PandoraPartyProject

シナリオ詳細

飴色の星導

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ここは『真夜中の星導』のとある飴屋。
「いらっしゃい、よく眠れないのかな?」
 永遠の夜の世界なのだ。ここで日光を浴びることはない。
 眠る時間もとくには定まっておらず、たまに体調を崩す者も現れるのが常だ。
 そこで体調を治すために、この世界の住人は飴屋を訪れる。
 飴屋は混沌で言う医者のようなもの。
 ここに来ればある程度の病気やけがは治るとされ、誰もが一度はここを訪れたこともあるだろう。
 患者に合わせた薬──もとい、飴を作り、渡す。
 それが飴屋の仕事だ。そんな飴屋の店主──ユウマが新しく飴を作ったという。
 彼は名高い飴師だ。
 彼の手にかかればどんな悪夢も幸せな夢に。
 寝にくい夜もぐっすり爆睡。
 身体の痛みを抑える飴を作るのだってお手の物。
 すべては、人々に良い眠りを提供することをモットーに。
 そんな彼が作った新作の飴。名前は『泡沫の夢』味。
「うーん……俺が作ったはいいけど、あんまり食べたくないんだよね」
 というその手の中には淡い紫の飴玉。
 調合方法は簡単。まずは星の多い夜に作ります。
 材料も至ってシンプル。人魚の涙に、空気の澄んだ夜に落ちた星屑、それから──。
 こだわりの材料で作られたそれは、いつもにもまして効果があるように思えてならないようで。
「せっかくだし、誰かに感想を聞いてみたいな。……キミも、そう思うだろう?」
 そう笑みを浮かべた彼の手の中にある飴が、くすくす、微笑んだ気がした。


「……ってことで、これを食べてほしいんだけど」
 カストルはこちらに瓶を差し出して告げた。
 中には飴が一粒だけ入っている。
 ころんころん。
 飴が転がった。一見するとただの飴に見えなくもない。
 しかし、彼が付け足すように言ったその言葉であなたは首を傾げるだろう。
「効能はなんでも、“幸せな夢を見る”らしいよ」
 ラベルに書かれた効能を指でなぞりながらカストルはそう言って。
 瓶のなかに詰められた飴は、まだ未開封なのか鮮やかな色を放っている。
 ころんころん。
 瓶を微かに揺らせば、その軌跡にはほのかにきらめきを伴った。
「さすがは星を大切にする世界。その飴の中にも星が入っているようだよ」
 と、補足するように笑みを浮かべた。
「……まぁ、ともかく。寝る前にこれを食べればいいんだって」
 掌を差し出せば、その上にそっと置かれるのはやはりあの小瓶だ。
 追い打ちするように、いってらっしゃい、と言われ、枕も手渡されたのだった。

NMコメント

五度目まして、染と申します。
眠りが浅い夜ってありませんか?
そんな夜に思いついた依頼です。どうぞお楽しみください。

●依頼内容
 飴を食べる。そして、夢を見る。

 アレルギーだとかそういうのは端に置いておいて。
 今回は飴を食べていただきます。
 身体に悪いわけではないようです。ので、ご安心を。

●世界観
 『真夜中の星導』と呼ばれる世界の中。
 相変わらず星が綺麗です。
 街並みも至って変わらず、大きく異なるのは「星を大切にしている」ということ。
 例えば、街の証明は全て星を捕まえて灯したものですし、食べられる星もあるようです。
 街中に星が溢れています。それこそ、導のように。

 こちらは染が前回出した『祈りの星導』の続きとなっております。
 (https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2271)
 前回参加されていなくても楽しめる内容となっております。

●飴について
 名飴師と謳われるユウマ作の飴です。
 材料は以下の通りです。
・人魚の涙
・空気の澄んだ夜に落ちた星屑
・妖精の吐息

 万が一アレルギーだとか、そういうことがあれば明記してください。
 ユウマが配慮してそれは取り除きます。

●効能について
 幸せな夢を見る。
 
 なんの変哲もない、幸せな夢。
 あなたが見た幸せな夢はどのようなものでしょうか。
 目が覚めた時のあなたの反応もあるといいかもしれません。

●場所
 とある宿の一室。
 皆さんが安心して眠れるように、ユウマが貸し切りにしたようです。
 不審人物も一切来ませんので、ぐっすり眠ってください。
 安眠グッズも用意されています。

●サンプルプレイング
 お、おう……これを食べればいいんだな?じゃあ、いただきます。
 眠りについた俺が見たのは、あの日の夢だ。
 母さんがそばにいて、父さんもそばにいる。
 それから、嗚呼。大切な妹も!
 今日は俺の誕生日。皆でケーキを食べるんだ!
 幸せだ。
 そう思ったところで目が覚めて。
 ……あぁ。わかってた。夢だから。

 キャンディを食べるのは久々……あぁ、キャンディじゃなくって飴?
 ごめんごめん。それじゃ、ひとくち。
 私が見た夢は、だいすきなあの人と結婚する夢。
 真っ赤な道をあるいて、顔をあげればそこにはあの人が。
 きれいですか、あなたの花嫁は!
 ……ふふ、ありがとう。
 それから、次は誓いの……。
 あっ。今いいところだったのに!!

それでは、ご参加お待ちしております。

  • 飴色の星導完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月02日 22時40分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
戮(p3p007646)
乳白の虹

リプレイ

●ユウマの頼み
「今日は来てくれてありがとう。早速頼めるかい?」
 ユウマは穏やかな笑みを浮かべると、その手に握った4つの小瓶を一人一人に手渡した。
 『泡沫の夢』味と名付けられた、薄紫のそれ。
 ころんころん、と音を立てて瓶の中で転がれば、仄かに漂う淡い光。
 軌跡となり、優しく煌めくその光は宛ら妖精の羽ばたきの如く。
「それじゃあ、いい眠りを。……眠れなかったら呼んでくれたら、力になるよ」
 恐らくはその心配も杞憂に終わるだろうが、ユウマは手を振りながら君たちを見送った──。

●しあわせのしるべ
 『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260) と『差し伸べる翼』ノースポール(p3p004381) は、手を繋ぎながら、隣に寄り添いベットで寝転がる。
「とっても綺麗な飴だね♪ 食べるのが勿体無くなっちゃう」
 惜しむように小瓶の中の飴を転がすと、隣にある深緑の瞳は優しく弧を描いて。
 そっと頭に手が伸ばされ、撫でられる。
(幸せな夢かぁ。今も、十分に幸せだけど……。これ以上に幸せなことって、あるのかな?)
 考えながら飴を口に含むと、少しづつ眠気が襲ってくるのだ。
 微睡みながら婚約者に微笑みかける。手は握ったまま、離さない。
「お休み、ルーク。こうしてたら、一緒の夢を見られるかな?」
「お休み、ポー。うん、同じ夢が見られるといいね!」
 二人は目を閉じた。すると、あっという間に夢の中────。

 
 ノースポールは目の前の光景を見渡した。
 地には緑の草原が広がり、天には星の海が流れている。
「ポー……どうかした?」
 何より。何より、隣で微笑むルチアーノが、少し大人びて見えるのだ。
「ううん、なんでもない……」
 ふと、遠くから聞こえる子供の声。あぁそうだ、と思い出したように、ノースポールは声を掛けるのだ。愛おしい我が子に。
「二人とも、あんまり遠くに行ったらダメだよ〜!」
「はーい、お母さん!」
「お父さんと叔父さんも一緒に行こうよ〜?」
 遠くで手を振る小さな双子の子供は、ノースポールとルチアーノの宝物。
「元気なところはポーに似たのかしら?」
「あのふわふわの髪はルチアーノ君にそっくりだ」
「いーや。全部姉さんゆずりだ」
 優しくて、どこか懐かしい声がする。
 後ろを振り向いたノースポールは、後ろに、家族の姿を見た。
(お母さん、お父さん、ネル)
 そんな家族の姿を愛おしく思って、ノースポールは嬉しそうに微笑んだ。
(私の大切な人達が、嬉しそうに笑ってる。本当に、これ以上の幸せはないよ……。)
 どうしてだろう。この景色から目を離してはいけない気がした。
 暫くその姿を眺めていると、ふと優しい声が響いた。
「姉さん。子供から目を離しちゃだめだろう?」
 ネル──ネージュが、促すように微笑み返して。弟の隣に立つ両親も、穏やかに笑いながら頷いた。
 ノースポールはくるりと前へ向き直った。胸の内にはあたたかいおもいがあることに気が付きながら。
「ほら、星を見て」
 しあわせそうなノースポールの様子を伺いつつ、ルチアーノは指を空へ向ける。
 すると、二人の子供たちも、ノースポールとルチアーノの元へ戻ってきて、二人の手を握るのだ。
「…あれが北極星だよ。星を観測する時の、道標だね」
「あ、あった! あったよお父さん!」
「ふふ、上手だね。じゃあ、次にその周囲の星をみてごらん。こぐま座があるのが、わかるんじゃない?」
「うーん……」
「ほら、向こうだよ!」
 ノースポールも一緒に空を探してあげれば、我が子は嬉しそうに声を上げるのだ。
「あれは……ポラリスだよね、お母さん!」
「うん♪ そうだよ、覚えてるなんてすごいね!」
「えへへ〜〜」
「ずるいずるい! お父さんも褒めて?」
「もちろん! 北極星、ちゃんと見つけられたなんて凄いね。お父さんが同じくらいの歳の頃はできなかったと思うよ」
「ふふん! ありがとうお父さん〜!」
 この腕の中にある温もりが、二人を幸せな気持ちで満たしてゆく。
(北極星は空の道標。そしてポーは…ポラリスは、僕や家族の道標だ。
 ポーが幸せなら、皆が幸せで笑顔になれる
 君がいるから、皆が幸せになれるんだよ。)
 隣で幸せそうに微笑む“妻”が愛おしくてたまらなくなって、ルチアーノはノースポールを抱きしめる。
「これからもずっと、幸せな時間を紡いでいこうね」
「うん! ルークとこの子達と一緒に、幸せな時間を紡ぎたいな♪」
 ぎゅぅっ。
 両親が愛を確かめあっているのをみると、子供たちは少しだけ寂しい気分になる。だから。
「わ、わ! 急に抱きつくなんてどうしたの?」
「お父さんばっかりお母さんをひとりじめしてずるい!」
「ふふん、お父さんのお母さんだからね」
「あー!? お父さんずるーいー!!」
 ぎゅぅっ。
 二人の子供たちの温もりも加わって。
 あぁ。しあわせだ。
 確かにそう感じるのだ。すると、だんだん景色はぼんやりとして──。


 ぱちり。
 誰かに抱きしめられた感覚がして、ノースポールは目を覚ます。
 ノースポールが目を覚ませば、そこはルチアーノの腕の中。
「あ、起こしちゃったかな?」
「ううん、大丈夫だよ! おはよう、ルーク。どんな夢だった?」
「ふふ、おはよう、ポー。とても幸せな夢だったよ」
 二人の笑みは、双子に似て煌めいていた。

●もう一度、
 薄紫の飴を食べてしまうことを少し勿体ないなぁと思いつつも、『乳白の虹』戮(p3p007646) は恐る恐る飴を含んだ。
「いただきます。……うん、おいしい」
 柔らかく笑みを浮かべ、少しづつ口の中で溶かしてゆく。
 泡沫の夢、などという名前からは想像できないほどまともな味だった。
「ん、眠なってきたわ……」
 けれどその表情は不安そうなもので。
 トントン、ノックが響いた。
「ユウマです。よく眠れてるかな?」
「ぁ、まだです……」
「ふむ……何か原因はありそう?」
 少し俯いた戮は、小さく呟いた。
「戮、寝るのあんまり好きじゃないん……。
 戮な、ずっとずっと寝とって、起きたら記憶が無くて。
 やから、また寝てしもうたら、また全部忘れてしまわへんかなって……」
 不安げに表情を曇らせる戮の目線に合うようにユウマは屈むと、微笑んでこう言った。
「大丈夫。きっと優しくて、いい夢だ。なんたって、俺の作った飴だからね」
 少し得意気に笑ったユウマは、ね?と首を傾けた。
「ううん……せやったら、ええかなぁ……。
 ほな、おやすみ……」
 小さく頷いた戮は、そのままベットに潜り込むと、眠りの中へ誘われて言った。
「おやすみ、戮くん」


 戮が目を開けば、そこは真っ白な世界だった。
 戮は思う。まるで自分のようじゃないか、と。
「戮」
 なにか、聞こえた。
「戮」
 気の所為?
「戮」
 否。気の所為などではない。
 声だ、と。認識した途端、視界がぼやけた。
(ああ、ああ、知っとる。戮は知っとる。思い出されへんけど、知っとるはずなんや。)
 だんだんと頭が理解してきた。戮は手を伸ばす。
 こちらにも手が伸びてくる。嗚呼。
(ねぇ、もっと名前を呼んでください。
 もっとそばにおってください。
 抱きしめて。頭を撫でて。)
 そうだ。これは紛れもない、神様の声だ。
「戮」
 髪に手が触れる。そう、きっとこれは、神様の手だ。
(ねぇ、神様。
 ねぇ、戮の、戮だけの神様──。)
「これからも、頑張りなさい」


 ぱちり。
 戮は目を覚ました。記憶は残ったままだ。
「……懐かしい夢やった」
 ユウマは部屋を出ていた。誰に届くわけでもなく零した独り言に、戮は思わず首を傾げた。
(変やな。記憶がないのに懐かしいなんて。
 戮は秘宝種。生身の人間じゃない、作られた機械体。
 戮を作ったのは、きっと、あのひとや。)
 夢を覚えていた。
 確かに自身の髪に触れたその手のあたたかさも、優しい声色も。
 覚えている。
(……あのひとは、どうして戮を作ったんやろなぁ。
 こうして世界を巡っていたら、いつか、また会えるやろか……。)
 窓の外は相変わらず、星が輝いていた。

●薔薇の楽園
「幸せな夢が見れるなんて素敵だね」
 『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)は、胸元の十字架に話しかけつつ、瓶底を覗きこむ。
『何とも胡散臭いがな』
 胸元の十字架──契約の代償の証から“魂”の声がした。その声はどこか不満げだ。
「まぁまぁ、物は試しって言うし。
 人体に害は少ないと信じよう」
 ころんころん、と素知らぬ様子で転がる飴を口の中にふくむと、少しずつ眠りの中へ誘われていって……。


「ティア、どうしたの……? お茶、冷めちゃうよ」
 そこにいたのは、妹のエステルだ。青薔薇の似合うあの方もいる。
 妹とクライアントがそこにいるのはなんとも不思議な光景で思わず首を傾げたティア。
「貴族同士とは言えエステルとリーゼロッテが一緒って言うのもいつかはあり得るのかな?」
 ふと座っていることに気が付いて、それならば、と、目の前に置かれたお菓子達に手を伸ばす。
 ケーキにカヌレ、マカロンにチョコレート。甘い紅茶の香りと共に、幸せの味が口の中に広がるのだ。
 くすくす。ふふふ。乙女たちの秘密のお茶会だ。
(贅沢だなぁ……これが現実だったらいいのに。
 夢から戻ったらエステルと一緒に彼女を訪ねるのもいいかもしれない。
 エステルは怯えてそうな感じもしそうだけど。)
 少しだけ笑みが零れた。夢の中だろうと、こんな幸せな風景が広がっているのなら、悪くはない。
「お茶……結局、いるの? いらないなら私たちで飲んじゃうけど」
「うん、冷めない内に頂こうかな。今日は2人ともありがとう」
 ティアが微笑むと、その景色はだんだん遠ざかって……。


 ぱちり。
 目を覚ませば、喪失感に包まれる。
『夢はいつか正夢になるらしい。だから気を落とすな』
「落としてなんかないよ」
 自分を気遣うその声が面白くて、思わず笑ってしまったティアだった。 

成否

成功

状態異常

なし

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