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シナリオ詳細

初陣~討伐するか捕縛するか~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 そこは幻想の広く豊かな領域の外れ。南に行けばやがて海に出る場所。
「ちきしょう……貴族様ってのはホント糞だなぁおい……」
 朽ち果てた酒場にて、一人の男がそうこぼす。
 筋骨隆々とした大柄の肉体には幾つもの傷跡が見え、大きめのサイズであろうジョッキが小さく見える。
「そうねぇ……けどだからこそ私達が生きているとも言えるわ」
 答えたのは男の肩を揉む二人の女の一人。両手でぐいぐいと男の右肩の筋肉を揉みながら、しっとりと濡れた声で答え、艶っぽい唇に巻き込んだ長い赤髪を払う。
「ええ、本当に。我々の盗賊稼業もあの方々のおかげでやっていけてるのですから」
 くすくすと笑いながら続くのは左肩を揉む赤毛の女だ。盗賊という言葉を口に出すにしては驚くほど穏やかで、優しげな風貌をしている。
「まっ、それもそうか! がははっ!」
「それで、次はどっちを狙うのあなた?」
 己の長い髪を一つまみして、女は男の太い腕をつっーっと這わせる。
「あぁ……そうだな……バルツァークの小童がいいかもなあやっぱり」
「そうですね、そうですね。それがいいかもしれません。あの爺は絞りすぎて美味しくもないですし」
 嬉しそうに、楽しそうに、優しげな風貌を崩して女が笑う。
「よっしゃ! じゃあそうすっか! もうじきあいつらの分の飯もなくなるしよ! 次はバルツァークの小僧の方だ!」
 ガンッと音を立てて男がジョッキを古ぼけたカウンターにたたきつける。バリっと音を立てて木製のカウンターが砕け、その穴にジョッキが落ちて消えた。

「っしゃあ!! てめえらぁ! 元気してるかぁおい!」
 翌日、朽ち果てた酒場の外で男は大声を張り上げていた。
 視界にいるのは十人弱。どれもこれも、権力闘争に敗れて落ちこぼれた貴族の末裔か、或いは貧困のあまりこちら側に来た民衆か。
「いいかぁ!! 次に狙うは腐れ小僧のバルツァークだ! 気合い入れてけぇ!!」
 男の声に突き動かされるように、部下から雄たけびと歓声が上がる。
「がはははっ! よしよし、じゃあどうすっかなぁ……今回は、まぁ、4人ぐらいでいいか……おい、お前と、お前と、それから――」
 男はその場で次々と指名していく。
 豪快な男に惹かれるように、立ち上がった者たちの目はやる気に満ちていた。


「こんにちは、ユリーカなのです! 皆さんにお願いがあるのです!」
 蒼い髪をした華奢な女性――ユリーカ・ユリカ(p3n00002)がいつも通りの活発さに驚きと少しのじれったさの様なものを混ぜた複雑な声でそう叫ぶ。
 ローレットにいた数人がそんな姿に注意を向けると、ユリーカは語り始めた。
 舞台は王都『メフ・メフィート』から遥か南部。山岳と森林部を超えたその先。
 『遊楽伯爵』と『黄金双竜』、二大勢力の勢力圏の狭間。小さな空白地帯に出来た誰もいない村落に盗賊団が住み着いている可能性がある。そんな情報が入ったというのだ。
「でも、まだどの村落跡なのかわからないのです! 皆さんにはバルツァーレク伯爵さんの領地に行って盗賊さんたちが来たら捕まえてほしいのです!」
「それはいいが、バルツァーレク伯を狙うとどうしてわかる?」
 イレギュラーズの一人が声を上げた。
「フィッツバルディ公爵さんはつい先月狙われたばかりで警戒を解いてない。さすがに来ないだろうってほかの人たちが言ってたのです!」
 レイガルテ・フォン・フィッツバルディ。国軍にも匹敵するというその軍事力を有する大公爵とその取り巻きがまだ警戒をしている中、もう一度狙うのは流石にないということだ。
 その状況下でもう一度フィッツバルディの勢力圏に盗みを働きに行くのは、余程の間抜けであり、そんな間抜けならローレットに話が回ってくるまでもなく、報復に潰しているだろう。
「皆さんにはこの盗賊の人たちを出来れば生け捕り。難しければ――」
 ユリーカの言葉の先は、言わずもがなであった。
「地図は用意しました。狙われるであろうバルツァーク伯爵さんの貴族さんも見当はついてるらしいのです! 皆さんならきっと大丈夫です! 頑張ってきてくださいですよ!」

GMコメント

初めまして。よろしくお願いします。
春野紅葉です。

初陣となるお仕事になるのか、第二陣なのかはよくわかりませんが、よろしくお願いします。
皆様の無辜なる混沌ライフの一助になれば。

●達成条件
皆さんには今回、盗賊団の働き手と戦っていただきます。
捕縛するもよし、討伐するもよし。ご自由にどうぞ。
仮に全員殺してしまっても報酬が減るとかは特にありませんのでご安心を。

●情報確度
 Aです。つまり想定外の事態(オープニングとこの補足情報に記されていない事)は絶対に起きません。

●盗賊
盗賊頭+その女2人+盗賊4人の計7人になります。

盗賊頭
武器:大剣
スキル:格闘、一刀両断

女1(黒髪)
武器:スペルブック
スキル:ライトヒール、瞑想

女2(赤毛)
武器:スタッフ
スキル:遠術、焔式

盗賊
槍:1
剣:2
斧:1

●逃亡可能性
なお、盗賊頭と女達は皆様の登場を知った段階で逃亡を図ります。
罠にはめるなり、退路を断つなりして阻止することをお勧めします。

●戦闘場所
北は鬱蒼とした森林部、南は海辺の隘路となります。
その隘路を抜ければ東西どちらともややひらけた場所になります。

  • 初陣~討伐するか捕縛するか~完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月28日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

猫崎・桜(p3p000109)
魅せたがり・蛸賊の天敵
リィズ(p3p000168)
忘却の少女
ロク(p3p000306)
モニカ(p3p001903)
吸血鬼の残り滓
ガンスキ・シット・ワン(p3p002307)
プランB
ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)
烈破の紫閃
レウルィア・メディクス(p3p002910)
ルゥネマリィ
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール

リプレイ



 鬱蒼とした森林部は、ちょうどその葉を一面の白に塗って穏やかにきらめいている。
 その森林部からさらに少しばかり南、偶然あった見晴らしのいい場所に5つの人影があった。その一つ、『吸血鬼の残り滓』モニカ(p3p001903)は初陣たる今回の戦いに対して準備せんと食事をとり続けていた。
 そんなモニカのところへ『忘却の少女』リィズ(p3p000168)がひょっこりと現れる。ほかのメンバーとあいさつを交わしおえ、最後の一人となったモニカに話しかけたのだ。
「それ美味しいの?」
 白い肌に真っ暗な髪と紅瞳、口から見え隠れする牙と、吸血鬼といわれる存在であるところのモニカではあるが、今食べているのは血液ではなく町中で買った携帯食だ。体質により、彼女はあまり多くの血液を吸うことができないが、血の代用を為す物は何でもよい。
「……ん、リィズさんも食べてみる?」
 棒状の携帯食を差し出され、リィズは素直に受け取って一口。金色の髪を揺らし、水色の目を開いて、リィズはその味をかみしめる。
「美味しいけどちょっと薄味かな?」
 言いようのない懐かしさの様なものを感じながらもリィズが笑みを浮かべた。
「アタシが盗賊の捕り物って不思議な気分ねぇ……」
 モニカとリィズが楽しそうに会話しながら食事に戻るのとは別に、そんなことをぽつり。
「ま、やるからには全力でやる……それはあの頃から変わってないわ」
 冷たい風に吹かれ靡く白銀の長髪をそのままに、色白の肌が雪に映える。
 堂々とした態度で敵が通るであろう方向を見る彼女の名は 『白銀の大狼』ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)といった。
 そんなルーミニス余裕ある台詞を横耳にいれて『ルゥネマリィ』レウルィア・メディクス(p3p002910)は犬か猫か、或いは狼か狐か、もふふわとした見るからに触り心地のよさそうなその耳をぴこぴこと揺らす。
 うまくやれるのかの少しの不安と、気を付けるべきことを再認識しながら、ぶるりと身震いする。ある程度の改善が起きていても、色素の薄い肌と赤の目に良くない天気であるのもたしかだった。

「にゃははは。本当にここ通るのかにゃ?」
 待機を始めてからさらに時間がたち、そんなことを口に出したのは少女というにふさわしいであろう猫耳と尻尾 といった出で立ちの『リグレットドール』シュリエ(p3p004298) だった。ゆらりゆらりと動く尾が、彼女の退屈さを明確に示している。
「もう少し……待ちましょう……です」
 レウルィアがそう諭す。とはいえ、彼女もそして他の3人もいつ来るか分からぬ敵を待ち伏せするのにそろそろ飽いていた。
 ――と、そこへざっ、ざっと雪を踏みしめ歩く一団が目に映った。
 明らかに堅気のそれではない一団は真っすぐに移動している。
「あれかにゃ。あの程度の盗賊に良いようにやられてるのかにゃ。……この国の貴族、大丈夫かにゃ」
 まぁ、仕事がくるから何でもいいと思いつつ、シュリエが、それに続くようにか、或いはほぼ同時にか他の4人も動いた。
「とまれ!」
 躍り出た4人に対して、頭と思しき大柄の男が吠え、それを聞いた前を歩いていた四人の盗賊が立ち止まり、頭を守るようにしてイレギュラーズとの間に展開する。
 あくまでも冷静な対応だった。
「女性が5人も集まって何か御用でしょうか?」
 穏やかに笑って、女が笑う。優しげな風貌でこちらにといかけつつも、女の手にはスタッフが握られていることにイレギュラーズ達は各々の武器を構えた。 
「用は言わなくてもわかってるにゃ? 全員で逃げ帰るかここで人生終わるか、どっちが良いかにゃー」
 杖を軽く構える少女の姿をしたシュリエとマテリアルを構えるリィズ、魔術書を開くモニカだけならともかく、大剣を携えるルーミニス、スピアを握るレウルィアがいれば、万が一にも彼女たちを商人だのと考える者はない。
「……あぁ、どう見ても商人じゃあねえし、俺らと同業でもなさそうだ。何人か小ぎれいすぎらぁ……とすると、てめえら、とっととにげっぞ!」
 対して、同業者であれば、もっと水ぼらしい。彼女たちの姿は冒険と雪でやや汚れることはあっても、確かな帰る場所と生活に困っていないからこその健全ささえある。
 頭は展開した4人を確かめてすぐにそう告げ、直ぐに走り出す。向かう先は当然、誰もいない方だ。
「承知!」
 槍を持った盗賊の一人が声を出す。それに続くように他の者も声を出して、そのまま街道沿い、誰もいない方向へと走り出した。
 明らかに隊列を崩しながらも、すたこらさっさと逃げる脚だけは素早い。境界線上であるからとはいえ、二大貴族派閥の勢力圏を相手に盗みを働き続けた手腕というものがあるのだろう。
「この先は隘路だ! そこさえぬけりゃあ俺らの価値も同然だ!! 急ぐぞ!」
 盗賊という名の鼠が、ネズミ捕りに引っかかった瞬間だった。
 しかし、侮らず、落ち着いて、イレギュラーズたちは走り出す。この者達を捕えきるために。


 ロク(p3p000306)は顔をあげた。超感覚の捉えたのは、確かな足音。7つの足音にそれを追う5つの足音。
 ロクは他の二人に目配りしながらグッと確かめる。魔法も県も使わない、けれど確かにある己の武器を。人間が――いや、霊長類がその祖より用いたであろう拳という名の武器だ。
「そろそろ来るようだ」
「了解。味方の到着まで敵を足止めするのが重要なンですが、なァに。俺達だけでぶった斬っちまっても別に……」
 そこまで言いかけて、嫌な予感がして『プランB』ガンスキ・シット・ワン(p3p002307)は口を閉ざして代わりに一息つく。
 ひょうひょうとしているように見えて、機械化した左腕と両脚がかれのこれまでを物語っている。
「初めてのお仕事、緊張するけど頑張らないとだねっ」
 そんなことを言って気合を入れるのはロク、ガンスキと共に待ち伏せしている『特異運命座標』猫崎・桜(p3p000109) だ。銀狐の耳はそのやる気に同期して動き、尻尾もやる気満々にふりふり動く。
 やがて、超感覚を持つロクと桜だけでなく、ガンスキもこちらに向けて遮二無二走ってくる一団を捕捉し――彼らにとって恐らく一番いやなタイミングで躍り出た。
「おっと、こっちは通行止めなんだよ! ここから先へは行かせないよ!」
 躍り出てきた桜を一瞥し、先頭を走ってきていた頭が大剣を構えた。
「……ちっ、嵌められたか。道理でおかしいと思ったぜ」
「というか、頭が一番に逃げ出すなんていけないねー?」
「何言ってんだ。大将ってのは一番生き残らなきゃいけねえもんだ。少なくとも部下の魂の数が残ってる限りな」
「悪く思うなよ、頭のおっさン。そう言うシノギをしてりゃ、こンな日が来る事も承知だろ?」
 ゆるゆると大剣を構えたガンスキへ、頭がニヤリと笑う。それは、どこまでも悪人面した笑みだった。
「あんたからは傭兵の香りがぷんぷんするな。まぁ、どうでもいいが……どうせ討伐にでも来たんだろ? さぁ、殺ろうぜ」
 剣を構えた頭の声に対して、反応したのはガンスキではない。
「いや、アンタの相手は俺だ」
 割り込むようにして現れたロクはそういうや、頭へと拳を撃つ。しかし剣を盾のようにした頭が防ぐ。
「ちっ――重い攻撃撃つじゃねえか」
 ガンスキはそれを見ながら、走り出す。狙いは女、スペルブックを片手に頭の後ろに構え、いつでも回復呪文がかけれるように準備している。
 女の方もそれに気づいたのか、逃れようとするが、その退路へと砲弾が打ち付けられ怯んでしまう。
 そこへ間合いを詰めたガンスキの剣がひらめいた。
「きゃあああ!?」
 すぱりと斬り伏せられ、女が悲鳴を上げる。しかし、それはまた、大きな隙となった。
「撃ちますわよ!! 撃ちますわよ!!」
 そんな歓喜の声のした直後、ガンスキはもう一人の女によって放たれた焔式が剣を振り下ろしたばかりのガンスキに襲い掛かったのだ。
「うお!?」
 さすがにかわすこともできず、ガンスキはその火力に身をわずかに焼いた。


 それからしばらく、追いついてきた盗賊達4人が加わり、流石に3人ではやや不利の状況になりつつあった。
 それでもロクと桜がそれぞれ頭と杖を持った女を抑え込み、ガンスキが強かに回復手でもある魔術所を持つ女を斬りつけていく。
 けれど、そんな盗賊達の優勢など、ほんのひと時だ。
 盗賊達が追い付いてきたということは、元々森林部にいた面々も追いついてきたということにほかならないのだから。
 剣が、槍が、そして魔法が飛び、たった一人の女へとその攻撃を集中させていく。
 やがて、その女は意識を失って倒れ伏し、桜はそろそろと動いてその女を縛り上げた。

「にゃっはー!わらわの杖捌きを見ると良いにゃ!」
 そういいながら、さも心の底から嬉しそうにシュリエはもう一人の女へと杖で殴り込んでいく。

「大丈夫? いま治療します!」
 リィズは一旦下がってきたガンスキに対してライトオールを流していた。
 回復役が倒れるのが嫌なのか、あるいは別の理由でか、回復役だった女へ攻撃していたガンスキは、それだけ多くの傷を負っていた。
「リィズさんみたいな可愛い人に手当てしてもらえるってェならこれぐらい、どうってことねェんですけどね」
 からりと笑いながら軽口を叩いて見せる。
「それならいいけど、本当に痛かったらちゃんと言ってよね?」
 戦いは、もう少し続きそうだった。

「あなた達のお仕事はこれまで。ゆっくり休むといいよ」
 モニカはそう呟く。ギリギリまで食事をしていた分、気力は十分である。
 今にも術式を放ちそうな女に向けて、ぎゅんと弓を絞る。何もない弓に、やがて、どこからか彼女に纏われるようにして現れた怨念が這うように動き、一本の矢を形成する。
 そして――一条の怨嗟の矢が真っすぐに女へ向けて撃ち出された。
「うぁぁああああ!!!!」
 着弾した弾丸は、やがて女の身を食らう呪詛となっていくのだ。
 モニカの初仕事はまだ始まったばかり。なにせ、敵はまだ多い。

 レウルィアは槍を女へと打ち込んだ。敢えて死ぬ自己とのないであろう位置。
 できる限りの捕獲。そのために彼女は細心の注意を払っていた。
「ああ…………」
 ふらりと、女が杖を落とし、大地へと倒れた。レウルィアとシュリエは女を縛り上げると、振り返り周囲を見る。
 残りの敵は5人。大したことのない族4人と、大将首だけだ。面倒な後衛と、回復役。それを倒したら次は――弱っているものから。事前の打ち合わせ通り、そのために動き出す。

桜、モニカによるロングレンジからの攻撃に対し、盗賊達は哀れなほど対処することもできず、ぞくぞくと倒れていく。
 それが終わり、彼らがついにほっとしたのもつかの間、レウルィアとシュリエがそれぞれ一人ずつ、大地へと叩き伏せた。

 一方、ルーミニスは盗賊達ではなくロクと頭の戦いに入り込んでいた。
 ロクも頭も、ほぼほぼ互角、あるいはロクの方がやや上だろうか。どちらにせよ、まだ接戦と呼ぶべき類である。
 二人の戦いの激しさは、踏みしめられた草原の草木が土を丸出しにして抉とられ、土だらけになっていることからもよくわかる。
「ついに……二対一か……」
「逃げたいのかしら? どこに尻尾を巻いて逃げたって白銀の大狼が追い付いて食らってやるわ…諦めてかかってきなさい、子犬(パピー)ちゃん!」
「はっ。笑わせてくれる、逃げる道なんてねえじゃねえか……」
 頭は、ゆっくりと大剣を持ち上げる。ゆっくりとした動作なのは、余裕からではない。その逆、明らかな体力不足で力が入ってないのだ。
「悪党相手は気楽で良いにゃ。騙しても良心が痛まないからにゃー」
 最後の盗賊を縛り終えたシュリエとレウルィア、それに後方に徹していたモニカと桜、回復を終えたガンスキ、リィズが集結する。
「はっ、わざわざ弱いもんから狙ったやつに悪党云々ほざかれてもいたかねえや」
「降伏する気はねェンですかい?」
「最初にアンタも言ったじゃねえか……シノギならってよ。ああ、全く。てめえの嫁を他人に組み敷かれたりだの、なぶられたりだの――来いよ、ぶっ倒れるまで相手してやる」
 はっきりとした闘志とぎらつく瞳に宿るは明確な怒り。何も間違ってないし、誰も死んでいない。
 けれど――そう。けれど、譲れないものぐらい誰にだってあるはず。つまりはこの男にとってはそれが自分の妻に手を出されることだったというだけだろう。

 レウルィアにとってそれは、ほぼ勘だった。男が一気に踏み込み、刃をひらめかせた相手は、先程まで言葉を交わしていたガンスキだった。レウルィアは防御態勢を整えた状態でガンスキと男の間に割り込んだ。
 ガンッーーーー!!!!
「うっ……」
打ち下ろされたのは人を一刀両断するための一撃。レウルィアはそれからガンスキをかばうと、真っすぐに視線を頭と交えた。
「お嬢ちゃん、ああ、お嬢ちゃんも、あいつを嬲ってくれたなぁ!!」
 ぎろりと、見降ろされる。しかし、直ぐに推し戻し、頭は下がっていく。
「私ともやりましょう!!」
 次に頭へと打ち込んだのはルーミニスだった。銀の風のように走り、捨て身ともいえる剣劇を見舞う。
「ぐぅがぁっ!!」
 その筋肉質な肉体からいくつもの傷と鮮血を流しながら、けれど、男はまだ立ち上がっている。
「元気がいいにゃ!」
 それに続くように、打ち込まれたシュリエの一撃と、後衛から飛来した幾つもの攻撃が、ついに頭の意識を刈り取った。

「ねえちょっと! この縛り方はなに!?」
 捕えた盗賊のうち、回復役だった女が声を上げる。それもそのはず、彼女の今の縛られ方は少々人によっては扇情的であった。
「え? 縛り方ってこれが普通じゃないのかな? そう教えて貰ったんだけど……??」
 縛り上げた当の本人が全くの悪意もなくそういうと、周囲も少し驚いた様子を見せる。
「そんなはずないわよね!? さすがに!!」
 その後、女は桜に対して詰問を開始した。
 イレギュラーズは盗賊の討伐後、彼らの意見を聞くつもりだった。

 頭は一度意識を失った後、縛り上げられた後でリィズの手によって回復が施されていた。
「さてさて、アジトの場所を吐くにゃ ?じゃないと部下の指が一本ずつ……にゃはは」
 笑ってシュリエがいう。しかし、頭は今度はまっすぐにその瞳と視線を合わせて冷たく目を細めた。
「誰が言うか」
「そうだよ、シュリエさん。そんな言い方じゃあ教えてくれるものも教えてくれないんじゃないかな」
 リィズはそういうと、そっと頭と視線を合わせる。
「なんだ? 嬢ちゃんもかい?」
「ううん? アジトとまではいかないけど、色々教えてほしいなって思うんだ」
「あん?」
 これから先、きっと、こういう手合いとの仕事も増えてくる。そんな気がして、リィズは話を聞かずにはいられなかった。

 別段と聞きたいことのなかったレウルィアは先頭終了後に疲れて倒れこみそうになったモニカの看病をしていた。各々が各々の終わりを見据えながら、彼らは盗賊達を譲り渡すべくやがて行動を始めた。


「皆様お疲れ様なのです!」
 ユリーカはぱたぱたと飛んで現れると、イレギュラーズ達へとそう告げる。
「依頼主の方も喜んでいたのです!」
「そういえば、盗賊の所持品はどのような扱いになるのだろうか」
 ロクがふと気になったことを問う。
 まがいなりにも貴族を襲っていた盗賊だ。装備がノービス以下ということはないはずで、もし貰えるのであれば貰いたい。そう考えていたのだ。
「それも一緒に依頼主さんが持って行っちゃったのです! ごめんなさいなのです!」
 しょんぼりとした様子であたふたと答えたユリーカに、ロクはうなずいた。
「やれやれ、ひとつ皆さンでパーッと行きましょうかい!」
 ガンスキがそういうと、他のイレギュラーズ達もそれに同意してどこかへと移動していく。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。

初依頼から二日も遅刻をしてしまい
大変申し訳ございませんでした。

今後はこのようなことがないよう、気を付けていきます。

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