シナリオ詳細
<Irrmord>魔人引き連れしバニーガール
オープニング
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練達は無辜なる混沌において、最も科学技術が発達した国。
他国では近代の街並みが普通であるのに対し、この街は現代~近未来レベルの建造物が立ち並び、まさに独特の景観を持つ場所だ。
そんな練達において先日、練達北西部で頻発していた殺人事件。
人々の仲違いなどが原因だが、さらに元をたどれば『道化師姿の鉄騎種』が発する呼び声によって人々が発狂していたことに端を発していた。
これらの事件を総称し、<Abschied Radio>事件と呼ぶが、事件の鎮圧に伴い、ローレットは情報を集める最中、1人の鉄騎種の男の存在を導き出す。
魔種となり果てた『レディオマン』イル・ゲルプ。
練達中央への一般民衆、貧民の襲撃に乗じて旅人同士の対立を煽っていたこの男。
その狙いは、練達に蔓延する価値観の違いを血みどろの抗争へと進展させ、混乱を撒き散らす事だった。
北西部で発生していた事件のみならず、西側に広く現れていた機械の魔物により、イルの声は大きく広げられていた。
イルは自身の『声』をラジオに乗せる事が出来る特殊能力と、彼の支配下にある機械の魔物を利用し、狂気の影響をより広げていく。
そして、彼は練達で集めた民衆、その他「漠然とした不安」を持つ人々や敵愾心の強い貴族主義者を纏め上げ、一気に侵攻することを決断する。
このままでは、多くの犠牲が出てしまうかもしれない。
練達から依頼を受けたローレットはイルの目論見を阻止すべく動き出す。
こうして、練達を舞台として大規模戦闘が開始されたのである。
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幻想ローレット。
再び、練達で起こる大きな事件を受け、イレギュラーズ達は大きな動きを見せている。
「事態の収拾に力をお貸しください」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は依頼に応じてくれたイレギュラーズ達へと説明を始める。
練達の人々を混乱に陥れ、練達への侵攻をはかる『レディオマン』イル・ゲルプ。
彼はさらなる攻勢を強めており、練達の町中で市民が混乱し、再度音響機器ベースの魔物が現れている。
それだけでなく、呼び声の影響で殺人鬼となった者も現れ、場合によっては反転して魔種となっているようだ。
「私がこれから皆さんに討伐をお願いするのも、殺人鬼かつ魔種となった女性です」
名前は、イボンヌ。鉄騎種の女性で、バニーガールの衣装を着用している。道化師の姿をしたイルに心酔するあまり、配下になりたいとその恰好をしているようだ。
イルが混乱を引き起こすように、イボンヌもまた練達西部の街を混乱させようとコンポ怪人を2体引き連れて暴れ始めている。
「コンポ怪人は以前現れた個体の劣化版ですが、イボンヌを含めて現在の呼び声を振りまくので、非常に厄介な相手です」
さらに、イボンヌは鉄騎種として、自らの身体に内蔵した機械から音楽を発することができる。
睡眠音楽によって眠らせた人々を彼女は得意の体術で傷つけ、場合によっては狂気に堕として反転も狙っているようだ。
「一貫性が感じられない部分もあり、愉快犯にも似た相手ですが、ある意味で『レディオマン』の意向に忠実な相手と言えます」
以前、コンポ怪人が現れた街では、イレギュラーズ達は人々を避難させつつ狂気の影響を軽減させるよう対策をとり、魔物達を討伐した。
だが、今回は相手が魔種、かつ避難させるべき人々を眠らせてしまうという厄介な敵だ。
「ただ、相手は3体のみです。敵を上手く引きつけ、討伐することができれば……」
討伐対象こそ以前よりも少ないが、状況は厳しい。人々を守りながら魔種と魔物達の討伐を願いたい。
一通り説明を終え、アクアベルは語る。
「狂気を振りまく度合いを考えれば、極めて危険な敵です」
確実にこの街に現れた殺人鬼と魔物達の討伐を。
彼女は改めて、イレギュラーズ達へと願うのである。
- <Irrmord>魔人引き連れしバニーガール完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2019年12月27日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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練達西部の街中、ローレットのイレギュラーズ達が歩いていく。
「でーあーふたーでー、しーんぐあーろーりのー」
黒髪ストレート、セーラー服姿の『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は鼻歌交じりに街を歩く。
「本当、不思議なものがたくさんありますよね、練達は」
長髪の黒髪メイド、『魔眼破り』シュラ・シルバー(p3p007302)が興味深そうに近未来的な街並みを見回す。
「だからなんでしょうか……今まで見たことない形の魔種まで」
旅人であるシュラは今回の討伐対象を、油断ならぬ相手だと認識している。
「原罪の呼び声を拡散するとは……なかなか興味深い発想だね」
金髪にゴーグルを装着した旅人、『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は関連事件に関わるが、主導するレディオマンに興味を抱いていたようだ。
「劇場型の愉快犯っていうか、目的もなくただ被害を大きくするために行動してくるのが性質が悪いね……」
一方で、別世界の女子高生を思わせる容姿をした『ハム子』主人=公(p3p000578)は不快感を示す。
「歌っていうのは、聴く者の歓びとなるべき物なんですよ」
黒髪ポニーテールの人間種、『嫣然の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)もアイドルとして、この状況を見過ごせないようで。
「皆を楽しませる為にも、皆を惑わすその歌をこれ以上響かせる訳には参りません」
なんとしても、魔種達の侵攻を止めねばならない。
「さて、練達とは個人的に交流を深めたいと思っているし、まずは住民を救うとしようか」
改めて、ゼフィラが仲間達へと促す。
今回事件を引き起こすのは、催眠音楽を流して人々を眠らせてしまうバニーガール姿の元鉄騎種、傲慢の女魔種イボンヌ。
そして、彼女が引き連れた2体の音響モンスター、コンポ魔人。
イボンヌと共にスピーカーとなった両腕から、呼び声も発してくる恐ろしい相手だ。
「これもう、只管攻撃力に任せて叩くしかないよ……」
狼の獣種の少女、『魔法刀士』シエラ・バレスティ(p3p000604)も、手近な敵から数を減らすべきと判断したようだ。
とにかく、こちらはできるだけ被害が少なくなるようにして、向こうの思惑を外したい。
「これ以上、魔種の思い通りになんてさせるもんか!」
公は力を籠めて叫び、仲間と共にこの事件の解決に乗り出すのである。
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街へと現れていた魔種イボンヌはなかなかのプロポーションをバニースーツでさらしつつ、体内から音楽を響かせる。
「さあ、皆さんもレディオマンの素晴らしさに酔いしれるのです……」
それによって、一般の鉄帝民は眠りへと落ちてしまうが、イレギュラーズはそれですぐ眠ることはなく。
「おー、あいつら! 変なの2体引き連れた、ばにぃがーる!」
敵を発見した野生少女、『海賊には眼帯!』リナリナ(p3p006258)が仲間達へとその存在を指し示して。
「兎が殺人鬼の、えーと、イボイボ! 魔種! 変更2体がコン……なんとか魔人!」
イボンヌが連れていたのは、人間の上半身のような姿をした音響モンスター、コンポ魔人だ。
「おー、音を使って攻撃してくる連中聞いたゾッ!」
リナリナはキュッと耳栓をして戦いに臨むが、彼女以外でもその歌に抵抗を見せていたようである。
「さてさて、あなたたちは私を楽しませてくれるのかしら?」
秋奈は前方の魔種と連れの魔人を見据えて言い放つ。
「張り切って魔種狩りの始まりよ! ……うるっさいわね!」
催眠音楽をうっとうしく感じ、彼女は思わず苛立ちげに叫んでしまっていた。
「あら、ローレットの皆さんですね。以後、よしなに」
イボンヌは丁寧に挨拶するが、その目は明らかにこちらを見下しており、レディオマンにたてつく愚か者と言わんばかりだ。
「手早く作戦を再確認しましょう」
公が仲間達へと告げる。
まず、敵をそれぞれ足止めする間に、住民を避難誘導。
しかし、すでに眠らされている者達がおり、その目覚まし役を弥恵が請け負って。
「夢は起きている時に見るものです! さぁ、皆様、ライブが始まりますよ!!」
彼女はスピーカーボムで名乗りを上げ、この場の人々の目を覚ます。
「さてさて、寝ている場合じゃないだろう? 早く起きたまえよ!」
ゼフィラも重ねて、人々達へと大声で呼び掛ける。
眠りかけた人々は目を覚まし、慌てて避難へと動き出す。
それもあって、ゼフィラも安心して住民と敵の間へと位置取り、魔種達から人々を守ろうとしていた。
秋奈も眠っていた人をはたいて目覚めさせ、その人を退避させつつイボンヌを叩くべく接敵していく。
「後は誘導させつつ戦って、終わったら本格的に討伐だね」
コンポ魔人から倒していくが、確認をとる公もそれに加わる。
「兎娘に内蔵音声のカラクリ……じゃと? 実に珍妙な相手じゃの」
中性的な見た目をした黒髪のレガシーゼロ『九尾の狐』綺羅々 殺(p3p007786)の目にも、今回の敵は変わって見えたようだ。
「それで傲慢の魔種とな……なんか変態っぽいのじゃ」
そして、引き連れていたのもまた珍妙な上半身だけの人型魔人。
世界は広いと実感しながらも、殺はその相手へと進み出て。
「とりあえず、斬ればいいんじゃろ。それで全て解決じゃ」
「コレ以上狂気撒き散らす、禁止! みんな迷惑だゾッ!」
リナリナも敵へとい言い放ち、背中のジェットパックを噴射させ、跳び上がる。
そんなイレギュラーズ達の態度に、イボンヌは不敵に笑う。
「皆さんにも存分に聞かせてあげましょう」
高らかに声を響かせる彼女の声に、シエラは思わず耳を塞いでしまって。
「なんてうるさい敵だー! 静かにしてさしあげる!!」
決壊してしまう前に全力で。
シエラは上下に刃が伸びた両剣「幻狼滅牙」を手にし、敵を止めに当たるのである。
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原罪の呼び声を発してくる魔種、そして魔人達。
それらを倒すべく、イレギュラーズ達は立ち向かっていく。
周囲で眠りに落ちた者達は先程の大声で目覚め、避難に当たる。
ならば、弥恵もその催眠音楽を発する元凶である魔種、イボンヌの相手をと近づいて。
「お相手を務めていただけますか?」
プリズムライブを行う彼女もまた、バニーガールへと姿を変える。
相手を怒りに満たすことはできないが、ギフト「天爛乙女」の効果を活かした弥恵が敵を引き付けようとして。
「貴女よりも、私の方が愛しい彼の気を惹けると思いますよ」
「……その誘い、乗ってあげましょう」
笑うイボンヌが先に自らの内臓を振るわせ、それを拳へと伝達させて殴り掛かってくる。
相手がうまく自分の煽りに乗ってくれたと感じつつ、弥恵はその一撃を正面から受け止めた。
これでしばらく、催眠音楽を止められそうだ。
「るら、るら、るらるらるらららぁぁ~!!」
そこに、空中から飛び込んできたリナリナはジェットパックを切って着地してから、ハンマードリルで相手の頭や上半身をメインに幾度も力任せに叩きつけていく。
さらに、秋奈がイボンヌへと近づいて。
(「私は呼び声なんて効かない……はずだし」)
周囲の人々が寝ていないことを確認しつつ、秋奈は両手に緋い刀身の刀を両手に持ち、意志抵抗力を破壊力へと転化して切りかかっていく。
「バニーガール、割と好みなのよね」
「それは光栄ですね」
イボンヌは微笑みを湛えたまま、回し蹴りをこの場の3人へと叩き込んでくる。
強烈な一撃だが、まだ耐えられない傷ではない。
弥恵も、リナリナも、秋奈も皆イボンヌをこの場で抑えるべく、さらに攻撃を仕掛ける。
空を縫う飛燕の如く弥恵は舞い、空中から連続蹴りを浴びせかけていくと。
「るら~! 騒音禁止!!」
リナリナはさらに虚空をハンマーで殴りつけると、なぜかイボンヌの上半身に衝撃が走る。
「おー、リナリナ、可能なところまではやりきるゾッ!」
ガチンコだと一方的にやられると察していたリナリナは、トリッキーに動き回る。
ジェットパックで跳び上がってリナリナが回避に動くと、続けざまに秋奈がまたも両手の刃で切りかかっていく。
「皆の方には行かせないよ」
「ふふ……」
イボンヌはそんな彼女達に興味を示していたようだ。
2体のコンポ魔人は別メンバーが相手する。
真っ先に公はその片割れへと接敵し、攻撃には出ることなくその侵攻を食い止める。
肘の上下がスピーカーとなっているその剛腕で、魔人達は殴り掛かってきた。
「結構、強い相手の様じゃからな」
殺も公と攻撃対象を合わせ、邪悪なる刃「黒綺羅星」に呪いの妖気を纏わせる。
その刃の力を十二分に発揮するべく、殺は回転しながら尻尾で魔人の視界を遮り、回転切りを浴びせかけていく。
相手は見上げる体躯だが、上半身だけであり、頭は多少見上げる程度の位置。
ともあれ、まずは魔人の動きを止めるべく、殺は刃を再び差し向ける。
「速やかな騒音停止措置を致します」
天狼の血の力を発現させたシエラは髪を白くし、極限まで精神を落ち着かせる。
音響モンスターが相手ということで、シエラは接敵しながら武器に雷の気を纏わせ、気を高めていた。
「早く、ここから逃げて!」
ゼフィラは呼びかけを続けながらも、フリーとなるコンポ魔人が住民を狙わぬよう注視しつつ軽量弓「ロビン・フッド」を構える。
元々重傷だったこともあり、後方から戦うゼフィラ。
素早く射放つ呪われた魔弾でコンポ魔人に災厄を振りまきつつ、状態異常で苛むのがゼフィラの狙いだ。
仲間達の動きを見て、最後に動いていたシュラもまた集中して魔人を叩く。
まだ、魔人2体が固まっていたこともあり、シュラは纏めて「紅蓮の大剣【飛炎】」で乱撃を浴びせかけていく。
そこで、仲間が片方の魔人に攻撃を集中していたこともあり、公はフリーとなって超音波で破壊活動を進める魔人の抑えへと回る。
もう片方、周囲にいるメンバーをめった殴りにしてくるコンポ魔人達の力は侮れず、近場にいたメンバーの体力を大きく削り取ってしまう。
ゼフィラが練達の治癒魔術を使って仲間達の回復に当たり始める中、他メンバー達は一気に攻撃を畳みかけていく。
仲間がうまくイボンヌの注意を引き付けてくれていることを受け、殺は霊魂操作で自身の周囲の魂を動かすことで魔人の視界を塞ぎ、強襲する。
そこへ、シエラが高めた気を持って鋭い突いていくと、コンポ魔人の動きが急激に鈍りだす。
些かボーッとした態度も見せる魔人を見据え、シュラは手にした【飛炎】の力を解放して。
「本気でやらせて頂きます……お覚悟を!」
燃え盛る炎と共に、シュラは敵の胸部から首目がけて刃を切り上げた。
シュラも炎によるダメージを受けていたが、魔人はそれではすまず、全身を炎に包んで倒れていったのだった。
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1体魔人を倒して楽になったかと思いきや、イレギュラーズ側の方が敵から押される展開になってきていた。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
秋奈は名乗りつつも、光が駆け巡ったかのごとき一撃を敵へと浴びせかけた。
だが、イボンヌの振動拳は強かに彼女を捉えて。
身体を抉られる一撃に意識を失いかけた秋奈はパンドラを使いつつ、しっかりと反撃は叩き込む。
「ジリ貧な戦い方は嫌いなの」
続き、弥恵も大胆に肢体を振り乱して踊るようにステップを踏み、敵に存在を示しながら蹴りかかり続ける。
すると、イボンヌは素早く反撃し、回し蹴りを浴びせかけてきた。
それを受けた弥恵は一度倒れかけ、パンドラに縋る。
「イボイボ兎にトツゲキ!」
リナリナはというと相手の強さを理解した上で、全力で仕掛けていく。
敢えてバランスを崩して倒れたり、うつ伏せに倒れたりして攻撃を誘いつつ、ジェットパックで逃げようとして見せる。
とにかく、リナリナはコン何とか魔人とイボイボ兎合わさることに危険を察して。
「リナリナ、限界いっぱい頑張る!!」
ジェットパックを使いつつ、彼女は上半身をメインに攻撃を仕掛けていたかと思いきや、相手が警戒を緩ませた足へとガブッと噛みついていく。
「きゃあっ、やりましたね……!」
3人がかりで抑えるイボンヌだが、依然として平然としながら体術を使い、さらに広範囲へと音波を発してくる。
「レディオマンは崇高なる存在なのです」
完全に目がイッてしまっているイボンヌ。魔種となったことでその崇拝は狂気すら感じさせた。
そちらに気をかけながらも、他メンバーももう1体のコンポ魔人の討伐を急ぐ。
敵の殴打を受け止める公は思った以上に傷つきながらも、自らの盾「ルスト・ウィッシュ」に魔力と気力を融合し、叩きつけていく。
2種のスキルを確認し、こちらがベストと判断していたようだ。
殺は変わらず相手の視界を塞ぎながら「黒綺羅星」を叩き込み、シュラも炎を舞わせた一撃を叩き込むが……。
徐々に体力を削られていたシュラは魔人の殴打をもろに受けてしまい、パンドラの力を使って立ち上がる。
だが、消耗していた魔人も頭をくらつかせていて。
「コードがあれば、電源が落ちるかなって思ったんだけど……」
その存在を確認できず、シエラが両剣の刃で鋭い一閃を繰り出すと、魔人の身体が大きく後方に揺らぐ。
公は疲弊する仲間の回復と刹那迷うが、素早く盾を突き出し、強力な一撃を叩きつける。
ついに魔人は仰け反り、その身を後ろへと崩していったのだった。
魔人を倒したことで、担当メンバー達がイボンヌの方へと駆けつけてくるのだが……。
「ふふ、ずいぶんお疲れのようですね」
イボンヌはさほど疲弊しているようには見えない。
魔人への討伐を優先させたはずのメンバー達だったが、想像以上に手間取ってしまっていた。
皆かなり消耗していており後方から、攻撃を仕掛けるゼフィラは仲間の回復に注力し続けるが、立て直す間もなく魔種戦を強いられることとなる。
「イレギュラーズの方が余程傲慢でしょ、出直してきて」
シエラは意気揚々と「ディストーションリング」を使いつつ攻撃し、次元震で内部破壊を試みる。
「私を舐めてもらっては困りますね」
それでも、イボンヌは笑みをうかべたまま、体内に内蔵された機械から催眠音楽を鳴らし始めた。
周囲に響く音楽は弱ってきていたメンバーには非常に堪える状況だ。
現に、倒れぬようにと堪えていた殺が倒れ、シエラは風の精霊を惹きつける衣服『ミニステル・シルフ』で軽減をはかってはいたが、かなり厳しい状態だ。
音楽によって態勢を乱されたシュラも、仲間の回復状況が苦しいと判断して。
「こういうの苦手なんですけどね……負ける訳にはいきませんから……!」
生命力を使ってシュラは強引に治療し、さらに大剣を握りしめて攻撃を再開させる。
闘気を高め、炎を舞わせながら渾身の力で体験を叩きつけるシュラ。
僅かに、イボンヌも眉を顰めていたようだ。
これ以上、催眠音楽を使わせるわけにはいかないと判断し、弥恵は牽制の為に距離をとって相手をいなしながらも、イボンヌの喉を狙って蹴りかかる。
「るら、るら、るらるらるらららぁぁ~!!」
それまで全力を振り絞って戦っていたリナリナは仲間達に後を託し、空中から強襲しつつの乱舞を浴びせかけて牽制に当たる。
相手の虚を突き、攻撃集中した秋奈は光を纏った刀でみぞおちを突いていった。
それでも、魔種を追い込むには至らず。
「今度はこれでどうかしら?」
イボンヌはイレギュラーズ達の攻撃を捌きながら、今度は内蔵された機械から超音波を周囲へと発してくる。
「やらせません!!」
弥恵は相殺するようにスピーカーボムを使い、大声を張り上げた彼女は耳がキーンとなりながらも抵抗する。
しかし、メンバー達の状態は深刻だ。
魔人の攻撃を耐え続け、イボンヌとの交戦でも前線に出ていた公はパンドラを使って踏みとどまり、臨戦態勢を崩さぬようにと身構えていた。
ただ、シエラにも限界が訪れ、その場へと卒倒してしまう。
シュラもまた疲弊が高まり、超音波をまともに浴びて崩れ落ちていた。
回復に当たるゼフィラも状況を立て直しきれず、歯噛みする。
「残念ですね。勧誘はまた今度にしましょうか」
3人を倒したイボンヌはくすりと笑い、大きく宙返りして何処かへと消え去ってしまった。
耳が遠くなったことを感じる秋奈。
それが気のせいだと自覚しながらも、魔種を取り逃がしたことを再認識し、悔しそうな表情をしていたのだった。
●
魔人を倒し、イボンヌは一応撃退したが……。
「どうやら、イボンヌについていってしまった人がいるようです」
公が聞いた話では、若者数名がイボンヌの呼びかけに応じてしまい、連れ去られてしまったとのこと。
メンバー達は悔しさをにじませつつ、事後処理に当たる。
魔人が建物を破壊したことで、あちらこちらに瓦礫の山ができており、シュラはその撤去に当たる。
「狂乱してる人を抑えないと」
呼び声で戸惑う人々を、秋奈は美少女パワーでなんとか抑えようとする。
その搬送に、シュラはパカダクラの砂駆にも手伝ってもらい、出来るだけスムーズに状況の改善に努める。
それでも、イレギュラーズ達は戦闘で負った傷の回復も満足にできず、作業は日が暮れるまで続いたのだった。
成否
失敗
MVP
なし
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
今回はこうした形を取らせていただきました。
ご了承くださいませ。
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
練達で起きている事件の解決に力をお貸しいただきますよう願います。
●注意
この依頼に参加する純種は『原罪の呼び声』の影響を受け、反転する危険性があります。
●目的
敵全ての撃退。
●敵……3体
魔種となった殺人鬼が機械モンスターを従えております。
◎殺人鬼……イボンヌ
20代、鉄騎種の女性。レディオマンに心酔しているようです。
『傲慢』の魔種で、バニーガールの姿をしています。
体術の他、自らの内蔵された機械で音を武器に攻撃します。
・超音波……(A)神自域・万能・不吉
・回し蹴り……(A)物自範・ブレイク
・振動拳……(A)物近単・防無・物攻+
・睡眠音楽……(A)神中域・停滞・崩れ・恍惚
・機械の身体……(P)精神異常、怒り無効
◎機械モンスター……コンポ魔人2体
全長2mほど。人の上半身のみの見た目をした魔人。
胴体を本体とし、スピーカーとして機能する左右の腕を持ちます。
「<Abschied Radio>声が呼び寄せる機械生物」に出現した魔人の劣化バージョンですが、しっかりと呼び声も発してきます。
・シャウト……(A)神遠範・混乱
・殴打……(A)物近単・ブレイク
・めった殴り……(A)物近列・連・痺れ
・超音波……(A)神遠範・万能・不吉
●状況
昼間、練達西部の街中が事件の舞台となります。
コンクリート製のビルなどが立ち並ぶ街にイボンヌが怪人を引き連れて現れ、狂気の影響を拡大させて『レディオマン』に従う者を増やそうとしています。
イボンヌが直接原罪の呼び声を発する他、コンポ魔人達も両腕のスピーカーから『レディオマン』の声を発する為、いずれも危険な存在です。
迅速に、周囲の避難誘導と敵を討伐する必要がありますが、厄介なことに、イボンヌの睡眠音楽が周囲の人々を眠らせる可能性があります。
メンバーで上手く役割分担して討伐に当たらねば、練達の人間種が反転する恐れがあります。
なお、街には旅人も多く住む為、必ずしも被害者が反転するとは限りません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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