PandoraPartyProject

シナリオ詳細

(。+・`ω・´)もいもっもい

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●宴の後
「――何、それは本当か!?」
 その村では祭りがあった。『もいもい祭り』というある村で古くから行われている由緒正しき祭事だ。その規模は世界各国を巡ると言われるシルク・ド・マントゥールに遠く及ばないものの、行われるとなれば遠方からもある程度の人が集まるぐらいには盛況である。
 しかし。その村の村長宅はとても祭りに浮かれている様な雰囲気ではなく。
「事実です村長……! もう村の幾点かで『感染者』がいて被害が始まってます!」
「ふ、防ぐにしろとても人手が足りません! 今はまだ大事になっていませんが時間の問題です!」
 どうします村長! と若い男が焦る様な口調で領主へと指示を仰ぐ。
 彼の持つ自衛用の短剣には血が付いていた。赤く染まっているそれは決して偽物や血糊の類ではない。本物の――
「……やむをえん、ギルド・ローレットに依頼しよう。憲兵共は来てくれるかすら分からんからな!」
「あのローレットに……!! そうか、彼らなら――」
 彼らなら『奴』を。いや『奴ら』を倒せるかもしれない。少なくとも頼りにならない憲兵よりは遥かに希望が見える。
 故に早速村長が指示を飛ばす。誰でもいいから早くローレットへの使いとなれ、と――
 されば。
「――」
 村長は見た。家の入口。微かに開いていた扉から家の中へと舞い込んできた―― 一匹の『蝶』を。
 いた。いた。蝶がいた。空を舞う、綺麗な綺麗な。

 人を喰う、蝶がいた。

●人喰い
 イルフォ。それは人を好んで襲う『蝶』の名である。
 最大の特徴としては人の脳を、意識を乗っ取る事であろう。一匹二匹なら特に問題ないが無数のソレにたかられた人間は――意識をイルフォに喰われ、その奴隷と化す。そして新たな仲間を増やすべく行動するのだ。過去に大きな被害が出た時にイルフォ・シックスなどとも呼称されたが。
「そ、そんな連中が湧いてでたんです! 祭りでいつもより人が密集している俺の村に……村に……!」
 ギルド・ローレット。そこへ駈け込んできた男の話を貴方達は聞いていた。祭りで人が集まっている地――恐らく通常よりも速い速度でイルフォによる『感染者』はその数が増している事だろう。急がねば村全体を覆ってしまうかもしれない。
「今も大分事態は進んでいますが……まだ間に合う筈なんです! クイーンさえ倒せれば!」
「クイーン? 親元がいるという事か」
 ああそうです! と男が言葉を紡ぐ。イルフォには頂点として女王たる――正式名称『イルフォ・ケーニギン』が存在し、これが配下のイルフォを増やす。そしてその配下が人を襲い、あるいはケーニギンを守る行動をするそうなのだ。
 この個体さえ倒せればそれ以上全体のイルフォは増えない。あとは時間さえあれば十分に駆除可能だ――が、しかし。
「問題があるんです! 今現在の状態でも村には相当数のイルフォとその奴隷がいます! こいつらをかき分けてケーニギンの元まで十全に辿り着けるかは分からない……!!」
「万一そこで負けては元も子もない――か」
 となれば。
「俺達だけでは足りないな」
「むしろ配下の連中を陽動する班と、ケーニギンを直接討ちに行く班を編成すべきじゃないか?」
「だな。なら陽動はこっちでやろう」
 一つのグループだけでは手が足りない。数人足した所では焼け石に水。
 ならばいっその事『共同』たる出撃を行う事にしよう。一つで無理なら二つのグループをもって。あちらの成果がこちらに影響し、こちらの成果があちらに影響する――共同作戦だ。
「上手くやれよ。そっちが大元倒せない限り延々配下を相手取る事になるんだからな」
「そっちこそ。上手く陽動してくれないと、俺達が上手く立ち回れないからな」
 拳を合わせる。またここで、互いの目的が成功した報告をしあおうと約束し。

 さぁ――害虫駆除の時間だ。

GMコメント

 このシナリオには女王を討つ別動隊が存在します。
 本隊のみで女王個体を捜索するには危険が伴うため、こちらのシナリオで感染者を引きつけます。
 出来得る限り多くの個体達を引き付けてください。

※注意※
 このシナリオはyakigoteGMの『(`・ω・´)ゞもももいもい』と連動しています。
 両方共に参加するということはないようにお願いします。


■勝利条件
 一定時間の経過 or 『イルフォ・コマンデュール』を五体以上撃破。


■村の詳細
 村としてはそこそこの大きさです。依頼開始の時刻は昼になります。

 ケーニギンはどこかに隠れ潜んでいるようで、多くの配下が村の各点に散らばっています。
 配下共が意図的に隠れようとすることは無いでしょうが、民家の中にも侵入されています。

 なお、逃げ遅れた生存者が立て籠もりを続けている家も存在しています。
 生存者の生死は本依頼の達成条件には一切関係しません。


■イルフォ
 人喰い蝶。危険視されている魔物の一種です。
 見た目だけは綺麗で、人にたかるモンシロチョウ程度のサイズのイルフォ。
 もう一つ、片手サイズの色彩の強い翅を持つイルフォが確認されています。

 また、後者は前者が喰らい潰した人間の左側の眼孔から出現します。


■イルフォ・インファンテリ(通常個体)×無数
・通常感染者。
・身体能力は元々の人物のそれにより大きく左右されます。
・肉体の腐敗が既に進んでおり、防御性能で生前よりかなり劣ります。
・肉体のリミッターを外して行動するので、脆いのですが、生前よりも運動性能に優れています。
・1体がイレギュラーズを発見すると、その情報が村中の感染者に伝わります。

●イルフォ・コマンデュール(指揮官)×?
・特殊感染者。
・インファンテリよりも身体能力に優れており、1対1では苦労する相手です。
・多くの数のインファンテリとリンクしており、これを倒すことでリンクしたインファンテリも活動を停止します。
・顔の蝶が一匹ではなく、複数匹に纏われている為判別可能です。


■備考
 勝利条件に「一定数の撃破」がありますが、撃破を達成してもケーニギンが存在する限りいずれ増え続けます。また、勝利条件を達成したからと言っても村中には生き残りの指揮官がいますのでケーニギン側の援護に回る事は出来ません。

 どれだけの精度で『陽動』が行えているか、で『(`・ω・´)ゞもももいもい』の戦闘判定に影響を及ぼします。『撃破数』だけが戦闘判定に影響を与える訳でない点はご留意下さい。


【用語集】
■イルフォ・シックス
・突発的に発生する災害の一つ。
・感染者は眼球からゴライアストリバネアゲハに近い蝶が生え、脳を食われ、ホラー映画のゾンビのようになってしまいます。
・口から大量のモンシロチョウに似た何かを吐き出し、これらに体内を侵食され尽くすと、同じ感染者となります。
・生前の全速力程度で壊れるまで走り続けることが可能です。

■イルフォ・ケーニギン(*本シナリオには登場しません*)
・女王個体。
・顔中が蝶で埋め尽くされているので、視認すれば特定可能です。
・戦闘力はさほど高くありませんが、村の中に隠れ潜み、常にイルフォ・インファンテリを十数体従えています。
・イルフォ・ケーニギンが戦闘状態などの生命の危機に陥ると、影響されている全てのイルフォがこれに感づき、女王個体のを守るべく行動を開始します。
・ただし、そのインファンテリが既にイレギュラーズと接触している場合はその限りではありません。現状の行動を継続します。

  • (。+・`ω・´)もいもっもい完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年03月21日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

シルヴィア・テスタメント(p3p000058)
Jaeger Maid
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
絶望を砕く者
レーヴ・シュマン(p3p000345)
夢幻への送還者
Q.U.U.A.(p3p001425)
ちょう人きゅーあちゃん
アイリス(p3p004232)
呪歌謡い
ルナシャ・クレスケンス(p3p004677)
くろうさぎ。
タチカゼ(p3p004756)
科戸の風

リプレイ

●一組目
 村は壊滅している。生存者がいようといなかろうと、もはやその事実は変えられない。
 蝶の増殖は止まらず増え続けるのだ。餌が無くなるまで。人が消えるまで。
「たくっ。こいつらマジで、餌が無くなるって発想は無いのかねぇ?」
 聞こえた『合図』と共に射撃音。地を踏みしめ、駆け抜けながらイルフォへと攻撃を仕掛けるは『Jaeger Maid』シルヴィア・テスタメント(p3p000058)だ。魔物であろうと生態はある。故、それに文句をつけるのもどうか――と彼女は自問するも、やはり不思議に思う心はどこかにあるものだ。
 餌がなくなれば困るのは未来の自分達であろうに。発想が無いのか知識が足りぬのか。
「ま、その辺りは分からない所だが……見な。また今ので注意を引けたみたいだぜ」
 ともあれ今は依頼を。己らの目的を果たすべきだと『本心は水の底』十夜 縁(p3p000099)は村を見据える。先の銃撃音にて多くのイルフォがこちらに視線を。視界に映る蝶がその数を増していく。
 やれ、花に惹かれるだけの蝶ならば可愛らしいのだが、この村にいる蝶は残念ながらそうではないのが至極残念だ。死体に群がり人を喰らう様は、見ていてなんともはや……
「さーて……そんじゃ、鬼ごっこといくかねぇ。本隊の連中が動きやすいようによ」
 駆ける。決して奴らに纏わりつかれないように。
 後ろから来る者らには無論追いつかれぬ様。前から回り込んできた者らがいれば横へと方向転換し、距離を取り続けるのだ。今はまだ『本格的』な戦闘をするには早い。今少しばかり。
「ようするに、たっくさんあいつらを引き寄せたらいいんだよね?」
 奴らの気を引き続ける必要があると『遠き光』ルアナ・テルフォード(p3p000291)は思考する。なら、とばかりに走る動きは緩めずに。
「おっにさんこちら♪ てのなるほうへ♪」
 手を叩く。大きく大きく目立つように声を出し、イルフォへと己が存在を示すのだ。
 それは引き付ける為。女王を討つ為に行動している組を少しでも無事な状態で奥へと進ませる為の行動だ――彼女達の陽動が如何に効果的かで、向こうの疲労が段に違うのだから。
 ただ逃げる方向はあくまで民家の中を除いている。そこは袋小路なのだから。
「――あっ、ヤバ、いかも。方向を一回変えよっ!」
 と、その時。『くろうさぎ。』ルナシャ・クレスケンス(p3p004677)が声を出す。
 彼女が背にふと感じたのは悪寒だ。ギフトの力か。不運が訪れそうな時をなんとなく予感する力。何がどう、どこから何が――と詳しくは分からないが、このままではいけない予感が脳を過っていた。
 方向を変える。家と家の間、そこを駆け抜け別地点へ。さすればそこに――奴らはいない。
 まだ走れそうだ。されど自身で分かってもいるがこのギフト、上手く働くとは限らない。
「どうヤバいか、がもう少し分かればなぁ……」
 自らの危機にのみ働き、具体性は不明。今のは恐らく上手く働いた結果と、思うが。何度となく働くかは完全に分からないので過信は禁物だ。方向転換先を間違えて逆に囲まれるなど御免被りたい所である。
「だけど、まぁ。流石に逃げ回り続けるのも限度があるわな」
 瞬間、シルヴィアは見た。前方に数体のイルフォがいるのを。
 あれは見るにインファンテリだ。ここまで依頼主の村人に村の簡単な構造を聞き出した上でそれを元に陽動ルートを決めていたが――幾度かの迂回を果たした上での邂逅。これ以上の強引な逃走は逆に逃げ道を失うだけになりかねない。撃破するしかない。
「あともう少しで……合流できるんだから……ッ!」
 往く。ルアナが地を蹴り奴らへと接近。大剣を握りしめ大上段より一人を一刀――
 両断する。舞う蝶が揺らめきながら、飛び散る血に赤く染まって。
「時間はかけられねぇよなぁ。たく七面倒な事だぜ」
 続いて十夜が駆け抜ける速度を緩めずに。インファンテリの膝を薙ぐ。蹴りだ。払うように放たれたそれは、体の軸を崩して。地に倒れようとするその勢いの頭を、シルヴィアの銃弾が打ち砕いた。
「今だ、突破を――」
 さすれば道が開けた。故にルナシャは前進を選択――した正にその時。
 見た。いや、見えてしまったというべきか。横目に映る、民家の中に。
 子供がいた。
 イルフォに影響されていない生き残りの子供だ。窓ガラスに手を当て、こちらを見ている。それは双方共に偶々合った一瞬の視線。繋がれた、その時確かにそこにあった見えぬ『糸』を。
「――ッ」
 逸らした視線で断ち切った。脳の奥で『糸』の切れた音がしたが、聞こえず見えず。前へと進む。
 ……ごめんね。
 噛み締めた奥歯が言葉を飲み込む。何もかもは手に留められないのだから、たった一つだけは確かに成す為に。振り返らずにルナシャは進む。振り返れば、戻ってしまうかもしれないから。
 そして迎撃と逃走を繰り返した果てに四人はついに辿り着く。
「見えた――あそこが合流地点か」
 十夜の視線の先。そこには『先程』発せられたラッパの音が聞こえた地点だった。ここにきていたのは八人。その内の、別地点で誘導役をしていた四人があそこで戦っている。急ぎ合流せねばならない。
 されどいる。イルフォが。まずはあれをどけるのが先決だろうか――そんな事を思考すれば。
「とぅぁ――ッ!!」
 女性の掛け声が響いたと同時。彼らの目前に敵が一体蹴とばされてきた。それは絶命していて。直後。
「むっふっふ――! きゅーあちゃん、さんじょ――ッ!! きゅぴん!★」
 合流成功だね! という意味合いで叫んだ『人 工 無 能』Q.U.U.A.(p3p001425)が――そこにいた。

●二組目
 時を少し巻き戻すが、村の中でラッパの音が響き渡った地点があった。
『呪歌謡い』アイリス(p3p004232)の用意した楽器である。響き渡るその音は『向こう』に伝わってくれただろうか。
「さて。ここまではなんとか来れましたし音も出せました、が」
 アイリスは言う。視界の先に見えるのは――無数のインファンテリが迫ってきている姿だ。
『引き付け』と『待ち伏せ』の二班に分かれ『待ち伏せ』側として行動した彼女らはここを合流地点と定めた。村の中でも比較的開けた場所。ここならば合流地点としても迎撃地点としても良いだろうと考えての事だ。
 しかし『待ち伏せ』側もここに至るまである程度の数を引き寄せている。それ自体は勿論計画の内であるし役目でもあるのだが『引き付け』に徹底する向こうとは違い、こちらはこれ以上の逃走誘導は許されない。離れる事が出来ないのだ。最低でも合流出来るまでは。
 打ち捨てられていた花火に火を。太鼓を叩いてここにいるぞと主張して、今ぞその成果はここに集まったイルフォの数が示している。
「引き撃ちしつつやってきたが、それもここまでか。後は全力でやってみる他ないな」
「たのしいお祭りをバグまつりにするなんて、ひどいね! そんなちょうちょ、ダメ・ぜったいうんどう!」
 ぷんすこ! と怒りを見せるQ.U.U.A.に、ロングバレルを所持する『夢幻への送還者』レーヴ・シュマン(p3p000345)が迫りつつある敵に装備を構える。
 姿だけでいえば決して嫌いな造形ではないとレーヴは感じている。むしろ美しいとすら。
「しかし――美しき者は儚く散るのが定石だ……この場で散華するといい」
 引き金に掛ける指に力を。絞り上げる。
 放たれた銃弾。スコープ越しに狙い定められたそれは、銀弾の才知をもってして集中する力を増大させる。身体の微かな揺れが更に小さく、スコープが揺らがない。
 着弾した。額を一直線、インファンテリの身体が崩れる。
 それでも数はいる。一体倒しても二体が。三体が――
「――御免」
 故に『科戸の風』タチカゼ(p3p004756)が往く。二振りの刀を携えて挑むは至近。
 剣閃が描かれた。インファンテリの胸部に交差するかの如く十字の線が走って。
「御命、もらい受ける――せめて安らかに」
 血飛沫。刀に纏わりついた糊を、払って捨てればタチカゼは次に備える。
 本来ならばもう少し技能をもってして攻撃を仕掛けたい所だが、そうはいかない。全力で太刀を振るうにも限度があり、敵の数が何体にまでなっているか分からないこの様な戦いでは尚に無駄撃ちは出来ないからだ。放つとすれば。
「狙うは……コマンデュールであるが」
 いつかは来る、指揮官クラスのそれに放つと決めている。
 今はただ目の前の者らを斬るのみだ。なに、そう遠い出来事ではないだろう――そう思考していれば。
「む、コマンデュールとは……アレの事か」
 レーヴがスコープ越しにその姿を捉えた。纏わりついている蝶の多い、指揮官を。
「狙います。Q.U.U.A.さん、前を頼めますか?」
「はいよー! かーわいいきゅーあちゃんに、まっかせたッ!」
 その個体をアイリスが指差す。真っすぐに。さすれば展開されるは魔法陣。芒星の輝きが射程を引き延ばして。コマンデュールを、しかと捉えた。
 巨大な魔矢が放たれる。減衰せぬ。狙いが逸れぬ。故に遠方へ――炸裂。
 同時。Q.U.U.A.は己が跳躍力を持って近くにあった屋台の後ろへと跳ぶ。そして即座に屋台を後ろから全力で突き飛ばせばバランスが崩れてそれは転倒。イルフォ達への障害物とする。
 使えるものは何でも使う。屋台でも櫓でも。時間を稼げればそれでよく。
 されどコマンデュールもインファンテリとは違う。伊達に指揮官の名を冠してはおらず、柔な個体ではないのだ。アイリスのマギシュートの直撃を受けてなお、その前進する意思は衰えない。
 人を。女王へ。脳を。食わせろ。ただの餌が――
「醜悪」
 その意思を感じ取ったか。コマンデュールに相対するは、タチカゼだ。
「人をただの餌と軽んじるか。その思い上がり――」
 鞘に刀を戻す。集中。閉じた瞼が余分を省く。
 奴が近付いてくる。足音が鮮明に、耳から入りて。振りかぶられた拳が己に振るわれ。
「――某が風にて、罷り通らせて頂く!」
 だが直撃するよりも微かに早く、鞘に組み込まれた引き金を引いた。されば轟音。爆発。瞬時。拳より早く剣閃が突き抜けて、その身を一刀両断とする。水神切太刀風。タチカゼの所有するその一刀の居合は風の如くコマンデュールを打ち倒したのだ。
「集中的に攻撃を重ねればやはり倒せぬことはないな……し、かし」
 レーヴは言う。一対一では分が悪いと推察されるコマンデュールでさえ、対処法を間違えなければ倒すは決して難しい事ではない。しかし、やはり撤退や場所移動が出来ぬ以上押し寄せる敵の数が最も厳しい。
 コマンデュールは一体倒しもののタチカゼの示現流たる戦闘スタイルは防御戦に向かない。拳を掠めた事もあって、いずれは倒れてしまうかもしれない。一人倒れただけでもこの戦場は一気に厳しくなる――その時に。
「あっ★ みんなが来たよ――!!」
 見えたのだ。もう一つの班。引き寄せの為に動いていた四人の姿が――

●合流
 陽動として最も効果が高い戦果が何かと言われれば、コマンデュールの無力化だろう。
 それだけでインファンテリを多く無力化出来る。実際、先程タチカゼが倒した時も周囲の者が連動して機能を停止していた。ではその穴を埋める為となれば更なる増援がこちらに来る訳で。
「やれやれ……風情に欠けた光景だぜ」
 そんな中で十夜は見た。己らの周囲を取り囲むインファンテリの数々を。
 死骸の臭いが中々強烈である。それもそうか、あれらは全て死の骸。故、彼は己に香水を振っていた。不快な死体の臭いを嗅ぎ続けるよりもマシであり――なおかつ、臭いを感知する蝶の特性の阻害になれば、という考えの元でである。
「向こうがさっさと女王を倒してくれればいいんだがねぇ。そろそろ戦闘が始まった頃か?」
「さて。こちらからは確認のしようがありませんが……そうである事を願いましょう」
 アイリスの言を皮切りに合流した彼らは戦闘を再開。扇状に形成された魔力の弾幕が敵を襲うのだ。四方八方に敵がいるからこそ放つ事の出来た技能。多くのインファンテリを襲い、なぎ倒す。
「ここは、お祭りで楽しい場所だった筈なのに……!」
 もいもい祭り。その詳細をルアナは知らないが、きっと楽しい祭りだったのだろうと強く思う。
 故に許さない。なぜこの村がこのような惨劇に襲われなければならないのか。こんな悪い夢など。
「おしまいに、しなくちゃッ!!」
 薙ぐ。己が身体に強化魔術を施して、自らでなし得る最大の一撃をイルフォへと。
 切り倒し、打ち倒し。迫る蝶を斬っていく。空に揺らめく人喰い蝶を。
「んーむむむむむ!! きゅーあちゃんの、さんぷんはっ・きんぐッ――!!」
 アクロバットによる軽快な動きからイルフォを蹴り倒したQ.U.U.A.が言葉と共に展開したのは、ハッキングだ。20m以内のテレパスを感知するその能力。しかし。
「あうえ――!!? ダメだねこれわかんないや!!★」
 イルフォの独自なる情報網は生態特性のモノなのか? その辺りの詳しい事は不明だが――ハッキングではイルフォ間における情報伝達の特性を見抜く事は出来なかった。
 ざーんねん! と軽い口調で彼女は戦闘を再開する。出来ぬのならばそれはそれで良い。ひみつへいきすーぱーAIたる彼女に止まっている暇など無いのだから。己が目的を成す為、疾走する。祭りの残滓か。落ちていた面を被ってイルフォの群がりをガードせんとして。さすれば。
「ッ、来た……! コマンデュールだよ!」
 ルナシャの視界に映る、再びの指揮官クラスがそこにいた。
 放置は出来ない。すぐにでも倒さねばならない。故、邪魔立てせんとするインファンテリを。
「邪魔なんだよどいてろ!」
 シルヴィアが薙ぎ払う。降り注ぐ銃弾を的確に。コマンデュールへの道を塞ぐ通常個体を穿って。
「お見事――道が開けたのなら是非も無し。大将首、頂戴するッ!」
 タチカゼが往く。温存したとはいえ全力の一撃を放てるはあと数回。
 余裕なく、だからこそ機は逃さず。高速の抜刀が首元へ――
「――むっ!?」
 首筋を半分程切り落としかけた所で、その刃をコマンデュールが掴んで止めた。
 イルフォは死体の腐敗故に防御性能が落ちているが、コマンデュールは些か別。指揮官クラスの名に恥じぬその個体を上手く一撃で倒す事は難しく。故に反撃の拳をタチカゼは受ける。
 刃を掴んでいるのとは逆の拳がタチカゼの腹部にめり込んで。刃は、首を落とさず――
「そうは、いかないよッ――!!」
 だがそこへ、ルナシャが逃さぬとばかりに追の一撃を放った。破杖クレスケンス。彼女が持つ、三日月の宝玉が埋め込まれたその杖で――コマンデュールの頭部をフルスイング。
 タチカゼの刃とは逆の方向から。手に伝わってくる柔らかくも、奥に固い感触のある感覚がなんなのかは考えない。振り抜く。一切の容赦なく。であれば奴の首が捻じ曲がって。強引にそっ首叩き落とした。
「やはり首より上を落とせば奴らは行動を停止するな……流石、脳を喰らっているだけはある」
 その様子を見たレーヴは呟く。イルフォはあくまで人の脳髄を喰らい、そこを支配することで全身を操っている魔物の一種。ならばと先程からなるべく頭部を狙うようにしていたのだが。
「災害をもたらす悍ましき蝶よ――消え失せろ」
 判断は正しかったと確信を得て。銃弾にて突き穿つは額一点。
 コマンデュールが倒れて機能を停止したように見えるインファンテリは捨て置く。まだ確実に動いている者を、技能と才知にて上昇させた能力で狙い続けるのだ。
 今頃女王側の方も戦闘に入っているだろうか。成せそうなのはコマンデュールの一定数撃破ではなく、時間の経過にこちらは成りそうだ。陽動としては『最大』ではなかったものの、コマンデュールの一定数撃破を積極的に狙うとなれば被害は今の範囲に留まらなかっただろう。危険が付き纏うのだから。ともすれば全滅していたかもしれない。
 ただ、それでもなるべくならば『陽動』という効果を大きくする為に。
「もう一体程度は……行きたい所ですねッ」
 治癒魔術を放つアイリス。その視線の先には、インファンテリに守られたコマンデュールがいた。少しばかり距離がある。
「チッ。全く、面倒な距離だよなぁ」
 さればシルヴィアが。民家の中に見えたイルフォへと窓越しに銃弾を叩き込みながら。
「村は壊滅するわ。生存者は助けられねぇわ。ホント、アンタらはなぁ――」
 作戦上の余裕はなかった。生存者に対して出来る事と言えば銃弾を撃ち込んでこちらに気を逸らさせる程度。連れて行っては邪魔なだけだし、イルフォに群がれた場合はこっちで始末をつけねばならないかもしれないから。
 ああ、心のどこかで嫌悪を催す。小規模とはいえどういう再現なのだこれは。
 全くああ本当に。明日を見えぬ世界を作るような連中は。
「――アタシの一番嫌いなタイプなんだよ」
 引き金を絞り上げれば、コマンデュールの鼻先へ一直線。色彩の強い蝶もろとも撃ち抜いた。
 それでもイルフォの進撃は止まない。そう。そうだ。例えコマンデュールを倒し続けたとしても、元凶足り得る女王が残り続けている限り。彼らは永遠に動き続けるのだから。
「こりゃ難儀なこった。無事に終わったら酒の一杯でも奢ってほしいモンだぜ」
「でも、あともうちょっとだと思うよ! 皆、頑張ろ!」
 終わりがいつ来るのか。ルアナの激励が飛ぶも、まだ見えぬ未来に十夜は苦笑しながら吐息を一つ。
 余裕も苦も、水面の奥に。
 さぁあともうひと踏ん張り――往くとしようか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

タチカゼ(p3p004756) [重傷]
科戸の風

あとがき

これにて依頼は以上となります。ご参加ありがとうございました。

この事件の主体である女王がどうなったかはもう一つの依頼にて――

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