PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<星呑み竜>君と思い出の味を

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 空にひときわ輝いている星が浮かんでいた。その星は『タハトーディア』と呼ばれ、世間を騒がせていた。
 それは少しずつではあるが、この星に接近しているのがわかったと告げるラジオの声が聞こえる。本来の軌道とは異なる故に発見が遅れたのだという。この星にぶつかるまで、残り24時間。そう告げられた時の人々の混乱は、まるでこの世が地獄になったかのようなありさまだった、人類は秩序を失い、皆思い思いの形で最期を飾ろうとし始めたのである。
 ある者は多額の借金を抱えてでも思い残すことのないようにと死ぬ前に一度は行きたかったという地へと騎乗専用ペガサスをチャーターして向かった。また、ある者は未来に絶望して高層ビルから飛び降りて自害を試みた。またある者は矛先のない怒りを市民に向けて大量虐殺をはじめた。また、ある者は神に祈りを捧げ始めた。

 そして、かの者は、最後の瞬間を愛する人と過ごすことを誓った。

「死ぬ前に、オムライスが食べたいな」
「卵はこのあたりじゃもう採れないから、無理よ。隣国にはあるって聞くけれどね。
 かわりに、オムライス味のランチスティックならあるけれど」
「あーあ。五年前に比べて、世界はすっかり変わっちまったなぁ」

 男は悲しそうにつぶやいた。女も、寂しそうに笑った。女がさする腹部に宿る命は、産声も上げずに死ぬのだろうか。せめて今、自分たち夫婦が結婚するきっかけとなったオムライスを共に食べて、家族としての最期を迎えたい。もちろん、腹の赤ん坊は母親から栄養をもらうだけになるけれど、それでも、思い出の食事を共有したかった。男は料理人で、オムライスは得意料理だったのだ。

「オムライスを食べるくらい、願いがかなったっていいのにな」



 アール国サンディア州。エル国メルク州の隣にあるそこでは、養鶏場の男が黙々と卵を睨んでいた。彼は世界最後の日に何か特別なことをしたいと思っていたが、何も思いつかなかったのである。何か自分にできることがあればぜひ協力したいと思っていたが、彼のもとに訪れるものは居なかった。

「誰か来てくれないかなぁ。卵もこんなにあるのに」

 本来なら出荷するはずのものだったが、世界最後の日に仕事をする物は少なく、彼のもとに運送会社はこなかったのだ。仕方ないからと目玉焼きをつくって朝に食べたが、そんなに料理のレパートリーもなく、技術もなかった彼はしょんぼりとむだになりそうな卵を見ておちこんだ。誰か、料理人でも来てくれないだろうか。



「最後の日を前に、想いが交錯する世界『ラストデイズ』にようこそ」

 この物語は、『世界最後の日』を舞台につづられた短編小説なのだという。剣と魔法の世界……だけれど、空から降ってくる謎の星『タハトーディア』によって滅ぼされる運命の世界。
 けれど、とカストルは肩をすくめる。せっかくなのだし、ハッピーエンドがよいだろう?と。この世界も救って、民も救う。全部解決しようじゃないか。

 すべての願いを全て叶える力を、君たちは持っているはずだから、と彼は笑った。

NMコメント

運搬系&料理シナリオです。
人間を運ぶには妊婦さんの体調に、卵は割れやすいのでご注意を。
小規模のオムライスパーティを開くもよし、代替的に行うもよしです。

  • <星呑み竜>君と思い出の味を完了
  • NM名蛇穴 典雅
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年12月03日 22時30分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
陰陽丸(p3p007356)
じゃいあんとねこ

リプレイ

 世界の終わり。そう聞いてもピンとこないものがある。イレギュラーズになった今でも、それは変わらない。それこそ、この世界に落ちてくるという星『タハトーディア』のように明確に示されたものでもなければ、なかなか世界が滅亡すると聞いても信じられないだろう。妄言だと一蹴する自信がある。

(ああでも)

 ―—滅びが目前に迫った時、混沌でもこの世界と同じような事が起こるんだろうか。

 ラダ・ジグリ(p3p000271) はアール国サンディア州にある養鶏場に向かって駆けていく。赤いレンガ造りの建物が見えてくれば、ここだ、と足を止めてノックを2回。ドアがガチャリと開く。突然現れた見たことのない来訪者に驚く男だったが、最後の日に1人で過ごすことにはならなさそうだと思い、快く招き入れてくれた。お茶を淹れて、簡単な貰い物の菓子を机に置き、さて何の様だろうとソファーにどっかり座れば問いかける。

「今日この日だからこそ、卵を必要としている人達がいる。彼らがやって来るから、貴方の卵とできれば台所や食べる場所を貸して欲しい。例え今日世界が終わってしまうとしても、美味しい食事は幸せを運ぶだろう。メニューはオムライスだそうだ。私は好きだが、貴方はどうだろうか?」

 ラダのその提案に、男はにっこりと微笑んで『いいとも』と答えた。卵ならいくらでもある。愛するニワトリ達が産んだ物が無駄にならないで済むのなら、協力しない手はないと。それならさっそく卵を取りに行こうと籠をラダに男は渡す。

「好きなだけ持って行ってくれ。ただ……」
「ただ?」
「一匹、ちょっと機嫌の悪い子がいてね。雄鶏なんだが、その子には近づかないであげてくれ」

 卵を採取する分には問題はないので、ラダは特に何も不思議に思わずに、わかったと頷いた。



「あなた達ご夫婦……いえ、ご家族の願いを叶えに来ました!」

 突然現れた愛らしく微笑む少女の姿に、きょとんと夫婦は首を傾げた。一体どういうわけだろうか。ノースポール(p3p004381) の言葉をカバーするように、巨大な猫の陰陽丸(p3p007356) がなぁおと鳴いた。ネコが喋った、とさらに目を丸くする夫婦。

「君たちはいったい……」
「ささ、馬車を用意してありますから! どーぞ! どーぞ!」
「……どうする」
「いいんじゃない? 世界最後の日だもの、不思議な事の1つや2つ、起きてももう驚かないわ」
「そうか、それじゃあ、頼む」

 任せてください! と鳴く猫と少女に微笑みかけて、彼らは馬車に乗り込んだ。御者として待機していた回言 世界(p3p007315) は、移動中に少しでも負担が減るようにと、ブランケットを女に渡した。向こうには馬車で1時間。その間に襲撃がいつ来ても良いように、陰陽丸があたりを警戒しながら進んでいく。途中、野盗が現れたが、あまりに大きな猫と、妖精を使役する男の姿、宙を飛ぶ少女の姿にいよいよ世界は終わるのかと思った彼らは目をこすり、2,3度こちらを見て呆気に取られていた。もはや戦意は消えている。

「いまからオムライスパーティをするところなんです。よかったらどうですか」

その言葉に、1人2人とついてくる人が現れて、いつしか大所帯になっていた。

「わぁ、ずいぶん連れてきたね」

 思っていた人数よりずいぶん増えたとラダが笑う。世界も頬を掻きながら材料は足りるかどうかラダに問いかける。旦那である男は申し訳なさそうに『妻が倒した野盗やすれちがう人を片っ端から誘うもんだから、なんだかパレードみたいになっちゃって。俺としてはオムライスをたくさん作れるから大丈夫だけども』と言うが、養鶏場の男はからからと笑い『なぁに、山ほどあるので大丈夫。最悪お米が足りなかったら、オムレツにしてはくれないか』と言って不安を払拭してくれた。

「……ん?」
「どうしたんですか?」

 ふと感じた魔力に世界は養鶏場に目を向けたが、とくに異変はない。なんでもないと彼は言って精霊や妖精に頼んで、オブジェを作り始める。不思議そうに首を傾げつつも、ノースポールは陰陽丸と花を摘みに野原へと駆け出した。オムライスパーティと聞いてやってきた者達も、思い思いに動いてやれテーブルだの椅子だのを、養鶏場の男に許可をもらったうえで外に出していく。



「さっき、世界さんどうしたんでしょうね」
「にゃぁ」

 花の冠を作る要領で、リースを作っていく。ノースポールは陰陽丸に問いかけたが、陰陽丸にも何のことかはわからない。一応、見回りに行った方がいいのかな、という言葉にそれは良い案だと頷きあい、ニワトリのいる小屋の方へ向かっていく。卵はすっかり採取されたようで、夢中になって餌をつついているニワトリたちが陰陽丸達に目もむけないなか、一匹だけ様子が違った。

「コケー! コッコッコッコ」
「お、落ち着いてください、べつに、なにもしな……わっ」
「にゃあ」

 近づいたノースポールにニワトリが襲い掛かるのを、陰陽丸がかばった。もしかしたら猫の自分がいるせいかもしれないと思って陰陽丸がノースポールに謝罪しようとしたが、ノースポールが見つけたそれに驚く。

「……この子、卵をあたためていたんですね。」
「にゃ、にゃ!」

 そして、目の前で卵がひび割れた。



「追加のオムライス、できたぞー」

 料理人の腕をふるまう男に我も我もと世界が呼んだ精霊や、元野盗たちが皿を差し出す。盛り上がりを見せるパーティの様子に、満足そうにラダは微笑んだ。テーブルセッティングは最高の出来。もちろん、オムライスもおいしい。荒んだ心を癒していくのを見つめていた。そこに、息を切らしてノースポールと陰陽丸が走ってくる。何かを抱えているようだ。

「み、みなさぁん……」
「どうした、そんなにあわてて」
「にゃあ、なーお」

 これをみてくださいと告げる陰陽丸に、ラダはノースポールの腕の中にいるそれを見て驚いた。

「……竜種?」
「そうなんですよぉ、ドラゴンさんです。さっき、ニワトリさんが卵を抱えていて……」
「それってあの、機嫌が悪いとか言ってた雄鶏のことかな」
「そういえば、トサカがついていたような」

 ひょい、とドラゴンの首根っこをつかんだラダは、混沌の竜がどれほど荒々しい存在か、伝承に語られているものを思い出して、これは倒した方がいいのではないだろうかと思案する。けれど、横から世界がそれを制止する。

「ドラゴンじゃないよ、これは。そうみえるかもしれないけど」
「え?」
「どちらかというと妖精に近いかな」

 だからさっき、気配がしたのかと『スレイ・ベガ』である世界は黒いもふもふとした竜らしき妖精をなでる。確証はなかったのだが。もふもふとした生まれたてのそれは、何のことだかわからないといった様子で首を傾げた。

「あら、かわいい子ね」

 妊婦である女性がこちらに気が付いたようで身にやってくる。オムライスを堪能したらしい彼女はお腹をさすっていた。さっき生まれたんです! というノースポールの言葉に、少し驚いた後、素敵ね、と微笑みかける。

「世界最後の日に生まれる妖精、ね。……まるで物語のようじゃない?」

 その言葉に、イレギュラーズは何も言えない。境界の住人は自分たちにとっては物語の住人であったから。だが、もごもごと口を動かしていたそれが、星を見上げて発した言葉に、場が凍り付く。

「タハトーディア、ほし、たべる。 ぼく、オムレツたべる」
「……え?」
「詳しく教えてくれ」

 世界が真剣な表情で見つめる。精霊疎通を試みれば、より詳しい内容を理解することができた。
タハトーディアと呼ばれているアレは宇宙的生命体であるドラゴンの卵であること。そして、その卵は星のエネルギーを一切合切を吸収して孵化する存在であること。そして。

「イレギュラーズ」

 この運命を変えることができるのは、自分たちだけだと、緑の瞳が告げていた。



 オムライスパーティは途中離脱した。彼らは賑わいを見せている。このままこの賑わいに浸りたいと思うものもいたが、この楽しい日々をこれからも続けるために、宇宙を飛来しているドラゴンの卵をどうにかしなければ。

「んなぁーお」

 新しい命の為にも必ずやアレを何とかしてみせましょう!——陰陽丸の言葉に抵抗するように、星がきらりと瞬いた。

成否

成功

状態異常

なし

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