はやかんだが、いかにも絵心のなさそうな人がとりあえず描いたような顔があり、表情は何となく分かる。
とりあえず、本当に会話ができるだけでなく意外と普通に話せることが分かったので、イレギュラーズがまず質問を色々と投げかけ、次のようなことが分かった。
どうやら怪異の性別は女の子らしい。
そして、生まれた場所はよく分からないのだそうだ。
というのも目が覚めた時にはもう捨てられていたからだという。
色々な物をつなぎ合わせて生き物を作る、という実験が失敗したと早とちりした魔術師に捨てられたが、実は成功していた。
しかし、何故か一定の時間が経過すると体中に魔力が溜まりすぎ、勝手に走り出してしまうのだ。
それがたまたま15時であり、溜まった魔力を放出するために自分ではどうにもできない動きとして、超高速で走り回る体になってしまっている。
基本的に走り回っている時は、勝手に体が動くのでどうにもならないらしい。
試しに、体が動いて走り回るのを我慢してみたところ、溜まりすぎた魔力のせいで具合が悪くなって死にかけた。
今では慣れたが、最初のうちは速すぎて毎回気分が悪くなって大変だった。
炭鉱に来るまでは、ずっと荒野で暮らしていた。
最近は寒くなったので、外にいるのが辛くなり炭鉱に入り込んだ。
炭鉱を選んだのは、内部が入り組んでいて人に見つかりにくいと思ったからだ。
笑い声を発していたのは、 万一ぶつかれば怪我をさせてしまうだろうと思い、そこにいると分かってもらうため。
笑っていれば怖いものだと思われて退治されることもない、と考えたから。
この話を聞いて、炭鉱夫達は皆、苦笑していた。
「だけど怖がる人もいて土煙の被害もあるので、走る時間を労働時間外にしてもらえないかしら?」
暁蕾は人心掌握術を使いつつ、丁寧に対応している。
「それはアテシにも、どうにもならないのよ。勝手に魔力が溜まって、勝手に動くものだから。
あ、とりあえずさっきの食べ物と服はいただきたいわ。アテシ、飲食したことないのだけれどね!」
所望されて葵が用意してきた服を渡し、暁蕾も用意していたはちみつ湯と肉まんを渡した。
「あっ、アテシ、飲食はどこからどうやればいいの!?」
本人が分からないことを聞かれても、誰も答えようがない。
「仕方ないわね、これは返すわ……皆で美味しく食べてちょうだい」
そう言って、暁蕾にもらったはちみつ湯と肉まんを返してきた。
すごく残念そうだ。
「アテシ、ここにいると迷惑なのかしら……?」
葵にもらったマントを羽織り、マフラーを巻きながら項垂れている怪異を見て、炭鉱夫達も可哀想になったのだろうか。
誰からともなく、いてもいいのではないかという声が出始めている。
気付いてみれば、最初はかなり離れたところから見ていた炭鉱夫達だが、かなり近くまで寄ってきていた。
正体が分かり、何故走り回っているかも分かったからだろう。
イレギュラーズと炭鉱夫達とでも話をしてみる。
とりあえず、炭鉱夫達としては寒い間はいてもいいのではないか、という話になりつつあるようだ。
心配そうに成り行きを見守っていた怪異だが、彼らの様子を見て嬉しそうにしている。
ここにいない炭鉱夫達の意志も確認する必要があるため、この場ですぐに決定することはできないが、どうやら丸く収まりそうだ。
ただ、怪異については公にしない方がいいのではないか、という話になった。
これは、怪異がまた実験に使われるのは嫌だと主張したこともあり、実際珍しいであろうこの生き物の存在が広く知られれば、彼女の自由がなくなる可能性も高いからだ。
炭鉱夫達も、秘密を守ることについては了承してくれた。
この様子なら、きっと彼女は炭鉱夫達とここで共存していけるだろう。
そう感じ、イレギュラーズはそれぞれの作戦の後片付けを終えると、満足して帰途についたのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
大変お疲れ様でした。
今回は私、文月の担当しましたシナリオにご参加いただきありがとうございました。
皆様の活躍により、炭鉱に毎日出現していた怪異の正体を突き止めることができました。
炭鉱夫達も彼女も、皆様に感謝していることと思います。
中には負傷してしまわれた方もいらっしゃいますが、少しでも楽しんでいただけましたならば幸いです。
またの機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
GMコメント
閲覧ありがとうございます、文月です。
今回は炭鉱内を走り回る謎の怪異を調査するという依頼です。
以下、補足となります。
●依頼達成条件
・怪異の正体を突き止める
これを達成するには、怪異の動きを止めることが必要不可欠と言えます。かなり素早いため、動きを止めるには頭を使う必要があるでしょう。動きが止まれば、笑いながら走り抜けるくらいなので、対話できる可能性は高いです。できるだけ話し合いで解決してください。
正体が分かれば、炭鉱夫たちも怖くないかもしれませんが、できれば炭鉱からは出て行ってもらうのが最善でしょう。無理な場合でも、炭鉱夫達とうまく折り合いをつけられるようにしてあげてください。
●怪異について
今のところ分かっているのは以下の通りです。これらの情報は全て正しいものとします。
・毎日15時になると炭鉱内を走り抜ける
・「にょほほほほほほほほほ」と笑う
・大きさは人間の大人くらい
・素早すぎて姿を捉えられない
・動きを止めれば会話できる
・走るルートはランダムだが、炭鉱内の全ての通路を必ず通る
・炭鉱夫達を傷つけたことはない
・出現したのは3ヶ月くらい前(12月前後の寒さが厳しくなり始めた頃)
・普通のロープ程度では止められなかった
●その他
アドリブ不可、アドリブOKなど添えていただけたり、口調や性格等が分かりやすいよう書いていただけたりしますと、大変助かります。
皆様のご参加、お待ちしております。
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