PandoraPartyProject

シナリオ詳細

塔の上の眠らず姫

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●紙束に願いを
 むかしむかし、あるところに。大きな、とてもとても長い塔がありました。
 昔の王様が建てた、というその建物には沢山の財宝が秘められている、とも言いますが、あまりにも塔が高く、おまけに残された罠があったりなんかして、誰もそれを登ろうという人はいません。
 ただ、塔のてっぺんには、閉じ込められて、眠りの魔法をかけられたお姫様が住んでいて、王子様を待っていると言います。いつまでも、いつまで、彼女は綺麗なまま眠っていて、夢を見ているのだと。いつか勇敢な王子様が、自分を連れ出してくれる日まで。

 そんなお伽噺が有名な、何の変哲もない物語。
 ただ、絵空事ではきっとなくて、でも全てが正しい、というわけでもないのでした。

 其処は空と宙の間にある部屋。大きな窓の外できらめく星々は美しく、そしてとても鬱陶しいものでした。
 小さな木のベッドに座りながら、ぼんやりと星空を見上げて、そしてため息をつく少女がおりました。

「……嗚呼、まいにち、まいにち、まいにち! 変わらない風景、変わらない一日。もううんざりしてしまうわ」

 ため息交じりに、夜空のように黒い御髪を持ち、青空のように美しいスカイブルーの瞳を持つお姫様は嘆きます。
 いつまで経っても王子様はやって来ないので、ついには魔法が解けて目が覚めてしまったのです。
 起きたのならばお腹はすきますし、姫様は思ったよりもお転婆でしたので、退屈さに身悶えさせます。
 食料はある程度はあるものの、いずれはなくなってしまうでしょう。このまま餓死? 冗談じゃない!

 しかし地上へ声が届くわけでもなく、外側からされた扉の鍵は壊せそうにありません。いっそ飛び降りてやろうか、なんて窓を開け放つお姫様でしたが、そこで妙案を思いつきます。
 それから一昼夜、紙にペンで文字を書き綴っていました。出来上がったのは大量の手紙。紙束を抱えて、窓の外から一斉に放ちます。
 書き記したのは救難信号でした。たった一つでも地上に降りて、どうか、私を――。



 それはイレギュラーズの知る、無垢なる混沌の田舎町に近い世界。
 人々は平和を謳歌し、少し古臭いながらも和やかに営みを行う。
 他の物語と比べれば取るに足らず、大した問題もない場所だ。

「でもね、わたしは見てしまったわ。これは本の危機ではなくても、一人の女の子の、大事な大事な問題!」

 そう興奮したように告げながらポルックス・ジェミニはイレギュラーズの前で手紙を広げてみせる。
 其処に記されたのは、「助けてください」と一言。

「大量にばらまかれていたけれど、皆は不思議に思うだけで放置されているみたい。実は、これは塔の上の助けられるはずだったお姫様からの手紙なの。あまりにも平和になってしまったせいか、王子様役が現れなかったのね」

 勿論、はずだった、というのは本当の展開としての話だ。彼女には彼女の王子がいるはずで、幸せな終わり方。めでたしめでたしを迎えるはずであったのだ。

「でも、此処には貴方達が居るでしょう? ね、勇者様達?」

 つまりは、君たちが代わりに塔を登り、眠らずの姫を救出してこいと、そういう話である。
 通行路の罠は比較的安全なものが多く、経年劣化によって既にほぼ停止しているため、あとはただただ階段を登っていくだけだという。
 飛行が可能であるならば、空から攻めてみるのも悪くないかもしれない。物語の中なら、宇宙の間まで飛んでいくのにも心配がない。

「せっかくだもの、物語はハッピーエンドがいいわ。どうかお願いね、皆さん」

NMコメント

 金華鉄仙と申します。
 今回が初めてのライブノベルになります、精一杯がんばりますのでどうか名前だけでも覚えていってください。

●世界観
 基本的によくあるファンタジーの世界にある、村の一つ。魔法などは夢物語として扱われ、人々は平穏に暮らしています。
 村の中央に天まで届くほどの大きな塔があり、財宝伝説や囚われの姫など、様々な話がありますが実際に踏み込んだ人は生存している人の中ではいません。
この世界の中では、イレギュラーズは主人公として扱われ、能力は誰でも非常に高いものになり、ある程度スキルを取得していなくても遜色なく魔法や剣術が使えるようになります。

●目的
 塔を踏破していただき、<眠らず姫>を連れて地上へ帰還することです。
 塔は駆け抜けるだけならば一本道で、必要なのは階段を登り続ける体力ぐらいですが、なくてもなんやかやで頂上にはちゃんと到達します。罠につきましてはもしかしたら落とし穴ぐらいは残っているかもしれませんが、特記されない限りは解除した、もしくはもともとなかったものと扱います。
 障害は扉にされた錠だけですが、魔法や物理で吹き飛ばすなり、鍵開けをするなりですんなり開きます。
 姫君は扉を開けたものこそが王子様、もしくは勇者様だと確信するので説得は不要……ですがかっこよく手を差し伸べるのも良いかと……!!!
 また、最上階は丁度青い空と、宇宙の黒が交わる絶景になっています。見たことのない光景に思いを馳せることも出来るでしょう。
 そのあと<眠らず姫>と交流する余裕が皆さんが望むだけあって、また地上へ歩いて戻るなり、別路を使用するなりして帰還になります。

●サンプルプレイング
 きっと塔の上で何年もいて寂しかっただろうね……。僕たちで助けてあげないと。
 僕は箒で飛行する魔術が使えるからまっすぐ、塔の外を飛んでいこう。走っていくなんて馬鹿らしい、お姫様に息切れした姿なんて見せられないからね。
 でも、窓から人が現れたら、さぞびっくりするだろう。
 「もう大丈夫だよ」と声をかけて落ち着かせてあげたいな。
 そうしたら、お姫様を連れて帰還だ。帰りは他のみんなに合わせて行こう。
 もう急ぐ必要はないからね。

  • 塔の上の眠らず姫完了
  • NM名金華鉄仙
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月25日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い
惑(p3p007702)
かげらう

リプレイ

●すすめ! のぼれ! 高い塔
 ボルックスの無邪気な願いを受け、集まった四人のイレギュラー。

「お姫様ねぇ……」
 ずっと一人で、眠っていたとはいえ何百年も王子様を待つ。
 事情が違えど、その寂しさには覚えがある。ならば、寂しくならないように触れて話してあげなければならないなと『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)は塔を見上げる。その横で、

「塔の上のお姫様! まさに物語と言った風情ですね!」

 と少し興奮ぎみに微笑むのは『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)。インソムニア――少しの睡眠だけで十分に、活躍できるギフトを持つ彼女は『眠らず姫』の異名を持つ塔の上の彼女にすこし、親近感が湧いている。

「そうやな、でも来てくれるはずの王子様が来ないまんま起きてしもうたなんて可哀想やなぁ……。そんなのロマンチックの欠片もないやん? 悲劇待ったなしやん!?」

「ええ、誰かが助けてあげなければいけません。例えばそう、私とか!!」

 『かげらう』惑(p3p007702)の相槌に颯爽登場したのは『虹を齧って歩こう』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。彼女は女性だ。だがレズだ。つまり王子様の資格があるということに他ならない。他ならないのか?

「はは……。わても勇者とか、王子とかそんなガラやないけど、寂しそなお姫様迎えに行こか!」
 苦笑しながら惑も同意して。かくして。お姫様救出作戦は幕を上げたのであった。

 真っ先に。もはや駆け出すように先頭を切ったのはウィズィ。その後にドラマ、惑と続く。
 もはや駆け足、といった体で猪突猛進を決め込む。この私が何のために鍛えていると思っているのでしょう! こんなもん余裕ですよ余裕!

「はっはっはー! 惑さん大丈夫ですか! 置いていっちゃいますよ! おんぶしていきましょうか!?」

「そないけずなこと言わんといてえ! 鍛えてはいるんや、いるんやけどな……」

「大丈夫ですか……? ペースが早いのはあると思いますからゆっくり行ってもいいと思います。 ……あ、足元注意です、ウィズィさん」

「おっと! ありがとうございますドラマさん!」

 ウィズィが先頭を切り、ドラマが罠を察知する。
 ドラマ自身も其処まで本来は外に出て運動などをするような性質ではないのだが、蒼剣に手ほどきを受けた、其の日から鍛錬に励んでいるのだ。
 今回この徒歩道を選んだのも鍛錬の一環だ。地上から宇宙までの螺旋階段とあれば、さぞかし骨のあるものであろう。

「だいじょぶだいじょぶ。お姫様も待っとるしな……」

 やっぱりどうにもスタミナの方が追いついていないなと痛感しつつ、息を吐きつき、惑も置いていかれない程度には食いついている。
 歩くことに集中していれば恐らく其処までキツくはないはずなのだが、財宝伝説の方にも興味を持っていた惑は実はあちらこちらへと注意を向けていたのだ。
 すると色々なことが分かってくる。階段の手摺は金、灯は銀と翡翠で出来ているようだ。
 それだけではない。所々スイッチなのだろう。微妙にたわみのある箇所があるのが分かる。押したら何が出てくるのかは分からないが。

(また財宝探しに訪れるのは悪くないかもしれんなぁ)

 そんなことを思いながら、呼びかけに応えて駆け出す惑であっ、おや? 
 ぽかん、とした顔をして声を張る。ちょっとそれは洒落にならない。

「なあ、ウィズィちゃん、ドラマちゃん……上」

「はい。おや……? ん゛っ!?」

 ズドン!
 3人が捉えたのは上階から落下し、そして階段をものすごい勢いで転がってくる大きな鉄球であった。

「そうですよね!! 球が落ちてくるだけとか老朽化もへったくれもありませんもんねーー!?」

「そんなこと言うとる場合か! 合わせるで、応えてなぁ!」

 流石に体が強化されているとは言え無論、あんなもんがぶつかればひとたまりもない。
 惑は咄嗟に携帯型の魔術端末を取り出し魔法陣を呼び出した。呼び出されるは人形遣いの糸。透き通り、よく絡むそれは主人の思うまま鉄球に絡みつき動きを捕える。

「わかりました!! このウィズィニャラァム! どんな時でも正面突破ァ!!!」

 意図を察したように頷いて、巨大ナイフを構え、思いっきり振りかぶる。すると、まるでケーキのように鉄塊はするりと切れて、真っ二つ。
 最後に待ち構えるのはドラマだ。ありったけの魔力を本に込めて、視線はまっすぐ。

「わ、はい、なんとかしましょう! よし! ――溶けてください!」

 どろり、と闇としか名称し難い何かが本から溢れる。それは大きく口を開き、鉄球を飲み込んで。
 ……気づいた時には何も残っていなかった。
 快哉を叫びつつトラップを突破した勢いのまま、階段を駆け上る。ふとドラマが窓を見ると、そろそろ宇宙の黒が見えてきた。きらきらと、星々はイレギュラーズを迎えるようにきらめている。

「……後少しですね」

 これはこれで楽しいピクニックであるとドラマは思うのであった。

 一方、ふわり、と塔の外。飛行した紫月は背中の黒い翼を広げ空へと。
 暖かい陽の光に照らされて、翼は濡羽色に輝く。俯瞰して見る地上は穏やかで、空中には雲ひとつ、見受けられない。
 見えるのはレンガ造りの長い塔。見上げれば何処まで続いているかわからないが、時折窓が設置されており距離感の把握に役立つ。人よりもずっと鋭い聴覚で耳を澄ませばどたばたと、塔の中の馬鹿騒ぎも聞こえてくることだし。

「ふふ、楽しそうやねえ」

 なんて笑って紫月は優雅に空を独り占めする。じんわりと空気が薄くなっていくのに気づくが、不思議と息は苦しくなかった。
 段々と白く、そして淡く紫に色づく色彩を堪能して。飛んで、飛んで飛んで――。
 塔の天辺へとたどり着いたのは、境界線が間近に見える頃だった。

●『塔の上の眠らず姫』
 最初に眠らず姫が、周りの異変に気づいたのはノックの音でした。
 それはなんと窓の外からで、しかも翼を持った素敵な、黒い御髪のおじょうさんが、眠らず姫に向かって笑っているのでした。

「まあ、なんということでしょう……! 迎えに来てくれたの?」

 そう言って微笑んだ眠らず姫が窓を開けると、羽織をたなびかせ、乙女が姫に跪きます。

「初めましてやねぇ、美しいお姫様。地上からお迎えに来さしてもらったわぁ……。私は紫月、お姫様のお名前はなんて言うんかねぇ?」

 たおやかな手で姫の手を取った紫月、と名乗る少女の言葉に嬉しそうに。姫が口を開こうとしたとき。
 今度は後ろから大きな物音。
 どごん! と力強く、先程まで扉だったものが吹っ飛びます。
 目をまんまるにして様子をうかがうと、これまた勇敢な、勇者様達が姫君を助けにやってきたのです!

「姫!!只今、助けに参りましたっ!!」

 と、真っ先に駆け込んでくるのは金色の髪に、蒼い瞳の背の高い女。敢えて繕わず立つ姿は誰よりも凛々しいのです。

「ご機嫌麗しゅう、お姫様! 貴女にお会い出来るコトを楽しみにしておりました」

 長耳のルビーのような瞳の少女は銀髪を靡かせ、礼儀正しく一礼します。

「あー……格好のつかん勇者でごめんなぁ。迎えに来たで」
 少し遅れて現れたのは黒髪の青年。陽炎のような彼が来たことで、少し肌寒いぐらいだった部屋が少しだけ熱を帯びました。

 皆が皆、息が切れていたり、ひたいに汗が滲んでいたり。此処まで来るのにはきっと沢山の困難があったのでしょう。
 労うように皆に一礼してみせて。少し眦に涙を浮かべます。

「私、気づいてもらえたのね。……助けてくれてありがとう、王子様達! 私の名前は『眠らず姫』。本当の名前をタンザナイトと申しますの。勇敢なる皆様。まずはお茶でも如何かしら?」

 久しぶりに名前を言いました。と姫――タンザナイトは満足げです。

「あ、それならわて、お菓子買ってきたんよ。好きかと思って」

「おや、ぴったりやぁ。1人でずっとここに居たんなら寂しかったよねぇ……。ちょっとお喋りしていこうやぁ」

 お茶ならきっと皆で食べると良い。という惑の提案は、紫月のひと押しと、満面の笑みによって可決されます。

「まあ! 両方とも大好きです!」

 そして、これだけはと姫がストックしていた紅茶と、フルーツサンドと焼き菓子でお茶会が始まりました。

「では……。少し、お話しでも致しましょうか。遠い遠い、世界のお話でも」

 ドラマが堂に入った語り口で、これ迄に自分たちが出会った、沢山の冒険を語ります。
 そこに皆が口を出して盛り上げたり、姫君の、『こんな話が聞きたいわ!』のリクエストに応えたり。
 楽しい時間が過ぎていきます。

「さて、そろそろ良い時間ですかね」

 ドラマがぱたん、と本を閉じました。気づけばお茶も、お菓子もすっかりと食べ尽くしています。少し名残惜しそうに、姫様も席を立ちます。
 姫はもう一度空へ、目を向けました。黒く、青く澄み渡る空。退屈だったこの光景も、もう見ることはないのだと思うと少しせいせいするような、惜しいような。

「……綺麗よなぁ、空。姫様の瞳の色みたいやね。あの黒の向こうに自分のルーツがあると思うと不思議な感じや」

 同じように外に顔を向けた惑が、しみじみと呟きます。陽炎は太陽から産まれるもの。そう、目の前のスカイブルーの彼女に似た瞳のお姉さんが、惑に教えたことがありました。

「ありがとう。瞳の色は私のチャームポイントですのよ。……大好きだった、青空の色」

「では、青空の元へ参るとしましょう。こんな閉じた場所ではない、広く、新しい世界へと!」

「もちろん。さあお手を、もといお体を拝借、タンザナイト様」

「わ、ひゃ……! ふふ、ほんとうに王子様みたいだわ!」

 鈴の音のように楽しげに謳うドラマに手を取られ、ウィズィにお姫様だっこされたお姫様は塔を飛び出すことができました。
 これからは、きっと何があっても大丈夫。何よりも大切な自由を、勇者様達に取り戻してもらえたのだから。

 めでたしめでたし。

成否

成功

状態異常

なし

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