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シナリオ詳細

<TinkerBell>ホワイト・スターダスト

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「はぁぁぁぁぁっ!!」
 王子の握った剣が、闇を切り裂く。
 姫を拐った悪しき魔王は、王子と、その手に握られた光の剣、ミーティアの前に倒れた。
「おのれ……おのれ、アルタイル……その名を忘れはしない……」
 太陽の光を受け、消え去ってゆく魔王。
 こうして魔王を倒した王子様は、お姫様を国へと連れ帰りました。
 これから結婚式をあげるのです。
 めでたし、めでたし────。

 嗚呼、酷いじゃないか。
 僕は彼女との幸せな未来を夢見ていただけなのに。
 僕は彼女との新しい生活を夢見ていただけなのに。
 僕は、彼女と。
 唯、幸せになりたかっただけなのに──。

 空白の物語。
 描かれることのなかった結末(ハッピーエンド)の話をしよう。
 隣の国の王子様がお姫様を救いだしたその後のこと。
 お姫様を国へと連れ帰った王子様は、愕然とした。
 誰もいなくなっていたのだ。
「国王陛下……!? 何処にいらっしゃるのですか!!」
 町中を駆け回っても見つからない国王の姿。
 しかし。
 しかし、それだけではない。
「あ、アルタイル様……」
「どうなさいましたか、ベガ姫」
「先程森へ行って参りましたの……ですけれど、森には妖精も、動物たちも、何もいませんでしたの」
「!?? ど、どうなっているんだ……」
「私にもわかりませんわ!! そんな、どうして……」
「僕は確かに、魔王を倒した筈なのに」
 アルタイルが強く握った拳からは、血が滲んでいた。



 ポルックスは珍しくその表情を曇らせていた。
「……この物語は、破られてしまっていたの」
 抱えられていた本の名は『スターダスト・クロニクル』。
 一見普通の本に見えるが、ポルックスはその本の後ろの方を開いて、こちら側へと示した。
 今までの溢れる色彩と、文面からは考えられないほどの、白。
「ラストのシーンだけ、綺麗に破られていたの。なんとか紙は貼ってみたんだけれど……」
 なるほど、ポルックスの努力の跡が伝わる。
 丁寧に貼り直された空白のページには、水分が乾いたような痕跡が残っていた。
「この本が破られているのを見つけてくれた子と一緒に直したのだけれど。その子が泣いているのが忘れられなくて……」
 だから、とポルックスは切り出した。
 その表情はきりりとしたもので。
「お願いよ、イレギュラーズ。この物語の空白を、幸せなもので溢れさせて欲しいの」
 ぎゅっと拳を握ったポルックス。
 まるで先程綴られていた王子、アルタイルのようだった。
「この物語のラストシーン。二人の結婚式を、素敵なものにしてあげて!」
 そういうと、ポルックスはあなたの手にティンカーベルを託したのだった。

NMコメント

ご閲覧頂きありがとうございます。
王子様が勇者の役割を担う物語に目がない染です。
この物語の空白のページを、皆さんが綴ってください。
どうぞよろしくお願いします。

●依頼内容
 空白のページを幸せなもので溢れさせる。

 王子様とお姫様の結婚式に足りないものや人を、皆さんの手で増やしてください。
 盛大な結婚式にしましょう。

●TinkerBellについて
 黒筆墨汁GM様の『創成の物語』をご参照ください。
(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2275)
 修繕する世界は違いますが、イメージは掴みやすくなるかと思います。

●世界観
 魔王を倒した後、王子様とお姫様が帰ってきた国でのこと。
 ベースは次の通りです。

・ファンタジーな世界
・人が消えた
・結婚式の用意

 国王すらも消えさったファンタジー世界で結婚式をするにはどうすればよいでしょうか?
 人を創造して作り出すもよし、チャペルを創造するもよし。
 皆さんの想像力ですべてを創造し、物語をハッピーエンドへ導きましょう。

●王子様、お姫様について
・アルタイル王子
 隣の国の王子様。
 勇者よりも先に光の剣ミーティアを引っこ抜いてしまい、魔王を討伐してしまったすごい人。
 努力家で勉強熱心、それに加えてイケメン。

・ベガ姫
 この国のお姫様。
 魔王に連れ去られてしまっていたが、アルタイルの活躍により無事生還。
 心優しく、困った人を放っておけない。

 二人も声をかければ協力してくれたり、話を聞かせてくれるようです。
 また、イレギュラーズたちのことを魔法使いと勘違いしています。

●サンプルプレイング
 お、俺が魔法使いだって!?
 うーん、あんまり創造とかは得意じゃねーけど、やれるだけやってみるぜ!
 とりあえず、まずはヴァージンロードだろ!
 俺の世界では結婚式ではここを歩いていくんだぜ。
 他の皆に結婚式の式場とか、プランとかは任せて。あとは人を創造しねーとな!
 二人ぼっちの世界なんて、寂しすぎるだろ。

以上となります。
ご参加、お待ちしております。

  • <TinkerBell>ホワイト・スターダスト完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月24日 22時45分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
閠(p3p006838)
真白き咎鴉
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ラピス・ディアグレイス(p3p007373)
瑠璃の光

リプレイ


「あぁ、魔法使い様……! どうか、どうか。この国をしあわせなものに……」
「僕からもお願いします。この国がこんな風になるなんて、きっと……」
 破られた物語の続きを彩るために、魔法使い──否、イレギュラーズ達が集まった。
「物語はやっぱりハッピーエンドだな。祝福されるべき王子様とお姫様の為に、消えてしまった物語を綴るとするか」
 今日訪れた魔法使いのひとり、『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315) が綴るのは、この国を愛した人々の行方。
(まずはいなくなった人達を元に戻さなくちゃな。とはいえ、適当に新しく創るのもアレだな…。)
 そう考えた世界は、アルタイルとベガの元へこの国の住民のことを質問しにいった。
「すまん、ちょっといいか。君たちには、どんな親しい人がいた?」
「うーん……。私には、支えて下さる執事や、従者のみんながいましたわ」
「僕はよく村のほうを回っていたんだけど、パン屋の人達なんかは特にお世話になったね」
 快く世界の質問に答える2人は、よっぽどこの国のことが好きなのだろう。
 世界が質問を終えたあとも、2人でその話の続きをしていた。
「よし。それじゃあいっちょやりますか!」
 世界はイメージした。
 仲睦まじいパン屋の夫婦。
 少しお節介な執事のお爺さん。
 いつも元気な城近くに住まう一家。
 森に住まう妖精や動物たち。
 きらきら、きらきら。
 周囲を光の粒が漂う。
 世界のイメージは形を得た。
「……おぉ、こんな風になるんだな」
 世界が眼を開けば、そこには溢れる人々。
 先程まで静寂で充ちていた空間からは、賑やかな人々の声。
「とびきりうまくてでかいケーキを用意するよ、アンタ!」
「任せな! 腕が鳴るぜ!!」
「兄さん兄さん、お姫様のためにお花つみにいこう〜?」
「うん、わかった。じゃあついでに木の実も取りに行こっか」
「ちょっと!! 城の飾り付けの人員足りてないみたいよ、行くわよ!」
「い、いてててそんなに引っ張らなくても! あったりめーだろ、行くぜ!」
 世界はすぐ後ろに立つ『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062) に目配せして、入れ替わるようにその場を後にした。
(誰もかれもが、消えてしまった…それを、ただ「元通りにした」だけでは、偽物の世界になってしまったような気が、してしまいますの。ですので…わたしが作るのは、『皆が消えてしまい、元に戻せた理由』、ですの)
 ソリアは周りを行き交う、“幸せそうな人々”を前に、消えてしまった理由と元に戻せた理由を創造する。
「まずは…立て看板に、王様の触書きを、書きますの」
 ──隣国の王子たるアルタイル殿下は、今や勇者である。我が国の国民は、総出で勇者を歓迎するために以下のものを探し出すべし。
 王のように、自信に溢れた字で立て看板に綴るお触書き。
(つまり…他の皆様が、結婚式のためにご用意なさっているものたちのことなのですけれど、さらに、お役所の記録を調べたりすれば、こんな話も、見つかるようにしますの)
 と、考えたノリアの表情は得意げなもので。
 ノリアは更に創造する。
『陛下は、ベガ姫と勇者アルタイル王子の結婚式は、全て妖精の加護を得た品々で彩りたいと考え、自ら旧い書物を紐解き、加護の依頼のために妖精の隠れ里へと向かわれた』
(実は…その際に王様は、妖精たちに、「国の皆がそれを望んでいる」と、伝えてしまっていましたの)
 人間文化に疎い妖精たちはその願いを曲解して、国じゅうの全員を、動物たちも含めて、妖精の国に招待してしまったという。
 優しい妖精たちは、人々が自ら、丹精篭めて、妖精の国の加護を得た品々を作れるように、と!
 もちろん妖精も、一国の人間全てを呼んだのだ。人々や動物の世話をするために“姿を消していた”としても、不思議ではないだろう。
「ふふふ。これで…世界さんが創造した物語の、“理由が”できました」
 満足気に頷くと、ノリアは結婚式会場へと向かった。
(誰も居ない世界……なんて、どれだけ寂しい事だろう?僕なら彼女さえ居れば……いや、いいや。きっとそれじゃ駄目なんだね)
 『揺蕩う瑠璃』ラピス(p3p007373) もまた、2人の話を聞くために足を運んでいる。
「もしよろしければ、2人のお話を聞きたいんです。アルタイルさんには、冒険していた時のことを。ベガさんには……ふふ、そうですね。結婚への思いを」
「あぁ、勿論だ。僕はうっかりミーティアを引っこ抜いてしまって申し訳なかったんだけど、けれど、僕はベガ姫のことを慕っていたから、苦ではなかったかな」
「そ、それなら魔王城についたときにあんなに怪我をなさいませんわ!?」
「ごめんごめん。痛いのもあったけど、それも含めて、って感じかな」
「……次は私ですね。私は正直、アルタイル殿下のことを知りませんでしたわ。ですけれど、魔王を倒してくださった時、私の為にこんなにもボロボロになってくださる方は、もう現れないだろうな、と……。気がついたら、恋に」
「結婚式を挙げられるのは、勿論君や国王陛下の了承が得られたからだけど、国民の皆のお陰でもあるんだ」
「はい。だから、皆の為にも幸せになりたいですね、アルタイル様」
 頬を染めながら話すベガにつられるように、アルタイルもまた顔を赤くする。
そんな2人に礼を言って、ラピスはイメージを膨らませた。
 (そう。彼らとて欠けてはならない、大事な人達。でしょう?
二人だけの世界で幸せになれるような人達じゃない、って判るから)
 ラピスは城に近い草原に立つ。
 創造しろ。イメージしろ。その力は真となる。
(──形作るのは、ラピスラズリで彩られた荘厳なチャペル。幻想的な蒼と、金の煌めきに見守られる場所)
 彼の本質はラピスラズリ。其れは澄んだ夜の群青と、金に煌めく星々の光を示す宝石だ。
 だからだろうか。現れたチャペルは、ラピスラズリが美しい純白のチャペルだった。
 きらきら、きらきら。光が溢れる。それは、ラピスの手の中にも。
(消えた人々が探していた、あるもの。新郎新婦の為の結婚指輪。皆が、二人の幸せを願って求めたもののひとつ)
 自身の手の中で煌めく瑠璃は、彼らをきっと祝福してくれるに違いない。
 ラピスもまた、チャペルのなかへと歩みを進めた。
 そんな結婚式場の中では、刻一刻と迫る式の時間に間に合うように、『真白き咎鴉』閠(p3p006838) が2人を前に立つ。
「折角、勘違いしてくれているのですし、ひとつ、お伽話にはお決まりの、良い魔法使いなど、演ってみましょうか」
 閠は創造する。
 古き伝承にある、妖精の力を借りて作られる逸品。国民みんなの願いで染めた色とりどりの糸をより合わせ、白だけで織り上げた羽根より軽い布で、国中の仕立て屋が力を合わせて作ったドレスとタキシードを。
「ま、まぁ……!! こんな素敵なドレスを、良いのでしょうか」
「……っ、綺麗だ、ベガ……。」
 幸せそうに微笑む2人。しかし、閠からの祝福はまだ終わらない。
 次に、真白のドレスに花の刺繍を浮かばせてゆく。ひとつひとつの花言葉がふたりの愛を言祝ぐ。それはまるで空白の世界に色が芽吹いていくような鮮やかさだ。
「嗚呼……!! どうして、こんなにも、幸せになれるのでしょうか……」
 ベガはついに、泣き出してしまった。
 それは嬉し泣きだ。幸せの涙が、頬を伝った。
「妖精さん、妖精さん、もうひとつだけ、お願いします。隣国からのお客様を、運んでください。時間がありません、なるはやで」
 閠が妖精に頼むと、扉をあけたのは願った通りの隣国からの客だ。
「アルタイル。ベガ様を幸せにするのだぞ」
 タキシードを纏うアルタイルの後ろから、アルタイルの父が声をかける。
「……っ、はい!!!」
 アルタイルの青い瞳が、強く光を灯した。
「手助けを求めた妖精さんに、国中まとめて、ご招待されてしまった時は、どうなることかと、思いました、けれど、結果おーらい、ですね」
 閠もまた、チャペルの参列席に並びに向かった。
 

「誓いの言葉を。お2人は、この先も末永く愛を誓いますか?」
 指輪を手にラピスが問う。神父役を、と頼まれたラピスは、その身を白に包んで立っていた。
「誓おう。この国の民と、4人の魔法使い達よ。……ありがとう」
「誓います。皆さん、この日のことは忘れませんわ」
 空白の物語は生まれ変わる。
「瑠璃の宝石言葉をご存知ですか?幸運」「真実」……それから「愛と平和」なんていうのもあるみたいです。消えた真実。幸せを祈る皆の心。二人の、そしてこの世界の皆に、無限に広がる夜空の如く愛と平和が満ちますように」
 ラピスの言葉に続くように、世界とノリアと閠は最大級の祝福を祈る。
 世界からは、この世界を包む程のリング状の虹を。
 閠からは、晴空から降り注ぐ不思議な雨。遠くからハッピーエンドを願う娘の涙。
 ノリアからは、妖精たちと花弁を宙に散らせて。
「ほら。空の虹が、皆の──この世界の行く末を祝福してますよ」
「二人が仲睦まじく暮らす限り……きっとあの虹はこの世界に幸福を満たし、空を美しく彩り続けるだろう……なんてな」
「ふむふむ……この雨と虹は、妖精の国と繋がった影響、でしょう。とても優しい、天からの祝福のようです、ね」
「どうか、お幸せに、ですの!」
 4人の魔法使いは、この国に最高の祝福を齎したのだった。
「僕もいつか、こんな素敵な結婚式を挙げてみたいな」
 ふと、ラピスの口から零れたことば。
「あら、どなたか相手がいらっしゃるのですか?」
 ベガはふと、ラピスのほうへ向き直る。
「相手……本人にはまだ、面と向かって言えないですけどね。素敵な娘が、居るんです」
 柔らかく笑んだラピスに、ベガはそっとブーケを差し出す。
「ならば次はあなたの番ですわ……どうか、お幸せに」
 こうして、空白の物語は、幸せの物語へと生まれ変わったのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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