PandoraPartyProject

シナリオ詳細

新月桜ノ結ブ縁

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●桜ノ伝説
『色々移りな其の桜。
 をとめの頬の杏色。
 夕闇灯す橙に。
 夜毎煌めく星の金。
 地に咲く緑は風に揺れ。
 青い空を流るる雲よ。
 妖(あやかし)纏う紫の糸を。
 桃色桜で染め上げて。
 手を伸ばしたなら、嗚呼──』
 呟くように、囁くように。
 誰かの紡いだ言葉が、そっと耳元で聞こえた気がした。

 ここは『濃々淡々』。
 妖とヒトとが共に暮らす、和の世界だ。
 建造物は勿論、人々の纏う衣も和の装い。冬である今は、着物の上に羽織袴を着ている者も少なくはない。
 四季折々の装いと街並みに人々は想いを馳せる。その姿のなんと儚いことか。
 碁盤の目のように区切られた街並みは、どこか美しささえ感じられる。連なる家々も、店も、行き交うヒトや妖の声すらも。どこか妖しく、儚く。
 朝と夜では、違う顔をもつ世界でもあるようだ。仇討ち、色恋、賭け事。どれをとっても、この世界にも洋はない。
 そんな濃々淡々の中心に雄々しく生える巨大な桜の木。
 葉をつけることはなく、一年中桜が咲く。今も昔も、恐らく、これから先も。
 そんな桜の木は、人々を結ぶ縁(えにし)の木。噂によると、新月の晩に、その花弁を虹色にするという。
 その時に木の幹へと登り、其処で眠れば、もう一度逢いたい者と、夢の中で出会えるとも。
 しかし、その噂に確固たる証拠はない。
 果たして噂は本当なのか、それとも────。

●結ブ色、紡グ花
「ようこそ、濃々淡々へ」
 カストルはその手に桜の花弁をのせていた。
「濃い、と、淡い。併せて“こいこいたんたん”だなんて、不思議な名前だよね」
 と、誰に溢す訳でもなく呟くと、改めてこちらを向き直った。
「改めて、ようこそ。今回はこの世界の探索をして欲しいんだ」
 カストルはふぅ、と手の内の花弁に吐息をかける。すると、どうだろう。
 はらはら、ひらり。
 溶けるように、混じるように、消えるように。その桜は消えてしまった。
「ふふ、こんな不思議な桜が咲く世界の不思議な噂。新月の晩に、その桜の幹で眠れば、もう一度逢いたい者と、夢の中で出会えるんだって」
 カストルはこちらへ向き直ると、やわらかく笑みを浮かべて告げた。
「もう一度。願うのは簡単だけど、その世界なら叶う夢なのかもしれないね。……気になるなら、行ってみるといいかもね?」
 ちらり、と伺うような視線がこちらを射抜く。
 まぁ、気を付けてね。と言いつつもくすくすと笑うポルックスの声は、どこか楽しげに聞こえた。

NMコメント

いつもお世話になっております。染です。
和はお好きですか。自分はとても好きです。
今回は、和風世界「濃々淡々」での不思議な噂を確かめに向かって頂きます。
心情系ですので、好きに動いていただいて構いません。
どうぞよろしくお願い致します。

●依頼内容
 新月の夜に、桜の幹で眠る。

 もう一度逢いたい人と出会えるという伝説を確めて頂きます。
 皆さんが向かわれる日は噂にぴったりの、新月の夜。
 虹色の桜に包まれて眠ったなら、貴方は何を思いますか。
 貴方なら誰に逢いたいと願いますか。
 PC様方には内緒ですが、夢の中で確実に出会えます。
 初恋の人でも、今は亡き家族でも。
 どんな方でも構いません。
 貴方の想いに、桜は必ず答えてくれるでしょう。
 なお、夜ですが危険はありません。
 妖が襲ってくることもなければ、動物に起こされることも。
 神聖な桜に手出しをされることは何人たりとも許されないのですから。

 また、数行で構いませんので、
・逢いたい人の名前(もしくはそれに変わるなにか)
・どんな関係か
・どんな経緯で出会ったか(家族でない場合のみで構いません)
・どんなことを話すか

 以上の点を、文中に組み込んでいただければ幸いです。
 アドリブを入れても構わない場合は、一行目に◎の表記をお願い致します。


●世界観
 和風世界「濃々淡々」。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。またヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神です。
 昔の日本のイメージで構いません。

●持ち物
 寒い冬の夜ですので、何か暖まることのできるものがあるといいかもしれません。
 寝袋や毛布は貸し出してくれるそうですので、お気に入りの枕やぬいぐるみ、食べ物などを持っていくといいでしょう。
 勿論なくてもオッケーです。

●サンプルプレイング
 私が逢いたいのは、大切な師匠。
 なんにもない日だった。目を覚ませばもうそこにはいなくって。
 だから、今日のこの桜に祈るの。師匠に逢わせてください、って。
 ……。
 私を呼ぶ声がする。
 この声は。
 あぁ、師匠!! 逢いたかった……っ。
 何処に行っていたのですか。また私を一人にするのですか?
 ……ええ、けれど、大丈夫です。
 なんてったって、私ですから。
 だから。安心して、見送ってください。

  • 新月桜ノ結ブ縁完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月05日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い
シェルマ・ラインアーク(p3p007734)
金獅子

リプレイ

●あなたがすきでした
「…ふむ、元師匠の居たという日本という国に近いのか?」
 はらはら、ひらり。桜が散る。
 『分の悪い賭けは嫌いじゃない』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906) は、月を眺めながらふと、言葉を零す。
(しかし調べると言っても、何を?
 まぁ一頻り散策して月が昇る頃に噂の桜を見に行くか)
 空には星が輝き、月が満ちた頃。桜の幹に腰をかけ、花弁を見上げれば虹色に輝く其れは、あまりにも単純な依頼のように思えて、だから。
 目を閉じた。少し休憩のつもりで。しかし、抗うことのできない睡魔に襲われ、眠りに落ちる──。

「……っ、どうして?」
 目を開けば其処にいたのは、初恋のひと。嗚呼、師匠。
 どうしてここに。それも背中合わせで。何故。
 溢れる思いが胸をつく。言葉を先に発したのはリアナルだった。
「話さないで、背中合わせでいい、今の私では貴女を見つめられないから、聞いたら戻れなくなるから」
 優しい吐息が聞こえた。うん、ということだろうか。思い出す。師匠と、“私”の関係を。
 嫌になって逃げ出して、何処か母に似た貴女と出会い、惹かれて貴女に染まろうとした“私”。
 貴女には重荷だったのだろうか?師匠が好んだ桜色に、銀の髪を染め、師匠の生まれた国の服を纏った“私”は。
 だけれども。
(貴女に教えられた舞を練習して…それだけで幸せでした。
 貴女が居なくなって、辛くて、悲しくて、ずっと探していました、でも…ここで逢えると言うことは もうこの世界には居ないのでしょう)
「ごめんなさい…私の師匠、私の恋人、私の座標、貴女から貰った指輪はなくしちゃったや」
 貴女は怒るだろうか。何も言うなと言ってしまったから、その胸中はわからないけれど。
 けど。私は進まなきゃいけない。リアナルは月を見上げた。
(守るべき場所、追い付きたい人、見つけたから。貴女を探して、偽りの名を名乗って、自暴自棄になってた私じゃ守れないから、追いつけないから。)
 貴女を捨てるわけじゃない。“私”を捨てるわけじゃない。
 貴女の思い出は心にしまっておくのだ。どうしてだろう、目頭が熱い。
 貴女が居た場所を、貴女が好きだと言ってくれた私を取り戻しに行くの。だから。
「ありがとうと、ごめんなさい。もう一度貴女に逢えてよかった。これが夢だとしたら、良い夢だから」
 息を吸って振り返った。うまく笑えているだろうか?


「──大好きでした」

●三度目、
(逢いたい人と夢の中で逢える桜の木ねぇ。
 結構素敵やねぇ。
 ……今回は、どう出てくるんかねぇ)
 はらり、はらり。
 桜が舞う中で、『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611) はふと月を見る。
 今宵は新月だ。そう、噂の。
 さきほどまでは煩いほど賑やかだった街も今ではすっかりと人気をなくしている。
 夜だ。
 今街を行くのは、軍の者と妖だけだ。
 すれ違う人々とは逆方向に進む紫月。その足はどこか速足だ。
(逢いたい人……そんなの決まってるよぉ)
 手に持った姉妹刀を強く握る。夢に見たいのは、対となる刀の持ち主だ。
 逢いたい。けれど、少し不安な気持ちが心を苛む。
 戦うことにならないだろうか。
 私の願う人は本当に来てくれるだろうか。
 信じていないわけではないのだが、けれども。
 そうしてたどり着いた桜の木は見事な虹色で。
(これなら心配しなくてもいいかなぁ……)
 ちょうどいいポジションを探る。少し冷えてきた。
 速足で動けば疲れもあるだろう、紫月は眠気に任せて目を閉じた。すると。虹色の桜が少女を包んだ──。

 紫月の亡き姉の凛花が声をかける。
「起きて。もう、折角また会えたのに……」
 少し不満げな声が耳に届く。
「……ん、姉、さ、ま……?」
 恐る恐る開かれた赤い瞳が驚きに揺れた。
 姉である凛花と出逢った紫月は、やはり心なしか不安げに見える。
「それにしても紫月、元気に動ける様になったのね」
 そんな妹の様子を察してか、凛花は笑みを浮かべて紫月を抱きしめる。
「……姉様」
「もっと早くに渡しておけばよかったかな」
 ごめんね。後悔するように呟きながら自身の頭をなでる姉の声は震えていた。
「姉様……せやねぇ、この子のお陰でねぇ」
 ぎゅ。
 抱きしめた手から伝わりますように。あなたのせいじゃない、という思いが、どうか。
「私ってば、妹に慰められるなんてだめなお姉ちゃんね……」
「そんなことないよぉ……姉様は私の誇りだからねぇ」
「紫月……」
 嬉しそうにはにかんで凛花は笑った。
 それを見た紫月もうっすら笑みを浮かべた。
 こんな時間が、もっと続けばいいのに。
「その子が紫月の力になっているのは嬉しいけど。
 あまり無理をし過ぎちゃダメだからね?」
「うん、わかってるわぁ、姉様。
 でも今は……甘えさせて欲しいねぇ」
「好きなだけ甘えて。今だけは、ずっと……」
 あたたかな手の温もりに安心するように、紫月は目を閉じた。

●宣戦布告
 『金獅子』シェルマ・ラインアーク(p3p007734) は木の下の方を選び、ギフトを用いてリクライニングソファを生み出す。木登りは面倒だと考えたのだろうか、なるほど名案だ。
「これで快適に眠れるだろう……それじゃあ、おやすみ」
 アメジストの瞳はゆっくりと閉じられた。

 見覚えのある姿を見かけた。
(どうせ……いや、ちがうか? 確認しなければ。)
 足早に追いかけたシェルマは、相手を呼び止めるとにやりと大きく口元に弧を描いた。
「またお前か……物見の魔女」
 さらり。長い銀の髪が揺れる。
 深い海底のようなブルーの瞳は不快感を隠すことをしない。
 しかし。不敵に笑みを浮かべれば、くるりとシェルマの方に向き直った。
 彼らの関係を表すならこれに尽きるだろう────好敵手(ライバル)に。
「逢いたかったよ、魔女よ。お前が大切にしていたアイツを、今度こそ手に入れてやろう」
 高く結われた金の髪が風に揺れる。同じように、長い銀の髪も揺れて。
 物見の魔女と呼ばれた彼女は、一人の人間に固執していた。
 しかしながら、それはシェルマにも言えることだろう。同じ人間を欲してしまったのだから。
 欲しいと思うものは、手に入れたくなる。それが生き物の本能ではないだろうか?
「宣戦布告であり、確定事項だ……夢の中なら手出しはできぬだろう?」
 アメジストがサファイアを乱す。其はさながら地鳴りの如く。
 轟音が響くと、夢の世界は終わりを告げる。
「夢でまで逢うとはな……彼奴は渡しはしないさ」
 にやり。シェルマが笑みを浮かべると、夢から現実へと引き戻されてゆく。
 この世界ではない何処かで、ヒトならざるモノだった頃の顔見知りで、好敵手で、孤独を知る似た者同士。
 物見の魔女は妖しく微笑むと、その姿を消した。

「……はぁ。本当に見てしまうとはな」
 しかし、笑みも同時に零れる。どこか察していたのだ。
(さて、帰宅したらアイツに会いにいかないとな。
 いや、待っていれば勝手に来るか。
 どちらにせよ、夢であれ魔女に会ったと言ったらどんな顔をするか楽しみだ。)
 立ち上がったシェルマの膝から桜の花が零れ落ちる。
 ひらり、はらり。
 美しい桜の花に別れを告げて、シェルマは夜の街を歩きだした。月明かりが彼の背を照らしていた。

●殺意と報復と
 『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440) は桜の幹で躊躇いなく眠る。その手にはいくつかの武器を握って。嗚呼。幼い見た目の彼女の心を突き動かすのは、唯の発意なのだ。殺意と報復を胸に、彼女はすやすやと寝息を立てた。

「駐在さん、またあえて嬉しいわ。
 わたし、今とてもあたたかい気持ちよ。
 あたたかすぎて、お腹の中がグツグツ煮えたぎってるみたい!」
 にこり。愛嬌の感じられる笑みを浮かべた。それにはどこか子供らしいかわいさが欠けているように見える。
 駐在は無言だ。表情を察することはできそうにない。
 笑顔のままメリーは続けた。
「まあいいわ、あなたに聞きたい事があるの。
わたしの夢の中のあなたが、わたしの知らない情報を知っているとも思えないけど、もし答えてくれたら少しはマシな死に方ができるかもしれないわよ?」
 無反応。
 ここまでくると最早清々しいほどだ。無反応どころか敵対にすら思えてくる。いや、敵対か?
 否。どちらでも構わない。することはただ一つ。報復なのだから!
「あなたの前で初めて魔法を使った時、あなたは妻子が死んだ事にはショックを受けていたけど、魔法の力については無駄に騒ぎ立てたりせずに、すんなり受け入れたわね。
 そこがどうも引っかかるの。
 あなた、あの世界に魔法が存在する事をわたしに会う前から知っていたんじゃない?」
 空気が凍った。
 駐在は拳銃を抜いた。しかし。今のメリーに向けるにはあまりにも遅すぎた。
「遅いっ!」
 その手から魔弾を繰り出したメリー。駐在の片腕が飛ぶ。
 べしゃり。汚い音だった。
 苦痛に呻く駐在の様子に満足はしない。
「くたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれくたばれ」
 呪いのように発されたその言葉の数だけ、魔力弾は宙を舞う。
 足を。頭を。腹を。顔を。
 そうして放ち続けた後に残ったのは汚い肉片だ。
 我に返ったようにメリーは呟いた。
「ふう……これで少しは気が済んだわ」
 と。

成否

成功

状態異常

なし

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