PandoraPartyProject

シナリオ詳細

望まれている事

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●雑草共
「――また人を攫って来たのか」
 薄暗い、窓を閉め切ったどこかの家。
 物は散乱しており清潔感の無さを伺わせる――が。
「フ、ハハハハハ! いや何! 外でほれ、親も近くにおらず歩いていたからのう――つい!!」
「つい、で攫うな馬鹿めが! もう少し計画性という物を考えろ!」
「むぅ! すまんッ!!」
 部屋の中央。テーブルを挟んで話す二人の男はそんな事一切気にしていない。
 酒を飲みながら、人を攫ったと話す大柄の男。
 片やその行いに対し、もう少し考えてから行動せよと咎める細身の男。
 それぞれの纏う雰囲気は真逆。なれど――険悪なる感情はほぼ見えない。周りで別に酒を飲んでいる男達は、まーた始まったよという飽き慣れた表情をしており。
「だがのう、人ってのは高く売れるんだろう!? ならば良いではないか!」
「物によるわ! 大体、攫ってきたのはガキだろう!? それでは精々二束三文だ!」
「マジか!! すまんッ!!」
 細身の男は頭を抱える。一般市民からすると『幻想』の国の警察機構は頼りに成らぬと大評判だ。が、そうは言えど、では何をしても大丈夫かと言われれば全くそうではない。完全無法の地ではないのだ。度が過ぎれば叩いて潰される。
「そう成るは御免だ――おい。今日の夜にここは引き払う。移動するぞ」
「んっ? どこへだ」
「どこかへだ」
 とにかく攫ってしまった『物』は仕方ない。今更そこらに捨てる訳にもいかない。かといって二束三文程度の『物』を連れて歩くのも面倒だ、故に。
 これはどこかで捌いて消す。我々の事を喋らぬ様に。
 そうして己らは別の地へ、ほとぼり冷めるまでここには決して戻らねば――
「まぁ。時がいつか解決してくれるだろうさ」
 部屋の隅で震えている、齢十程度の少女を横目に呟く。
 さて、如何に処理したものかと。

●望まれている事
「野盗ってのは本当にどこにでも湧くよね。雑草みたいだ。……依頼する初仕事がこんなのなんてね」
 ショウ・ブラックキャット(p3n000005)の表情は陰鬱に。
 されどギルドに集まってくれたイレギュラーズ達を前に話を進める。
「君達に頼みたいのはその雑草掃除だよ。野盗殲滅、ついでに攫われている子供の救出」
「……子供が攫われているのか?」
 あぁ、とショウは言葉を続ける。
「だが『ついで』と言ったろう? 子供の救出はメインじゃない――あくまで野盗殲滅が目的だ」
「なぜ?」
「なぜ、かと言うのならばこれは子供の親御さんからの依頼ではないから」
 資料を広げる。それは、ギルドとして依頼を受けてからショウが街を駆けて集めきた情報だ。
 街の地図。その一点を彼は指差して。
「連中の拠点はここ、空き家を不法占拠して使ってる。入り口は表と裏に一つずつ。窓は勿論複数あるからそこから逃げられないように気を付けて欲しい。メンバーは全部で八人。一人も逃がさないでくれ」
 攫われた子供の事は話さない。
 それは別に意図して隠している訳ではない。ただ単に今回の依頼において『重要ではない』からだ。
 死ぬ。生きる――それはどちらであろうと影響はない。イレギュラーズ達が如何なる選択をしようとも同様に。
 責められることも、かといって称賛されるとも限らない。なぜならば、
「この依頼はね」
 ショウは視線を資料に落としたまま、イレギュラーズ達へ向けて呟く。
「『一つ前』の親御さんからの依頼なのさ」
 一つ前。
 その意味を即座に理解した者。遅れた者。様々いたが。
「だから依頼主の目的は『野盗殲滅』なのさ……」
 これは救出劇を望まれている訳ではない。望まれているのはもっと別の事。
 ここにいる面々。無論ショウも含め『その発言』そのものは誰も決して知らねども。
 奴は、言っていたではないか。


 ――『また』人を攫って来たのか。

GMコメント

■勝利条件
 野盗の殲滅

■場所
 首都メフ・メフィート郊外にある空き家です。時刻は夕刻。
 周囲は常より人は少なく、少々派手な音が発生しても騒ぎにはなりにくいでしょう。
 入り口は表と裏に一つずつ。窓は複数。
 シナリオ開始時、敵は子供を含め全て家の中央付近、食事部屋にいます。
 表・裏どちらから侵入しても食事部屋まで一手分の移動が掛かるでしょう。

 扉は表裏共に鍵が掛かっておりますが、老朽化しており破壊することは十分可能です。
 破壊した時点で敵に即座に気付かれますのでご注意ください。
 しかし【開錠】の技能、あるいはそういうギフトがあれば秘密裏に侵入も可能でしょう。


■敵情報
・大柄な男(頭目)
 豪快な性格で、野盗メンバーの中では最も戦闘力の高い人物です。
 大剣を所持しており対複数戦も可能な、戦い慣れた男です。
 反面、戦い慣れているからこそ力に驕っている面もあるようです。

・細身野郎(参謀)
 野盗メンバーの中で最も知に長けた人物で、全体の指揮をも取っています。
 また、盗賊メンバー中唯一の遠距離攻撃を持ちます。魔法をメインに扱うようです。
 慎重な性格で、頭目の暴走を宥める役割をも持つ人物です。

・野盗×六
 ナイフや斧を持っている近接戦闘メインの面々です。
 実力は上二名に比べれば全く大した事はありません。威勢だけ良い連中です。
 どう逃がさないか、が重要な所でしょう。


■囚われた少女
 猿轡に両手を縛られ、入り口から離れた部屋の隅に放置されています。
 恐怖からか震えています。自力での脱出は困難でしょう。


■その他
 そこそこの要素はありますが基本的には戦闘がメインとなります。
 要素を活用できると『有利』にはなりますが、しなかったからと言って『不利』になるという訳ではありません。

 それでは、よろしくお願いします!

  • 望まれている事完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月22日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ノイン ウォーカー(p3p000011)
時計塔の住人
栂瀬・なずな(p3p000494)
狐憑き
リチャード・ハルトマン(p3p000851)
再会の鐘
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
九鬼 我那覇(p3p001256)
三面六臂
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
玲瓏の壁
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ

リプレイ

●初陣
 助からない命があった。それはただ、それだけの話だった。
「……んっ?」
 野盗。細身の男の眉が顰められる――瞬間。扉がけたたましい音を鳴り響かせた。
 蹴りだ。正面入り口の扉が破られた音だと、気付くのに秒も要らなかったが。
「ギルド・ローレットの者です……少々、懲らしめに参りました」
「――なずな。あまり前には出過ぎませんように」
 その秒の間に『狐憑き』栂瀬・なずな(p3p000494)は距離を詰めて来た。
 足音を大きく。出来得る限り物音を立てて――部屋へと侵入する。そのすぐ後には『時計塔の住人』ノイン ウォーカー(p3p000011)も続いていて。彼もまた少々派手に。足音と存在を示して部屋へと入り。
「ローレットだと……ガキの親からか!」
「――間違っちゃいねぇな。自覚があるようでなによりだぜ」
 なんの気兼ねもなく叩き殴れると『Ring a bell』リチャード・ハルトマン(p3p000851)も前へ進む。一人たりとて逃がしはしない。それが『依頼主』の真に望んでいる事だと、彼は分かっているから。
 拳を構える。右にナイフを逆刃にて。さすれば最も近き野盗の男が突っ込んできて。
「ほぅ。吾輩らに臆さず向かってくるであるか」
 中々に活きの良い雑草であるな、と『三面六臂』九鬼 我那覇(p3p001256)は短杖を手に。
 突く。敵の腹に狙いを定めて。左の足に体重を乗せて前面に繰り出せば。
「ひいてはこの三面六臂にも臆さぬとは。少しは楽しめそうであるか」
 飛ばす。野盗の身体を衝撃に乗せて。
 彼の身は三面六臂。三つの顔と六つの腕を持ちし亜人。緑の目が二つ、赤の目が二つ。それぞれ須らく野盗達を真正面から捕らえて、いずこなる者もその視界から逃がさない。
「フ、ハハハハ! 噂のローレットか! 面白い事になってきたのう!」
「何一つ面白い事などないわ! ええい! 全員で囲め!」
 参謀の指示が飛ぶ。四人。相手は四人だ。こちら側は八人。優位はあると、参謀は頭で思考して――
 と、その瞬間。更にもう一人の影が表口より見えた。
「――拙は、鬼桜が一。雪之丞。ローレットより、お命頂戴に参上致しました」
『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)だ。名乗りを上げるは太刀と共に。皆に聞こえるように張り上げる。
 さすれば、真っ先に反応したのが頭目だ。名乗られたその勢いに目が惹かれたか。頭目は地を蹴り砕かん勢いで彼らへと踏み込んだ。参謀が止める暇もなく、刃と刃が交差して。
 金属音が鳴り響く。
「初陣を飾るには、些か、小汚い相手でございますが……よしと致しましょう」
「小汚いぃ!? 風呂には毎日入っとるぞ!!」
「いいえ、小汚いのです」
 魂が。
 口に出す価値はなく。互いに、刃を弾く様に武具を押し――反動で微かな距離を取る。
 全部で五人。表口より侵入した。これで全てかと参謀が改めて思案をした。

 その時。背後で何か動く音がした。

「な、なに――後ろか!?」
 参謀が振り向きざま、魔法の矢を飛ばす。
 どこへ? 勿論野盗達の陣形上で言うなら背後。裏口方面。
 距離的に、雪之丞の名乗り口上に捉えられなかった彼が気付けた――
「……くッ! 気付かれました、か!」
 少女に接近しようと、気配遮断を用いながら移動していた『Artifacter』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)の姿がその目に捉えられた。気配遮断は静止状態でこそ効果を発動する。残念ながら移動を行ったその時に効果が途絶えてしまったのだろう。魔法の矢が、彼女を襲う。が、
「まだ、ルル達もいますよ!!」
「……バレちまいましたか。まぁこっからがアタシの主な仕事ッスね……!」
『ぽんこつ狐』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)と『落ちぶれ吸血鬼』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)の両名が同時に。気づいた参謀へと攻撃を重ねる。
 ルルリア、クローネ、ユーリエ。それぞれ三名が裏口から侵入を果たしたメンバーである。無論、普通に蹴破れば表口同様野盗に気付かれただろうが――そこは、ルルリアの解錠の功績だ。その技能こそが、野盗達に気付かれることなく裏口からの侵入を許した。
 床を蹴り、ルルリアは不意を突くような形でナイフを一閃。続けざま、クローネが放つは――衝術。
 放つ。掌底の構えから相手の腹に。衝撃、という概念を直接。
 ぶち抜いた。
「チ、ィッ!!」
 腕で防ぐも距離が出来る。突然の事態。また、裏口の突入をワンテンポ遅らせていた事により野盗達の陣形は表口に集中にしていた。つまり、
 囚われの少女に、ほんの少しの間だが野盗の誰もが近くにいない状況が作り出されて。
「大丈夫!? 怪我は――ない!?」
 ユーリエが少女の下へと到達する。声を掛けながら、もう大丈夫だと聞こえるように。
 少女の救出は決してメインではない。分かっている。だが、彼女はそれでも。

 諦めたくないと、強い思いを胸に抱いていた。

●戦闘
「小賢しいわ! おい馬鹿、お前はそのまま表の連中を相手取れ! ガキは俺が行く!」
「四人までやる!」
 三人寄こせ! と参謀は咄嗟に陣形を変更する。雪之丞の名乗り口上に乱されなかった者を指定して。
 表側の人数を四人、裏側の人数を三人。そういう配分だ。自身は中央にて支援と指揮を執る。子供の奪い返しを図ったのは『依頼主』の勘違いがあったからだろう。人質にでも出来ればまだ価値はあると彼は思っていて。
「愚かであるな。無価値に価値があると思い込んでいるのは」
 子供救出は依頼に含まれていない。わざわざ口に出して教える事を我那覇はしないが。
 彼にとっては初仕事の完遂こそが優先だ。無論、少女が助かるのならばそれはそれで構わない。己自身は雑草共を逃さぬ事に注意を向けるとすれば。
「――この娘には、近付けさせませんよ」
 さりとて逆に出来得るならば助けたい、という思いが強い者もいる。ルルリアもその一人だ。
 ユーリエが少女を保護し、移動するのならばそれを支援する。裏口側に回ってきた野盗を一人。マークし、近付けさせぬように壁となりながら武器を振るうのだ。追わせぬ。決して。
 例えこの依頼が『復讐』の依頼であろうとも。
「その気持ちを、悲しみを。他の人に抱いてほしくはない……そうなのかもしれないからッ」
 だから戦う。他者への思いやりの気持ちがあってこそ、この依頼が出されたのかもしれない。
 そうであるのならば『死』が結末であるのは救いがないと。
「概ね、同感ではあるがな……だが……」
 リチャードだ。目前の野盗に相対し、接近する。
 接触寸前に足払い。野盗のバランスを崩し、体を前から倒させる。さすれば当然、顔面から倒れる形となり、
 そこを打ち抜く。右の拳で、鼻っ柱を。
「だがそれでも、仕事の優先順位って奴は存在する……」
 真後ろに倒れる野盗には目も暮れず、大男。頭目を見据える。本来ならば奴のマークに入りたい所だが野盗の邪魔が入り、そう簡単には行かなかった。次こそは奴を抑えるとしよう。
 出来得るならば彼の心情としては囚われた娘には助かって欲しい。
 しかしこの依頼を出したのは『一つ前』の方であり、無念の死を遂げたであろう『子』の為にも依頼の完遂をこそ目指すべきだと思っている。後味が悪いのは彼にとっても望む所ではないが。それはそれ……
「でも――何もしていないのに、徒に殺されてしまうのは我慢できかねますね」
 なずなが往く。指差した先。青い衝撃波が裏口側の野盗を捉えれば、薙ぐ。
 あの娘は悪事を成してここにいるのか? それは違うだろう。殺されてしかるべき娘であるとは到底思えない。なのに悪事を成していている人間に、ただ彼らの都合だけでその命が奪われるのは納得致しかねる。
「言うじゃねぇかガキが……!」
 と、そのなずなに対し、斧を持った野盗が迫る。
 上段の構えから一閃。咄嗟に地を蹴って後方へ身を返すも、腕を掠めて――
「何を、しているんです?」
 瞬間。その野盗の首筋に、ノインより放たれし銃弾が抉り込まれた。
 お、ぐ。と声が漏れ、首筋を抑えるも手遅れだ。マンハンターとして技量を持つ彼の一撃は人間型の生物によく沁み込む。マスケットを再度構え、射撃。次は脳天を打ち砕いて。
「なずな、無事ですか? 荒事はお任せください」
「ノインさん――ありがとう、ございます」
 この執事に、このノインに。荒事は、トドメは。
 お任せ下さいと彼は言う。マスケットの銃口は既に次なる野盗に向けられて。
 その様になずなは複雑な思いを抱く。知り合いのノインに無理はしてほしくない。しかし、任せて欲しいというその優しい言葉に――些か、甘えたくなる気持ちを確かに存在していたから。
「チッ! ガキだ、ガキを取り戻せ早く!!」
 参謀の声が走る。が、彼の思う程そう上手くは行かなかった。
 まずそもそも裏口からの侵入に気付くのが遅れたのが致命的だ。雪之丞の名乗り口上に乗った者もいるのも相まって、少女への接触そのものを防げなかった事も中々痛い。ユーリエが庇う行動をし、常に少女の身を案じている故殺す事も出来ず。
「荒事とか……ホントは向いてないんスけどね。そうは言ってられない状況ッス」
 そしてクローネらの妨害も厄介だ。特に彼は味方との連携を優先しており、突出する様子を見せない。突出されればそれは攻勢の意思。野盗の被害は増えただろうが、逆に野盗側にとっても個別に倒せる機会となったのだが。
「中々……立ち回ってくれるじゃないかッ!」
 いやー内心ちょっとビビってる気持ちが強いだけなんスけどね!
 と。頭の中でクローネは参謀の言葉に対し、思考する。元の世界にいた頃ならば自らの手を煩わせるほどの事態ではないのだろうが、過去に思いを馳せても過去は過去。クローネは思考を振り払い、野盗に相対す。
「冗談じゃねぇ……! こんな連中相手にしていられるかよ!」
 そうしていれば、状況の不利さが目立ってきたか。野盗の一人が指示を無視して駆けだす。
 狙いは窓。逃亡である。
「――おや。どちらへ?」
 だがそれを見越していない訳はない。一手早く、雪之丞のマークが間に合った。
 跳躍し、窓と野盗の間に割り込む様な形、だが。割り込み様に太刀で薙ぐ。
 薙いだ腹から鮮血が。
「フ、ハハハハ! 逃げれず逃がさず! 良いぞ良いぞ俺とも遊べェッ!!」
 瞬間。頭目の笑い声が天を衝く。明らかなる不利状況だというのに。
 彼は嗤って、剣を振るった。

●狂
「――ここにいて。大丈夫。またすぐ戻ってくるから!」
 少女を庇っていたユーリエは少女を裏口のすぐ傍まで誘導すると、駆け戻った。
 事前。精密模写にて空き家を模写していた彼女は、窓の位置を掴んでいた。この位置ならば窓からは離れており、万一窓から逃げた者がいたとしてもすぐさまにはここへは来られないだろう。
 間取りも分かれば良かったが、精密模写で出来るのはあくまで外観の模写程度だ。内部の構造に関しては専門の知識か、あるいはそういうギフトが無ければ難しく、残念ながら断念せざるをえなかった。
「戻らないと……早くッ!」
 駆け抜ける。裏口から再度、家の中心部へと。
 寸前、毒の薬瓶を右手に。戻るなり、部屋の中へと投げ込めば。
「フハ――ハハハハハッ!!」
 頭目が――暴れまわっていた。
 振り回す大剣は複数人を纏めて捉えて、椅子を、机を破壊して尚振り回す。
「――ラリるなよ。一人で笑って、そんなに楽しいかッ!!」
 暴風。そう言って差し支えない剣激の中にリチャードは踏み込む。
 掠める大剣の腹を手の甲で殴り。身体を捻り。致命となり得る剣閃を避けて少しずつ進む。
 一歩。また一歩。秒の世界に意識を研ぎ澄ませ――
「ォオ!」
 剣と交差し、蹴りを叩き込んだ。頭目が、のけ反る。
「ぃぃぃぞお!! さぁもっとだ命を賭して撃ち込めぃ!!」
「馬鹿が! 落ち着かねば――」
 死ぬぞ、という言葉は続かせない。
 野盗の数が減りつつある中、ついに参謀へと攻撃の手が届く。ノインだ。
「そのまま、死ねばよろしい。愚かなまま」
「ぉ、のれぇ……! ガキが、ガキが手中にさえあれば……!」
 事ここに至ってもまだ子供の事に思考を割いているのは――
 いや、もはや何もかも終わりであるからか。ああすればよかったとifばかり考えるのは。
 だが如何なる道を通っていたとしても少女を殺させるつもりはノインにはなかった。少女は必ず守り通すつもりであったのだ。それは、彼の良心という訳ではない。少し違う。
 彼は、生かすよりも、殺す方が好き者だ。殺すと決断した『モノ』は必ず殺す。
 なんであろうとどうであろうと。しかし、逆に。
 殺さぬと。そう思ったモノは――絶対殺さないし殺させない。
「それが俺の悪党たる美学だ」
 お前らに、美学はあるか?
「美学だと!? ふざけやがって、そんなモノで腹が膨れるかぁ!」
「――小物であるな」
 流石雑草。と、我那覇は往く。手にした杖を参謀へ向けて。
 反撃の魔法の矢を、我那覇は捌く。肩を掠めど問題なく、振るった杖を首筋に。
 貫いた。もはや言葉を吐くこともなく、彼は倒れてそのまま死ぬ。
「……参謀は片付いたッスね……後は雑魚が数人か」
 ……逃がしはしないッス。とクローネは呟き、己が魔力を増幅させる。
 ミスティックロアだ。一気に片を付けるつもりか。魔弾を放ち、目標とするは残った野盗。
 ――終わりは、近付いていた。
「死んだか! ハハハ! そうか死んだかぁ!」
「……さっきから一体、何が面白いんですか?」
 手に持つリュートで味方を鼓舞するなずなは、頭目の笑い声を怪訝に。
「そっちは楽しくないのか? 我らを追い詰めて人を助けて楽しかろう? ファハハハ!」
「狂人の戯言であるな。気にしない方がよいであろう」
 一刀両断。我那覇は下らぬと断じ、頭目を追い詰める。
 剣が刀が。弓が拳が。全て入り乱れ命を削る。その中で雪之丞は思考していた。
 あぁ幾年振りであろうことか。一刀で、死なぬ相手など。脳裏によぎる『彼奴』の姿――
「――今少し、お付き合いいただけますか。あまり時間は取らせませぬ故」
「何を言う! 戦闘ならば時間を掛けてこそ」
「いえ、戦闘ではなく」
 雪之丞は言う。微笑み携え、
「錆落とし」
 太刀を平晴眼の構えにて、暴風の中に切り込んだ。一歩。二歩で到達し。
 手首を捻り、身体を捻り。上段から振り下ろされる大剣を迎撃。狙いは大剣を持つ手首であり。
 交差した、瞬時――右手首を切り落とした。
「ぬ――がッ!!」
 それでも頭目は残った左で剣を支えて。尚に振るう。
 死なぬ死ねぬまだまだこれからであろう――! そう声を張り上げようと。
「いいえ、貴方の悪事はここで! 終わりです!!」
 した瞬間。最後の野盗を己がナイフで切り伏せたルルリアが背後より飛び出した。
 視界外。完全に虚を突かれたその背を、奇襲攻撃により切りつける。
 右肩から左腰まで斜めに一閃。舞う血は盛大に吹き出し――
「待った最後に一つ。教えなさい一つ前の子供は……どこに売りましたか」
「フ、ハハハ! 一つ前ェ!?」
 天を仰ぎながら膝を突く頭目。ノインの声に振り向きもせずに言葉を続けて。
「――んなのがいたかのう! おい、どうだった!
 誰か覚えとらんかぁ誰もおらんかぁ!? フ、ハハハハ――ッ!!」
「宜しい」
 そうであるのならば用はない。
「黄泉路、楽しんでくださいね」
 最後の銃弾が、顎から脳を撃ち抜いた。

●ありがとう
 助からない命があった。それはただ、それだけの話だった。
 終わった戦場。そこに雪之丞は魂を見た。
 ギフトだ。罪ありし、濁った黒い魂が幾つも見えて。
「……貴方は、お還りくださいませ」
 黒い魂はギフトの力で喰らうが如く殲滅した。
 が、その中に一つだけ見えた『白い』魂には声のみを掛けた。それがなんであったのかは語らず。
「……最悪の場合を考えて、失敗した時の逃亡計画とか考えてたスけど使わないならそれで良かった……」
「うむ。しかしそういう万一を考える思考は良いであるな」
 何より今回のメンバーは皆この三面六臂を恐れなかった。
 良い皆々であったと我那覇はクローネに語る。またどこかの依頼で会えればと、思いながら。
「……ぉっと。よっお嬢ちゃん――キャンディいるか?」
 事が終わったのを察知したのか。囚われていた少女が怯えながらも部屋をのぞいていた。
 さすればそれに気づいたリチャードが気晴らしにと、自身のギフトよりキャンディを一つ。
 この子が攫われた子か、と戦闘が終わってようやくその子をノインはまじまじと見つめた。
 と、その姿に彼は――自らの主人の姿を一瞬重ねた。心中で、様々な思いが籠って舌打つが。
「俺はノイン……アナタのお名前は?」
 怖かったのならば、好きなだけ泣けばいいと言葉を続ける。それは許されると少女に告げれば。
「あっ来たんだ! もう大丈夫だよ。怖い人達はいなくなったから」
 ユーリエが抱きしめる。今にも泣きだしそうな少女を、温かく。
 本当に助かって良かったねと口にしながら。
「――もう、大丈夫だからね」
 もう一度だけ、繰り返すようにその言葉を口にした。
 見殺しにしても構わなかった。死んでしまった命があった。
 しかし、それでも。
 助かった命もあった。

 これは、そうなってくれた――話であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

これにて依頼完了となります。
参謀はいざとなれば少女を即殺すつもりだったのですが、少女は助かり無事家へ。
その家族は依頼主ではないものの皆さんに感謝の念を抱いたでしょう……

ご参加、ありがとうございました。

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