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シナリオ詳細

<Irrmord>殺意の羽音

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●打ち込まれた巣
 練達。近代化著しいこの街にも、憩いの場としての緑は存在する。
 ここは、そんな公園の一角だ。はしゃぎ、遊ぶ子供たちから、仕事に疲れた大人たちまで――多くの人々が、此処でそれぞれの時間を過ごしている。
 ぶぶぶ、と。
 音が鳴った。
 虫の羽音のようであった。
「ママ、なんかいるよ」
 幼い子供が一人、声をあげた。虫の羽音、それに興味を引かれて、木立へと顔を突っ込む。
 子供が向かったその先には、一本の木が存在した。巨大な木である。樹上には、鉄やらアルミやらの、無数の金属で構成されたこれまた巨大な塊が鎮座していて、虫の羽音はその周辺から聞こえるようであった。
 ぶぶぶ、と。
 羽音が鳴る。
 べぎべぎと、鉄の塊が音を立てた。外壁が変容すると、それは巨大な『蜂のようなもの』を産み落とした。
 蜂のようなものは、ぎちぎちとその口を鳴らした。じじじ、じじじ、その身体に据え付けられたスピーカーから、狂気の音声を流しながら、蜂のようなものはゆっくりと飛翔し、最初の獲物に狙いを定めた。

●鉄の殺人蜂
「ちょっとまずい状況ですね」
 と、『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)は、口元に手をやりながら、集まったイレギュラーズ達へと告げた。
 ノイズビーという魔物がいる。巨大な蜂の形をした機械型の魔物である。
「そのノイズビーなんですが、どうも練達の街中に、巨大な巣を作ってしまったようで。元々人里なんかには近づかないタイプの魔物なのですが、何故か」
 奇妙な点はほかにもあった。ノイズビーは元来穏やかな性格であり、ノイズビーの名のごとく、身体のスピーカーから発せられる雑音で外敵を追い払う以外の行動は行わない。蜂らしく針は持っているが、これはほとんど使われることは無いのだという。
「……ですが、今回現れた個体は攻撃性が非常に旺盛でして。すでに何人か犠牲者が出ているようです。これはおそらく、例の道化師……『レディオマン』の仕業ではないかと」
 『レディオマン』――イル・ゲルプなる魔種である。ここ最近練達にて発生した一連の事件の首謀者とされ、目下イレギュラーズ達との対決が行われている最中だ。
「その証拠に、ノイズビーたちのスピーカーからは、例の狂気の音声が流されているようです。改造されたのか、変異されたのか……なんにしても、放っておくわけにはいきません」
 ファーリナは、ぱん、と手を叩いてから、続けた。
「皆さんにお願いしたいのは、巣の除去です。このまま放置していては、次々とノイズビー変異種が生み出され、被害が増大してしまいますので」
 周辺はすでに封鎖してあり、後はイレギュラーズ達が向かうだけ、という状態の様だ。
「こんな所ですかね。では、お気をつけて。お仕事、頑張ってくださいね!」
 そう言って、ファーリナはイレギュラーズ達を送り出した。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 ハチの巣バスターズな依頼になります。

●成功条件
 『ハチの巣』の破壊

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 練達に存在する、とある公園の一角。
 その巨大な木の上に、巨大な鉄の塊――ノイズビー変異種の巣が発見されました。
 皆さんは直ちに現地に向かい、このハチの巣を破壊してください。
 生産されたノイズビー変異種には、最悪逃げられても構いません。ハチの巣さえ破壊してしまえば、少なくともノイズビー変異種が量産されることは無くなるためです。
 作戦決行時刻は昼。周辺は規制線が張られ、住民などはすべて避難しています。

●エネミーデータ
 ハチの巣
  特徴
  巨大なハチの巣。高いHPを誇る。
  一切攻撃行動や防御行動は行わない。ただし、毎ターン、必ず最初に行動し、以下のスキルを使用する。
   スキル名:生産
   スキル効果:ノイズビー変異種を一体、戦場に配置する。
  なお、設定上木の上に存在しますが、特別な対策を練らなくても、通常攻撃やスキルでの攻撃はできるものとします。

 ノイズビー変異種 ×10
  特徴
  巨大な機械のハチ。HPは低いが、素早さと高い攻撃力が脅威。
  戦闘開始時には巣を守るように配置されている。
  至近~中距離レンジでの攻撃を得意とし、『毒』を付与する攻撃や、『必殺』を持つ攻撃も使用する。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <Irrmord>殺意の羽音完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年12月28日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
ロク(p3p005176)
クソ犬
湖宝 卵丸(p3p006737)
蒼蘭海賊団団長
桐神 きり(p3p007718)

リプレイ

●羽音
 ぶぶぶぶ。
 虫の羽音が聞こえた。
 練達の公園――その入り口。
 イレギュラーズ達は、ノイズビー変異種……狂暴化した巨大な機械のハチの討伐に繰り出されていて、今まさに、公園へと潜入した。
「……煩いな……羽音が耳に障る……」
 『幻灯グレイ』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)は目を細めながらつぶやいた。公園の入り口からして既に響くその羽音は、一般人であれば何事かと首をかしげ――その正体を知れば、恐怖におののくであろう音である。
「……はやく、消すっす……」
 うんざりした様子で、クローネが言う。クローネの精神安定のためにも、速やかにこの音の根源を討伐する必要があるだろう。
「この音だと……蜂もデカそうですね……」
 些かげんなりとした様子で言うのは、桐神 きり(p3p007718)だ。虫が苦手なのか、あるいはそれに付随する面倒ごとが嫌なのか。想像するだけでも分かる、厄介そうな相手――きりは頭を振って、ひとまず思考を振り払った。
「考えるのはやめておきましょう、近づかれる前にやっつけちゃえばいいんです」
「そうだよ! とにかくすばやくやっつけちゃおう!」
 ばくばくばく、と弁当を平らげながら、『クソ犬』ロク(p3p005176)がいう。ごくり、と特製の弁当のお肉を飲み込み、
「わたしのお気に入りの練達にこんなことするなんて! 許せないよ、レディオマン!」
 事件の裏に潜む黒幕、その存在へと静かな怒りを燃やしつつ、しかし今は公園の木々を睨む。
 そこには、今回の標的――巨大なノイズビー変異種の巣があるのだ。この巣を除かなければ、さらなる甚大な被害がもたらされるだろう。
「さて、準備は良いですか?」
 『孤高装兵』ヨハン=レーム(p3p001117)が声をあげるのへ、仲間達は頷いた。こうしている間にも、羽音は大きく、なった……ような気がする。巣から生み出される、ノイズビーたち。
「では、行きましょう……気を付けて」
 ヨハンの言葉に、仲間たちはその一歩を踏みだした。一歩一歩、ノイズの根源へと近づくにつれて、羽音は大きくなっていく。ぶぶぶ。ぶぶぶぶぶ。得も言われぬ恐怖を感じるのは、それがただの羽音ではなく、殺意を込められた威嚇音だからだろう。
「うっ……!」
 たまらず声をあげたのは、きりである。超視力により周囲を警戒していたきりには、誰よりも先に、その巨大な巣を発見するに至った。そしてその威容は、すぐにイレギュラーズ達の眼前へと晒されることになる。
「ふぅむ、なるほどね。確かにこれは、機械の巣だ」
 『蒼き深淵』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は興味深げに声をあげた。ぶぶぶぶ。ぶぶぶ。羽音をあげながら、カチカチとその牙を鳴らす、数匹の巨大な機械のハチ――そして彼ら、あるいは彼女たちが護る様に遊弋する先には、巨大な金属の塊が存在した。悪趣味な芸術家がハチの巣をテーマに金属をくくり付けて回ったかのような外見をしたそれは、或る時、がちがちと音を鳴らすと、その内部から巨大な蜂を一体、生み出して見せた。
 機械の巣――悪意によって変異した、これがノイズビー変異種の巣である。
「興味深いな……ううむ、個人的には採取しておきたい所だが」
 魔術師たる思考による興味を隠そうともしないルーキスであったが、しかし優先するは駆除であることは充分に理解している。異常変異させられたこの巣を放置し、呼び声の伝播などされてはたまったものではない。
「蜂は、自然では植物の受粉のための運び屋。とても大切な存在ですが……」
 『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)は、蜂から発せられる異常ともいえる敵意に、身を固くした。
「これは……あまりにもねじ曲がってる……! 悪意とか殺意とか……とにかく歪められて……ます……!」
 ラクリマは眉をひそめた。ノイズビーも本来は、温厚な……例えるなら、ミツバチのような存在であったという。だが今は、例えるなら獰猛なスズメバチ……いや、スズメバチすら、自己を守るための獰猛さを持ち合わせているだけだ。この変異種は、明確な悪意によって存在している。明確に――自然なものではないのだ。
 がちがち。ぶぶぶぶ。がちがち。ぶぶぶぶ。羽音と、牙を鳴らす音が、イレギュラーズ達の鼓膜を震わせる。
「……警戒してる! こっちを見つけた!」
 『蒼蘭海賊団団長』湖宝 卵丸(p3p006737)が声をあげた。どうやらノイズビーたちも、イレギュラーズ達の存在を確認したようだ。獲物がやってきた……ノイズビーたちからしてみれば、そう言った認識だろう。
 がちがち! がちがち! 威嚇にも、舌なめずりにも似た、牙を鳴らす音。
「お前達、怖くなんかないぞ……人を傷つけるなら、許さないんだからなっ!」
 卵丸は声をあげ、武器を構える。合わせるように、イレギュラーズ達も武器を構えた。
「狂暴化した蜂の駆除……冒険者の日常といった物語ですね。いいですよ」
 『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)はにこり、と笑んで、言った。
「さぁ、物語を語りましょう。はてさてどのような結末になるのやら――」
 その言葉を合図にしたように、イレギュラーズ達は一気に突撃した。

●ぶぶぶ、ぶぶぶぶ
 イレギュラーズ達が遭遇した段階で、産み落とされていたのは10体のノイズビーたちである。ノイズビーたちが一斉に動き出す――。
「速い……けど!」
「わたし達には、追い付けないよっ!」
 だが、此方の速度はそれを上回っている! 卵丸とロクは、ノイズビーたちよりも先に、動いた!
 ノイズビーを誘うように、卵丸は一度、引いて見せた。そのまま、巣と己を結ぶ直線上にとらえたノイズビーたちを巻き込むように、己の獲物を振りぬいた。
「喰らえ、必殺、蒼・海・斬! 繋がれ、虹の道っ!」
 刃にのせられた七色の輝き、それが虹の道を作る様に、一直線に巣と、ノイズビーを切り裂く! 巣の装甲が火花を散らして少し剥げて、ノイズビーたちはガチガチと牙を鳴らしてこちらを威嚇する。
「虹の道を駆け抜ける、わたしっ!」
 描かれた直線、巣までの道のりを、ロクは駆ける。接近してから、大きく吠える――意志抵抗力を力に変えて叩きつける遠吠えが、がぎり、と巣の装甲をはいだ。
「硬い……みたいっ!」
 ロクが吠える。だが、巣の破壊にはまだ遠い。巨大な巣は依然として、その威容を誇っているようだ。
 そして先手を取られた怒りか、ノイズビーたちは一斉に、ロクと卵丸へと襲い掛かる。がちがち! 鋭い牙が、あるいは腹部より放たれる毒液が、二人を襲った。
「きゃーっ! 危ないっ!」
 ロクは飛び回りながらそれから逃れるよう試み、
「こう大きいと、噛みつかれるだけでも脅威だなっ!」
 卵丸は刃をかざし、牙を斬り払いで致命傷を避ける。
 襲い掛かる10のノイズビーたちの攻撃は、二人に決して浅くはない傷を残す。
「すぐに叩き落しますよっ!」
 ラクリマは、己の血を代償にした血の鞭を作り出し、力強く振るった。一匹のノイズビーを切り裂くように命中したそれは、ノイズビーの腹部を斬り飛ばした。ぶぶ、と断末魔の羽ばたきを残し、爆発する。
「まずは、最初の一匹っ!」
 ラクリマが叫んだ。続いて、イレギュラーズ達の反撃が始まる。
「……害虫駆除の始まりッスよ……」
 ぶんぶんと鳴り響く羽音の雑音に、クローネは少しばかり眉をひそめながら、氷結と飢餓の呪いを振りまく。突如として訪れた冬が、ノイズビーたちを襲った。ノイズビーが一匹、その呪いに捕らわれ、弱弱しく地に落下する。ぶぶ、小さくは音を鳴らして、それは息絶えた。
 ふん、とクローネが鼻を鳴らす。少し静かになった――だが、まだまだ、羽音は五月蠅い。ああ、五月蠅い、五月蠅い。早く駆除しなくては。
「このままのペースを維持しましょう!」
 ヨハンが叫んだ。『聖剣イチゴショート』、そのクリーム色の刀身が、ノイズビーを切り裂く。ばちばち! と、火花を散らしながら、切り裂かれたノイズビーは地へと落着し、爆発する。剣のせいか、不思議と甘い香りがあたりへと広がった。
「今は押しの一手です! とにかく蜂の数を減らせば、後はでくの坊……巣だけ!」
 普段は守りを主とする戦い方をするヨハンではあったが、今回の作戦では、守りに傾注してはじり貧だと判断したのだろう。しかし攻勢に回ったとて、その実力が翳ることなどは決してない。
「了解だよ」
 ルーキスが精神を集中されると、一体の妖精がその姿を現した。
「キミの自慢の牙の出番」
 ブラックドッグ、その名のままに、勇敢なる黒の牙が、ノイズビーへと襲い掛かる。がぎり、と突き立てられた牙が、ノイズビーの腹部を噛み砕く。がちがちと牙を鳴らしながら断末魔の飛行を続けるノイズビーに、トドメの牙が付きたてられた。
「ふふ、お見事。よくやったよ」
 ルーキスが楽し気に、妖精の労をねぎらう。
「ハチの巣も、ハチも、まとめて貫くっ!」
 きりの放つ紅の衝撃波! 紅に輝く、きりの左眼。赤の閃光が、一直線に巣へと突き刺さった――その道中にいたハチもまとめて。衝撃にがちがちと牙を鳴らすノイズビーたち。ダメージは、舞い散る火花となって目に見える。そしてまた少し、巣の装甲が剥がれ落ちたが、今はまだ、破壊には至らない。
「さて、攻撃一辺倒とはいきません。ロクさん、治療を施しますよ」
 四音の治療術式が、ロクの身体を癒す。攻撃面に重視した作戦ではあるが、敵の攻撃は決して侮ってよいものではない。敵の攻撃能力は、決して低くはないのだから。
「助かるよ! 結構痛かったし!」
 ロクがうれし気にほえる傍で、機械の巣ががちがちと音を鳴らした。すると、一匹の新たなノイズビーが、産み落とされたのである。
「増えたのか!?」
 卵丸が呻くのへ、答えたのはルーキスである。
「さて、織り込み済みだよ。さぁ、攻撃を続けよう」
 その言葉の通りに、イレギュラーズ達は攻撃を再開する。

 攻撃面を重視したイレギュラーズ達の作戦は、着実な成果を上げていた。もちろん、受ける傷は決して浅くはなかったが、その分、早期に蜂をせん滅することで、ダメージの総数は着実に減っていく。
 そしてダメージの総数が減れば減る程、イレギュラーズ達にも打てる手は増えていく。
 確実に――そして明確に。勝利の天秤は、イレギュラーズ達へと傾いていった。

「公園の憩いを護る為、これ以上、危険な蜂を生み出させはしないんだぞっ!」
「わんわん、わおーんっ!!」
 卵丸と、ロクの攻撃が、ノイズビーの巣へと突き刺さる。その巣の角が、斬撃に斬り落とされて落下した。激しい火花を散らして、巣の外装がはげ落ちる。
 ノイズビーたちも、今はその姿を大幅に減じていた。必死の様子で反撃を試みる――だが、それらの反撃も、イレギュラーズ達の攻勢を弱めるには程遠い。
「巣の破壊を優先します!」
 ラクリマの血の鞭が、巣の外装を斬り飛ばした。ガギッ! 高い音を立てて、鉄片が宙を舞う。
「……巣であろうが、蜂であろうが、機械であろうが……動いているもの全てを停止させる……」
 クローネの放つのは、『杭』である。具現化されたそれは、絶死と絶命の呪いの具現。その呪いの杭が、ノイズビーの巣へと叩き込まれた。
「……それが私の呪杭だ……」
 ばぎり、と、巣の全体にひびが入る。ラクリマ、そしてクローネの放った攻撃が、巣の構造に何がしかの致命的なエラーを引き起こしたようだった。火花が散り、小さな爆発が発生する。ぼん、ぼん、と内部が爆ぜ、金属片がまき散らされる。
「ノイズビーはこちらで処理します!」
 ヨハンが斬撃をみまい、ノイズビーを一匹、斬り飛ばす。頭部と身体を切り離されたノイズビーが、断末魔の羽音をあげながら爆散する。
「いつまでも、好き勝手に飛ばせてあげるわけではないよ」
 ルーキスの放つ黒の妖精が、残るノイズビーを追い詰める。流石に命の危険を感じたノイズビーが慌てて逃げだそうとするのを、しかし妖精が逃がすはずがない。その黒の牙で食らいつき、ノイズビーを地へと叩き落す。ぎぎ、と身体を震わせたノイズビーが活動を停止する。
「これで最後の一匹ですっ!」
 紫色に輝く、きりの左眼。紫の斬撃が、上空を飛ぶノイズビーを捕らえた。呪いの紫の斬撃が、ノイズビーを真っ二つに切り裂く。ぎぎ、ノイズビーは断末魔をあげながら、空中で爆発!
「さぁ、最後の正念場ですよ。一気に決めましょう」
 仲間達に最後の治療を施しながら、四音が告げる。ノイズビーの巣は、再びノイズビーを生み出そうとするが、致命打と、呪いを受けたせいだろう、その機構が正常に作動せず、空しくきりきりと音を鳴らすだけだ。
「……これが海賊の音速の一撃だっ!」
 卵丸の音速の殺術が、ノイズビーの巣を切り裂いた。真っ二つに切り裂かれたそれが、張り付いた木から切り離され、宙を舞う!
「わんわん、わーんっ!」
 ロクの抵抗意志力によって高められた一撃が、宙を舞うノイズビーの巣へと突き刺さった! ノイズビーの巣は、その一撃についに耐え切れなくなる! ぼん、と激しい爆発をあげながら、ノイズビーの巣が爆発、バラバラに爆散する!
「これでおしまいっ!」
 ロクが吠えた。果たして、周囲にあれほど響いていた羽音はなく。
 今まさに、公園はその静寂を取り戻したのであった――。

●静けさの街で
「……あー……」
 クローネが、耳に手を当てながら、顔をしかめる。
「……羽音がまだ響いてる気がする……」
 あれほどわんわんと響いていた羽音は、今はもう存在しない。
 だが、その五月蠅さは、未だにあたりに響いているようにすら感じる。
「酷い音でしたからね……」
 ヨハンは苦笑しつつ答えた。実際に、まだわんわんと耳元が鳴っているような気がした。
「くんくん……」
 爆散した巣の破片の匂いを嗅ぎつつ、ロクが声をあげる。
「女王バチみたいなのはいないみたいだね! 巣を壊したから、もう大丈夫なのかな?」
 ロクの心配は、自然のハチならばあってしかるべきである、女王バチの存在だろう。女王が存在すれば、働きバチはいくらでもまた生み出されることとなる。
「おそらく、そのあたりは自然界のハチと違う所なんでしょうね。もしかしたら、あの巣自体が、女王を兼ねた一つの生命……なのかも」
 首をかしげつつ、ラクリマが言う。
「自然のハチそのもののじゃなくて良かったですよぉ。虫を潰して回るなんて、気持ちいい物じゃないですからね」
 きりが言った。敵の手ごたえは、虫というより、金属の塊に近かった。疲れは増したかもしれないが、感触としては、気持ち悪いものではない、というのが救いだっただろうか。
「この魔物も静かに暮らしてたかっただろうに……レディオマン許さないんだからなっ」
 卵丸が言う。ノイズビーも元々は、このような獰猛な生物ではない。そのように変異させた黒幕……『レディオマン』の対決は、果たしてどのような結果になるのだろうか?
「上手く転ぶといいんだけどねぇ? ……さて、撤収しようか?」
 ルーキスは煙管をふかしながら、そう言った。
「さてさて、物語はこれにてお終い。被害も最低限でめでたしめでたし……と言った所でしょうか。ふふふふ」
 四音がそう言って笑った。
 四音のいう通り、この物語はこれでお終い。
 もう練達の街に、殺意の羽音が響くことは、ないのだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様のご活躍により、練達の街は静けさを取り戻しました。
 長閑な午後の公園に、ぶぶぶ、という音が響くことは、ないでしょう。

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