PandoraPartyProject

シナリオ詳細

月に映るあなた

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●月はいつも
 闇が広がる無限の空。そこにぽつりと浮かぶのは青白く光る満月。深い森の下からでも今日はその光がとても強く感じて……

「え?」
 ふと月を見てしまっていた女性が、気づけば真っ暗な空間に一人立っていた。
 そこへスポットライトのようにパッと光が指す。そこに居たのは戦士の風貌を漂わせる男性、この女性にとって息が詰まるほどの大切な人だ。

「マルロ?!」
「シャーリー……」
 彼女は大切な人に会えて涙が出るほど嬉しいのに、その相手である男性は何やら厳しい表情を浮かべている。再会を喜べる雰囲気ではないと女性もすぐに察した。
「シャーリー、どうして君はこの道を選んだんだ」
「え?! どうしてって……あなたが……!」
 女性は彼の問いかけに酷く驚いた。彼が言うこの道とは、きっと彼女が今彼の為にと使命としている『彼女らしくないこと』。
 それは自分が目指していた花屋と言う夢も捨て、彼の代わりに戦士として成り立ったこと。それでも約束したから……仇を取りたいからと彼女は日々どんなに向いてない道であろうと努力していた。

「君は人の意見で自分の意見すら変えるのかい?」
「そんな! そんな事ないのに……!」

 あなたの事が大切だから、あなたの為に選んだ道なのに! 彼女は大切な人からの唐突な言葉に酷く混乱し涙が零れ落ちる。
 ……けれどどこか見透かされているような気もした。戦士となる為の鍛錬に身体が上手くついていけず諦めかけている自分を。
「なら、ちゃんとしてみせて。君には君を大切にして欲しいんだ」
「マルロ……」

 瞬間また空間が移動して、気づけば元の森へと戻っていて
「うっ……っ、マルロ……っ!」
 女性は酷い夢でも見たかのようにその場に泣き崩れた。

 彼はもう会うことの出来ない、彼女の生涯の大切な人だったのだから……。




 ここは複数の月がある世界『常世の月』。
 無限に広がる闇の空と森。けれども色も形も様々な月がそれぞれぼんやりと浮かんでいる。
 その中でも『説く月』は見つめた瞬間別空間に飛ばされるらしい。そして月を見た者は口々に

「大切な人に怒られてしまうらしいですよ?」
 くすりと可笑しそうに境界案内人は笑う。黒づくめでフードを深く被り顔は確認出来ないが、口元は明らかに笑っている。

「ふふ、まぁそういう事でおかしなことではありますが、念の為ご調査お願い致しますね?」
 そうやや他人事に聞こえなくもない調子で、案内人はそうあなた達に告げた。

NMコメント

初めまして月熾と言います。
初のライブノベル、皆様に楽しんで貰えるよう尽くさせて頂きます。

今回はシリアスで心情を強めとした内容となりますが
どうぞよろしくお願い致します。

●依頼内容
『説く月』の光の調査
成功条件はあなたの大切な人の説きを聞くことです。

●詳細
この月を見つめた瞬間別空間に飛ばされ
あなたは大切な誰かに説かれます。
それはほんの些細なことでも、重く強いものでも可能です。

書いて頂きたい事は
・大切な人(現在)は誰か
※大切だった人(過去)でも可能です。
※参加されているキャラクター様以外は基本的に名前は出ません。
・説いて欲しいこと
・それに対してのあなたの答え

を、最低限書いてください。

字数にお困りの際は、大切な人の口調や見た目、故人であればどうして亡くなったか等の詳細がありますと大変助かります。

●世界観
夜しかない空に様々な月が浮かぶ闇の世界
地上では無限とも呼ばれる森が広がっています。
『説く月』の他にも様々な月があるようです。

●サンプルプレイング
大切な人】父(故人)
いつも口煩くてきっちりとした真面目な性格
けれども娘のことは叱ることもあったもの
親としての愛情を充分に注ぎ可愛がってくれていた。
建設現場付近の不慮の事故で亡くなっている。
「お前は自慢の娘だ」
説】
お前はちゃんと自分らしく出来ているのか?
俺に気を使って生きてるんじゃないだろうな?
答】
ちゃんと自分らしく頑張ってるよ!
やっと新しい道を見つけたの、応援してね!



それではご参加、お待ちしております。

  • 月に映るあなた完了
  • NM名月熾
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年11月18日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

焔宮 鳴(p3p000246)
救世の炎
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い

リプレイ

●それぞれの想う人
 常世の月の森を四人の影が動く。
「『説く月』……なんとも不思議なお話なのっ! 大切な人に怒られてしまうのなら、それはきっと……姉上なの」
 『救世の炎』焔宮 鳴(p3p000246)が目を閉じて思い浮かべるのは、記憶に焼きついている優しく太陽のように見守ってくれていた姉の存在。
「姉上はとても鳴を大切にしてくれていたから、心配掛けちゃっているのかも……なの? もし少しでも話せたなら……なのっ」
 そう物思いにふける鳴の隣で『花紅柳緑』鹿ノ子(p3p007279)も誰かを思う。
「僕の大切な人は……ご主人……ッスかね……」
 ふと記憶を巡らせてみれば、今はどうしてるかもわからない鹿ノ子の大切なご主人様が浮かび上がる。彼が行方を眩ませてから鹿ノ子は今も探し続けていた。
「僕も……僕もご主人と会ってみたいッス……」
 だからこそこの時ばかりは不安げにそうにぽつりと呟いて。
「……大切な人、ねぇ……」
 そんな鹿ノ子の隣にいる『付与の魔術師』回言 世界(p3p007315)は眼鏡をクイッとかけ直す。彼は他の二人とは違い、あまり考え込んでいる様子もなく至って冷静を保っているように見受ける。
 そんな世界の隣にいる『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)は
「大切な誰か、ねぇ……私の場合は誰が来るんかねぇ」
 そうぽつりと呟いてぼんやりと想像してみる。言葉とは裏腹に彼女もまたどこか密やかに検討はついてる様子で。
 それぞれがそれぞれの思いを抱きながら、そこから枝分かれするように別行動へ移る。今日も青白く浮かぶ満月は、まるでその四人を見守るようにゆらりと揺らめいた。




 月を見た鳴が次に瞬きをした時には、話に聞いていた空間に移動していた。暗い暗い真っ暗闇……どこか不安を感じさせるその空間に突如としてスポットライトのように光がパッと指す。
「姉上!!」
「……鳴」
 光の元に現れたのはやはり鳴の思った通りの大切な人。自らの手で討った、討たなければならなかった……そうして失った大切な姉。例えそれが幻だったとしても会ってまた話しをしてみたかった人だ。
「ちゃんと歩まされた道でなく、貴女自身の道を歩んでいるかしら? 迷っていたりしていないでしょうね?」
 仲良く日々を過ごしていた穏やかな記憶の中を思い浮かべる鳴に対して、『説く月』の彼女は真剣な眼差しで鳴の前に立ちはだかる。
「大丈夫なの。鳴は鳴として、自分自身の歩むべき道を見つけたの。皆の、民の為に戦うことこそ鳴の道なの!」
 だが鳴にはもう迷いはないように見えた。『──本当の名前が思い出せなくたっていい。私(鳴)は……鳴(私)で有り続けたいの!』そう声を上げたあの日も含めて、鳴はたくさんの戦いを経て、その小さな身体に、その年齢に、相応しくないほどにしっかりとした答えを決めていたようだ。
「……貴女は、貴女らしく笑っていなさい。それはきっと、貴女を信じてくれている人々にも、自分自身にも勇気を与えるはずよ。『鳴』として……いえ、貴女自身として。胸を張り前を向きなさい。私の可愛い妹……」
 答えを聞いた彼女はいつの日か見た穏やかな表情を浮かべ、そっと鳴を抱きしめた。鳴はその温かさに胸がいっぱいになりそうになる。
「笑って、胸を張って、前を向いて頑張っていくの! えへへっ……だから見守っていてなの……姉上」
 その仮初の温もりに身を任せつつ、鳴はそう強く強く言葉を紡いだ。




「ご主人!!」
 同時刻……月を見つめた鹿ノ子もまた、別空間へ飛ばされ大切なあの人と会っていた。
 ずっとずっと探し求めていたご主人。
「ずーっと探してたんスよ? どうして居なくなっちゃったんスか??」
「鹿ノ子……」
 鹿ノ子の呼び掛けに動じる様子もなく、光の元に現れたアルマジロトカゲのブルーブラッドの男性はくらい面持ちで彼女を見つめる。
「俺を追うな。お前は自由だ。お前はお前の人生を歩め」
 漸く重い口を開いた彼は鹿ノ子にそう説く。彼は元ラサの傭兵で引退後は人材育成のために剣技の指導をしつつ孤児院の援助などをし、孤児の鹿ノ子を引き取りメイド兼護衛役として穏やかに過ごしていた。
 だが親身にしていた孤児院は襲撃されたり孤児の誘拐事件などが繰り返し起こったり、小さな命さえ救えない己への苛立ちと後を絶たない人身売買に辟易していた頃、彼の耳に魔種の呼び声に耳を傾けてしまいその後行方を眩ませた人。
「そんなの……そんなの嫌ッス!!」
 彼の言葉に鹿ノ子も言葉を探す。帰ろう……そしたらきっとまた穏やかな時間を過ごせるはずだから……鹿ノ子はまだそう信じ続けているのだ。
「……俺は誰も救えなかった。小さな子供たちでさえ守り切ることが出来なかった。こんな俺を、どうか追わないでくれ……」
「ご主人は僕を救ってくれたッス! 僕にとってはそれだけで充分ッス! ……それに、ご主人を連れて帰るって他のメイドと約束したッス!!」
 彼がどんなに説こうと、鹿ノ子とて引き下がるわけにはいかない。この想いを諦めるわけにはいかないから。
「今度は僕がご主人を救う番ッス。これは、僕の意志ッス! いくらご主人の命令でも、聞けないッス! 僕は、絶対に諦めないッス!」
 またあなたと過ごす大事な時間を取り戻すために……。




「ここでは大切な人がでてくるんだろう、どうして俺なんだ」
 月を見て空間を移動した世界の前に現れたのは、今の自身よりも若干背が低く、髪は少し短い。服装も少し風変わりの……懐かしい元の世界の自分の姿だ。
「お前は結局、何一つ自分より大事なモノなんて作ってこなかったんじゃないか?」
 懐かしむのも束の間、元いた世界の自分は厳しい口調でそう説く。
「その通りだよ、大切な人なんていたところで一体何になるって言うんだ。俺は俺の事で手一杯なんだ。そんな面倒臭そうな関係なんか築けるものか」
 その説きに世界は気だるそうにそう答える。そんな関係に意味なんてない、今の世界にはそうした思いが強いらしい。
「言うねえ……でもその割にはいろいろな奴にちょっかいかけるんだな。あの街角とかで、いつも楽しそうにしてるじゃないか」
「あれはあくまでコネクション作りの一環だよ。他人との良好な関係はどんな場所でも有用だからな。たしかに仲間ではあるが……その大切な人って関係とは程遠いさ」
 あくまでも仕事を有利に進める為の関係だ。そこに感情的な意味合いなんて……そう考えて世界はふっと笑う。
「……さて、こんな問答は俺には無意味だ。そろそろ行かせてもらうぞ」
 こんな自問自答に意味なんてない。スポットライトのような光に照らされた自分へそう背を向ける。すると次に瞬きをした時には元の森に戻っていた。
「しかし、俺に……いつかそんな大切な誰かができるとしたら……。一体ソイツはどんな奴なんだろうか」
 問われてなんとなく気にはなったが
「ふっ、考えるだけ無駄か。その時が来たら自ずとわかるだろう。それまでは今まで通り、独りで生きていくとしよう」
 そんな自分なんて今は想像すら出来やしない。無意味なことを考えるよりも今を。彼はそう気だるそうに笑みを浮かべて案内人の元へ戻る。




 深紅の片涙を流す天使もまた闇の空間へ移動する。幼く見えるその少女もまた、大切な人と想像して出てきた人物は……その人だけ。
「紫月、大きくなったね?」
「……まさか姉様が出てくるとはねぇ」
 覚悟はしていた。確かに大切に思う人だけれど……出逢いたくないと言えば嘘になるけれど……。
「紫月、無理してるでしょ? 紫月は動いちゃダメだってずっと前から言ってたでしょう?」
「そうやねぇ、一族の呪いを一身に受けた私は、本来動いたらあかん不治の病持ちやったからねぇ。……せやけど、この子のお陰でまともに動ける様になったんよねぇ」
 この子、と穏やかに撫でるのは肌身離さず持つ妖刀。亡き姉と言えど隠し事は出来ない紫月は静かに言葉にする。
「紫月……」
 少し心配そうに彼女は紫月を見てぽつりと名前を呼ぶ。
「私の望みはずっと前から変わらへん。好きな様に動いて、好きな様に歌って、好きな様に朽ち果てる。姉様も、申し訳なさからずっと私を避けとった様やけど」
 紫月は彼女に近付く。その表情を窺い知る事は出来なくても。
「私は今こうして元気なんよ。だから……姉様、もう、気にせんでええんやよ?」
 紫月が漸く言えたその言葉は本心。動けなかった紫月を見る一族の目は憐憫に溢れていた。先に逝ってしまった姉に漸く伝える事が出来たのだ。
「そっか、それならいいの。でも無理しちゃダメだからね? いつでも見守ってるから、忘れないでね?」
「ふふ、姉様の心配性は相変わらずやねぇ」
 彼女の心配そうな表情にくすくすと紫月はおかしそうに微笑む。私はもう大丈夫、こうして歩き出せる力を得たのだから。あの頃の弱い自分とはもう違う、ちゃんと前へ進むことが出来るようになったから。漸く私らしく生きることが出来るのだから。




 それぞれ思いを胸に四人は境界案内人の元へ戻る。
「おや、お帰りなさいませ皆様。……あら、その様子ですと大切な方にはお会い出来たようですね? ……ふふふ、良かった。と言うべきでしょうか?」
 境界案内人はくすくすと笑いながら四人を迎えた。
「まぁ一先ずは心を休めてくださいな。その後に報告書を纏めて頂けたらと……皆様お疲れ様でした」
 最初の印象とは裏腹にそう丁寧に労いの言葉をかけた境界案内人は、礼儀正しく深々とあなた達に一礼をした。

 『説く月』は今日もぽつりと浮かぶ。それはきっとあなた達の大切な人達のように、優しく穏やかにそして時に厳しさを浮かべて。



 ──月はいつも
あなたの胸の中であなたの心に問いかける──

成否

成功

状態異常

なし

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