PandoraPartyProject

シナリオ詳細

怪獣ニャンギラス!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ーーにゃんにゃんにゃん、にゃにゃんにゃにゃん
 何もない荒野に愛らしい鳴き声が響き渡る。


「本当に居たのです」
 目撃者の話を聞き確認をしにやってきた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、その生き物を見て第一声驚きの声を上げる。
 何もない荒野の真ん中に、胴の長い巨大な猫らしき生き物が佇んでいたのだ。
 猫と言っても現実で見るような猫ではない。
 猫のような絵が、まるで実体化したかのようなその生き物は、全長で10メートルほどはあるだろう。
 怪獣、と呼ぶには些か間抜けであり、可愛らしいと評しても差し支えはないだろうが、このまま放置はできない理由があった。
 この荒野は、商人たちが通るいわば道であり、物資の調達の要ともなる場所だったのだ。
 怪獣は、市街地に侵入したり等は決してしないのだが、この荒野を通ろうとする商人たちを襲っており、討伐が必要であると判断した商人たちの連盟で、ローレットへと依頼が入ってきていた。
 ユリーカは情報の真偽を確認するため、荒野の入り口からその怪獣を凝視した。

●ローレットにて
「皆さん集まってくれてありがとうございます。早速ですが依頼の概要をお伝えします。実は半月ほど前から東の荒野にとあるモンスターが住み着いていて、荒野を通る商人さんを中心に被害が出ています。ボクもこの目で見てきたのですが、モンスターは猫、と思われる形状はしていますが、実在の猫と言うよりは子供が描いたらくがきのような怪獣だったのです」
 ユリーカは自身で見た姿を羊皮紙に描いた。
 その姿は、なんとも言いがたい姿だった。この姿が実際の姿に似ているとするならば、子供のらくがき、というのはかなり的確な表現と言って良いだろう。
「言っておきますが、ボクの絵は下手ではないです!」
 疑わしげな視線を感じたユリーカが憤慨した様子で口を尖らせる。
「今回は商人さんたちが連盟でローレットに依頼をしてきたのです。最近、盗賊の動きも活発になっていて不安な所に、追い打ちの様に現れた怪物に対して、商人さんたちはめちゃくちゃ困ってるみたいなのです」
 見た目が強そうではないため、当初は自身たちで何とか追い払おうとしたのだが、らくがきのような身体に反して、商人たちを軽く屠る程度の実力は持っているらしく、現時点で7名ほどの死者を出してしまった状態だった。
 街にも張り紙が貼り付けられており、「ニャンギラス出没注意」と描かれている。
 荒野を横切ろうとさえしなければ、攻撃してこないため、幻想の市民の被害は今の所は無いといえ、もし旅にでも出ようと思い荒野に行ってしまったら、次の被害者となってしまう可能性がある。
 幻想としても、ローレットとしても放っておく訳には行かない。
「ニャンギラスについては、商人さんたちがある程度調べてくれているのです。これが、その特徴や攻略法なのです」
 ぺらり、と一枚の紙に、神経質そうな細かい文字で、怪獣ニャンギラスについての調査結果が記載されている。
 その1。ニャンギラスは夜行性であり、夜になると凶暴になる。昼間は夜に比べて活動が鈍くなるが、周囲の気配には敏感であり、ある程度の距離に気配がした段階ですぐに気付かれてしまう。
 その2。攻撃方法は物理近接をメインとし、鋭い爪と大きな尻尾で敵を攻撃してくる。だが、またその鳴き声には神秘の力が宿っており、衝撃波を遠くに飛ばす事もできる。
 その3。習性などは普通の猫に近いらしく、商人が持っていたマタタビや鰹節に興味を示していた。どうやらお腹が空いている模様。

 最後の一文は必要な情報なのか首を傾げるしかないが、これも大切な情報だ。
 もしかしたら、何かに役立つしれない。

「あと、商人さんたちから一つがリクエストあるのです! できればニャンギラスは殺さないであげてほしい、との事です」

 被害者が出ているのに?と君が首を傾げると、ユリーカは神妙な顔で頷く。
「確かに死者は出ています。ですが、ニャンギラスはヒトを探して危害を加えている訳ではない様なのです。このニャンギラスは北西にずっと行った先に生息している幻想生物で、普段は決して危害など加えません。むしろ、神聖な生き物として崇められているくらいなのです。ニャンギラスが何故こんな所まで出てきてしまったのかは分かりませんが、多分ヒトを殺したいと言うわけではなく、遊んでいるつもりなのかもしれないのです。商人さんたちは、人間の業を理由にニャンギラスを殺めたくはないとの事です。難しいかもしれませんが、どうか彼らの気持ちも組んであげてください。ちなみに、今回は商人さんたちから、皆さん8人の乗れる荷馬車が手配されていますので、移動は気にしなくて平気なのです。皆さんの成功を祈っているのです」

GMコメント

こんばんは。
2月22日に上げるつもりが風邪をこじらせてしまい間に合いませんでした(´・ω・`)
猫さん依頼です。

●成功条件
ニャンギラスの撤退
(生死は問いませんが、依頼人たちの総意は死なせないで欲しいとのことです)
(理由としてニャンギラスは商売繁盛の御利益があると言われているため、商人たちにとっては神聖な存在だからです)

OPにある以上の事は分かっていませんが、特別な事はありません。
戦闘能力はイレギュラーズのヒトであれば充分渡り合えます。

●ニャンギラスの攻撃方法
攻撃方法は物理近接メイン。鋭い爪と大きな尻尾で敵を攻撃。
強さ的には爪が一番強力で、尻尾は吹き飛ばしの効果があります。
鳴き声(衝撃波)を遠くに飛ばす事もできますが、威力はそれほどでもありません。

●場所
今回商人たちが荷馬車を用意してくれています。
また、何もない荒野なので身を隠す場所はありません。

  • 怪獣ニャンギラス!Lv:2以下完了
  • GM名ましゅまろさん
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月13日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

メイファース=V=マイラスティ(p3p001760)
自由過ぎる女神
ユウキ(p3p001938)
巻き込まれ系家付き妖精
ネスト・フェステル(p3p002748)
常若なる器
スティリカ=フォルクロール(p3p004676)
ねこ
ルナシャ・クレスケンス(p3p004677)
くろうさぎ。
十河・颯姫(p3p004807)
人斬り鬼姫
アンネリース(p3p004808)
炎獄の魔女
鳴神 香澄(p3p004822)
巫女見習い

リプレイ

●ニャンギラス
 荷馬車に揺られながら8人は、今回の依頼に思いをはせていた。
 荷馬車のカーテンから外を覗くと、広がるのは荒野と岩だけだ。
 木なども一切生えておらず、時折吹く風には、土と石が混じっている。

(神に仕える身としては、依頼人さんたちから神様のように崇められているニャンギラスを殺さずに追い払いたいですね)
 カーテンを閉じながら、『巫女見習い』鳴神 香澄(p3p004822)は心の中でそう呟いた。
 神に仕える巫女として、ニャンギラスのような信仰の対象には親近感が湧くのだろう。
「事前に魚を釣ってみたんだけど、ニャンギラス気に入るかな」
 事前に池で釣り上げたいくつかの魚を綺麗に並べながら、『炎獄の魔女』アンネリース(p3p004808)が呟くと、『人斬り鬼姫』十河・颯姫(p3p004807)が輝いた目で、その様子を覗き込んだ。
「たくさん用意されたんですね」
 そう言う彼女もしっかりと準備をしており、荷馬車の隅には彼女が用意したマグロとサンマが鎮座している。
「ユニコ、頑張ってくださいね」
 『ねこ』スティリカ=フォルクロール(p3p004676)の愛馬は、彼女の声援に応えるべく必死で荷馬車を引いていた。角のつけられた軍馬は、幻想の生物であるユニコーンに見えるが、実際は彼女がアクセサリをつけた普通の白馬である。
 今回、8人ともニャンギラスを無事に故郷に帰す、という前提で作戦を練っていた。商人たちの意向を汲んだのもあるが、やはり猫という可愛らしい生き物であるのもその理由の一つだろう。

 ヒヒーン!と馬が鳴き、馬車が停止する。
 どうやら目的地に到着したらしい。
 カーテンをそっと開くと、少し先の視界に巨大な影が見えた。
 こちらに背中を向けており、長い尻尾がゆらゆらと揺れている。
 ニャンギラスだ。

「あれが、怪獣ニャンギラス。大きいですが、なかなか可愛らしい猫のようですわね」
 移動中、優雅にティータイムとしゃれ込んでいた『自由過ぎる女神』メイファース=V=マイラスティ(p3p001760)が、 美しい動作で馬車を降りる。
「……でも、ちょっと怖いかも?」
 愛嬌はあるし、落書きのようなでフォルムボディは確かに可愛らしいのだが、近づけば分かる。
 でかい。
 『巻き込まれ系家付き妖精』ユウキ(p3p001938)が少しだけ不安そうに言うが、端から見ると絵面だけ見れば、何かのイベント中のパフォーマンスに見えなくもない。
『常若なる器』ネスト・フェステル(p3p002748)が、神妙な顔でユウキの言葉に頷く。
「あれが噂の招き猫か。まさか本当に絵のイメージに近いとは……」
 可愛いんだけれど、可愛いんだけれど、でもなんかちょっとこう不安になる感じなのは否めない。
「まあ、依頼人の意向もある。穏便に帰ってもらおう」
「モフモフと言いたいところですが、サイズ的に遠慮させて頂きますわ」

 こうして、8人の作戦は始まった!



 スティリカが、ゆっくりとニャンギラスに歩み寄るのを、少しだけ離れた所から7人が見ている。
 戦闘になれば闘うのはやむなしだが、説得できるのであれば、それに超したことはない。
 それぞれ持って来た食料を携えながら、まずはスティリカの先陣を見守っている。
「わたしはスティリカなのです」
「にゃ~ん」
 ニャンギラスが、ゆっくりと振り返る。尻尾がぺちぺちと大地を叩くその音は、巨体のために結構な衝撃があった。
「大丈夫、でしょうか?」
 少し不安げに香澄が警戒するが、ニャンギラスの様子は別段興奮している様子ではない。
 マタタビを持ってこなかったのは、正しい判断だったかもしれない。勿論おびき出すのであれば効果的ではあったのだが、もしマタタビ作戦だった場合戦闘への移行は割と速攻だっただろう。
 スティリカの説得をニャンギラスは、じっと見つめなら聞いていた。
「にゃーん……」
 スティリカの説明にさしたる興味は示さなかったニャンギラスだったが、縄張りにした理由をスティリカが聞くと、ニャンギラスが猫耳をしおっと垂れさせる。
 しかし、そんな中、ニャンギラスのお腹がぐぅ、と鳴いて、ニャンギラスの視線が後ろに控える7人に映った事で時点は急転する。
 説得は無意味では決して無いのだが、ニャンギラスは所詮は猫モンスターであった。ご飯の香りが7人から強く漂ってくる事に気付いたニャンギラスは、爛々と目を輝かせる。
 キラーン、と光る猫の眼差しと、7人の視線がかっちりと合うと、ニャンギラスはその巨体を一生懸命、動かしながら7人に突進していく。
「あ、ニャンギラスさん!」
 スティリカの制止は届かず。
 ぴょーん、と飛び上がった巨体が宙を舞う。
「あ、これまずいですわね」
 大きな影が出来るのを眺めながら、と言うわけにはいかない。7人は素早い動きでニャンギラスを躱すと、 ニャンギラスを囲むように陣形を取った。
 どしーん、という音をたてて、ニャンギラスが近くの岩ごと押しつぶすのを見て、目をぱちくりさせながらも、ユウキは事前に作ってきたご飯を広げる。
 それにならいながら、他の7人も自身の持ってきた食事を広げる。
 周囲から見たらなんとも不思議な光景だったが、あの巨体をかわすために動いたりするのは、実際中々どうして大変であり、8人とも全員真剣である。
「お腹が空いているっぽいね」
 ユウキの作った猫用ご飯を美味しそうにぺろりと平らげたニャンギラスの視線は次の獲物へと移る。

●満腹になったニャンギラス
「にゃーん!」
 げふ、とげっぷをしたニャンギラスは満足そうに高く鳴いた。
 空腹はどうやらなくなったらしい。
 だが、ニャンギラスは止まらない。ごろごろと喉を慣らしながら、ネストにじゃれつこうと猫パンチを繰り出す。
「……!」
 その一撃は、ネストの腹部に綺麗にクリーンヒットした。
 僅かによろめきながら、ネスト笑う。
「さながら気分は猫じゃらしか…。良い一撃だ。いいだろう、俺が相手だ。存分にかかって来い」
「うわ、今の結構痛そう!」
 ネストの様子に慌ててルナシャがワンドを構え、前衛に躍り出る。
「ネストと颯姫はよろしく!」
「了解です」
 そんな颯姫が取り出したのは、巨大なマグロだった。

 ――にゃーん!

 ニャンギラスの声が心なしか楽しそうに聞こえるのは、幻聴ではない筈だ。
「なんか、すごい光景ですね」
「うん、マグロ剣?って所かな」
 後衛に陣取った香澄とアンネリースは互いに顔を見合わせて笑った。戦いの場ではあったが、ギスギスしない戦いとなりそうだ。
 勿論、相手はじゃれただけで人を殺している程度の力はあるので、手を抜く気は無かったが。
 可愛らしい鳴き声で鳴いたニャンギラスの一撃を、マグロが受ける。猫の爪は、まるでそのマグロを狙うかの要に小刻み素早くしゅしゅしゅと攻撃をしてくる。
 アンネリースの魔力放出が始まると同時、香澄のマギシュートがニャンギラスを襲った。
 あえて急所は狙わず、被害の少なそうな腹部などを狙う。
 にゃにゃにゃ、とニャンギラスが鳴きながら、くしくしと己の身体をかく。
 その隙にニャンギラスの背後へと回ったネストが、蹴りの一撃を放つと、ニャンギラスが前のめりになり地面へとずさりと倒れていく。
 けれど、ニャンギラスの尻尾が雄弁に語っていた。決して致命傷ではないのだと。
 ゆらゆらと揺れるその尻尾が、ネストの頭部を悪戯に狙うが、ネストはその屈強な身体でそれを受け止めた。
 メイファースの死骸盾で、なりそこないのアンデッドが場に召喚される。
 防御集中の体制でユウキは思う。
(痛めつけるのよりも全力で遊びに付き合うほうであって欲しいけど……)
 じっとその願いを込めてニャンギラスを見つめると、ニャンギラスと一瞬視線が確かにあった。
 その眼差しには負の感情等は一切無かった。遊んで欲しい、楽しいのだ、とその目が語りかけてくるのだ。
「うん、お腹を満たして、遊び疲れて帰ってもらうのが良いよね!」
 攻撃ではなく援護メインのユウキではあったが、回復や補助はとかく重要だ。前衛が気持ち良く戦って、前線を維持するのには、こういう働きをしてくれる人の力が必須なのだから。
 癒やしのライトヒールが、ネストの打撃痕を癒やす。
 ディフェンドオーダーを使用したネストもまた、ある意味では補助の役割だ。前線にはたっているが、彼のメインの役目は壁役としての働きとなる。
 壁役は彼だけじゃない、ルナシャもまた同じく前衛を維持するべく、ニャンギラスの猛攻(?)に耐えている。
 ワンドと言う武器で凌ぎきるその技量はさすがといえよう。
「よーしよしよしって……!ぎゃーひっかかれたー」
 きゃあきゃあ、と戦場で声を上げるその様子を、同じく前衛で働く颯姫がちらりと見た。
 前衛の打撃メインは颯姫である。防御だけではやはりニャンギラスも満足は行かなかっただろう。
 大好きなマグロとのじゃれあいに、ニャンギラスはとにかく夢中になったいた。

 ――にゃあああああーーん!

 ニャンギラスの雄叫びが周囲に響き渡る。
 びりびりとした空気の衝撃が8人を襲うと、僅かに8人は身体を蹌踉めかせる。
「びりびりするのです!」
「音というのも攻撃になるんですのね。う、頭が痛いですわ」
 スティリカが詠唱中のマギシュートを一度止めるが、思い直した様に再び詠唱を始める。
 メイファースによって生み出された死骸盾によって、彼女自身のダメージは大分軽減されていたが、それでも範囲攻撃と言うのは厄介だった。
 ニャンギラスは前衛が一瞬だけ怯んだ隙に、その巨体を走らせる。
「いけないのです!」
 少し慌てた様子で、スティリカのマギシュートがニャンギラスへと襲いかかった。
 その一撃はニャンギラスの背中に綺麗に命中した。
「参ったですかー!!」

 にゃーん!

 まるで、まいってないよー、と言わんばかりにニャンギラスは突進をユウキへと向けてしかける。
 身体の小さなユウキを逃がさないと言わんばかりに、鋭い爪をしゃきーんと伸ばしたニャンギラスの一撃が、ユウキへと直撃する。
「うっ」
 小柄な身体が宙へと吹っ飛ぶのを見たアンネリースは、眉根を寄せた。
(大分痛そう)
 けれど、ここで手を緩めては、押される結果になりかねない。アンネリースは自身の仕事である火力担当として、マギシュートをかなり後方からたたき込んだ。
 不殺のない彼女の攻撃は下手すれば、ニャンギラスを屠りかねない威力ではあったが、ニャンギラスはそれでも立っていた。
 見ればニャンギラスの肌も傷だらけだ。殴打されて出来た傷は痛々しくも映る。
 でも、ニャンギラスのゆらゆらと揺れる尻尾が、ニャンギラスが決して辛い戦いをしているわけでは無い事を未だ物語っていた。
 ウィッチクラフトの力は、アンネリースにもある。だから、ニャンギラスとの意思疎通はある程度出来ていた。
 殴り間がその手段というのは中々に過激ではあったけれど、こんな事も稀にあっても良いだろう。

 ニャンギラスの体力が尽きるまで、戦いは続けられた。雄叫びで傷だらけになり、尻尾で吹っ飛ばされながらも、8人の攻撃はニャンギラスの体力を徐々に削り、ニャンギラスは高らかに鳴き声をあげた。

 ――にゃああああああああああーー!

 遊び疲れたにゃー! と言わんばかりに、ニャンギラスのその巨体が地面と倒れ伏したのだった。


●つまりそういう事
 戦い(?)が終局を迎え、互いに遊び疲れて身体を休めながら、8人とニャンギラスは対面で話をする。
 ――にゃ~ん
 猫耳がへしょりと垂れているのは、ニャンギラスの今の心情を表していた。
 遊び倒して満足はしたが、ニャンギラスの目的はまだ達成されていないらしかった。
 この中で正しくニャンギラスの話を聞けるのはスティリカだけである。後は彼女とニャンギラスの話を見守るだけだ。
 7人はその様子を見つめている。
「しかし、痛い」
 ユウキがその小さな身体を僅かに痛みで震わせた。自身でライトヒールをかけがなら、へにょりと地面に座っている。
 前衛を張っていたネストとルナシャも、割と酷い怪我である。
 殺し合いではなくじゃれ合いではあったが、遊んでいただけのニャンギラスと違い、8人は殺さない為の手加減の必要もあり、かなり疲労していた。
「うん、私もちょっと身体いたいもんね。ネストは大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
 スティリカ以外の7人が雑談をしていると、どうやらニャンギラスの対話が終わったらしい。
「え?ふんふん、ああそういう事なんだ」
「何か分かった様ですわね」
 10分ほどの会話の中で、ニャンギラスの意志は無事にスティリカに伝わったらしい。
「森はあっちだよ?」
 スティリカの言葉に、ニャンギラスが照れた様子で猫なで声を出した。
 その様子を見ていたユウキが小さな身体で、驚きを表現する。
「ひょっとして……」
「迷子だったんだね」
 ――そう、ニャンギラスはただの迷子だったのだ。
 スティリカの話を要約すると、どうやら蝶々を追いかけて森の外に出た所、帰り方が分からなくなってしまったというのがこの事件のあらましだった。
「なんともシンプルな話でしたね。出来れば犠牲者が出る前に発覚して欲しかった事実ですが……」
「最初からニャンギラスの話が聞ければ良かったんだろうが、モンスターだからな。動物の声が聞こえるギフトの持ち主も居なかったんだろう。しかたあるまい」
 颯姫が苦く笑ってニャンギラスを見つめるその横で、ネストも同じく苦笑していた。
「まぁ、でも動物を虐めることにならなくて良かったよ」
 人間はどうでもいいけど、とアンネリースが付け足した。
「ええ、そうですね。とにかく、これで依頼は完了、でしょうか。後はニャンギラスさんが帰れれば任務完了だと思いますが、帰れますか?」
 香澄が心配そうにニャンギラスに語りかけると、ニャンギラスが元気よくにゃーんと鳴いた。
 その鳴き声には哀しそうな響きはなく、心からの喜びを表すよう、弾んだ鳴き声をしていた。
(殺さずに帰してあげられてよかった)
 神に仕える身である香澄にとって、無益な殺生は避けたいものである。勿論、最悪の場合を想定していていなかった訳ではなかったけれど、それでも当初の目標を果たせたのだから、彼女も満足していた。
「森で静かに暮らしてくださいね」
 そっと香澄がニャンギラスに手を伸ばすと、ニャンギラスはその巨体を地面に伏せさせて、彼女から撫でられ、ごろごろと猫なで声を出した。

●さようならニャンギラス
 その後、森の方角を知ったニャンギラスは、満足そうに森に帰っていった。その後ろ姿を見送りながら、各々全身についてしまった土埃を払いながら、深い息を吐く。
「任務は無事に完了、ですわね。皆さん帰りの馬車ではご一緒にお茶でもいかが?」
 メイファースの言葉に、ルナシャが嬉しそうに声をあげた。
「私、飲む! おわったー。動物のお世話って大変だー」
「私も頂きます」
 荷馬車というのが少々お茶会という雰囲気を壊しては居たのだが、それはそれである。
 今は遊び疲れた身体をゆっくりと休ませるべきだ。
「ユニコもお茶飲むです?」
「あ、動物にカフェインは止めた方が良いかな?と思うよ」
 スティリカの言葉にユウキが慌てて、止める。
 と言っても、動物の言葉が分かるスティリカなりのブラックジョークだったのだろうが。
「一般人には被害はもう行かないだろうか?」
「スティリカさんが説明してくれましたし、もう大丈夫だと思います」
「ニャンギラスにはこっちに対して敵意を持っているわけじゃなかったしね。ぼくも大丈夫だと思うよ」
 美味しいお茶を飲みながら、香澄とアンネリースが優しく言う。
「しっかしさ、颯姫のマグロ戦法にはちょっと私驚いたな」
「確かに」
 ある意味すごい脳裏に焼き付く戦いだったらしい。
 まぁ、ニャンギラスはそれでとても楽しそうだったので、大団円なのだけれど。


 かくして、ニャンギラスは無事に森に帰る事ができた。
 8人の努力は実り、ニャンギラスの指名手配は街から剥がされ、平和な時間がまた戻ってきた。
 商人たちにはユウキがしっかりと説明してくれた事もあり、彼らは納得していた様子だった。
 しかし、不思議な事が同時に起きるようになった。
 それほど栄えていなかった街だったのに、なんと金鉱が見つかったり、街の名物料理が一躍有名になり観光客が増えたりと、今まで無かった幸運が彼らの元にやってきたのだ。
 また、ルナシャが提案したニャンギラスが好きな料理というのも、街ですっかりと浸透しており、観光客もそれらの料理を楽しく味わっているのが目撃されている。
 商人たちもその辺りはちゃっかりしていた。
 けれど、その中で生まれた利益の一部は、亡くなった商人たちへの弔いに使われているなど、商人たちの中の仲間意識も捨てたものではなかった。

 ――にゃんにゃんにゃん、にゃにゃんにゃにゃん!

 事実は分からない。けれど、もしかしたらニャンギラスの恩返しだったのかもしれない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

(`・ω・´)にゃんにゃんにゃ~ん!
無事にニャンギラスはおうちに帰れました。
皆さんこの度はありがとうございました。
またよろしくお願いします!

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