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シナリオ詳細

眠れぬ死霊のいと勇ましき騒宴譚

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●死霊の宴
 昏迷渦巻く貧困の国、魔法と剣の世界の夜闇の中、木々が葉を枯らし落とした寂しげな森に墓地があった。
 かさ、かさと凍風に葉が揺れる中を眠れぬ死霊達が騒いでいる。

 曰く。
 盗賊団が近くの村を襲おうと接近している。森を通過して村へ行くつもりだ。
 曰く。
 村には彼らの子孫たち、細々と手を合わせ墓の手入れをしてくれる者たちがいる。
 曰く。
 夜の森は我らが領域、我らが領土。我ら死霊の力で盗賊団を撃退しようではないか。

 ちんまりとした墓に備えられた飯は可愛い曾孫が冬を前に心もとない食糧をそれでもそれでもとせっせと用意してくれたもの。ちょこんと置かれた水筒は愛しい嫁が早逝の夫にと涙を拭い寒空の川から汲み運んだもの。
 見よこの襤褸頭巾被った木彫りの人形はちいさな童が「寂しくないように」と置いてくれた宝なのだ。

「立てよ立てよ、同胞死霊たちよ」
 墓からのそりうぞりと影蠢く。ある者は肉付きの屍人、ある者は透き通る霊体、ある者は真っ黒な影人――、想いは等しく、彼らの村を守り、無法者を祟るという。

 びゅう、ひゅう、ひゅるり。
 風が魔笛のように啼いている。凍える夜は秋の色。これからこれから、もっと寒くなる。
 彼らのいとしき村人があたたかに安心して冬を迎えられるよう、今宵は我らが宴をひらこうぞ――、森を侵す賊、家族を脅かす敵よ、恐怖に慄き逃げ惑い後悔のうちに絶えるがよい。木々の枯葉天蓋の隙間から好奇心旺盛な夜廻りのお月さまが覗いている。

 ――見よ見よ、死の饗宴はここに始まれり!


●騒宴
「と、いうわけで、死霊たちと一緒に村を守ってほしいの」
 ポルックス・ジェミニが優しくその一冊を撫でながらお願いをした。
 穏やかな夕暮れ時、静かな紙の音とあたたかな温度に包まれた境界図書館。互いの立てる些細な音が心地よく響き、瞳合わせればポルックスは信頼に満ちた眼差しを魅せてくれるのだ。
「盗賊団は、剣を主に使うみたい。たくさんいるけれど、そんなに強くないからあなたなら大丈夫! ばったばったと倒せるわ。だから、戦いのほうは安心なんだけど……、死霊さんたちは「死霊の宴だー死霊ぱわー見せてやるー」って張り切っているみたいなんだよね」
 ポルックスは首をこてんと傾げて、少し考えてから「そうだ! ……おばけだよー」と言って手をばんざーいとあげてみた。
「あなたたちも「死霊のふり」をして戦うっていうのはどうかな? 「コスプレ」とか「仮装」っていうやつね。死霊仲間だよーって言って、仲良く協力して宴を盛り上げて(?)戦ってくれると嬉しいな」
 舞台は、剣と魔法の世界。けれど盗賊たちの中には魔法の使い手はいないみたい。ポルックスはそう言って頭を下げた。ぺこりっ。
「それじゃあ『死霊の勇者さんたち』、よろしくね!」

NMコメント

 おはようございます。remoです。
 初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。

 今回は剣と魔法のファンタジー世界で死霊の宴に参加して頂くライブノベルです。

 ●遊び方
 かる~いノリで大丈夫です。死霊っぽく仮装してください。そして、盗賊たちと戦ってください。盗賊たちは弱いので、もりもり無双できます。

●サンプルプレイング
「仮装:吸血鬼の格好、詳細お任せ
 心情:この死霊たちって成仏とかはしないのかな? 眠りたい死霊がいたら浄化してあげようか
 戦闘:「この村が我輩の守護する村だと知らなかったのか」とか「祟ってやるぞ」みたいに吸血鬼らしさを意識してスモーク焚いたり牙で噛みついたりしながら以下略」

 キャラクター様の個性やプレイヤー様の自由な発想を発揮する機会になれば、幸いでございます。

  • 眠れぬ死霊のいと勇ましき騒宴譚完了
  • NM名remo
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月22日 22時30分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
ニーナ・ヘルヘイム(p3p006782)
Spica's Satellite
ポムグラニット(p3p007218)
慈愛のアティック・ローズ
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人

リプレイ

 ――おやすみ。
 最後にそう挨拶したのはいつだっただろう。
 死んだ時期は皆ばらばらだったけれど、彼らはずっと『起きていた』。

 さわ、さわ、さわり。

●夜に冷えた森
 葉擦れ音が嗤うよう、冷たき夜は密やかに。
 死霊の森は眠らず震える。
 ああ、永い夜。

 現れた影は死霊の群れにすんなり溶け込み、盗賊達を迎え撃つ。

 木々に挨拶するよう木肌をひと撫で、青年の声は長閑に空気を震わせる。
「静寂が夜の森にゃ必要だヨ。それを乱すなら、自然と怪奇で追っ払っちまおうネ」
 全身黒ずくめのジュルナット・ウィウスト(p3p007518)がのっぺらぼうの仮面の下で緑の目を瞬かせた。くい、と長い黒マントを引く子供の死霊に気が付いたから。
「おじいちゃん」
「ン?」
 頭を隠す巻き布が揺れる。ちらりと覗く長い耳は確かに子供の声を拾っていた。
「おじいちゃん」
 子供の死霊はジュルナットを祖父と間違えているようだった。『青年』はすらりとした痩身で初見にも年配者には見えないはずだが。優しい笑みが口元を彩る。
「森は何処でもおじいちゃんの故郷だヨ。任せておくレ!」
 そっと頭を撫でる手は優しく。

「まご?」
 ゆるふわ花精霊さんのポムグラニット(p3p007218)は苺めいた眼をぱっちりとさせて大きな白いシーツをすっぽり被った。
「まえ どっちだ」
 ごそごそ。ごそごそ。
「真っ白お化けさんにみえるのですよー。前と後ろに違いがありますの?」
 仲間の声にポムグラニットがシーツにくるまり頷いた。
「あ、おめめとお口」
 ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)がシーツに書かれた顔を見付けてぐいぐいと位置を調整してくれる。
「おばけ だぞー」
 真っ白おばけのポムグラニットがゆらゆらシーツを揺らせば死霊も大喜びで「死霊仲間が援軍にきてくれた!」と燥いでいる。

 ぱら、ぱら。雹が降り注ぐ。
 茂みから姿を見せた盗賊達をニーナ・ヘルヘイム(p3p006782)が牽制しながら死霊の様子に無表情な目元を幽かに和らげた。
「ん……今回の死者の魂達はいい子。生者達への感謝を忘れずに彼らの為に尽くし守ろうとしている」
 フードから覗く美しくも凍るように感情の薄い顔。手に三日月めいた鎌を携えてニーナの透徹な声が夜風にふわり。
「……ただ、このまま戦わせたら何人か悪霊と化してしまうものも居るかもしれない。守る為とはいえ生者を襲うのだ……それが彼らの精神に悪影響を及ぼすかもしれない」
 瞳に優しき色が揺れる様子にジュルナットが「ソリャ防ぎたいネェ」と言葉を添えた。
「そんなことが?」
 ココロも眼を瞬かせ心配そうな顔をする。ポムグラニットはふわりと首をかしげて。
 あくりょう、と呟いた。
 死霊と悪霊の違いがよくわからなくて、けれどきっとそんなに変わらない。ポムグラニットは透け透け死霊とゆらゆらダンスを踊り、微笑んだ。

●森の宴
 仲間の会話は続いている。
「そうならない為にも私もこの戦いの宴に参加しよう」
 森の中に三日月が降臨したように冷たい刃が煌めいて。
「我は「死」と「月」、「氷結」を司る女神、「ヘルヘイム」なり」
 フードから溢れる髪は薄い月明かりに照らし出されて穢れなき白を魅せ。
「愚かな人の子よ。この森を荒らすなら我が「死」の権能の餌食となるがよい。我は「ヘルヘイム」。汝等に死を齎す死神なり」
「この森はどうなってやがる!」
 盗賊達が悲鳴をあげる。
「化け物だ! 化け物の巣だ!」
 死神を名乗るニーナが只人ならざる事は本能に粟立つ肌が教えてくれた。視界に犇めく妖しい気配、悍ましい存在がなんなのか彼らは理解し、武器を取る。
「化け物め! やっちまえ!」

(楽しく、軽やかに。宴の時間ですよ!)
 ココロはバンシーになりきって泣き声をあげた。
「祟りだたたりだ! 祭りだ祀りだ!」
「おっ」
 黒薔薇の蕾が花開くようにしっとり大胆に開いた胸元のドレス姿に盗賊が好色な目を剥いた。可愛らしさが恐怖に先立ち、お化けより可愛い女の子として認識されたようである。初々しく清純な谷間(?)で賊を魅了した黒ドレスのココロは愛らしく……泣き叫ぶ!
「えーんえーん、悪い子どこかな?」
 バンシーらしく泣いてみたココロ! しかしちょっぴりナマハゲが混ざっているぞ!
「♪これが新種のナマバンシー、えーん」
「ぎゃあああっ!?」
 悲しげな感情が痛いほど伝わる美少女の歌唱力(でも歌詞は変)に賊達が吹っ飛んでいく。
「えっ、なんだ? なんで吹っ飛ぶんだ!?」
「ひ、ひぃっ、やっぱ化け物だ!」
「我が「死」と「氷結」の権能を味わえ」
 ニーナが迦陵頻伽の歌声を添え、空気が冷えていく。

 歌声が響く中、小さな死霊を後ろに庇いジュルナットは長弓に枝を番えた。
「静寂が夜の森にゃ必要だヨ。それを乱すなら、自然と怪奇で追っ払っちまおうネ」
「うん」
「そ、そんな枝!」
 まともに飛ぶまいと賊が油断する中、しゅるりと楽し気な風が枝を導き弾丸めいて鋭く飛んだ枝は驚異的な精度で次々と命中し。
「おじいちゃん、すごい!」
「バカな! 枝の飛び方じゃないっ」
 子供と賊の対照的な声を背景に枝がひゅんひゅんと飛んでいく。
(殺生は良くないネ、追っ払うにしとこうネ)
 枝ならば当たっても死ぬことはあるまい、ジュルナットはそう踏んで枝を選んだのだ。
「えーい」
 子供死霊が枝を集めて山にして、一緒になって枝を投げている。
「元気があっていいネ。オジイチャンにも枝分けておくレ?」
「うん!」
 温かくなることのない小さな手が嬉しそうに枝を差しだした。

 ――♪

 歌が響いている。
「うわあああっ」
 悲鳴が続いている。

 くるり、ふわり、歌に合わせて白いお化けがステップ踏んで(足がある!)。
「うたげだー おまつりだー」
 ポムグラニットが無垢な笑い声をたてている。
「おめでとう おいわいだ」
 宴は、何のためだろう。ポムグラニットはそれを知らない。
「とまれ とまれー とまらないと とってくうぞー」
 ああ、死霊が騒いでいる。けらけら、けたけた。
「がおー えーん」
「あっ、バンシー仲間です」
 ポムグラニットにココロが泣き顔で手を伸ばし、シーツに隠れた手がそれを握る。ゆら、ゆら、ゆーらゆら。一緒に腕をふりあげよう。
「おばけだー」
「えーん」
 布の隙間から覗いて目と目が合えば、仲間の温度がそこにある。
「歌います?」
 誘いにふわりと頷いて。
「「えーん♪」」
 けたけた、けらけら。死霊が愉し気に歌合わせ不思議な歌と賊の悲鳴が木霊する――、

 ポムグラニットは思う。
 ――たのしい、宴。

(あゝ、いい事思いついたヨ)
 ジュルナットが可憐な仲間達を見て思いつき、我が家の庭を進むが如く親しき森の闇を進む。

●宴の終わり
「さあ、今宵は我等の宴ぞ! 汝等の愛しき者達を守る為にその力を存分に揮え!」
 美しき死神ニーナが言い放てば悍ましき死霊の群れが歓声あげて雪崩を打って魔手伸ばす。
「守るため! 守るため!」
「我らは孤独ではないのだ。死霊になった時は途方に暮れたが、子孫にも天からも見放されてはいない……我らが眠れず永らえていたのは今日この時のためだったのだ」

 形勢はもはや覆らぬ。
 皆目に明白だった。

「くっ!? せめて最後に」
 賊は真っ白お化けに一直線!
「あれは絶対シーツだ。俺の目は騙されないぞ!」
 いけないっ! 賊はポムグラニットの仮装を暴こうとしている!
「だめー!」
「あぎゃー!」
 伸ばされた手に悲鳴ひとつ。ココロの衝撃波が賊を弾き飛ばして。
「ありがとう こころちゃん」
「ぐふぁっ」
 ポムグラニットの魔力が同時に放たれ、横合いから隙を伺っていた別の賊を吹き飛ばした。
「ふっふっふ これが しりょうぱわーだ」
「種も仕掛けもないのですよ!」
 我らの姫君達に無礼な振舞いは許さんぞ! と死霊が二人を守るよう集まり、賊に憤怒の感情波を向ければ「今だ」とジュルナットが陰から進み出て声放つ。

「静寂乱んはぁ、おどれらか?」
「「!!」」
 のっぺらぼうの仮面が夜闇に浮き上がるよう。
 闇の中から現れたジュルナットは大取りのように堂々と長身聳えかし弓向ける。吾こそ首魁ぞと主張するような声は悠々として格の違いを物語る。
「ココは自然の眠り場よぉ、出てけぇへんなら……」
 ぬるーり、のっぺらぼうが迫りくる。
「ケジメやけんな、その脳漿ぶち撒けてこの世から失せてもらおか!」
「ひ、あ、うわああああああっ」
 盗賊達が一目散に逃げていく。

「逃げてった!」
「追い払ったぞー!」
 死霊が勝利に湧いている。

「おお恐ろし、自分でもおっかないって思っちゃうネ!」
 お茶目に肩を竦める隣人の傍で風がくるくうと葉を揺らして笑っている。
「うむ、何とか追い払えたようで何より」
 ニーナは死霊に冷静な視線を巡らせた。
「さて……ここに集いし死霊の者達よ。此度の宴、真に良き働きをしてくれた」
「神様」
 誰かが呟いたのを契機に死霊が尊崇の波寄せて平伏する。
「神様、我らの神様」
 救いなき世に命を枯らした絶望の死霊が滂沱と涙を流して。

 ……応える力を彼女は有している。

●救済の夜
「生者の為に事を為した君達の為に鎮魂歌を捧げよう」
 月を背負い清らかに彼らの女神が救いの手を差し伸べる。

「もし今回の件で未練を失くした者が居ればこの鎮魂歌にて輪廻の輪に戻れる……成仏する事が出来るだろう」
 無数の啜り泣きを供に歌が始まる。

「今宵の「月」は美しい……我が権能もいっそう効果を増すだろう」
 夜の木々に染み込むような哀しくも優しい歌声を耳に導かれるように死霊が鎮められていく。
「オジイチャンはまだ起きてるからネ、良い子は先にオヤスミ」
 やんわりと背を押された子が救いに目を向け、輪郭を薄く儚く変じていく。
 子供の死霊は眠る間際にふと微睡む瞳をジュルナットに向けて。

 ――おやすみ、おじいちゃん。

 そう、ニッコリと笑って夜に溶けたのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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